美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
#93
耳も普通で肌にもびっしりとした毛とかはない。牙もなくて、誰もが見慣れた姿をしてる。沢山の人達が豪華な服に身を包み、敷かれたレッドカーペットを跨ぎ、左右に展開して開かれるであろう扉を今か今かと待ち構えてる。実は二階からこっそりと覗いてる訳なんだけど、その期待値の高さがここからでもわかる。まあそれはそうでしょう。
今日ここで行われてるのはライザップ陥落の祝勝会。セルラテント国にある、セルラテント城にお呼ばれしたのです。まあそれは当然だね。だって私がいたからライザップは落ちたのだ。一番の功労者は私。ここに集まった人達は貴族でこの人種の国の重要な人達。まあここをどうにかする気はあんまりないけど、いい印象にしといて悪いことはないでしょ。
イヤラシイ事を考える奴が居るだろうけど、私はアンティカにも負けないとも知ってるでしょ。あの人達は私を待ってる。色々な噂を聞いてるだろうけど、多分一番の興味は絶世の美少女というところだろう。
男の人達は期待に胸を膨らませてる様な顔してて女性たちは、どんなものかと品定めしようとしてるように見える。まあどっちも度肝抜く事になるだろうけどね。私という美少女は、想像なんかで収まるレベルじゃない。
今まで本格的な人種の国なんか来たこと無かったから知らなかったけど、いっちゃ悪いけどレベル低い。こう……パッとしないのが多い感じ。獣人達が人種は全部同じに見えるとか言ってたけど、それがなんとなくわかる。嫌味かとあの時は思ったんだけど、どうやら純然たる事実のようだ。そりゃあ見目が良いのも中にはいるけど、ホント少ない印象。
これも下の種族の弊害か何かなのだろうか? ハッキリ言って、獣人の人形の方が見目がいいの多かったよ。そんな人達が私なんて見たら、多分泡吹いて倒れるんじゃないかな? それくらい私は突出してる。自慢だけど、嫌味ではない。事実だ。だってさっき私の仕立てに来たメイドさんたちはまさしくそうなったしね。しょうがないから蛇の部下の人達にしてもらった。
流石は元ホテルマンだけあって仕立ても出来た。今着てるのは、蛇が私のために前に仕立てたドレスだ。あの黒いのね。パッと見、あの場に黒のドレスの女性はいない。それだけ着こなすのが難しいということだろう。
それに普通はこんな場でわざわざ場を重くするような色は選ばないってのもあるかも知れない。普通はそうだね。普通は。けど私は普通の括りから外れた存在。さて、度肝抜きに行きましょうか?
「ん」
「こちらですお姫様」
私の差し出した手を取る蛇。こんな所に獣人なんて普通はこれないけど、蛇もライザップ陥落に関しては功労者だからね。まあ、蛇の方の噂は散々っぽいけどね。けどそれはしょうがない。祖国を裏切って潰したんだからね。でも蛇は気にした風はない。堂々と私をエスコートして大きな扉の前に。左右には鎧に身を包んだ兵士が居る。その人達が両の扉に手を掛ける。そして力の限り押していく。そうやってゆっくりと開かれる扉。
僅かな隙間から漏れ聞こえるオーケストラの演奏。私の登場に相応しいBGMだ。そして兵士の力の限りの労働を持って開け放たれた扉から私はレッドカーペットを踏みしめる。一瞬大きくどよめいたかに思えた会場。だが次の瞬間、聞こえるのは壮大なオーケストラの音色だけになった。誰もが声を忘れてしまったかのようだった。
だが、視線は降り注ぐ。誰もが私から目を離すことができなくなってる。女性たちが腰を抜かして立てなくっていく。男たちが、何やら前かがみになっていく。一歩一歩と近づく私に、玉座に鎮座する王までも釘付けだ。そしてその隣に座ってる王妃様は白目を剥いてた。ごめんなさい。私が美少女過ぎるから。誰も死なないことを願っておこう。
ああ……なんて私の美は罪なのか……玉座に近づいた私は立ち止まり、王様に挨拶をする。
「初めまして。ラーゼでございます。この度はお招き頂き感謝いたします」
そう言って一礼の後に真っ直ぐに王を見る。王は真っ赤な顔で私を見れずに視線を惑わす。なんだか恋をはじめてしった少年のような反応だ。私はニッコリと笑ってみた。途端に胸を抑えて蹲る王様。呆けてた一人の側近の人が急いで王に駆け寄った。そしてしばらくざわめく会場。なんとか王様は無事なようだったけど……なんか私の周りに布を持った兵士が展開してた。
「あのこれは?」
「そなたは刺激的過ぎる。これで勘弁してくれ」
なんかわかんないけど、王様に懇願されたから仕方なく受け入れた。変な格好になりつつも私は王から男爵の称号を貰って貴族となった。それと領土もね。これからは私はその領土で自由気ままにのんびり暮らすことが出来るだろう。めでたしめでたし――と思ってました。この時までは。だけど現実は……リアルはそんなに甘くなんて無かったのだ。
今日ここで行われてるのはライザップ陥落の祝勝会。セルラテント国にある、セルラテント城にお呼ばれしたのです。まあそれは当然だね。だって私がいたからライザップは落ちたのだ。一番の功労者は私。ここに集まった人達は貴族でこの人種の国の重要な人達。まあここをどうにかする気はあんまりないけど、いい印象にしといて悪いことはないでしょ。
イヤラシイ事を考える奴が居るだろうけど、私はアンティカにも負けないとも知ってるでしょ。あの人達は私を待ってる。色々な噂を聞いてるだろうけど、多分一番の興味は絶世の美少女というところだろう。
男の人達は期待に胸を膨らませてる様な顔してて女性たちは、どんなものかと品定めしようとしてるように見える。まあどっちも度肝抜く事になるだろうけどね。私という美少女は、想像なんかで収まるレベルじゃない。
今まで本格的な人種の国なんか来たこと無かったから知らなかったけど、いっちゃ悪いけどレベル低い。こう……パッとしないのが多い感じ。獣人達が人種は全部同じに見えるとか言ってたけど、それがなんとなくわかる。嫌味かとあの時は思ったんだけど、どうやら純然たる事実のようだ。そりゃあ見目が良いのも中にはいるけど、ホント少ない印象。
これも下の種族の弊害か何かなのだろうか? ハッキリ言って、獣人の人形の方が見目がいいの多かったよ。そんな人達が私なんて見たら、多分泡吹いて倒れるんじゃないかな? それくらい私は突出してる。自慢だけど、嫌味ではない。事実だ。だってさっき私の仕立てに来たメイドさんたちはまさしくそうなったしね。しょうがないから蛇の部下の人達にしてもらった。
流石は元ホテルマンだけあって仕立ても出来た。今着てるのは、蛇が私のために前に仕立てたドレスだ。あの黒いのね。パッと見、あの場に黒のドレスの女性はいない。それだけ着こなすのが難しいということだろう。
それに普通はこんな場でわざわざ場を重くするような色は選ばないってのもあるかも知れない。普通はそうだね。普通は。けど私は普通の括りから外れた存在。さて、度肝抜きに行きましょうか?
「ん」
「こちらですお姫様」
私の差し出した手を取る蛇。こんな所に獣人なんて普通はこれないけど、蛇もライザップ陥落に関しては功労者だからね。まあ、蛇の方の噂は散々っぽいけどね。けどそれはしょうがない。祖国を裏切って潰したんだからね。でも蛇は気にした風はない。堂々と私をエスコートして大きな扉の前に。左右には鎧に身を包んだ兵士が居る。その人達が両の扉に手を掛ける。そして力の限り押していく。そうやってゆっくりと開かれる扉。
僅かな隙間から漏れ聞こえるオーケストラの演奏。私の登場に相応しいBGMだ。そして兵士の力の限りの労働を持って開け放たれた扉から私はレッドカーペットを踏みしめる。一瞬大きくどよめいたかに思えた会場。だが次の瞬間、聞こえるのは壮大なオーケストラの音色だけになった。誰もが声を忘れてしまったかのようだった。
だが、視線は降り注ぐ。誰もが私から目を離すことができなくなってる。女性たちが腰を抜かして立てなくっていく。男たちが、何やら前かがみになっていく。一歩一歩と近づく私に、玉座に鎮座する王までも釘付けだ。そしてその隣に座ってる王妃様は白目を剥いてた。ごめんなさい。私が美少女過ぎるから。誰も死なないことを願っておこう。
ああ……なんて私の美は罪なのか……玉座に近づいた私は立ち止まり、王様に挨拶をする。
「初めまして。ラーゼでございます。この度はお招き頂き感謝いたします」
そう言って一礼の後に真っ直ぐに王を見る。王は真っ赤な顔で私を見れずに視線を惑わす。なんだか恋をはじめてしった少年のような反応だ。私はニッコリと笑ってみた。途端に胸を抑えて蹲る王様。呆けてた一人の側近の人が急いで王に駆け寄った。そしてしばらくざわめく会場。なんとか王様は無事なようだったけど……なんか私の周りに布を持った兵士が展開してた。
「あのこれは?」
「そなたは刺激的過ぎる。これで勘弁してくれ」
なんかわかんないけど、王様に懇願されたから仕方なく受け入れた。変な格好になりつつも私は王から男爵の称号を貰って貴族となった。それと領土もね。これからは私はその領土で自由気ままにのんびり暮らすことが出来るだろう。めでたしめでたし――と思ってました。この時までは。だけど現実は……リアルはそんなに甘くなんて無かったのだ。
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