美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
Σ45
「俺は……」
気づくと俺は空を見上げてた。まだ日は傾いたばかりという感じで燦々と俺自身を照らしてる。頭だけ動かして周りを見ると、周囲は死体の山だった。人の血を吸った地面が黒く黒ずんでた。そしてそれらの死臭に誘われるように、魔物たちが群がってる。そしてそんなオオカミのような一体がこちらにくる。
「くっ」
俺は上に乗った死体からなんとか腕を出して周りを探る。そして銃を探し当てた。唸る魔物に銃を向ける。開かれた口。凶悪な牙が無数に見える。なぜだろうか……なにやら魔物の動きがゆっくり見える。死を前にしてるからだろうか? 俺はしっかりと狙いをつけて奴の口内に弾丸を打ち込んだ。甲高い銃声と共にオオカミは頭を弾け飛ばせて飛んでいく。
それに他の魔物どもが反応する。
(やばい!)
流石に今の状態であの数に襲われたらひとたまりもない。俺は周りの死体の下へと潜り込む。死者をこんな風に使うなんて罰当たりだろうが、仕方ない。嫌な重みが全身にのしかかる。それは本当に嫌な重みだった。
(どうして……俺だけが……)
それを考えずにはいられない。だが今はこの命をここで散らさないようにしなければ……俺は近づいてくる魔物を確認して息を止める。とりあえずさっき撃った銃は手放した。魔物は魔力に敏感だからな。ただ、ただ俺は生きなければとそう思う。奴らは死体の匂いを嗅いでいる。俺は必死に祈った。そしてその祈りは通じたのか、魔物は離れてく。けど、魔物はどんどんと増えてる。そのうち、ここの死体を漁る奴らも現れるだろう。
そうなってからでは遅い。俺は死体から這い出て行動を開始する。幸い、大きなケガはしてないようだ。鉄血種とやりあってこれは奇跡だろう。なぜ……俺だけ……あの時……何が起きたのだろうか? 確か誰かに押し倒されたような? 俺は周りで死んでる人の顔を見る。きっと……助けられたのだろう。
(こんな俺を……)
そして彼が握ってるのは俺の銃。ありがたい。さっきは無我夢中だったから適当につかんだ奴を使ったが、やはりこれでないと。俺は硬直した死体の手から銃を取る。それを背中に背負って体を地面に擦りながら進む。沢山の死体を魔物が漁る場所から俺は遠ざかる。ここは地獄……間違いない地獄だった。
「はっはっ」
俺はあの場所から命からがら逃げだし、街道をひた走ってた。何故なら、領民を追うためだ。あの後鉄血種がどういう行動をとったのかはわからない。だからこそ、それを確かめる為にも追いかけてる。
(無事でいてくれ)
そう願いながら……俺の心には嫌な予感が広がってた。運よく街道を走っても魔物と一度も出くわさなかった。死臭に引き寄せられてるからか、それとも鉄血種にビビッて引っ込んでるのかわからないが、俺は必死に走った。そして日が傾いて沈む頃に、散乱してる荷物を見つけた。警戒しながら進んでく。すると子供の死体があった。頭がない。
あの少女に食われたのかもしれない。どうやら鉄血種はそれぞれ好みとしてる部位が違うようだ。優先的に狙う部分にその個体の好みが出てくるみたいな。歩を進めるに連れ……死体は多さを増していく。ここにもその内、魔物が集まってくるだろう。けどまだそれほどいないのは、時間があまり経ってないからだろうか? そんな死体の中に俺は彼を見つめた。
それは家に仕えてくれた執事長。彼の死体には胸に大穴が空いてた。きっと心臓を抉られてる。俺は彼に近づいてその眼を閉じさせた。それしか今はしてあげられないのが悔しい。ここら辺の死体にセラスの姿はなかった。俺は更に街道を進む。この先には小さな村があるはずだ。そこの人達も既に逃げてるだろうが、領の中心から逃げてた人たちはそこを通るはず。
そして俺はその村だったはずの場所を見て崩れ落ちる。建物は崩れ、至る所に死体が転がってる。鉄血種の姿はない。俺はここにもセラスの姿がないことを願ってた。けど現実は非情だった。一つの家に入る。そしていくつか開いた先で彼女の亡骸を見つけた。村長の家なのか、それなりに大きくて、少しはましな調度品もあるようなところだった。
そんな場所の少し立派なソファーにセラスは眠ったみたいに横たわってた。
「セラス……」
俺はよろよろと近づき彼女に呼びかける。だけど、当然反応はない。胸には大きな穴が空いていた。そして床には彼女の血がたまってる。彼女の指には俺が渡した指輪が輝いてた。
「セラス……セラス……うおおおおおおおおおお!!」
俺は天上に向かって慟哭した。情けない……何も……できなかった。幼いころから様々な教育を受けてきたというのに……それらは無駄だった。俺は彼女の頭を抱いて涙を流す。するとその涙か拭われた。死んだはずのセラスの手によってだ。
(なんだこれは? こんなの俺は知らない)
そんなことが頭に浮かぶ。けどそんな俺の思いなどお構いなしに瞳を開けたセラスはいうよ。
「ごめんねベール……私の事、愛してる?」
「それは……勿論だ!」
「愛してるって言って」
そう言って見つめられると途端に恥ずかしさが込みあがってくる。けど、言わない訳にはいかない。俺は心を込めてその言葉を紡ぐよ。
「愛してる……この世界の何よりも」
「うん……私もだよベール。愛してる。ありがとう。十分……私はもう十分だから」
「セラス?」
周りが白んでいく。何やら感覚も声も遠くになってく様だった。まるで夢から覚めるかのような……
「ベール、私を愛したままでも、きっと幸せになれる。私が許す」
セラスはそういって笑いながら光の中に消えていく。そして光が収まると、視界にはなにやらとてつもなく綺麗な顔が映った。そして唇に重なる極上の感覚。鼻をくすぐるような香りは、思いっきり深呼吸したいと思わせる程の匂いだ。俺は次第に理解する。今がどういう状況なのか……俺はラーゼと唇を合わせてた。
気づくと俺は空を見上げてた。まだ日は傾いたばかりという感じで燦々と俺自身を照らしてる。頭だけ動かして周りを見ると、周囲は死体の山だった。人の血を吸った地面が黒く黒ずんでた。そしてそれらの死臭に誘われるように、魔物たちが群がってる。そしてそんなオオカミのような一体がこちらにくる。
「くっ」
俺は上に乗った死体からなんとか腕を出して周りを探る。そして銃を探し当てた。唸る魔物に銃を向ける。開かれた口。凶悪な牙が無数に見える。なぜだろうか……なにやら魔物の動きがゆっくり見える。死を前にしてるからだろうか? 俺はしっかりと狙いをつけて奴の口内に弾丸を打ち込んだ。甲高い銃声と共にオオカミは頭を弾け飛ばせて飛んでいく。
それに他の魔物どもが反応する。
(やばい!)
流石に今の状態であの数に襲われたらひとたまりもない。俺は周りの死体の下へと潜り込む。死者をこんな風に使うなんて罰当たりだろうが、仕方ない。嫌な重みが全身にのしかかる。それは本当に嫌な重みだった。
(どうして……俺だけが……)
それを考えずにはいられない。だが今はこの命をここで散らさないようにしなければ……俺は近づいてくる魔物を確認して息を止める。とりあえずさっき撃った銃は手放した。魔物は魔力に敏感だからな。ただ、ただ俺は生きなければとそう思う。奴らは死体の匂いを嗅いでいる。俺は必死に祈った。そしてその祈りは通じたのか、魔物は離れてく。けど、魔物はどんどんと増えてる。そのうち、ここの死体を漁る奴らも現れるだろう。
そうなってからでは遅い。俺は死体から這い出て行動を開始する。幸い、大きなケガはしてないようだ。鉄血種とやりあってこれは奇跡だろう。なぜ……俺だけ……あの時……何が起きたのだろうか? 確か誰かに押し倒されたような? 俺は周りで死んでる人の顔を見る。きっと……助けられたのだろう。
(こんな俺を……)
そして彼が握ってるのは俺の銃。ありがたい。さっきは無我夢中だったから適当につかんだ奴を使ったが、やはりこれでないと。俺は硬直した死体の手から銃を取る。それを背中に背負って体を地面に擦りながら進む。沢山の死体を魔物が漁る場所から俺は遠ざかる。ここは地獄……間違いない地獄だった。
「はっはっ」
俺はあの場所から命からがら逃げだし、街道をひた走ってた。何故なら、領民を追うためだ。あの後鉄血種がどういう行動をとったのかはわからない。だからこそ、それを確かめる為にも追いかけてる。
(無事でいてくれ)
そう願いながら……俺の心には嫌な予感が広がってた。運よく街道を走っても魔物と一度も出くわさなかった。死臭に引き寄せられてるからか、それとも鉄血種にビビッて引っ込んでるのかわからないが、俺は必死に走った。そして日が傾いて沈む頃に、散乱してる荷物を見つけた。警戒しながら進んでく。すると子供の死体があった。頭がない。
あの少女に食われたのかもしれない。どうやら鉄血種はそれぞれ好みとしてる部位が違うようだ。優先的に狙う部分にその個体の好みが出てくるみたいな。歩を進めるに連れ……死体は多さを増していく。ここにもその内、魔物が集まってくるだろう。けどまだそれほどいないのは、時間があまり経ってないからだろうか? そんな死体の中に俺は彼を見つめた。
それは家に仕えてくれた執事長。彼の死体には胸に大穴が空いてた。きっと心臓を抉られてる。俺は彼に近づいてその眼を閉じさせた。それしか今はしてあげられないのが悔しい。ここら辺の死体にセラスの姿はなかった。俺は更に街道を進む。この先には小さな村があるはずだ。そこの人達も既に逃げてるだろうが、領の中心から逃げてた人たちはそこを通るはず。
そして俺はその村だったはずの場所を見て崩れ落ちる。建物は崩れ、至る所に死体が転がってる。鉄血種の姿はない。俺はここにもセラスの姿がないことを願ってた。けど現実は非情だった。一つの家に入る。そしていくつか開いた先で彼女の亡骸を見つけた。村長の家なのか、それなりに大きくて、少しはましな調度品もあるようなところだった。
そんな場所の少し立派なソファーにセラスは眠ったみたいに横たわってた。
「セラス……」
俺はよろよろと近づき彼女に呼びかける。だけど、当然反応はない。胸には大きな穴が空いていた。そして床には彼女の血がたまってる。彼女の指には俺が渡した指輪が輝いてた。
「セラス……セラス……うおおおおおおおおおお!!」
俺は天上に向かって慟哭した。情けない……何も……できなかった。幼いころから様々な教育を受けてきたというのに……それらは無駄だった。俺は彼女の頭を抱いて涙を流す。するとその涙か拭われた。死んだはずのセラスの手によってだ。
(なんだこれは? こんなの俺は知らない)
そんなことが頭に浮かぶ。けどそんな俺の思いなどお構いなしに瞳を開けたセラスはいうよ。
「ごめんねベール……私の事、愛してる?」
「それは……勿論だ!」
「愛してるって言って」
そう言って見つめられると途端に恥ずかしさが込みあがってくる。けど、言わない訳にはいかない。俺は心を込めてその言葉を紡ぐよ。
「愛してる……この世界の何よりも」
「うん……私もだよベール。愛してる。ありがとう。十分……私はもう十分だから」
「セラス?」
周りが白んでいく。何やら感覚も声も遠くになってく様だった。まるで夢から覚めるかのような……
「ベール、私を愛したままでも、きっと幸せになれる。私が許す」
セラスはそういって笑いながら光の中に消えていく。そして光が収まると、視界にはなにやらとてつもなく綺麗な顔が映った。そして唇に重なる極上の感覚。鼻をくすぐるような香りは、思いっきり深呼吸したいと思わせる程の匂いだ。俺は次第に理解する。今がどういう状況なのか……俺はラーゼと唇を合わせてた。
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