美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
Σ47
あの日から何かがおかしい。私はそう思ってた。あの……ラーゼが下手な三文芝居をうった日から幾日かが経ってる。実際あの時、あの場では戦闘なんてものは起きなかった。だってラーゼの目的はベールさんを動揺させる事だったからね。ベールさんは明らかにあの時、正気を失ってた。私たちの事、完全に見えてなかったし、声も届いてなかった。
だからベールさんが周り見えてないのに、共犯者である私たちが何かやることは必要なくて……ただ成り行きを見守ってたわけだ。あの後、大体の事はベールさん自身から聞いた。はっきり言って驚いたよね。だってそんな過去があったなんて……もともとそんな自分の事をしゃべる人じゃなかったけど、見る目変わっちゃうよね。
けどそのあとラーゼからおかしな事も言われたけどね。
『思い出って美化されるものだよね。それがどんなに辛くても……いや、辛いからこそ、優しくしたいのかも』
それがどういう事か、実はよくわかってない。確かに思い出が美化されるってのはよく聞く。私はまだ人生そんな長くないし、そこまで実感ないけどね。まあそれならラーゼもそうだけど。美化ね……それは私の向こうの記憶も実はそうなのかな? 今は向こうの楽しかった思い出くらいしか思い出せない。それはつまり、嫌な記憶から消えていって、楽しい思い出だけが残ってるからなのかもしれない。
それも一種の美化といえなくもない。私は思い出を美化してるのかもしれない。けどそもそも消える思い出は選べないし、どうせなら楽しい事をなるべく残しておきたいってのは普通の事だよね。なにも問題はない。それに私はこの『帰りたい』って思いをなくしちゃいけない。それをなくすと、本当に全てをなくす気がする。私は眠気眼を覚ますために水で顔を洗う。
鏡には私の顔が映ってる。当たり前だね。けど、それを見て溜息が出る。いや、私は自分をそこまで卑下しちゃいない。寧ろ、この世界では中の上にはいけてると思う。そもそもこの世界の人種の人達とは育ちが違うんだから、肌の質とか髪の質とか、そこら辺から私は有利だからね。それに栄養だってちゃんと取れてて、発育だってこの世界の平均よりも大分いい。つまりは結構羨ましがれる。それに立場が立場だし、モテないこともない。
きっと私の知らない所では、それなりに私を巡る争いも起きてるはずだ。多分ね。まあ起きてたとしても結局付き合えるわけもないんだけどさ……それでもここなら、私はきっと玉の輿とかも狙えちゃうなーとは思う。
「亜子ー起きてるー?」
間延びした声で扉を叩くのはラーゼだ。絶賛私の憂鬱の原因その一がやってきた。いや、ラーゼが悪いわけじゃないよ。けどね……ラーゼの美貌は悪いよ。久々に長く一緒にいるせいで余計に思う。てか、この一年でなんか輝き増してない? これ以上突き進んでどうするのこいつ? って感じ。既に圧倒的なんですけど……胸も出てきて、少しだけ大人っぽくなったかなって……同じ女ならわかる。
そして同じ性別してるからこそ、ラーゼが眩しすぎる。多分男性にもラーゼは眩しく見えてると思う。けど、男性の見てる輝きと私達女性がラーゼに見てる輝きは違うと思う。
「あーこー」
うるさい奴だ。私だって少しくらいメイクするんだよ。そんな素で全てを凌駕する奴に合わせられるか! けどラーゼの奴はそんなのお構いなしだから、取り合えず扉だけは開けてやる。ずっと扉叩かれても迷惑だからね。
「なんの用? 私は今から準備するんだけど?」
「じゃじゃーん、家の新商品なんだ。そう思って持ってきたの。使ってみて」
大きな箱には凝った容器に少量の液体とかファンデとか化粧に使う諸々が入ってた。こいつ自分が必要としないくせに、こういう事は手広くやってるんだよね。しかも宣伝文句が『あのラーゼ様も使ってる』だからね。いや、あんた絶対使ってないじゃん。ラーゼは社交界では絶世の美女で有名だ。まあ今は庶民の方々にはもそれとなくは伝わってるみたいだけどね。
そしてこれ……バカ売れしてるみたい。社交界の女性の方たちは、大半がラーゼを敵視してると聞いてる。そっち系の情報筋からね。けど、あのラーゼが使ってるなら――とその方達はこいつのブランドをこぞって買いあさってるわけだ。
ラーゼはさぞ楽しいだろうね。なにせ掌の上で躍らせてるんだもん。
「ねえ……前から思ってたんだけど、なんでそんなの売ってるのよ? 必要ないでしょ? もう十分領は潤ってるじゃん」
前は色々と金策してたから、わかる。けど今もやる必要性はあんまりない。実際やめた事業はいくつかある。でもラーゼはそんな私の質問に即答するよ。
「そんなの楽しいからじゃない。私は極まってるからね。そしてこれからも私はこの世界の、ううんこの宇宙で一番の美少女なのはかわらない。けど私は私以外がブスな方がいいなんて思ってないもん。皆がきれいで可愛い世界が私はいい! だらかそのためにやってるの! これは庶民にも手が出る価格にするつもりよ。確かに人種は貴族の方が顔立ち綺麗な人多いけど、庶民にだって磨けば光る子たちはきっといるし、それに別に人種だけに絞ってるわけでもないからね。
かわいいは種族だって超えるわ」
本気で言ってるから怖い奴である。とりあえず私は何個かを使ってみることにした。
それから二人で軽い食事をとって玄関の方へ向かうと、そこにはカタヤさんとベールさんがいた。二人はラーゼを見るなり、顔を輝かせる。わかりやすいですね。まあベールさんはそんな自分を受け入れられてはいないようだけど。けどその気持ちがあることには気づいてる。だから、あの後やった実験ではうまくいった。カタヤさんはまあ……いつも通りだ。
けどベールさんの変化には気づいてるから、やけにベールさんに突っかかるようになった。そして今も熱い視線をベールさんに向けてる。あっいや、睨んでる。そうそう睨んでる。
なんだろう……二人がキスしたのを見てから、二人のやり取りを見るたびにこう……胸が高鳴る気がする。私はそっち系の趣味はないんだけど……けど何だろう、ズブズブと自身が何かの沼に呑み込まれてく様な……そんな感覚に私は戸惑ってる。
だからベールさんが周り見えてないのに、共犯者である私たちが何かやることは必要なくて……ただ成り行きを見守ってたわけだ。あの後、大体の事はベールさん自身から聞いた。はっきり言って驚いたよね。だってそんな過去があったなんて……もともとそんな自分の事をしゃべる人じゃなかったけど、見る目変わっちゃうよね。
けどそのあとラーゼからおかしな事も言われたけどね。
『思い出って美化されるものだよね。それがどんなに辛くても……いや、辛いからこそ、優しくしたいのかも』
それがどういう事か、実はよくわかってない。確かに思い出が美化されるってのはよく聞く。私はまだ人生そんな長くないし、そこまで実感ないけどね。まあそれならラーゼもそうだけど。美化ね……それは私の向こうの記憶も実はそうなのかな? 今は向こうの楽しかった思い出くらいしか思い出せない。それはつまり、嫌な記憶から消えていって、楽しい思い出だけが残ってるからなのかもしれない。
それも一種の美化といえなくもない。私は思い出を美化してるのかもしれない。けどそもそも消える思い出は選べないし、どうせなら楽しい事をなるべく残しておきたいってのは普通の事だよね。なにも問題はない。それに私はこの『帰りたい』って思いをなくしちゃいけない。それをなくすと、本当に全てをなくす気がする。私は眠気眼を覚ますために水で顔を洗う。
鏡には私の顔が映ってる。当たり前だね。けど、それを見て溜息が出る。いや、私は自分をそこまで卑下しちゃいない。寧ろ、この世界では中の上にはいけてると思う。そもそもこの世界の人種の人達とは育ちが違うんだから、肌の質とか髪の質とか、そこら辺から私は有利だからね。それに栄養だってちゃんと取れてて、発育だってこの世界の平均よりも大分いい。つまりは結構羨ましがれる。それに立場が立場だし、モテないこともない。
きっと私の知らない所では、それなりに私を巡る争いも起きてるはずだ。多分ね。まあ起きてたとしても結局付き合えるわけもないんだけどさ……それでもここなら、私はきっと玉の輿とかも狙えちゃうなーとは思う。
「亜子ー起きてるー?」
間延びした声で扉を叩くのはラーゼだ。絶賛私の憂鬱の原因その一がやってきた。いや、ラーゼが悪いわけじゃないよ。けどね……ラーゼの美貌は悪いよ。久々に長く一緒にいるせいで余計に思う。てか、この一年でなんか輝き増してない? これ以上突き進んでどうするのこいつ? って感じ。既に圧倒的なんですけど……胸も出てきて、少しだけ大人っぽくなったかなって……同じ女ならわかる。
そして同じ性別してるからこそ、ラーゼが眩しすぎる。多分男性にもラーゼは眩しく見えてると思う。けど、男性の見てる輝きと私達女性がラーゼに見てる輝きは違うと思う。
「あーこー」
うるさい奴だ。私だって少しくらいメイクするんだよ。そんな素で全てを凌駕する奴に合わせられるか! けどラーゼの奴はそんなのお構いなしだから、取り合えず扉だけは開けてやる。ずっと扉叩かれても迷惑だからね。
「なんの用? 私は今から準備するんだけど?」
「じゃじゃーん、家の新商品なんだ。そう思って持ってきたの。使ってみて」
大きな箱には凝った容器に少量の液体とかファンデとか化粧に使う諸々が入ってた。こいつ自分が必要としないくせに、こういう事は手広くやってるんだよね。しかも宣伝文句が『あのラーゼ様も使ってる』だからね。いや、あんた絶対使ってないじゃん。ラーゼは社交界では絶世の美女で有名だ。まあ今は庶民の方々にはもそれとなくは伝わってるみたいだけどね。
そしてこれ……バカ売れしてるみたい。社交界の女性の方たちは、大半がラーゼを敵視してると聞いてる。そっち系の情報筋からね。けど、あのラーゼが使ってるなら――とその方達はこいつのブランドをこぞって買いあさってるわけだ。
ラーゼはさぞ楽しいだろうね。なにせ掌の上で躍らせてるんだもん。
「ねえ……前から思ってたんだけど、なんでそんなの売ってるのよ? 必要ないでしょ? もう十分領は潤ってるじゃん」
前は色々と金策してたから、わかる。けど今もやる必要性はあんまりない。実際やめた事業はいくつかある。でもラーゼはそんな私の質問に即答するよ。
「そんなの楽しいからじゃない。私は極まってるからね。そしてこれからも私はこの世界の、ううんこの宇宙で一番の美少女なのはかわらない。けど私は私以外がブスな方がいいなんて思ってないもん。皆がきれいで可愛い世界が私はいい! だらかそのためにやってるの! これは庶民にも手が出る価格にするつもりよ。確かに人種は貴族の方が顔立ち綺麗な人多いけど、庶民にだって磨けば光る子たちはきっといるし、それに別に人種だけに絞ってるわけでもないからね。
かわいいは種族だって超えるわ」
本気で言ってるから怖い奴である。とりあえず私は何個かを使ってみることにした。
それから二人で軽い食事をとって玄関の方へ向かうと、そこにはカタヤさんとベールさんがいた。二人はラーゼを見るなり、顔を輝かせる。わかりやすいですね。まあベールさんはそんな自分を受け入れられてはいないようだけど。けどその気持ちがあることには気づいてる。だから、あの後やった実験ではうまくいった。カタヤさんはまあ……いつも通りだ。
けどベールさんの変化には気づいてるから、やけにベールさんに突っかかるようになった。そして今も熱い視線をベールさんに向けてる。あっいや、睨んでる。そうそう睨んでる。
なんだろう……二人がキスしたのを見てから、二人のやり取りを見るたびにこう……胸が高鳴る気がする。私はそっち系の趣味はないんだけど……けど何だろう、ズブズブと自身が何かの沼に呑み込まれてく様な……そんな感覚に私は戸惑ってる。
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