美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

θ23

「左側から回り込んで触手が二本来ます。さらにその後に毒霧です!」


 そんな犬の一人の声でサイオスと赤線の動きが変わる。素早く触手に対応して、さらには攻撃の勢いで毒霧ごと敵を殴る。けどこいつら物理は効かないと学習しない奴らだね。確かに勢いはすごかった。毒霧はそれだけで晴れたし。けど、あいつら敵のドロドロの体に取り込まれそうなんだけど? もう私があいつらごと撃っていいかな? そしたら色んな厄介ごとが消えそうなんだけど……冒険者が死ぬのなんてよくあることだし、そこは私の権力でどうにでもできるよね。


 犬君達は私にメロメロだし、言うことは聞いてくれるでしょう。私がちょっと上目遣いにお願いすればいちころである。私の可愛さに抗える奴なんてそうそういないからね。


「くっこの!!」
「この程度で焦ってるのか?」
「お前! このままでは取り込まれるぞ!!」


 赤線に対してサイオスの奴はなんだかお湯にでも浸かってるみたいな感じ。何か秘策でも? と赤線は思ってるんだろうけど、私にはわかる。そんな付き合い長くないけどさ、サイオスの奴は何も考えてない。サイオスは自分に英雄願望見てるからね。きっと新たな力が覚醒するとか思ってるんじゃないかな? なのでやっぱり私が派手にやるしかないかな? それで死んだとしたら、それまでの奴らだったってことで。
 私は銃に手をかける。けどそこで更に犬たちが吠える。


「大丈夫! そいつの右わき腹の奥に向かって最大級の技を放ってください!!」
「ぬ、それは一体――」
「よし来たああああああ!!」


 戸惑う赤線に対してサイオスに迷いは一切ない。体内でマナを練り上げるサイオスからは僅かな輝きがほとばしってる。それを見て慌てて赤線も体内のマナを練り上げていく。そして武器にありったけの力を込めて二人同時に振りかぶった。迸る閃光とモンスターの低い唸り声が響く。びちゃびちゃと何かが飛散ってくる。そして光が収まると、モンスターの姿はなくなって、辺り一面泥だらけの面々の姿がそこにはあった。


 まあ……なんとか倒せた……のかな? 


「俺の一撃が決まったな」
「何を言うか! 今のは我の一撃が奴のコアを破壊したのだ!!」


 なにやらどちらが止めを刺したかで言い合ってるサイオスと赤線。私的にはどうでもいい。それよりも……だ。


「あんた達、あそこに核があるってよくわかったね?」
「ええっと……それは自分たちにはそのくらいしかできることがないので……」
「なんとか奴の動きを観察して三人で考察してみましたです!」
「当たってて……正直よかったです……」


 どうやら三人とも確信があったわけではないようだね。けど実際この勝利は彼らがもたらしたみたいなものだ。なので私は三人のうちの一人の腕を取って高く掲げてあげた。


「勝者はこの三人ということで!」
「「「えええええええええええええ!?」」」


 重なる三人の声。そして不満を露わに迫ってくるサイオスと赤線。けど残念。私の決定はそうそう覆らないのだ。とりあえずそうだね。三人は戦闘には向かないし、マネージャーでもやって貰おうかな?



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