美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#105

 森を進む。一夜にして出来た森はハリボテかと思ってたけど、いかんせんちゃんとした森だった。まあそうでないと困るけどね。ハリボテだったら魔光石の数だってたかが知れてるからね。そうなると魔光石でがっぽり儲けると言う私の計画がおじゃんになってしまう。だってお金さえあれば、違う領から輸入したって良いわけだからね。
 どうせそんな直ぐに食糧事情が改善するわけも無いんだ。だってこの森を切り開いて田畑にしてって順調に行ったって、収穫は季節を巡らないと出来ない。成長って段階が必要だからだ。


 けど物資の輸出入なら違う。鉱石類なら、掘ってじゃんじゃん市場に流せばいいだけだ。それだけでウハウハーー! それにお金だって受け取れば直ぐに使えるのである。素晴らしい。


「とりあえずここらへんの木とか岩から取れるだけ取って市場にバンバン流しちゃおっか?」
「ラーゼ、そんな事したら価値がなくなって市場崩壊か、純度の悪いものがあれば、買い叩かれるだけですよ」
「え? そうなの?」


 蛇の忠告に私はピタッと動きを止める。そういう物なの? よくわからないんだけど?


「魔光石にも粗悪な物と上質な物があります。そして勿論、市場価値が高いのは上質な魔光石です」
「うんうん、それくらいはわかるし」


 質の良いのものが高いのは当たり前だよね。


「魔光石はピンからキリまでありますが、価格差は天と地ほど違います。私も専門では無いですが、ここの魔光石はかなりいいものです」
「それじゃガッポガポじゃん」
「ですが、その質の高い物のなかにも、更に質の高い物とそうでない普通の物があるでしょう」
「なんかメンドイな」


 そろそろその講釈聞かなくても良いかな? 質が高いんなら、一括でドバーと市場に流せばいいじゃん? あ、供給過多とかなると崩壊するんだっけ? なら小出しにすればいい。私は天才か。


「全てを一緒くたにして流せば、一番質の悪の魔光石基準の値札がつけられる事になるでしょう」
「ちょっ!? なんでよそれ!? 一番いいのの値段に合わせなさいよ!」


 納得いかない私は、蛇を睨む。けど蛇の奴は当たり前と言わんばかりに言葉を続ける。


「そういう物なのですよ。市場と言うものは。ある程度の純度の分類をもって市場には流されてるのです。それらを無視して一緒くたにしてしまったら、例え質の高い鉱石だとしてもそうなってしまう。ラーゼも籠いっぱいに入ったリンゴが有ったとして、その中の何個がとても美味しいから値段が高いんだ――なんて言われて買いますか? ということです」


 むむむ……なんか私が食いしん坊設定になってる所が気に入らないが、なんとなくわかったよ。


「じゃあ分類すればいいってことでしょ?」
「それも生産者の義務ですかね。少しでも高く売りたいから選別もこちらでやる。そういう物です」


 じゃあ一杯掘っても、直ぐに出荷出来ないって事になるじゃん。それでは直ぐに金は手に入らない。金が無いと今日も不味い飯……それはヤダ。市場とかなにそれ? 面倒なんですけど……こうなったら一度崩壊させて、こちら手動で立て直せば利益総取り出来るんじゃね? みたいな考えが頭をよぎる。


「あんまり物騒な事は考えないでくださいよ。市場崩壊させようとか」
「うぐ……」


 お見通しか。


「そんな事をすれば、この国が崩壊してしまいますよ。至る所で内乱が起きるでしょう」
「そいつらも粛清して私達がまとめれば一気に解決」
「新たな国お越しになりますけどね」


 それほどか……そこまで労力かけたくないな。ライザップの件で疲れたし。のんびりしたいよね。けど飯が不味いのは嫌なのだ。


「どうにかして、楽に金稼げないかな〰」
「ダメ人間ですねラーゼは」
「文句あるの?」
「いえいえ、私が養うので幾らでも楽していいですよ。そのかわり毎晩求めますけど」


 むむ……蛇の奴本気だな。私の事、上から下へと視線這わせやがった。大体蛇任せだから今更なのに、ここでそれいうか。なんかこれ……蛇的に挑戦状叩きつけてない? 何か良い案があるのか? 


(市場に高く流すに選別が必要で、しかも大量には無理。人員とかもろもろで直ぐにはできない。市場のルールとかが厄介なんだよね。どうやったらそれを無視できるか……)
「綺麗……」


 ふと視線にそんな事を呟く亜子が目に入った。その時私の脳みそにビビビっと電流が走った。


「直接取り引きすれば良いんじゃない? それも大量に必要としてて、金も有り余ってそうな所と!」


 私がドヤッと蛇を見ると、コクリと頷く。どうやら正解らしい。そうだよ。私にはある。そういうツテが。市場? そんなの無視無視だ! 大口顧客を捕まえるぜ!


「亜子! あとカタヤ! 今すぐネジマキ博士か偉いっぽい人連れてきて」
「え? なんで?」


 亜子はぽかんとしてる。カタヤはなにやら文句言ってるが無視だ。


「ここの魔光石は直接研究所に買い取って貰うのよ。それなら市場なんて関係なくガッポガポよ! だからその為にも偉い人にそれを承諾させないと行けないの。だから今すぐゴー!」


 これはこれからの領地の食糧事情……いや、ひいては経済事情に関わる重要案件だ。なので領主権限をちらつかせてカタヤの奴も脅して亜子と一緒に行かせた。これで上手く話がまとまれば、一気に大量の金が入ってくる事になる。何を食べようかな〰と私は頭の中で取らぬたぬきの皮算用してた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品