美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ68

 目の前に作り出した女兵士さんの分身体を見て、鉄血種の男はその勢いを弱める。その隙きに私は横に移動。更にカードを入れ替えて続けざまに撃ち放つ。銃を脅威と思ってない鉄血種はそれを律儀に受けてくれるから助かるよ。


「ぐっ……これは……」


 鉄血種の足元がふらつく。ふふ、体内のマナを乱してやったよ。私は更に距離を取って物陰で女兵士さんを強制排出! そして別の所に彼女の分身体を出してみた。けど反応はしたけど、奴は行かない。どうやら先に私を殺る気のようだ。それだけ私……いや、このマントは魅力的なんだろう。


(そういえば……)


 さっき奴の布を取り込んだから、更にパワーアップしてるはずだよね? 何か新しい力でも得られたかな? 見た目的にはそんな変化はない。いや、なんか首元らへんに何か刺繍が金色の文字で刻まれてる様な? 読めないけどね。この世界の文字はマスターした筈だけど……それは人種の文字であって他の種の文字は分からない。


 前の世界では人種が一番だったから、言語もそれなりだったけどさ、ここはいろんな種族がいろんな文字使ってるからね。その割には言葉は統一されてるのが不思議だけど……もしかして他の種はわざわざこっちに合わせてくれてるのかもだけどね。けどそれは優しさではないと思う。自分たちの優位性とかを顕示するための行為みたいな? 
 私は元からこの世界の言葉がわかった。普通に皆日本語を喋ってると思ってたんだけど……どうやらラーゼに寄るとそうではないらしい。アイツは私が来た時に久々に日本語を聞いたっていってた。なんで私が元からこっちの言葉を理解できたのかは分からない。文字は読めないけど、言葉は理解できて、こっちの世界の人達も私の言葉を理解できた。


 だからまあ、苦労はしたけど、それほどでもなかったと思う。そんな私は人種の文字を覚えるので精一杯だった。だからこんなのわかる訳ない。他種族の言葉とか、歴史を研究してる人が居るから、その人に見せれば何かわかるかも。それもここから生きて帰れたら……だけど。


「逃げないでいいのか?」
「なんで? 私達は戦ってるんだけど? それに逃げる時は逃げるわよ。戦略でね。けど、今は逃げない」
「それも戦略か? 舐められたものだな」


 武器と化した両腕をクロスして突撃してくる鉄血種。そのスピードとパワーを活かして一瞬で間合い詰めての一撃が鉄血種の基本戦法みたい。確かにそれで人種には事足りるだろう。だってこいつらと違って、人種は怪我一つで大きく能力が低下する。そもそも高くもない能力が、更に低下するんだよ。こいつらにとっては人種なんてその程度のゴミだ。


 でも人種はそれでも少しずつ成長してきてる。今の私にはアトラスが……そしてこのマントがある。これは人種の成長の証でもなんでもないけど、このマントのお陰でこいつらともこうやって相対せる。しかも鉄血種の攻撃はグルダフさんのいうように直線的。消えてくる攻撃が使えないのなら、避けるのは簡単だ。私は横に飛ぶ。そして視線がこっちを追ったことを確認して、反対側から、マントで奴の脇腹を突き刺す。


「くぬ!?」


 けどその程度で止まる奴じゃないのはわかってる。勢いを落とさずに腕を突き出してくる鉄血種。今度はそれを紙一重でかわして、ガッチリホールド! 更に引っ張り態勢をよろめかせた後に、足を払って完全に崩し、そして投げた。


 ビダァァァァァン! と地面に背中からぶつかった鉄血種は口を大きく開けて空気を吐き出した。更にその開いた口に弾丸を叩き込めるだけ叩き込む! 貫通と爆破のカードで強化した弾丸は鉄血種の口の中で爆発を繰り返す。


 せっかくの美形だった顔はもとに戻りようがないくらいに跡形もなくなった。これは……殺せたんじゃない? 流石に頭が無くなったら……


「ひっ!? マジで……」


 どんだけ非常識な存在なのよ! 頭がなくなっても鉄血種はその身体を起き上がらせて来た。身構えたけど、どうやら私が見えてないのか、攻撃を空振ってる。なんて不気味な光景。でもとりあえず……私はマントで鉄血種を覆って異空間へと落とした。これでグルダフさんのほうへと行ける。

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