美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ52

 どこかで銃声が聞こえる。オペレーターによると、み班が攻撃を開始したみたい。ここで私達にも指示が来る。バラバラにと言っても、近くに攻撃を受けた奴とは別の鉄血種がいるみたい。鉄血種は一体一体を相手にしたい。だからそいつはこっちに引き寄せる。銃声がした方にきっと一斉に鉄血種が動いてるはずだ。けどそれはこっちからは把握できない。


 でも私達はそれでも問題ない。オペレーター側がわかってればいいんだ。確認した鉄血種はなんだか小さい気がする。てか少女だ。あれに銃を向けるのはなかなか抵抗がある。けど、あれは人種じゃない。だからって……て気もするけど、そんな事を言ってたら死ぬだけだ。あんな見た目でも、全然成人男性よりも強いんだから。銀色が突き抜けて白く見えるその少女に私は狙いを定める。


 なんかとててって効果音が出そうな走り方してる。それは本当に普通の女の子みたい。


(迷うな私!)


 奴らにとって私たちは餌なんだ。私は引き金を引く、放たれた弾丸は障害物を避けて行き、そして少女の後頭部に当たった。


「…………」


 少女は後頭部を抑えてキョロキョロしてる。「何かあたった?」的な態度だ。いやいや、攻撃だったからね。普通の人種なら頭吹っ飛んでるからね。そんな消しゴムあてられたみたいになるのおかしいから。なにやら彼女はクンクンと鼻を動かしてる。そして無邪気に笑顔を見せる。それを見て私は思わず「ひっ」と小さい声を上げた。


 だって端正な顔立ちだったのに笑った瞬間、その口の端が裂けたんだ。そりゃあこんな声も出るよ。せっかくの可愛い顔が台無しだ。そう思ってると、少女はこっちに向かってきた。あははははははは! と笑いながら。怖い……普通にそう思う。少女はこちらに釣られた。私たちはオペレーターの指示に従って街中を走る。そして少女が止まったら、再び銃を撃つ。


 そんな事を繰り返して、十分に離れてく。けどここからはこっちの思う通りに動かさないと。私は意を決して少女の前に姿を現す。もちろんすでにアトラスは起動させてる。普通の兵士の人達では鉄血種から逃げ続けるのは難しいだろう。けどアトラスなら……それもできるはず。なのでこの役目は私じゃないと。でも戦うわけじゃない。
 私はすぐに背を向けて走り出した。そしてそれを喜々として追ってくる少女。


(はや!?)


 風の様に少女は迫ってくる。そしてその白く細かった手が、黒々とした化け物のそれとなる。迫る手を私はすんでのところで避けて、少女の上へとんだ。そしてそその顔面に至近距離から弾を打ち込む。この時にはもうただの少女なんて躊躇いは消え去ってた。


「あっあああああ!」


 なんとか目をつぶせたからその腕をやみくもに振り回す少女。その腕は軽々と家の壁や外套を切り裂いてる。あんなのに当たったら私の体なんて……


『マナが顔に集まってます』


 そんなゼロの言葉の通りに、奴は目を修復した。それも一瞬で。やばい……やばいよ鉄血種! 私はすぐに距離を取って更に逃げる。追いつこうとする少女の足を狙っての援護射撃なんかがどこからともなくされる。それでなんとか目的の場所までこれた。それは路地の行き止まり。少女は壁に阻まれた私を見てその裂けた口から舌を出して唇をなめてる。


 ここまで……きっとそう言いたいんだろう。そして少女は奇声を上げて突っ込んでくる。


「今!!」


 私は後ろ手に着いた手でマナを壁の小さな陣に送る。それが起爆スイッチ。地面と壁から激しい爆発が少女を襲った。吹きすさぶ煙。私はすぐさま壁を足で蹴って建物に飛び移る。


 やったかを確認? そんな死亡フラグはやりません! だってどうせ――


「きかあああああああああ!!」


 そんな声を響かせて、肉がもろに見えてる少女が煙を吹き飛ばした。ほらね。だと思ったよ。

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