美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

#2

「ちょっ、これ不味くない?」


 大陸が見え始めるに連れ、私はそんな不安にかられる。この高さから普通に落ちたら間違いなく死ぬ。この美少女ささえも台無しにしてしまう姿で……それだけは絶対に嫌。死ぬのなら綺麗なままか、それこそ跡形もなくが希望。せっかくの美少女なんだよ? 美少女は最後まで美少女であるべき。それが私の考え。まあここで死ぬ気は無いけどね。
 だって私にはゼルラグドーラの力がある。こんな高さでも平気へっちゃら……多分。てなわけで力を両腕に溜める。とても綺麗な世界だ。中々にワクワクする。だからこんな所で死ぬわけには行かない。地上に降り立った時、私の腕は無事では済まないだろう。けどまあどうにかなるか……と考えて地面に向けて溜めた力を解き放った。


「うりゃあああああ!!」


 山が砕け散る程の威力だった。いや山一つで良かったと言うべきか? 赤く腫れ上がり、変な方向に曲がってる両腕。それを治すように力を使い、反動を利用してなんとか地面に降り立つ。


「あわわっとったっ――ふぅ」


 自分を中心に大きなクレーターが出来上がってる。それは仕方ない。だって山消えたし……問題はここからどうやって出るかだ。全方位坂道なんですけど……


「はぁ……」


 そんな風に溜息をついて一歩を踏む。すると力が入らずにカクッと膝が折れた。それに何か周りが霞んで見えるような?


「へ? あ……れ?」


 ドサッと地面に倒れた。ヤバイ、身体が動かない。それこそ指一本も……どうしてこんな? 瞼も開けてられない。身体が休眠状態になろうとしてる。そんな絶体絶命のなか、何か聞こえる。そしてザザーと坂を下り落ちる音も聞こえだす。そしてボヤける視界に誰かが映った時、プツンとまるでブレーカーが落ちたみたいに意識が途切れた。


 
「う……ん」


 深い深い深層から意識が次第に上がっくる感覚。その間に中に蓄えられてた知識が整理されてくような? そんな感覚がしてた。睡眠中は記憶の整理をしてるとか聞いたことがある。それかも……意識が昇って来るに従って音も声もハッキリと聞こえてくる。


「人間?」「分からない」「男? 女?」「確かめる」


 ん? 聞き取りづらいが、不穏な言葉が聞こえた。何か下半身がガサゴソする。重かった瞼が少しづつ開く。背中に伝わる不定期な振動。それに伴って揺れる柔らかな光が見える。それに照らされて緑色で不格好な奴が見えた。四角い感じの顔に、四角い感じに広がった身体。頭には角があり、口からは下から上に向かって二本の牙が昇ってる。
 そんな奴が私の片足を持ち上げて脚の付け根に視線をやってる。うええええええええええええ!?


「きゃああああああああああああああああ!?」
「うがああああああああああああああああぎゃば!!」


 私の叫びに驚いて脚を持ち上げてた奴も叫んだ。そして吹っ飛んだ。頭を爆散させて。思わず思いっきり蹴ったからだ。赤い血が壁に飛び散った。同時に足から嫌な音が聞こえたがそんなの考えてる余裕なかった。だってだってだって女の子の大事な部分を見てたんだよ!? 私下着もつけてないから絶対完璧に見られた。


「な、何事だ!?」


 こちらの様子に残りの奴が気付いたようだ。このままじゃまた見られると思うと自然と考えは一つの所に収束する。


(消すか)


 そう思ったけど、足が治らない。治れ治れと心で思ってるんだけど……今まではそれで良かった。けど、何故か治らないしズキズキする。滅茶苦茶痛い。私はその場で転がりまわる。


「一体何が……」


 出入り口の扉を開けて中の様子を伺ってきたもう一体の緑の奴が呆然としながらそう呟いた。そして仲間の無残な死に気付いたのか、腰につけてた銃の様な物をこちらに向けてくる。


「お前が……お前がデフランをやったのか!!」


 銃口を震わせてそう言ってくる緑の奴。デフランというのはきっと私が勢いで殺したヤツの事だろう。素直に白状したら許してくれる? それよりもこの足治してほしいんですけど? 私はとりあえず転げ回るのを我慢しつつ頭を横に振る。


「本当か?」


 やっぱりそう簡単に信じてはくれないよね。犯人私しか居ないし。でもこんな可愛い美少女が殺せると思うだろうか? 私はコクコクと頷く。


「ならなんでこんな……」
「私の大切な所を見て死んだ。呪われたから」
「な……んだと!?」


 こっちこそなんだと――だよ。まさか信じるとは。けどこれで無闇に危害加えられないんじゃね? しめしめである。


「お前は何故足が折れてる?」
「……」


 しまったそこは考えてなかった。てか痛みでそこまで頭回らない。くぅ……なんかどうでも良くなってきたぞ。早く治療を!


「これも呪いなの……ねぇ、信じれないなら試してみる?」


 私はうずくまる格好で額は床に押し付けてる。痛みに耐えるためにね。私が着てる布はそこまで長くないから既に向こうから見たら際どい筈。それを手を使って少しめくる。何やってんだと思うが、もうどうにでもなれだった。


「ま、待て!! 見せるな!」
「そんな事言わないでよ。こんな美少女のお○んこなんてそうそう見れる物じゃないわよ。死んでも本望でしょ?」
「よせ! やめろ!!」


 更に少しめくると緑の奴が顔をそらす。少し顔が赤いのは気のせいか? けど、この脅しは効果があったようだ。この勢いのまま治療させる!!


「ならさっさと足を治して!! さあ早く!!」
「わ、分かった!」


 そういう緑の奴が懐から瓶に入った液体を私の足に掛ける。すると痛みがなくなった。凄い! 治ってる!!


「あー痛かった。ん? あれ? 何やってるの?」


 何やら薄汚い布を広げて迫ってくる緑の奴。そして私を包んで襲ってくる。


「きゃあー犯されるー!」
「治療はしてやったんだ大人しくしろ!」


 そして数分後……私は簀巻にされた。どうやら逃亡と呪いを防ぐ為の処置のようだ。そして私を縛り終えた奴は死んだ奴に祈りを捧げてた。


(悪いことをしたかもしれない)


 今更ながらにそう思った。

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