美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。
#35
「アッハッハッハ! アッハッハッハ! ――で? なんだって?」
盛大に笑った。これはこれはもう盛大に。だって恨んでるって……私達仲良しだよ? そんな私に今度はベルグがもっとバッサリと来た。
「こいつは貴様を殺したいと思ってるという事だ」
「アッ――」
「それはもう良いから。事実を受け止めなさい」
「事実? 事実って何言ってるのよ? ねえうさぎっ子」
再び笑うのを止められた私はうさぎっ子の方を見る。彼女はその顔をうつむかせてるからその表情をうかがい知る事はできない。けど何か震えてる様な? そんなまさかね? まあまさかっていう根拠は実際なにもないんだけど……だってあの街の住人の殆どは私の事嫌ってる。それはわかってる。けどうさぎっ子も? とかは考えなかった。
なんでだろうとか言われてもわからない。なんとなく? それとも思考を誘導するような魔法とか使われてたりしたら分からない。けど、違うよね? うさぎっ子
そうじゃないよね?
「ねえ……」
実際うさぎっ子に執着してるのはモフモフしたいだけ……とか思ってけど、自分でも知らない内もっと深い何かを求めてたのかもしれない。だって……なんか怖いんもん。それが実際有り得ると頭が訴えてるのに、心はそんな筈ないって言ってる。私はうさぎっ子を見つめたままその答えを待つ。うさぎっ子の一挙手一投足に目を凝らしてる。
「私は……」
その可愛らしい唇が動いた。強張ってる様に聞こえる声。握ってた拳を解いて、その顔を上げて続きを紡ぐ。
「そんな事を思ってる訳ないじゃないですか。私は、ラーゼ様の事、ン好きですよ」
好きといった時一瞬口ごもった気もするけど、満面の笑みのうさぎっ子を見たらそんなのはどうでも良い事だと思うことにした。他人から好かれるのは当然と思ってる私だけど、やっぱり好いていて欲しい人に言われるとなんか違う。こう、心がホワッとする。世界に愛を説くのもいいかもしれない。こんな争いが絶えない世界で、絶世の美女である私が愛を叫ぶ――ベストセラー待ったなしだね。
「うさぎっ子! 私も大好きだよ!」
そう叫んで飛びつくけど、やっぱり華麗にかわされた。このタイミングでも駄目なの? ちょっと鉄壁過ぎない? 今の絶対に熱い抱擁をする流れじゃん! そしてもふもふする流れじゃん!
「白々しい事を、貴様の言葉を見抜けんのはそこのアホだけだ!」
「ええ、私達は信言を見抜ける力がある。白狼に嘘は通じません!」
えっ!? マジで言ってるそれ? そんな力あるの? 二年越しの衝撃だよ。てかそれが本当だとしたらやっぱりうさぎっ子の言葉は……訝しむ目を向けてしまう。
「ラーゼ様、私が信じられませんか? この数日の時だけでは彼等の言葉には敵いませんか? 貴方様と接した私を思い出してください!」
「信じる」
「おい!」
「ちょっと!?」
後ろの二人がなんか煩い。全く、信じられない奴等だ。こんな可愛いうさぎっ子が嘘つく訳無いじゃん。よしんば吐いたとしても可愛いからよし!
「ラーゼ、あんた本気? 私達は本当にわかる! その子はアンタを殺そうとしてる!」
「そうだぞ、貴様がどうなろうと知ったことではないが、借りを返すためにも聞け。その娘から離れろ!」
真剣なスズリとベルグ。その言葉に嘘は無いと思う。てか二人が私に嘘を言うメリットないし……確かにうさぎっ子にはなにかあるのかもしれない。でもそれは私がどうにか出来る事でも無い気もするし、正直もう良いんだよそういうのは。
「やめて、なんと言おうと私はうさぎっ子を信じる」
私は強く言い切った。その瞳には濁りなく、言葉には迷いもない。それを察したのかスズリもベルグも険しい顔をする。
「どうしてそこまで? どんなに良い顔してても、それはアンタを殺すためなのよ」
「そうかもね。けど、それでも私は今、うさぎっ子を諦めることは出来ないの」
そう言って私はうさぎっ子の手をとる。私みたいにスベスベでキラキラしてる手じゃない。苦労してきたんだなってのがわかる手だ。それでも最近は高級なクリームとか一緒に使ってるから大分スベスベだけどってそうじゃなくて! 私は少し高いうさぎっ子の目を見る。ウサギらしい赤い瞳。綺麗な宝石の様なその目は何か驚いてるようにも見える。
「貴様正気か? 何故そこまで……」
「なぜかって? 教えて上げるわ。よく聞きなさい! それはね、『可愛いは正義』だからよ!!」
「「「…………」」」
ベルグとスズリ、そして何故かうさぎっ子も目をむいて止まってた。全く、そろそろ私という存在を理解してほしいね。私の基準は可愛いに集約してるのよ。だからうさぎっ子は正義なのだ。正確にはうさぎっ子の可愛いは正義だけどね。
「アンタが特大のアホだと忘れてたわ」
「失礼な、可愛いが正義じゃない世界はない。つまり私こそ正義であり、私の認めた可愛いは全て正義なのよ」
「……そう、なの?」
「侵されるなスズリ! あのアホの言ってる事は一言一句おかしい!」
このクソ狼、余計な事を。あと少しでスズリを落とせそうだったのに。これだから可愛いが欠片もない狼はやになっちゃうよ。そう思ってると繋いでた手に力が込められた気がした。だから振り返ってうさぎっ子を見ると何故かプルプルと震えてた。そして顔を上げたかと思うと、うさぎっ子が見たこともない感じで笑いだした。
「はーはー」
いやー私って傍からみたらこんな感じなんだね。思わず止まっちゃったよ。ようやく笑い終えたうさぎっ子はなんとか息を整えてる。そして一つコホンとするといつもの顔になってこういった。
「それではラーゼ様、ご友人との再会も済みましたし、お戻りになりましょう。ここは何もなくつまらないでしょうし、お肌にも悪いですよ」
「貴様! 我らの住処を侮辱するか!!」
殺気立つベルグ、けどうさぎっ子は少し口角を引く付かせるだけで引きはしない。でも、流石に直ぐに帰るってのもね。ここまで来るのに時間もかけてる訳だし、なんかもったいな気もする。それにまだこの二年の事聞いてないし。
「もちょっと話したいことが――」
「屋敷につきましたらお風呂を用意させましょう。隅々まで綺麗にして差し上げます」
「それってまさか……」
まさか、まさかのシチュエーション!? 私はとても興奮してる。鼻息ヤバイ。
「拙いながらも私が」
「是非にお願いします」
ってな訳で帰る事にした。まあまた来ればいいだけだしね。なんかスズリやベルグが最後まで忠告してたけど、生返事してたら「もう知らねーよバーカ」みたいなニュアンス的な事をいってた。けどよく聞いて無かった。だってうさぎっ子とお風呂だよ! お風呂! 今の私の頭の中はそれだけで一杯だった。
盛大に笑った。これはこれはもう盛大に。だって恨んでるって……私達仲良しだよ? そんな私に今度はベルグがもっとバッサリと来た。
「こいつは貴様を殺したいと思ってるという事だ」
「アッ――」
「それはもう良いから。事実を受け止めなさい」
「事実? 事実って何言ってるのよ? ねえうさぎっ子」
再び笑うのを止められた私はうさぎっ子の方を見る。彼女はその顔をうつむかせてるからその表情をうかがい知る事はできない。けど何か震えてる様な? そんなまさかね? まあまさかっていう根拠は実際なにもないんだけど……だってあの街の住人の殆どは私の事嫌ってる。それはわかってる。けどうさぎっ子も? とかは考えなかった。
なんでだろうとか言われてもわからない。なんとなく? それとも思考を誘導するような魔法とか使われてたりしたら分からない。けど、違うよね? うさぎっ子
そうじゃないよね?
「ねえ……」
実際うさぎっ子に執着してるのはモフモフしたいだけ……とか思ってけど、自分でも知らない内もっと深い何かを求めてたのかもしれない。だって……なんか怖いんもん。それが実際有り得ると頭が訴えてるのに、心はそんな筈ないって言ってる。私はうさぎっ子を見つめたままその答えを待つ。うさぎっ子の一挙手一投足に目を凝らしてる。
「私は……」
その可愛らしい唇が動いた。強張ってる様に聞こえる声。握ってた拳を解いて、その顔を上げて続きを紡ぐ。
「そんな事を思ってる訳ないじゃないですか。私は、ラーゼ様の事、ン好きですよ」
好きといった時一瞬口ごもった気もするけど、満面の笑みのうさぎっ子を見たらそんなのはどうでも良い事だと思うことにした。他人から好かれるのは当然と思ってる私だけど、やっぱり好いていて欲しい人に言われるとなんか違う。こう、心がホワッとする。世界に愛を説くのもいいかもしれない。こんな争いが絶えない世界で、絶世の美女である私が愛を叫ぶ――ベストセラー待ったなしだね。
「うさぎっ子! 私も大好きだよ!」
そう叫んで飛びつくけど、やっぱり華麗にかわされた。このタイミングでも駄目なの? ちょっと鉄壁過ぎない? 今の絶対に熱い抱擁をする流れじゃん! そしてもふもふする流れじゃん!
「白々しい事を、貴様の言葉を見抜けんのはそこのアホだけだ!」
「ええ、私達は信言を見抜ける力がある。白狼に嘘は通じません!」
えっ!? マジで言ってるそれ? そんな力あるの? 二年越しの衝撃だよ。てかそれが本当だとしたらやっぱりうさぎっ子の言葉は……訝しむ目を向けてしまう。
「ラーゼ様、私が信じられませんか? この数日の時だけでは彼等の言葉には敵いませんか? 貴方様と接した私を思い出してください!」
「信じる」
「おい!」
「ちょっと!?」
後ろの二人がなんか煩い。全く、信じられない奴等だ。こんな可愛いうさぎっ子が嘘つく訳無いじゃん。よしんば吐いたとしても可愛いからよし!
「ラーゼ、あんた本気? 私達は本当にわかる! その子はアンタを殺そうとしてる!」
「そうだぞ、貴様がどうなろうと知ったことではないが、借りを返すためにも聞け。その娘から離れろ!」
真剣なスズリとベルグ。その言葉に嘘は無いと思う。てか二人が私に嘘を言うメリットないし……確かにうさぎっ子にはなにかあるのかもしれない。でもそれは私がどうにか出来る事でも無い気もするし、正直もう良いんだよそういうのは。
「やめて、なんと言おうと私はうさぎっ子を信じる」
私は強く言い切った。その瞳には濁りなく、言葉には迷いもない。それを察したのかスズリもベルグも険しい顔をする。
「どうしてそこまで? どんなに良い顔してても、それはアンタを殺すためなのよ」
「そうかもね。けど、それでも私は今、うさぎっ子を諦めることは出来ないの」
そう言って私はうさぎっ子の手をとる。私みたいにスベスベでキラキラしてる手じゃない。苦労してきたんだなってのがわかる手だ。それでも最近は高級なクリームとか一緒に使ってるから大分スベスベだけどってそうじゃなくて! 私は少し高いうさぎっ子の目を見る。ウサギらしい赤い瞳。綺麗な宝石の様なその目は何か驚いてるようにも見える。
「貴様正気か? 何故そこまで……」
「なぜかって? 教えて上げるわ。よく聞きなさい! それはね、『可愛いは正義』だからよ!!」
「「「…………」」」
ベルグとスズリ、そして何故かうさぎっ子も目をむいて止まってた。全く、そろそろ私という存在を理解してほしいね。私の基準は可愛いに集約してるのよ。だからうさぎっ子は正義なのだ。正確にはうさぎっ子の可愛いは正義だけどね。
「アンタが特大のアホだと忘れてたわ」
「失礼な、可愛いが正義じゃない世界はない。つまり私こそ正義であり、私の認めた可愛いは全て正義なのよ」
「……そう、なの?」
「侵されるなスズリ! あのアホの言ってる事は一言一句おかしい!」
このクソ狼、余計な事を。あと少しでスズリを落とせそうだったのに。これだから可愛いが欠片もない狼はやになっちゃうよ。そう思ってると繋いでた手に力が込められた気がした。だから振り返ってうさぎっ子を見ると何故かプルプルと震えてた。そして顔を上げたかと思うと、うさぎっ子が見たこともない感じで笑いだした。
「はーはー」
いやー私って傍からみたらこんな感じなんだね。思わず止まっちゃったよ。ようやく笑い終えたうさぎっ子はなんとか息を整えてる。そして一つコホンとするといつもの顔になってこういった。
「それではラーゼ様、ご友人との再会も済みましたし、お戻りになりましょう。ここは何もなくつまらないでしょうし、お肌にも悪いですよ」
「貴様! 我らの住処を侮辱するか!!」
殺気立つベルグ、けどうさぎっ子は少し口角を引く付かせるだけで引きはしない。でも、流石に直ぐに帰るってのもね。ここまで来るのに時間もかけてる訳だし、なんかもったいな気もする。それにまだこの二年の事聞いてないし。
「もちょっと話したいことが――」
「屋敷につきましたらお風呂を用意させましょう。隅々まで綺麗にして差し上げます」
「それってまさか……」
まさか、まさかのシチュエーション!? 私はとても興奮してる。鼻息ヤバイ。
「拙いながらも私が」
「是非にお願いします」
ってな訳で帰る事にした。まあまた来ればいいだけだしね。なんかスズリやベルグが最後まで忠告してたけど、生返事してたら「もう知らねーよバーカ」みたいなニュアンス的な事をいってた。けどよく聞いて無かった。だってうさぎっ子とお風呂だよ! お風呂! 今の私の頭の中はそれだけで一杯だった。
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