美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

Σ28

 私は小さなクナイのようなサブ武器を取り出して力を感じる方向に投げた。


『何をやってる亜子?』
『そうだ、方向がちが――』


 そう言いかけたベールさんの言葉が途切れる。それもそうだろう。だって私が投げだクナイが消えたんだ。突然に、忽然に。


『何かいるのか? だが、こちらには何も反応ないぞ?』
『プロト・ゼロだからわかるんだろう。こちらにも反応はない。だが、今は鋼岩種に集中したほうがいいぞ。亜子はそこの奴が手を出さないように警戒しててくれ。そしてそのまま、マナ・リフレクターの散布を頼む』
『了解』


 私はそう返して一点を見つつ、バレルを展開する。赤いマナが再び散布される。私は空中に居るから鋼岩種は手を出せないはずだ。それにカタヤさんとベールさんもいる。そっちが鋼岩種をかく乱してるから、私は比較的安心できていいはず。なのに……何か不安だ。てか気持ち悪い感じ。見られてる気がする。それは下からではない。まさにこの力の方からだ。見てる……確実に。


「ゼロ、モニターを切り替えられない。もっとマナを見るように……」
『それは無理ですマスター』
「なんで?」
『それはマスターがマナ・リフレクターを散布してるからです』
「なるほどね」


 確かにこんなに自身でマナを阻害するものまき散らしてたら、マナ事態をみるなんて不可能だね。まさかマナ・リフレクターにこんな弱点があったとは。とりあえずモニターを凝視してるしかないか。どうやらまだ動き出す気はないみたいだし。


『散布率が百パーセントに達します』
「うん」


 私はその報告を聞いて、カタヤさんたちにそのうまを告げる。二人はそれを聞いて、猛攻に転じる。カタヤさんがマナごと鋼岩種の体を切って分解。さらにそこからベールさんが周囲のマナを根こそぎ持っていきの一斉放射! 最後に鋼岩種が何か言ってた気もするけど、その言葉を理解することは私たちにできない。


『やったな』
『ああ』


 二人はそんな言葉を言い合ってる。けど、私はまだ、そんな気分にはなれないよ。だって私の目の前の力が何やら大きくなってるような? そんな気がする。


『うふふふふふ、あはははははははははははははは』


 突然響くそんな声。そして突如、そう突如にょきっと顔が空間から出てきた。それは褐色の肌に赤い水晶のような瞳。そしてさらに顔顔顔が頭にくっついてるようなおぞましい顔の奴だった。顔顔言ってるけど仕方ない。だって顔しかないんだもん。そんな存在が複数の口から笑い声を漏らして姿を現した。


「なに……これ?」
『これは……』
「ゼロ?」


 珍しくゼロが言いよどむ。機械っぽく淡々としてるのがゼロの魅力なのにね。ようはそれだけやばい奴なのでは?


『まさか……そんな……』
『なぜ、顔爛種がここに?』


 顔爛種? 聞いたことないような? いや、ちょっと待って……記憶を探る。種族の序列って実は公表されてるわけじゃない。だって神様がそんなことしてくれるわけもないしさ。上のほうは上でかってに上と下を決めてるらしい。らしいってのは人種ではそんな領域に踏み入れないからわかってないんだ。でもとりあえずどの種族が上位かはなんとなく勝手に序列の票を作ってたりする。


 その中に顔爛種がいたような気がする。かなり上の方にね。


「人種の癖に面白い事を考えるね」
「一つしか頭ないのにね」
「脳みそだって小さいよ」
「「「そうだねあはははははははははははは!!」」」


 複数の顔で笑い声をあげる顔爛種と言われる奴。顔しかない分際でほざきよる。


「あんたたちなんて顔しかないじゃい!」


 思わずそう言っちゃった。すると奴? 奴ら? はこういうよ。


「肉体で一番重要な部分はどこだい? 首から上だろう。その下は全部足手まといとは思わないかい? 僕たちこそがもっとも合理的な姿なんだよ。それにそもそも頭さえあれば何も必要なんてないのさ」
「そうそう、証明してあげるよ」


 そういう顔爛種は複数の魔法陣を展開しだす。そして空に空いた穴からワイバーンが出てきて、それに更に魔法陣が重なると、何やらワイバーンに硬そうな装甲ができた。


「うーんなんだか思ってたのと違うね。もっと格好良くできると思ったんだけど」
「そもそも鋼岩種がかっこよくないし、仕方ないよ。あいつらのマナの残り香で作ってみたけどこんなものだよね。まあ今はこいつらはいいや」
「そうだね、ちょっと自分たちで遊んでみたいし」


 顔爛種はそういってせっかく出したワイバーンをひっこめる。そして私達に言い放つ。


「さあ、かかってきてよ」
「僕たちにその機体の性能を見せてみて」
「大丈夫、遊んであげるだけだから」


 そういう顔爛種。顔だけのくせに……とは思うけど、その力はかなりの物はず……でもそんな奴に目をつけられて簡単に逃げることもできないだろう。やるしかない。私はサルファーフィールドを展開して、奴の魔法の発動を阻害する。これで魔法は封じたはず。ゼロとの相性が抜群にいい相手だよ。顔しかないのが仇になったね。


「うんうん、これ使ってたね」
「でもこれって体内での発動は妨害できないよね?」
「欠陥品だね。欠陥品」


 そう言って奴は頭を燃やして突っ込んできた。


『亜子!!』


 私と顔爛種の間にタイプ・ツーが体を滑り込ませてきた。そのおかげで私は助かったけどタイプ・ツーはボロボロになって落ちてく。私はそれを支えるよ。


『こいつ!!』


 カタヤさんが切りかかる。けどその剣は皮を切ることもかなわない。そして頬を膨らませてはなった一撃でタイプ・ワンの右腕と足が消し飛んだ。


「どうどう? 僕たちって強いでしょ? 君たちって弱いでしょ? それでもまだ抗う? 抗っちゃう?」


 そんな挑発じみたことを言ってくる奴ら。こんなふざけた奴に手も足も出ないなんて……


『亜子……逃げろ』
『そうだ、君だけでも』


 二人のそんな声を私は無視するよ。だった置いて逃げれるわけないじゃない!!


「うあああああああああああああ!!」


 私はさらにマナ・リフレクターをまき散らしながら突進する。勝算なんて何もない。けど、立ち向かうしかないじゃない!!


「「「あはははいいね。そうこなくっちゃ!!」」」


 その言葉を最後に私の意識は途切れた。

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