美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
θ75
いつもと違う匂いがする。それもそのはずだ。だって私たちは今、違う領にいる。この身で違う領に行くことになるなんて……いや、まあムウラお嬢様についてとかで何回かあったわけだけど……それは結局お嬢様が主体なわけで私なんかに注目が集まることなんかありはしなかった。だからかな……別の領に居て、こんな胸が高鳴るのは初めてです。
「本当にこれから出るんだよね……」
そういうのはこの騒動にまきこれてしまった被害者の一人の『ティオン』だ。ここに来るまではまだどこか現実感ってのがなくて、ただ言われることを必死にやってただけだった。ラーゼ様の指導の下、振り付けの練習とか、歌の練習とかね。けど今は、私たちの為に用意された衣装を来て、そしてファイラルから手配された最新鋭の船に乗って私たちはこの空の闇に紛れてる。そしてその時が来るのを待ってる状態だ。
すでにラーゼ様はここにはいなくて、プリムローズ側へと戻ってる。段取り通りにやれるかは私たち次第。もう……助けてくれる人はいないんだ。そしてその時は刻一刻と近づいていて……もうにげだす事もかなわない。なんてったってここ、空の上だしね。周りを見ると不安にさいなまれてるのはティオンだけじゃない。お嬢様もそうだし、『マーブル』とそして『シュラン』も……憧れのラーゼ様に会えて、一緒にいれて、言葉を交わし合えることに興奮してここまで来てしまった私たち。
まあ私は……結構前からこれはまずい……とおもってた。いや、お嬢様以外は気づいてはいたはずだ。ただそれよりもラーゼ様という存在が放つその輝きに拒否をするなんて事は出来なくて、勢いでここまで来てしまった証拠。私たちはゼーバレス……いくら普段は力を封印されてるといっても人種に洗脳なんてありえないけど、ラーゼ様のあれは一種の洗脳に近かったのでは? と思わなくもない。
まあ、オウセリア様からも言われてて、結局私たちに拒否権なんてなかったわけだけど……けどこの重圧……ことここにきて私も勿論それは感じてる。私たちにはプリムローズのライバルになるという目的の底にもう一つの真の役目がある。それはゼーバレスという種の存続の為に羨望を集めることだ。私たちはそれがないと生きていけない。それ以外は別段人種と変わることなんかない。だからどっちが上とか下とか、考えたことはないです。
だって普通に人種と共に育ってきましたからね。けどだからこそ違う所も良く知ってるというか……わたしたちは羨望に快感を感じます。だからこそ、人種よりも容姿がよく、頭が冴えて――とかがあったりする。その度合いはやっばり人によって違うけど……大体の人種よりは出来る事が多いはずです。それは羨望を集めるための私たちの小さな力。そして、その力は今、この役目にこそ最適だとラーゼ様は言った。
確かにアイドルという存在には私たちゼーバレスの特性は有利だ。それに今は、私たちはオウセリア様からの封印を解除された状態。私たちは種の力を最大限に発揮することが出来る。だからなのか、私たちの瞳は怪しげにうっすらと輝いてる。この目で見られた者は一種のトリップ状態になるとか聞いた事がある。私たちはまだこれの扱いになれないから、それが出来る様になるまでは全てのゼーバレスはオウセリア様によって封印処理される。
けど、今私たちは特例でそれを解除された。そして言われた。
「思いっきりやってきなさい」
と。私たちは私たちゼーバレスという種の代表として今夜アイドルとして立つ。ライバルはすでにこの国中にその名を轟かすプリムローズ……それに対抗する為にはこれくらい許されるだろう。私は凜とした声を発してリーダーに手を挙げたお嬢様に声をかける。
「お嬢様、あれをやりましょう。もう一度、覚悟を決める為に」
そんな声に皆が私をみて、そしてお嬢様に視線を流した。そんな視線に、さっきから不安そうでビクビクしてたお嬢様は涙目でこっちもみる。けど私はそれをまっすぐに見つめ返すだけで言葉ははっしない。この人はいつもそうだ。猪突猛進に他人を巻き込んで色々とやる癖に、いざとなったら弱気になる。領主の娘として甘やかされて育った弊害なのだろう。けど、悪い人ではない。だからこそなんだかんだ言っても私たちは離れないんだから。
そしてそんなお嬢様だからこそ、扱い方はしってる。
「リーダー」
そういって差し出す手。それに他の皆が手を重ねてく。そして頭を振って弱気を飛ばしたお嬢様が最後に手を重ねた。
「そう、私はリーダー! 私たちは超える! あのプリムローズを!! もう憧れじゃないわよあんた達!! 今からライバル。蹴落とすの……私たち『サンライズ』がね!! やってやるぞおおおお!!」
「「「おおおおおお!!」」」
最後はやけっぽかったけど、覚悟は決まった。流れてくる音楽。震える体は今は恐れじゃない。これは……武者震いだ。弱弱しかった目の輝きが、今は皆深く静かに燃えてるようだ。
「本当にこれから出るんだよね……」
そういうのはこの騒動にまきこれてしまった被害者の一人の『ティオン』だ。ここに来るまではまだどこか現実感ってのがなくて、ただ言われることを必死にやってただけだった。ラーゼ様の指導の下、振り付けの練習とか、歌の練習とかね。けど今は、私たちの為に用意された衣装を来て、そしてファイラルから手配された最新鋭の船に乗って私たちはこの空の闇に紛れてる。そしてその時が来るのを待ってる状態だ。
すでにラーゼ様はここにはいなくて、プリムローズ側へと戻ってる。段取り通りにやれるかは私たち次第。もう……助けてくれる人はいないんだ。そしてその時は刻一刻と近づいていて……もうにげだす事もかなわない。なんてったってここ、空の上だしね。周りを見ると不安にさいなまれてるのはティオンだけじゃない。お嬢様もそうだし、『マーブル』とそして『シュラン』も……憧れのラーゼ様に会えて、一緒にいれて、言葉を交わし合えることに興奮してここまで来てしまった私たち。
まあ私は……結構前からこれはまずい……とおもってた。いや、お嬢様以外は気づいてはいたはずだ。ただそれよりもラーゼ様という存在が放つその輝きに拒否をするなんて事は出来なくて、勢いでここまで来てしまった証拠。私たちはゼーバレス……いくら普段は力を封印されてるといっても人種に洗脳なんてありえないけど、ラーゼ様のあれは一種の洗脳に近かったのでは? と思わなくもない。
まあ、オウセリア様からも言われてて、結局私たちに拒否権なんてなかったわけだけど……けどこの重圧……ことここにきて私も勿論それは感じてる。私たちにはプリムローズのライバルになるという目的の底にもう一つの真の役目がある。それはゼーバレスという種の存続の為に羨望を集めることだ。私たちはそれがないと生きていけない。それ以外は別段人種と変わることなんかない。だからどっちが上とか下とか、考えたことはないです。
だって普通に人種と共に育ってきましたからね。けどだからこそ違う所も良く知ってるというか……わたしたちは羨望に快感を感じます。だからこそ、人種よりも容姿がよく、頭が冴えて――とかがあったりする。その度合いはやっばり人によって違うけど……大体の人種よりは出来る事が多いはずです。それは羨望を集めるための私たちの小さな力。そして、その力は今、この役目にこそ最適だとラーゼ様は言った。
確かにアイドルという存在には私たちゼーバレスの特性は有利だ。それに今は、私たちはオウセリア様からの封印を解除された状態。私たちは種の力を最大限に発揮することが出来る。だからなのか、私たちの瞳は怪しげにうっすらと輝いてる。この目で見られた者は一種のトリップ状態になるとか聞いた事がある。私たちはまだこれの扱いになれないから、それが出来る様になるまでは全てのゼーバレスはオウセリア様によって封印処理される。
けど、今私たちは特例でそれを解除された。そして言われた。
「思いっきりやってきなさい」
と。私たちは私たちゼーバレスという種の代表として今夜アイドルとして立つ。ライバルはすでにこの国中にその名を轟かすプリムローズ……それに対抗する為にはこれくらい許されるだろう。私は凜とした声を発してリーダーに手を挙げたお嬢様に声をかける。
「お嬢様、あれをやりましょう。もう一度、覚悟を決める為に」
そんな声に皆が私をみて、そしてお嬢様に視線を流した。そんな視線に、さっきから不安そうでビクビクしてたお嬢様は涙目でこっちもみる。けど私はそれをまっすぐに見つめ返すだけで言葉ははっしない。この人はいつもそうだ。猪突猛進に他人を巻き込んで色々とやる癖に、いざとなったら弱気になる。領主の娘として甘やかされて育った弊害なのだろう。けど、悪い人ではない。だからこそなんだかんだ言っても私たちは離れないんだから。
そしてそんなお嬢様だからこそ、扱い方はしってる。
「リーダー」
そういって差し出す手。それに他の皆が手を重ねてく。そして頭を振って弱気を飛ばしたお嬢様が最後に手を重ねた。
「そう、私はリーダー! 私たちは超える! あのプリムローズを!! もう憧れじゃないわよあんた達!! 今からライバル。蹴落とすの……私たち『サンライズ』がね!! やってやるぞおおおお!!」
「「「おおおおおお!!」」」
最後はやけっぽかったけど、覚悟は決まった。流れてくる音楽。震える体は今は恐れじゃない。これは……武者震いだ。弱弱しかった目の輝きが、今は皆深く静かに燃えてるようだ。
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