美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ44

(なんで……どうしてこんな事に……)


 私はフィリー姉さまの事を恨む。だって……だって……なんで私とこいつ(犬一)のペア、ミラと犬次のペアで、残りがラーゼ様とコランとフィリー姉さまと犬さんってどう考えても仕組まれてたとしか思えない。明らかに最後多いじゃん。まあ犬たちの数に対して、こっちは多いから仕方ないんだけどね。それなら一緒に連れて来てる冒険者でも……ってそれは自分で考えて置いてないなってすぐに思った。だって誰も彼もが、私たちの事……狙ってる。
 それがわかる。皆この機会にって思ってる。ギラギラした目してるからね。そんな奴らと一緒に行動なんて……それこそあんまり大所帯で歩くわけにもいかないから、冒険者の中から何人か選んでってなると、それを勘違いする奴がいるかもしれない。


 てか絶対にする。男なんて馬鹿なのだ。まあだから簡単なんだけど……けどこういう時は困る。だから今更冒険者なんて論外……けどこのままじゃ、フィリー姉さま達だけがラーゼ様と楽しいひとときを過ごすことに……それはなんかくやしい。それになんか指示来たし。この機会に犬一を堕とせ……と。前は私だけが堕とせなかった。そのせいで再び二人は復帰してきた。それがフィリー姉さまは許せないのだ。でもあれは私の魅力が足りなかったせいじゃない。


 犬一の精神力が予想以上だっただけ。きっと私が犬次や犬さん担当だったら同じように堕とせてたはずだ。まあだけど……それが言い訳にしかならないってのもわかってる。このままでは私は女としてフィリー姉さまとミラに負けてることになるしね。それは……いやだ。やっぱりむかつく。フィリー姉さまの思惑にのってこいつとで……デートするのは癪だけど、こいつを伴ってラーゼ様達を尾行することはちょっとできない。


 できなくもないだろうけど……それじゃあ別行動してる意味がない。


(しょうがない。ここはとりあえずフィリー姉さまの指示に従った振りだけして、途中で合流――そこで組み分けをもういちど、分ける提案を上手くしてラーゼ様をこっちに引き込もう)


 多分それが一番自然な方法で波風も経たないベストな選択。問題はうまくラーゼ様達と合流できるか……


「あ……あの……」
「…………なにか……くする……でもそれには……」
「シシちゃん」
「あっ?」
「うっ……」


 まずい……考え事してたから思わず睨んでしまった。人前では素の私は見せないように心がけてるのに……大丈夫、おちつけ私。この後の対応が大切なのだ。誰しも失敗はある。だから重要なのはどうフォローするかなのだ。私は一回心を落ち着けていつもの奴を心で唱える。そして犬一をちゃんと見て私は自身の手を差し出す。


「エスコートしてくれるのよね?」
「えっ……と、はい!」


 恐る恐るって感じで私の手に大きな手をのせる犬一。一瞬ドキッとしたのは気のせい。こんな奴、ただの犬だ。そう犬……だからどきどきするのは犬一だけでいい。奴の顔は真っ赤になって震えてる。それを見て私は心の中でほくそ笑む。

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