美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

β43

「今……貴女の相手をしてるのは私です!!」


 サーテラス様はそう言ってその背中の羽を大きく広げた。一杯一杯にするとそれは天上まで届きそうで、吊るされてたシャンデリアなんかはぶっ壊れてた。けど落ちてくるそれらの破片など彼女は気にしない。そして僅かに浮いて、取り囲んでる人形を蹴散らして窓へと向かう。どうやら手狭な部屋ではなくて、外で戦う気の様。確かに飛べるなら、そっちの方が有利だろう。
 けど……サーテラス様が窓に突っ込んで外へと出ようとしたけど、何かに弾かれる様に中へと戻ってきた。


『あはは! 無駄だよ。この部屋自体を隔離してるからね。この子達を入れた瞬間にそれは完了してる。うんうん自由に魔法が使えるって素晴らしいね。まあ私自身で使うよりも燃費悪く感じるけど、そもそも私自身じゃ使えないし、燃費なんてそもそも私には関係ないし問題なし!』


 どうやらラーゼの魔法でこの部屋と一部が隔絶されてるらしい。凄い物を発明したものだ。こんなものが量産されたら、この国の正規軍よりも強いんじゃない? けどなんか寂しい気がする。だってこれがあったら私の役目は? ラーゼは私を必要としてくれる? こんな……こんな弱っちい私を……


「それならここで全てをひねりつぶしてあげますわ!! 私、ある程度は武術も嗜んでるんですのよ!」


 そういったサーテラス様は素早く動いて人形の懐に飛び込む。ラーゼは再び『何とかパーンチ!』を放つけど、それを寸前でかわしてサーテラス様は頭をもぎ取る。もうそれ武術じゃなくない!? とかいう突っ込みはしたら負けなのだろう。けどどうやら、彼女はそれに手応えを感じたようだ。一気に攻勢に出た。人形はあたふたしてる。
 動きがぎこちないから、サーテラス様の速さについていけてない。


「ほらほら、さっきまでの威勢はどうしたんですの!? これぞ貴族流武術というものですわよ!」


 どうやらサーテラス様もラーゼに当てられてるようだ。なんかアホな事口走ってるし。なに? 貴族流武術って? 本当にそれあるの? あったとしても貴族流武術じゃないよね? この人、貴族ってつけば案外なんでもいいのかも知れない。


『くっ、貴族流武術侮りがたし! 私の頑丈さがこの子達にあれば肉を切らせて骨を断つ戦法が使えるのに!』


 ほら、そのアホすぐに乗っちゃうんだから変な言葉教えないで上げてよ。真剣に戦ってる筈なのに、アホ同士に見えるな。その戦闘は人種同士の戦いでは決して見れる事のない高次元に行ってる。そのはずなのにね。私ももう少し、アホになった方が良いのかな? そしたらもっと何かが出来る? 私は立ち上がってカタヤさんと亜子に近づいて回復魔法をかける。
 今、私に出来る事……それをやるんだ。


「ふふ……あと十体程度ですわね。最初の勢いがなくなってましてよ。それに、色々とそれの弱点、分かってきましたわ」
『私に弱点なんてあるわけ無いでしょ? 世界一、宇宙一可愛いんだから』
「ほざきなさい!!」


 ラーゼは強がってるけど、明らかに押されてる。弱点……それを看破されたのなら厳しいはずだ。すると一体の人形が近づいてきた。


『ああは言ったけど、今のこれじゃちょっと厳しいみたい。その時はなんとかなさい』
「なんとかって……ラーゼ!」
『大丈夫、種は巻いてるわ。それにキララ、あんたは皆を救いたいでしょ? そんな綺麗事をいうのなら、諦めるなんて許されないのよ。その無い頭を目一杯使いなさい』


 ない頭とか酷い……けど否定は出来ないよ。後少しでサーテラス様を相手にしてる人形達はやられるだろう。見てると彼女の動きは徐々に良くなってる。多分馴染んでるんだろう。つまりは更に強くなってるってことだ。けどラーゼは種は巻いてるっていった。種……私達が勝てるかもしれない種。その時、私にはペルの魔光石が見えた。そしてあたりにはラーゼの人形の破片。
 ラーゼに出来る事は私にだって出来るよね。だって私の力はラーゼの力なんだから! けどこの魔光石は私が生成した特別製。あの即席人形なんかとは違う。私はペルの命を掲げて魔法の言葉を紡ぐ。


「マナよ我が語りに応え、事象を具現せよ!」

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