美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
Σ75
壁……そういったオジサンはこちらに向かってゆっくりとあるき出した。その悠然とした歩きは自信の現れか……強烈なプレッシャーが私を襲う。一歩……一歩と近づく度にこっちは後ろに下がる。
(こいつを一人で相手にするのは駄目だと思う。それに――)
早くここから離れた方もいい。ゼウスの中にこのまま居るのは不味い。だってここで戦ったら、ゼウスがぶっ壊れるよ。既にヤバイのにここで鉄血種とやりあったら確実にゼウスは持たないだろう。かと言っても……後ろに下がりすぎて天井に空いた穴がオジサンの真上に……マントを使えば壁を壊せそうだけど、それがトドメになったら目覚めが悪いからどうにかしてあそこから出たいところだ。
やっぱり異空間移動かな? それしかない。けどそれを読まれると危険だ。異空間移動はその性質上、絶対に相手から視線を外す事になる。それが怖い。
「逃げても逃しはしないぞ」
覚悟しろって事? 少しだけ挙動が変わるオジサン。来る!! とそう思った。あの剣をここで振らせる訳にはいかない。なんとなくだけど、一発でゼウスが両断されそうな気がしたんだ。だから私はいやいやながらに前に出る。マントを使ってその腕を拘束!
「がは!?」
一気に穴に向かって押し出そうと思ったけど甘かった。腕を絡め取った瞬間に膝蹴りを食らった。内臓が飛び出るかと思った。いや、身体が弾けるかの様な衝撃。私は膝から崩れ落ちる。
(ダメ!!)
私はそう言い聞かせて膝が床に着くのを防ぐ。喉までせり上がってきた吐き気を押し戻して私はアトラスを最大限に出力して、全体重を使って体当たりした。そしてそのまま、鉄血種をゼウスの外に押し出す。
「いい判断だ。君がこれを選択しなかったらあの船は消えていただろう」
「……んぷっ……それはどうも」
身体が凄くズキズキする。もしかしたらどっかの内蔵、破裂しちゃったかも……回復魔法……使えないのが痛い。けど、アトラスとマントで無理矢理身体を動かす事は出来る。風が生暖かく感じる。しかもなんか……血なまぐさい様な……
「良い夜だ。そう思わないか」
赤い月を背に鉄血種のオジサンはそう言うよ。いやいや、全然いい夜じゃない。てか今は夜でもないし……まあこの空間は強制的に夜になってるけど。この夜がいい夜なら普通の夜で最高だよ。
「人類最悪の夜って呼ばれそうだけど?」
「それが目的だからな。気にするな。三百年もすれば人は忘れる」
悪びれる素振りも見せずにそういうオジサン。それはどこか寂しげにも呆れてるようにも見える。そう思ってると、その手に語りかけるようにオジサンは言う。
「分かってる。そうだな。血が欲しいか」
鋭い視線が私を射抜く。
「境界を超えた者の血はさぞかし美味だろう」
そして次の瞬間、ズブリ……と肉を抉る感触が私に走った。気付くと、オジサンの片方の手にあった剣が私の肩に刺さってた。素振りも動作もそして刺される瞬間さえも何もわからなかった。こんなのって……黒い刀身に赤い血筋が浮かぶ。吸っている。私の血をこの武器は吸っているんだ。
(こいつを一人で相手にするのは駄目だと思う。それに――)
早くここから離れた方もいい。ゼウスの中にこのまま居るのは不味い。だってここで戦ったら、ゼウスがぶっ壊れるよ。既にヤバイのにここで鉄血種とやりあったら確実にゼウスは持たないだろう。かと言っても……後ろに下がりすぎて天井に空いた穴がオジサンの真上に……マントを使えば壁を壊せそうだけど、それがトドメになったら目覚めが悪いからどうにかしてあそこから出たいところだ。
やっぱり異空間移動かな? それしかない。けどそれを読まれると危険だ。異空間移動はその性質上、絶対に相手から視線を外す事になる。それが怖い。
「逃げても逃しはしないぞ」
覚悟しろって事? 少しだけ挙動が変わるオジサン。来る!! とそう思った。あの剣をここで振らせる訳にはいかない。なんとなくだけど、一発でゼウスが両断されそうな気がしたんだ。だから私はいやいやながらに前に出る。マントを使ってその腕を拘束!
「がは!?」
一気に穴に向かって押し出そうと思ったけど甘かった。腕を絡め取った瞬間に膝蹴りを食らった。内臓が飛び出るかと思った。いや、身体が弾けるかの様な衝撃。私は膝から崩れ落ちる。
(ダメ!!)
私はそう言い聞かせて膝が床に着くのを防ぐ。喉までせり上がってきた吐き気を押し戻して私はアトラスを最大限に出力して、全体重を使って体当たりした。そしてそのまま、鉄血種をゼウスの外に押し出す。
「いい判断だ。君がこれを選択しなかったらあの船は消えていただろう」
「……んぷっ……それはどうも」
身体が凄くズキズキする。もしかしたらどっかの内蔵、破裂しちゃったかも……回復魔法……使えないのが痛い。けど、アトラスとマントで無理矢理身体を動かす事は出来る。風が生暖かく感じる。しかもなんか……血なまぐさい様な……
「良い夜だ。そう思わないか」
赤い月を背に鉄血種のオジサンはそう言うよ。いやいや、全然いい夜じゃない。てか今は夜でもないし……まあこの空間は強制的に夜になってるけど。この夜がいい夜なら普通の夜で最高だよ。
「人類最悪の夜って呼ばれそうだけど?」
「それが目的だからな。気にするな。三百年もすれば人は忘れる」
悪びれる素振りも見せずにそういうオジサン。それはどこか寂しげにも呆れてるようにも見える。そう思ってると、その手に語りかけるようにオジサンは言う。
「分かってる。そうだな。血が欲しいか」
鋭い視線が私を射抜く。
「境界を超えた者の血はさぞかし美味だろう」
そして次の瞬間、ズブリ……と肉を抉る感触が私に走った。気付くと、オジサンの片方の手にあった剣が私の肩に刺さってた。素振りも動作もそして刺される瞬間さえも何もわからなかった。こんなのって……黒い刀身に赤い血筋が浮かぶ。吸っている。私の血をこの武器は吸っているんだ。
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