美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#9

「おおー」


 そんな声を出す私は白地に縦縞の赤の線が入ったワンピースを着てた。これは緑の親子の奥さんの物らしい。どこにこんな物が有ったのかと言うと、カラスが持ってきた籠である。どうやら、私が最初に連れられた場所にガンドンが引く籠が一杯あったのはこの緑の人達の簡易的な家となってたかららしい。誰かのせいで(ここ大事)そう誰かのせいで霊峰と共に彼等の村『ズム』は消え去った。


 だから籠が家代わりになってるらしい。家代わりなら確かに服とかもあるよね。大体はボロボロだし、もう使えないものが沢山らしいけど、必要なものを中から選別してた。もう居ない母との思い出とかあるだろうしね。けどこの服はありがたくもらいます。ほんとうはもっとこだわりたい所なんだけど、まだその段階じゃない。服ももっとちゃんと出来たら私の完璧度が更に上がるんだけどね。ついでに紐も有ったからポニーテールにしてみようとして挫折した。
 私は足も遅いし不器用でもあるらしい。いや多分慣れてないだけ……そう思う事にしよう。でもどうかな? 別に自分で出来る様になる必要性も無い気がする。だって私はその内メイドか執事を侍らせる地位になる予定だからね。


 楽ちん人生には地位も必要なのだ。なので今は後ろから後頭部に紐の中心を引っ掛けて頭の前頭葉部分で結んでリボンを作ってみた。これは案外簡単で不器用な私でも出来た。リボンは女の子の可愛いを強めてくれるからいいね。後は靴も欲しかったんだけど……どうやらこの緑の種族は靴を履くという概念が無いようだ。人よりもきっと皮が厚いんだろう。
 そんな感じはある。触ってみると子供はまだ柔らかいんだけど、大人の人達は見える部分も硬そうなんだよね。まあ子供も足の裏はとても硬くてびっくりした。そういえばこの服、最初よりも際どくない。まあ奥さんは私よりも大きかったし横も全然広いから当然だけどね。最初のただの布は私の白い太腿が露わになってたけど、今は足首まで隠れてる。


「オネーチャン可愛いね」
「私の可愛さがわかるなんてなかなか見る目あるわね」
「うん、おかーさんみたいだよ」
「……ん、うん。ありがとう」


 それはちょっとどうなの? ゴメンだけど嬉しくない。私がアンタのお母さんみたい? どんな目してるのよ。あれかな? 懐かれてる? だから打算的にそんな事を……緑の子供はつぶらな瞳をしててキレイに澄んでる。まあ私ほどじゃないけどね。だから打算はないかな。純粋なだけか。子供にとってお母さんみたいってのは最上級の褒め言葉なのかも。


「アンタ名前は?」
「ケプラーだよ」


 ケプラーと名乗った緑の子供と私は炎の前で色々と話す。情報収集である。本当は大人の方が色々と知ってるから良いんだけど……彼等は私に関わってこない。だからしょうがない。まあだけど有意義な情報はなかったな。ただひとつ良かっのはここが『ルドランド大陸』ということがわかったくらい。そしてこの大陸には人種は少ないらしいと言うことだ。
 いる意味ないねここ。私は私の価値がわかる場所に行きたいのだ。でも大陸超えとなるとそう簡単に出来そうもない。


「飛行機とかあるのここ?」
「ひこうきってなに?」


 そんなのはやっぱりないか。文明レベルは現代程じゃないのかな? けど空の島で見た場所を思い出すとあってもおかしくないと思うんだけどね。


「船はあるわよね?」
「空飛ぶヤツ?」
「え?」
「あれ?」


 なんか噛み合ってないな。この世界では船が空を飛ぶのか。じゃあもっと聞こう。


「その船に乗るにはどこにいけばいいの?」
「おっきな街!」
「なるほど」


 納得である。確かにそういうのは大っきな街……いわゆる都市圏に行かないと行けないよね。村じゃ無理だ。そういえばズム村は消えたんだよね。誰のせいとは言わないけど……どうするんだ?


「近くの町に行くんだって。そこの人達はこうりゅう? があるからって」


 確かに村自体がなくなったんだ。交流がある所に助けを求めるのは当然だろう。ずっと籠で生活するわけにも行かないだろうしね。そう思ってるとなにやらうるうるとした瞳で私を見てくるケプラー。


「オネーチャンはどうするの? どこか行っちゃうの?」
「それは……」


 私はケプラーから視線を外してこちらをずっと伺ってる大人たちをちらりとみる。どう考えても私を信頼してない。それは当然か……別に信頼出来るような事やってないし、存在証明出来ない謎の美少女のままだからね。彼等が私をどうする気なのか……借りがあるからもう殺される事はないだろうけど、朝になったらどうするかわからない。
 そもそも再び私を皆の所に連れてくかな? 無いような気がする。私がカラスを使って脅せば連れてってくれるかもだけど、あんまり気が進まないのも確か。てかカラスで大陸渡れないかな? カラスはそんな長時間飛べなさそうだけど、このカラスはデカイからそんな常識は関係なさそう。でも私がつけた傷が結構デカイのか、さっきからもぞもぞとしか動かないんから直ぐに飛ぶとか無理そう。


「オネーチャンと一緒にいたい!」


 そんな事を言って私に抱きついてくるケプラー。ってちょっとまって、この子力つよ!? 私の細い体がミシミシいってる!! 


「一緒に居てくれるよね?」


 脅しか!? 頷かなったら私の背骨をへし折る気だろこいつ。力を使えば引き剥がす事も出来る……けど、力は制御がね。少しは出来る様になったかもしれないけど、だいたい留めるか放出かしか無いからね。こいつに銃使うわけにもいかないし……そう思ってるとケプラーの父親が彼を止める。


「ほらケプラー、お姉さんも困ってる。もう寝なさい」
「……うん、分かった」


 お父さんに言われてケプラーは素直に籠の方へ向かってく。その時父親に何か耳打ちしてて、籠に入る時にこちらを向いて言ってくる。


「オネーチャン。また明日」
「はいはい」


 私は適当に相槌を打っておいた。ケプラーが籠に入ってくと大人達の二人が私の方へ、もう一人はカラスを警戒してる。カラスも私を心配してか、首を持ち上げてこっちを見てる。まあこいつらが下手なことをしない限りは動かないとは思う。多分だけど……だから私への対応は慎重にね。


「悪いが、ケプラーが起きる前に我らの前から去ってもらいたい」


 ほらきた。そうだろうと思ったよ。別に私的には全然それで構わない。けどとりあえず理由を聞く為にも「何故?」と聞く。まだ夜は長いんだし、必要な事くらいは教えてくれるよね? 私達の間でパチパチと薪が弾く音が響いてた。

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