美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

β3

 午後の授業はずっとそわそわしてた。てかスースーしてた。いや、そもそもパンツ履き出したのはラーゼと共に来てからだから、そこまで慣れてる訳でもないんだけど、履いてる物がなくなるとやっぱりね。しかも下手に亜子を真似たから、スカートはみんなよりも大分短い。だから……クラスの男の子達が見てるのがわかる。


(見られてる……見られてるよう……)


 立つ時も座る時も気をつけないと直ぐに見えてしまいそうな丈。自分でやったけど、後悔が……でも、でも……このドキドキがなんだか癖になりそうでもあった。更に二回の授業を経て、お昼休憩となった。皆それぞれ仲のいい人達と共に食堂へと向かってる。まあ皆が皆食堂だけに向かってる訳ではないのかもだけど……そんな中、何人かの女生徒が私の前に来てくれる。


「キララさん、どうですか? 私達とお昼一緒にしませんか?」
「えっと……」


 嬉しい。とてもうれしい。けど……本心かな? と私は思う。だって最初がアレだったからね。パンツ取られたし警戒するのはしょうがないよ。この人達はとても純粋に見える。けどその心は見えない。当然だね。人とは……いや、生物とは自分が一番なんだ。それを私はよく知ってる。けど私はラーゼと会って知った。幸せは一人では得られないと。


『だから私は……誰よりも幸せになるために、皆を救いたい』


 一種の我儘だって分かってる。聖女にあるまじき理由ってこともね。でも……私はもう不幸でなんていられないんだ。神様は私に力をくれてた。正確には力を持つ者の力を行使出来る力を。私は特別になれる。特別になっていいんだ。だからその為には逃げては行けない。パンツ取られたからって気をつければ見えないし、なんて事はないよ!


「そ、それじゃあ一緒しようか――」
「失礼遊ばせ。キララさんは私とお約束なさってるの」


 そういったのは豚……いや縦ロール……いや、やっぱり豚でいっか。そう私をトイレで殴ってお漏らしさせて、更にはパンツまで奪って行った豚貴族だった。なに約束してるって? そんなのした覚えないよ。


「ちょっ何を?」


 反論しようとする私に、豚は耳元で囁く。


「パンツ……返してあげましょうか?」


 むむ、返してくれるの? そう言われると……ね。しかも中々にこの豚は立場が強いらしい。私に先に話しかけてくれてた女の子達がそそくさと去ってく。


「さて、ではいきましょうか?」
「きゃ!?」


 そう言って強引に私を引っ張る豚。勢い良く立ち上がったからスカートがふわっと広がる。私は空いてる手で、素早く抑えた。けど、後ろには一人残ってる男の子がいた。私達は目が合う。なんだか心なしかその子の顔が赤いような? 見た? 見たの? 男の子? って思うくらいに可愛い顔して華奢なその子がどうして男の子とわかるかというと、男子の制服を着てるから。
 着てなかったら本当に女の子と思うかも知れない。聞くべきなのか? でも「私の見た?」ってどうなの? 聞かないほうがお互いのためではなかろうか? そんな事を思ってたけど、声をかける前に結局豚に強引に連れられていった。

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