美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ90

 包んでた全ての鉄血種の布を取り込むと同時に、マント事態が分解されたかの様に粒子へとなった。


(無くなった?)


 かと思ったけど、どうやら違う。紙吹雪よりも曖昧に私の周りにそれはある。裸の鉄血種が一杯投げ出された。しまった……異空間に送る筈だったのに、マントの変化に気を取られた。せっかく一網打尽に出来たのに……


『うふふふ』
『アハハハ』


 どこからともなく重なる様な笑い声が聞こえる。これは一体どこから? 鉄血種達……はどうやら違う。けど聞いた事ある声の様な? すると私の周りに散乱してたマントの破片? 欠片が倒したはずの鉄血種の顔をかたどってるような? 


『力が溢れるよ。これこそ、私達の……私達の?』
『我等鉄血種の到達点かもしれない』
『それだ!』


 煩い。てかやっぱりこれは私が倒した鉄血種……この少女は簡単に確信が持てる。これ……やばくない。だってラーゼが押さえてたくれた筈なのに、こいつら普通に意思を表してるじゃん。これって私がまた鉄血種のような化物に落とされるんじゃ……


「アンタ達……なんで……」


 警戒しながら私はそう言うよ。すると輪郭しかないその顔達は私を見てくる。実際は目があるかというとそこが目だろうなってわかる程度にしかそれは顔を再現してない。
 けど……見られてる。それがわかる。ゴクッと私は喉を鳴らす。


『それはお姉さんが、私達をいっぱいいぃぃぃぃっぱい! 取り込んでくれたからだよ』
『俺達の進化……それはこの流れに……だからあの方は……』


 少女はただこの状況を楽しんでるみたいだけど、他の鉄血種達は何やら不穏な空気を醸し出してる。すると裸に剥かれた鉄血種たちが動き出した。


「「「我等のハステーラ・ペラスを返せええええええ!!」」」


 そんな声が木霊する。一斉に向かってくる鉄血種達。するとその時、私の周囲の空間が揺らいだ。そして一斉にマントだった欠片たちが動いて裸の鉄血種たちを容赦なく切り刻む。更に頭上から鋭いトゲを出して鉄血種達を串刺しにした。


「おお! やったぞおおおおおお!!」


 誰かがそんな声を上げる。それをきっかけに声は皆に広がってく。けど私は声を上げる事は出来ないよ。だって……それをやったのは私じゃない。私は何もしてないんだ。マントを使ってなんて無い。


「お前たち……なぜ?」


 体中をトゲがさして身動き取れない鉄血種の一人がそんな事を呟く。この声の中でも私にはその声が聞こえてる。マント……だった欠片たちが声を拾ってるのだろうか? そして鉄血種達は私じゃなく、欠片が形どった顔を見てる。奴らは串刺しになった鉄血種達の元へ行ってる。これはきっと奴らがしたんだ。私じゃなく、奴らが……げどなんで同士討ち? 


 私を殺る事も出来る筈だ。なのに……同胞である鉄血種を攻撃した。


『うふふ、皆一緒になろう』
『恐れるな。我等は死なない。だが、死ぬ事が進化の扉の一つだったのだ。我等は今、新たな扉の前に居る! さあ……来い!!』


 その瞬間、黒い炎が裸の鉄血種達を燃やし尽くす。更に皆の叫びが大きくなる。目に見えて鉄血種たちが灰になったんだ。そりゃあ歓喜するよね。もう狂喜乱舞だよね。けど……私はそうは行かない。寧ろ顔が青くなってる。だって……今しがた燃え尽きた鉄血種達が、曖昧な顔となって周りにいるんだから。

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