美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ28

――夜――


「上手く~載せられましたね~。みすみす再びあのオオカミ共に~チャンスを与えるなんて~」


 屋敷の一部屋で私は正座させられて、そして眼前にはベッドに腰を下ろして脚を組んでるフィリー姉さま。審判の時……まさに審判の時だよ! フィリー姉さまはおこである。激おこである。私が昼に不用意な発言したことで、あの犬たちにチャンスを与えてしまったことがフィリー姉さまは不快なのだ。


「ねえ……わかってる~? シシちゃーーーん?」


 フィリー姉さまは組んだ脚の上の方をひらひら動かして私をその足の指で指さす。そしてその足を延ばして私の頭の上までもっていきペシペシしてくる。


「ねえ、シシちゃーーーん」
「はい」


 屈辱……だが、この人には逆らえない。だって怖いんだもん。


「ごめんなさい」


 私は素直に謝る。普段はそうそう誤らないんだけどね……


「まあー考え方かなー? 次で去勢もさせて追い出せれば面白……ううーーん、完璧~かな? どう思う?」
「そうですね。今度こそ、完膚なきまでに追い出してあげる所存です!」


 私はまっすぐにフィリー姉さまの目を見てそう言った。だって私だってあいつらがこのまま私たちのマネージャー? なんて物に落ち着くなんて反対なのだ。ラーゼ様はなにやら成長がどうとか言ってたけど、あんな奴らは私たちにとっては妨害要素でしかない。


 私たちは皆……ラーゼ様の寵愛を得ようとしてるんだから。いうなれば私たちは仲間でありライバル。この戦いをわかってないのは純粋すぎるコランくらいだ。皆色んな訳を抱えてる。そんな私たちを救い上げてくれたラーゼ様。そんな彼女の一番の愛がほしいって当然じゃない。おとぎ話なら救われた者同士で固い絆とかで結ばれたりするのかもしれない。けど、現実はそんなんじゃない。色んな辛酸を知ってる同士、やることなんて腹の探り合いばかりだよ。


 そんな中、自然と序列ってものができる。女ならなおさらね。私たちの中ではフィリー姉さまが一番上で二番目が私かな? 三番目はミラ。コランは純粋すぎて除外だ。フィリー姉さまはかなり異常……よくこんな危ない奴をラーゼ様は見つけてきたよ。笑顔の奥にどす黒い殺気めいた物を感じるときある。だからこいつには逆らってはいけないと、私の勘が警報を鳴らしたんだ。


「できるのかなー? 一人だけ色気ないシシちゃんにー」
「やって見せます! 私が本気出せば、あんな奴!」
「本当はー…………怖いんじゃない? 襲われるかもってー」


 ゾクッとした。寒気が後頭部に押し寄せてる。私はバッと床を見て逃げる。怖い……今まさに。けどあの犬一相手にどこか引いてたのはあるかもしれない。だって私は……私は……怖い記憶が砂嵐の中に浮かび上がる。けどそれを振り払う様に頭を振って床に向かって言うよ。


「やります! 今度こそ!!」
「うんー期待してるよー」


 いつものゆったりとした声。そんな声にホッとしたとき、耳元で囁かれた。


「次はないから」


 冷や汗が背中を伝うのを私は感じた。



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