美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ82

「遅くなってすまない。よく耐えた」


 カタヤさんはそう言ってくれる。実際私は何も出来なかったけど……この惨状を見ればそれがわかるだろうけど、よくやったと……そう言ってくれた。そう言ったまま自然と手が柄へと伸びる。私も自然と銃口をむける。ただ自然に、私達は武器をむけあった。そしてカタヤさんは鞘から抜き放った剣を素早く振るう。私は素早く避けると同時に引き金を引いた。


「貴様ら……」
「気付いて……」


 二人の鉄血種が驚愕にそう言うよ。いや、実際私は気付いてなかったよ。カタヤさんの行動で察しただけだ。そして多分カタヤさんも自身の背後の鉄血種には気付いてなかったんだと思う。てかカタヤさんは迷いなく振り抜いたよね? 私はカタヤさんに当たらない紙一重を撃ち抜いたのに、彼は私事切る剣筋だったんですけど!? 


 いやさ、抜刀から突きは出せないから仕方ないとはいえ、一歩間違ってたら私事スパっていってたよ。けど一撃、そして一閃を入れたからってそれで安心していい相手ではないと、私もカタヤさんもわかってる。驚愕に囚われてたといえ、ダメージという概念が人種よりも圧倒的に薄いのが鉄血種だ。直ぐに奴らは動き出す。けど、それを阻むように頭の半分が吹き飛んだ。


「よし! いいぞベール!!」


 そう言って私の背後の鉄血種に切り込むカタヤさん。私もカタヤさんの背後に居た鉄血種の方に走る。互いの視線が軽く交差する。それだけ。言葉を発する時間なんてない。こっちの鉄血種はどうやら狙撃を避けたらしく頭がちゃんとある。けど! 私は大きくマントを展開して、鉄血種の視界から自身の姿を隠す。そして異空間移動を使って鉄血種の背後に回る。
 けどマントはそのままの位置においてた。もしかしてと思ってやってみたら出来た。マントを長くしてると出来るようだ。流石に鉄血種もこのマントには警戒してる。そしてそのせいで後ろに回った私に気付いてない。


 いや、そもそもこいつらの常識ではきっとマントを残しての移動なんてありえないんだ。だからマントが展開してる前を気にしてる。


「後ろだ!!」


 うげっ――やっぱり他にも鉄血種いるし、そりゃあ他のヤツにはバレてるよね。けど遅いよ!! 私は鉄血種の膝を撃ち抜く。こいつら確かにダメージを気にしないけど、通ってない訳じゃない。それに人体の構造は人に近い。膝を撃ち抜けば、自然と身体の態勢は崩れる。


「この程度!」


 確かにこの程度だよ。けど、一時的にでも動きを止めたかったんだ。私は鉄血種に近づく。鉄血種は腕を振り回すけど、私はその時には既に後ろに回転飛びしてた。奴の顎に足をぶち当ててね。重力に逆らって鉄血種の身体が上へと伸びる。その瞬間、私はマントで鉄血種をくるんだ。他の鉄血種が来てる。けどこいつを離す訳にはいかない。
 カタヤさんの方をちらっと見ると、彼の剣は鉄血種の身体にのめり込んでた。それはよく無いことだ。一見、攻撃が通ってて、やった! と思えそうな場面。けど、カタヤさんの剣が鉄血種の体内で抑えられてるんだ。その証拠に鉄血種はにやりとしてる。迫ってくる鉄血種をベールさんが狙撃してくれるけど、超反応なのか勘なのか、鉄血種共はかわしてく。


 でも交わす事で僅かな瞬間が生まれてる。この時間は無駄じゃない。私はカードを入れ替えて、魔力を込める。私はグルダフさんやカタヤさんに視線を向ける。まだ残ってる兵士の人達にも流すけど、この意図をどれだけの人がわかってるのかは定かじゃない。けど時間を稼ぐ為に私は躊躇わない。カタヤさんが動いてると、何の根拠もないけど、まだやれる。やらないとって思う。


 だからまだ私は足掻くよ! 私は銃口を上に向けて瞼を閉じて引き金を引いた。その瞬間、激しい閃光が周囲を満たした。

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