美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#90

 決まった。ユニコーンの男は死に絶え、私達を阻む者はもういない。


「まさか……ユニコーンが……そんなバカな」


 そう言って動揺するのはラジエルだ。もうアイツも守るものはいない。まあガロンの兵隊がどう出るかだけど……


「バカなって、自分達獣人が幻獣種のユニコーンに勝ったのよ。喜びなさいよ。それとも種なんて実はどうでもよくて、自分の望みだけが大事だった?」
「違う! 違う! だが……これは複雑だろ!!」


 確かにね。ラジエルの言いたいこともわかるよ。けど、私はそんな優しくないから。特にアンタにはね。だから責めるだけ。


「知らない。ただ、アンタが負けたって事実は変わらない。覚悟できてるんでしょうね?」


 出来てないなんて事無いよね。だってここまでやったんだよ。ユニコーンの協力を得て、ガロンの軍勢で首都を強襲……これでごめんなさいなんて通じない。ラジエルは少しの間目を閉じて上を向く。そして覚悟を決めたかの様な顔でこちらを見た。


「俺は貴族だ。全ては民と国のためだった。だが、成し得ないのなら、潔く死のう。君の勝ちだ」
『そっか終わりなんだ。もっともっと楽しませてよ』


 どこからか聞こえる幼い声。するとガロンの兵がラジエルへと刃を向ける。こちらにも来てるから、消耗した蛇たちも私のバリアの中にいれる。これでこちらは安全だ。私自身の攻撃にも耐えれるバリアだよ。そこらの奴が壊せる代物ではない。けどラジエルは死んだな。まあ私が一瞬で殺すか、仲間だと思ってた奴に裏切られて殺されるかの違いだよ。
 後者の方が面白そうだし、待っててみようかな。


「助けないの?」
「なんで?」


 私にしがみついてる兵器っ子がそういう。兵器っ子はずっと施設にいたから知らないんだよね。あれは悪なのだよ。ライザップをこんな戦場にしたのは紛れなくラジエルなんだから。てな説明を簡潔にしてあげた。


「獣人同士で……哀れね」
「ほんとそう思う。そして最後にわたしに負けた」


 男ならナニを切り落として、その情けない遺伝子を途切れさせるのが良いんじゃない? と思うくらいの情けなさ。迫りくるガロン人形達をラジエルはなんとかさばいていくけど、その数は減ることはない。刃は自然と彼の身体に届いていき、そして流れ出る血は、量を増していく。ラジエルは追い詰められてる。その死は近い。もう彼にはその時が見えてるかもね。
 それなりに強いんだし、死期くらいわかるでしょう。


『うーん、そっちももっと楽しんでほしいんだけど』


 そんな声が聞こえると共に私のバリアに攻撃が当たる。けど全然へっちゃらだ。


『むーおもしろくなーい!』


 駄々っ子が頭に思い浮かぶ。案外外れては無いよね?


「天皇……」
「これが? 子供でしょ」
「私も会ったことは無いのでわかりませんがね」


 蛇がそういった。けど確かに子供の声だが偉そうではある。こまっしゃくれてそうな声してるよね。


「ラーゼも大概偉そうですけどね」
「私はほら、可愛いから。可愛いは正義だから」


 しかも私の可愛さ宇宙一。それを否定出来る奴なんていないでしょ。とかなんとかやってると、ついにラジエルの動きが止まった。これ以上はもう動けないらしい。ここで私は悪魔の囁きをしてあげる。


「ねえラジエル、私にお願いしてみれば? その頭を下げて、みっともなく助けを求めてうさぎっ子に手を出さないと言うのなら、寛大な私は助けて上げなくもないかもよ?」
「バカな……君は……そんな奴じゃない」


 バレてたか。ここで助けを元て縋り付こうものなら、超絶バカにした顔で足蹴にしてやったのに。残念。そもそもわたしにとってはラジエルなんて助ける価値もないし、寧ろ存在が憎たらしいから、殺すことはあっても助ける事なんか無いんだよね。この手でやると、ほらうさぎっ子との関係がね。だからまあ、私でなくても別にいい。
 ラジエルが死んでくれるなら。


「すま……ない」


 誰に言ったのか知らないそんな言葉を最後にガロンの兵隊達の武器が一斉に振り下ろされる。えげつない。一人でいいのにあんなに沢山。そう思ってると、細い光が二つ、ラジエルを助ける様に走った。完全にこっちにも当たってるけど、問題はない。けど、あの船は……そこから一人の獣人が降りてくる。華麗に着地して、その長いスカートをパンツが見えるか見えないかの所で押さえつける。


「ラジエル様、ご無事ですか?」
「ティル……来てくれたのか」
「勿論ですよ。まだ終わらせません」


 そう言ってうさぎっ子が私を睨む。なんでそこで私を睨むのか……私は今すぐにでもうさぎっ子のその耳をもふもふしたいのに。そんな事を思ってると何やら密談してる二人。やっぱりラジエルは殺す。そしていつの間にかいた他の獣人にラジエルを任せてうさぎっ子が私の方へ歩いてくる。


「ラーゼ」


 戻ってきてくれるって感じではなさそう。もう少しで私のバリアに……うさぎっ子だから通した。


「通してくれると思いました」
「そりゃね。だって私はうさぎっ子の事好きだもん」
「知ってます。私は大嫌いですけど」


 そう言ってうさぎっ子が何かをその手で割った。するとその瞬間、不気味色の風が辺りをかける。そして収束、はじけた。けど外傷はない。気づくと、うさぎっ子達は乗ってきてた船へと戻ってる。


「願わくば、ここで死んでください」
「もうー冗談きついなーうさぎっ子は……ん?」


 あれれ? バリア、消えてないこれ。更にドデカイ魔法陣がいくつも展開されてるのがみえる。ガロンのデカイ奴等が動いてないと思ってたけど、溜めてたのか。


『あははははははは! やってくれたね獣人。大丈夫、ちゃんと殺してあげるから!! もっともっと遊ぼう!!』


 確かにバリアは消えたし、何か私の内部がかき乱されてる感じもある。けどなめてもらっちゃ困る。デカイ一撃の用意はこっちもしてたのだ。


「良いわよ、殺してみせなさいよ。殺し返してあげる!」


 空を覆い尽くす程の魔法陣か輝いてる。けど、そんなもの? 私は空の色さえ変えれるよ! 私は心の中て助けたいやつには影響なし! を唱えた。実際これで大丈夫かは不明だ。けど、もう止められない。今からじゃ範囲外になんて逃げれない。信じるしか無い。私のご都合主義的な力を!! 極大魔法と私の力が解放される。その日、世界は未曾有の災害に満たされた。

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