美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
#78
「ごふっ……」
真っ赤な血が口から溢れる。口内が鉄の味で溢れるよ。お腹の真ん中に突き刺さった槍と化した角を一角だったお姉さんがグリグリと動かしてくる。
「なかなか死にませんね。人種としたなら、驚異的な耐久力ですよ」
そうニコニコしながら言ってる。私を実験動物か何かの様に扱ってるな。てか、私もこれだけ血を流してて大丈夫なのがびっくりだよ。致死量は既に超えてると思うけど……やっぱり僅かに繋がってるゼルの力のおかげかな? でもこう痛いともう良いかなって気もする。楽になりたい? その気持がわかるよ。
「はあ……」
思わず漏れるため息。だってなんでこんな痛い思いしてるのか……よく考えたらわからないし。こんな痛い思いしないために沢山使える駒を増やしてたのに……そもそも一人で乗り込んだのが失敗だった。なんかイケそうな気がしたんだよね。調子にのってたかも。大抵はゼルの力でなんとかなるだろうという楽観視がこんな事の元凶……
(ゼルめ……もっと気合入れて力送りなさいよ)
完全な逆恨みだけど、思ってみる。けどそれで状況が変わるわけない。ほんとこんな目に会うなんて嫌になる。私は戦いたくなんてないのよ。それは私みたいな美少女のすることじゃない。私を崇め奉る奴等が勝手にやってればいい。私はただ、与えられる物を食べて飲んで、チヤホヤされてたい。時々ちょっとした刺激があれば充分。
それが私と言う美少女が与えられるべき生活。そうでしょ? ニート? それが許される美貌がここにある。今は血塗れだけど……
「そういえば、絶世の美女なんですよね? ご自慢のその顔を潰して、貴女という存在を消して上げましょう。貴女という美少女はいなかった。どうですか? 楽しいでしょう?」
そう言って私の頭を鷲掴みにするお姉さん。細長く見えるその手だけど、私の頭を片手で持って持ち上げるだけの十分な力を有してる。やっぱりこんな世界じゃ、見た目なんて強さとなんの関係もない。ムキムキだから強いって訳じゃないんだ。てか腹に刺したままにするなよ……違和感半端ないから。取り敢えずこのままじゃほんとに頭潰される。いや、待てよ。これってもしかして――
「嫉妬?」
「まだ喋れるのですね。嫉妬も何も、貴女はもう終わりですよ」
「があ!?」
ギリッと力を込められる。頭がトマトの様になりそうだ。けど、嫉妬が無いわけじゃなさそう。どんな種の女性も私には嫉妬せざる得ない……それだけの美貌。それをこんな所で……しかもこんな名前も知らない奴に私の象徴とも言えるこの顔を潰されて終わりなんて、それは嫌かもしれない。でも私自身がこいつと戦ってもどうしようもない。
私は絶対に戦闘タイプじゃないもん。私には私のやり方が……ある。なんとか最後の力を振り絞って自身の右手でお姉さんの腕を掴んだ。けど最後の抵抗をなんとも思ってないのか、お姉さんは更に力を込める。
「あっがっ……あぁああ……ぁぁあはっははは」
「壊れた? 何を笑ってるんです?」
私の笑いに不信感を露わにするお姉さん。まあでもそうだよね……いきなりこんな風に笑いだしたら誰だって不審に思う。どうやら、何をされてるのかわかってないらしい。物と違って生命体の魔術回路は簡単には獲れない。けど、角を武器にしてくれた事で色々と突き刺さる度に入ってた物がある。それと直接触れる事で見えるこいつの回路。
(なるほどなるほど……よくわからない。けど――)
わからなくったってなんとか出来る物がある。けがの功名か、今の私の力は私の体で耐えれる程度しかない。いつもはキャパオーバーの力しか使えずに、一発でバタンと行く。けど、今はそうじゃ無いはず。
(――同じにするだけなら簡単!!)
だって見えてるんだから! 私は掴まれたまま、自身の中身を書き換える。そしてそれが終わると共に、腹に刺さった角を起動させて隔絶させてる空間を壊す。
パリーンという音が聞こえた。
「なに? 一体何が? どうして結界が解けたのです?」
状況に頭が追いついてないお姉さん。空間は繋がった。私の傷が……血が……時間を巻き戻す様に戻ってく。溢れる力。私は逆に彼女の腕をへし折った。ボキッという音が確かに聞こえた。
「あっァあああああああ!? なっ何故です!?」
うろたえてるけど、角を抜くのを忘れないお姉さん。お陰で私の傷は完全完治したけどね。折れた腕を見てこちらを見直す彼女の目は驚愕……そして理解できない物に向ける恐怖が見て取れる。ああようやくだ。ようやく上に立てた気がするよ。だから私は余裕をもって言ってあげる。
「理解する必要なんてないよ。だってお姉さんはここで死ぬんだから」
私の感じた苦痛……それを何百倍にもして返してあげよう。勿論それは私じゃないけど。
「まだです! これからいくらでも――」
「だから、もう遅いんだよ」
ゴトッ――とお姉さんの首が落ちる。誰もが私が何かしたと思ったでしょう? ごめんね。だからそれは私の役目じゃない。自分がただの美人止まりで曲がり角過ぎてる癖に、絶世の美少女である私に楯突いた事を後悔して……その目に私の美を焼きつけて逝け。
「それではサヨナラです」
そんな蛇の声とともに、角を砕かれたお姉さんは灰になった。
真っ赤な血が口から溢れる。口内が鉄の味で溢れるよ。お腹の真ん中に突き刺さった槍と化した角を一角だったお姉さんがグリグリと動かしてくる。
「なかなか死にませんね。人種としたなら、驚異的な耐久力ですよ」
そうニコニコしながら言ってる。私を実験動物か何かの様に扱ってるな。てか、私もこれだけ血を流してて大丈夫なのがびっくりだよ。致死量は既に超えてると思うけど……やっぱり僅かに繋がってるゼルの力のおかげかな? でもこう痛いともう良いかなって気もする。楽になりたい? その気持がわかるよ。
「はあ……」
思わず漏れるため息。だってなんでこんな痛い思いしてるのか……よく考えたらわからないし。こんな痛い思いしないために沢山使える駒を増やしてたのに……そもそも一人で乗り込んだのが失敗だった。なんかイケそうな気がしたんだよね。調子にのってたかも。大抵はゼルの力でなんとかなるだろうという楽観視がこんな事の元凶……
(ゼルめ……もっと気合入れて力送りなさいよ)
完全な逆恨みだけど、思ってみる。けどそれで状況が変わるわけない。ほんとこんな目に会うなんて嫌になる。私は戦いたくなんてないのよ。それは私みたいな美少女のすることじゃない。私を崇め奉る奴等が勝手にやってればいい。私はただ、与えられる物を食べて飲んで、チヤホヤされてたい。時々ちょっとした刺激があれば充分。
それが私と言う美少女が与えられるべき生活。そうでしょ? ニート? それが許される美貌がここにある。今は血塗れだけど……
「そういえば、絶世の美女なんですよね? ご自慢のその顔を潰して、貴女という存在を消して上げましょう。貴女という美少女はいなかった。どうですか? 楽しいでしょう?」
そう言って私の頭を鷲掴みにするお姉さん。細長く見えるその手だけど、私の頭を片手で持って持ち上げるだけの十分な力を有してる。やっぱりこんな世界じゃ、見た目なんて強さとなんの関係もない。ムキムキだから強いって訳じゃないんだ。てか腹に刺したままにするなよ……違和感半端ないから。取り敢えずこのままじゃほんとに頭潰される。いや、待てよ。これってもしかして――
「嫉妬?」
「まだ喋れるのですね。嫉妬も何も、貴女はもう終わりですよ」
「があ!?」
ギリッと力を込められる。頭がトマトの様になりそうだ。けど、嫉妬が無いわけじゃなさそう。どんな種の女性も私には嫉妬せざる得ない……それだけの美貌。それをこんな所で……しかもこんな名前も知らない奴に私の象徴とも言えるこの顔を潰されて終わりなんて、それは嫌かもしれない。でも私自身がこいつと戦ってもどうしようもない。
私は絶対に戦闘タイプじゃないもん。私には私のやり方が……ある。なんとか最後の力を振り絞って自身の右手でお姉さんの腕を掴んだ。けど最後の抵抗をなんとも思ってないのか、お姉さんは更に力を込める。
「あっがっ……あぁああ……ぁぁあはっははは」
「壊れた? 何を笑ってるんです?」
私の笑いに不信感を露わにするお姉さん。まあでもそうだよね……いきなりこんな風に笑いだしたら誰だって不審に思う。どうやら、何をされてるのかわかってないらしい。物と違って生命体の魔術回路は簡単には獲れない。けど、角を武器にしてくれた事で色々と突き刺さる度に入ってた物がある。それと直接触れる事で見えるこいつの回路。
(なるほどなるほど……よくわからない。けど――)
わからなくったってなんとか出来る物がある。けがの功名か、今の私の力は私の体で耐えれる程度しかない。いつもはキャパオーバーの力しか使えずに、一発でバタンと行く。けど、今はそうじゃ無いはず。
(――同じにするだけなら簡単!!)
だって見えてるんだから! 私は掴まれたまま、自身の中身を書き換える。そしてそれが終わると共に、腹に刺さった角を起動させて隔絶させてる空間を壊す。
パリーンという音が聞こえた。
「なに? 一体何が? どうして結界が解けたのです?」
状況に頭が追いついてないお姉さん。空間は繋がった。私の傷が……血が……時間を巻き戻す様に戻ってく。溢れる力。私は逆に彼女の腕をへし折った。ボキッという音が確かに聞こえた。
「あっァあああああああ!? なっ何故です!?」
うろたえてるけど、角を抜くのを忘れないお姉さん。お陰で私の傷は完全完治したけどね。折れた腕を見てこちらを見直す彼女の目は驚愕……そして理解できない物に向ける恐怖が見て取れる。ああようやくだ。ようやく上に立てた気がするよ。だから私は余裕をもって言ってあげる。
「理解する必要なんてないよ。だってお姉さんはここで死ぬんだから」
私の感じた苦痛……それを何百倍にもして返してあげよう。勿論それは私じゃないけど。
「まだです! これからいくらでも――」
「だから、もう遅いんだよ」
ゴトッ――とお姉さんの首が落ちる。誰もが私が何かしたと思ったでしょう? ごめんね。だからそれは私の役目じゃない。自分がただの美人止まりで曲がり角過ぎてる癖に、絶世の美少女である私に楯突いた事を後悔して……その目に私の美を焼きつけて逝け。
「それではサヨナラです」
そんな蛇の声とともに、角を砕かれたお姉さんは灰になった。
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