美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ67

 ナニがブランブラン……ゾウさんがパオンパオンしてますね。


「俺のハステーラ・ペラスを……貴様何をした!?」


 ハステーラ・ペラスってのがこのマント……というか元の布の名称みたい。見た目的にはただのボロ布なのに大層な名前があるね。いや、鉄血種が装備してるのは基本これだけだし、見た目がアレでも大層なもののはずだよね。性能的にはボロ布状態でも凄いからね。けどさ……


「いや待て……貴様が羽織ってるそれは……まさか……ハステーラ・ペラスか? なぜ人種の貴様がそれを!!」


 怒りを露わにするように、鉄血種の顔には黒い血管の様な物が浮き出る。てか、その目の状態でもこの布は見えるんだ。どういう特性の目なのか、いまいち把握しきれてないな。それともこの布はやっぱり特別性で、鉄血種にはわかるのかもしれない。うんでもね……


「しかもただのハステーラ・ペラスではないな……まさかそれが真祖様の仰ってた? いや……だからこそ人種などには……いや、待てよ」


 そこまで一人でブツブツ言ってた鉄血種の男は、その時邪悪にその顔を歪ませた。せっかくの美形の顔が醜悪と呼べる程の物になったよ。まあ、そもそも今の状態は既にイケメンとは呼べないかもだったけどさ。いやだからね……


「お前のそれを奪えば俺も……良い贈り物だ」
「いいから前、隠してくれないかな!?」


 さっきからプーラプラと視界で揺らめいて、意識もってくもってく……だって私……見たことなかったし。いや、家族のとか有ったけど……それは幼いときで、この歳になってからは相応のナニなんか見たことなかった。だからこう……女として目が行っちゃうというか? 鉄血種はこんな形なんだーとか知ったかぶって見たりとか? 


 けどそんな私の反応に鉄血種の男は首をかしげる。


「どういうことだ? 俺たち鉄血種の身体は芸術だぞ。普段隠してるのは、芸術は無闇に見せるものではないという真祖様の教えだからだ」


 くっ鉄血種はどこまでも自分に自信がお有りのようで……いや、種族的にわかるけど……確かに目の前の鉄血種の男は女子の理想的な体型してると思う。程よく付いた筋肉はまさしく肉体美を醸し出してるもん。人種の兵士や冒険者の人達でもここまで美しく筋肉がついてる人はそうそういないだろう。いたとしても、それは相応の努力の賜物。
 それをこいつらは生まれながらにして与えられてる。まじでずるっこい。


「見られても恥ずかしくないの?」
「下等生物に見られて何を恥じる必要がある? 貴様達も鶏の前で裸になっても何も感じないだろう? それと同じだ」


 確かに出来なくもないけど……虚しくはなるよねそれ? けどこいつらは私達を食料としか見てないから、恥ずかしいなんて認識はないと……そういうことらしい。


「けど、こっちはそんな汚い物見せられたままじゃたまらないんだけど……」
「光栄に思え。それで全ては解決だ」


 出来るか!? って叫びたかった。けど価値観が違うんだ。いくら言ってもそれは無駄なんだろう。それならばもっと聞くべきことがある。


「そう解決……俺がお前を殺せば、全て解決だ!!」


 どういう思考回路が働いたのか鉄血種の男はその頭で納得して襲い掛かってくる。本当は真祖について聞きたかったんだけど……それはこいつを異空間に閉じ込めてからでいい。私は銃を足元に向ける。そしてそれを撃ち放つ音が響いた。

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