美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#103

「じゃあ行くわよ」


 集落から少し離れた平原に立つ。うーんまさに平原……草も木もない。いや、一応点々と木はある。けど枯れてる。痩せた大地だと言うのは本当らしい。生命と言うものが見当たらないね。まあ強そうな雑草はあるけどね。けどああいうのは食えないし、食う気もない。まずはここに私の力を打ち込む。ここなら分かりやすいだろうからね。


 蛇たちには少し離れてもらってる。だからここは思いっきり行こう。大股開いて、両手を地面かざす。私が集中するとなにやらゴゴゴゴゴと地面がうめき出した。


「蘇って!!」


 私は自身の力を大地に打ち込む。その瞬間、地面に光が走る。しかもいくつもだ。けど、あっという間に出ていく感触がある。こうなったらマナが定着するまで流し込んでやる! だってここでやめたら、私は倒れるだろう。なら力を使い続けて、その時間を先延ばす! 何処かの山が大きく唸った。噴火でもしたのかもしれない。そして至る所から水が吹き出す。


 いや、それは水ではない。なにせ温かい。どうやら源泉が吹き出してるようだ。うるおい出す大地。私の力を受けて、大地に緑が芽吹く。枯れた木は大きく育ちだす。乾いてた風に、潤いが含まれてる。


「はあはあ……どんなもんよ……」


 そう言って私の意識は途切れた。


 
 次の日、私は昨日と同じ場所に訪れてた。そこは本当に昨日の場所? って位変わってる。てか集落からして変わってたんだけどね。集落事態にも緑が生えてて、家々を侵食仕掛けてた。直接やってない所でもこれだよ。それならこの場所の変わりようも納得だ。なにせ平原が森になってるからね。おいおいだよ。昨晩の間に一体何が有ったのか……なんか既に生き物いない? 


 まあ森はね。一夜で出来ても何とかまだ良いかな? って感じるけど、生き物はどうなの? 流石に生命はそんな単純じゃないでしょ。それとも実はそこらに居た生き物まで私の力の影響を受けたとか? それはあり得るな。だって地面に流すために大量に力を放出したからね。しかも枯れてた大地はその力が直ぐに大気に流れてた感じだった。
 だからより多くの力を無造作に流した。それはきっと周囲の大地だけで収まる力では無かったはず。小さい昆虫サイズの生き物とかにも影響を与えててもおかしくはない。


「ねえ、ここって誰か入ったの?」
「いえ、まだ誰も。かなり広大な森になってますからね。しかも魔光石まで露出してるようです」
「それって何か不味いの?」
「不味いと言うか……ありがたいですかね。普通は魔光石は魔境クラスの場所か、それこそ大地の奥でマナが長い年月をかけて集合し、出来上がるといわれてます。しかも魔光石はこの世界の主要なエネルギー源です」
「ふむふむ、ということは……」


 私は金の形に目を輝かせてるかもしれない。だって……だってだよ。それってつまり……


「つまりはこの森は領地の収入源と食糧事情を改善してくれる宝物庫かもしれないと言うことですね」


 蛇の言葉に、私はニタニタとした顔が収まらないよ。流石私。なにも狙ってないけど、これぞ思惑どおりと言うものだ。けど実際どれだけの魔光石があるのかとか分からないから、調査が必要だよね。この森の生態系もわかんないし……危険な生き物だっているかも。てな訳で、少しその辺を探索してみる事にした。蛇たちもいるし、まあ大丈夫でしょう。
 なんせ今の私は昇り調子の女だからね。ウッキウキ気分で森への一歩を踏み出した。

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