犯人→二つ嘘をついた者 犯人→カニバリスト

生明死暗

第3話 休日の行動

今日は土曜日。
帰宅部である僕は、普段なら一日中暇な日だ。
だが、今日は暇じゃない。


朝早く起き、貴理人を可能な範囲で探すことにした。
昨日は三駅分探したから、今日はもっと遠くまで探そう。


藤ヶ丘駅から電車で三駅先の一社駅まで行って、それからは歩いて探す。そうして休みなく歩いているうちに、いつのまにか栄駅のところまで来てしまう。
さすがに足が疲れたので、オアシス21のマクドナルドによって、アイスコーヒーを飲んで一息ついていると、見知っている二人が店内に入ってきた。


「あ、志方君じゃん」
「うわ、志方……」


神野、次いで田中に声をかけられる。
うわってなんだよ、うわって。それが会ってそうそう言う言葉か?
彼女たちはこちらに来る。


こうやって間近で彼女たちの立っている姿を見ると、二人とも背はそこまで高くないが、スタイルが抜群にいいことに気づいた。二人とも155センチから160センチの間くらいで、田中の方が神野より少し背が高いかな、ぼくとたぶんそんなに身長変わらないだろう。


そうか、田中とあんまり身長変わらないのか……。
女子とあんまり背が変わらないという事実に、一人で勝手に落ち込んでいると、


「今日はなんでこんなところに一人でいんの?」


神野に問われた。


「……探してるんだよ、貴理人のやつを。今は疲れたからここで休憩中」
「え、そうなんだ、お疲れ様」
「お前は、なにやってんだよ」
「私は普通に奏多と買い物をしてたんだけど……」
「お前は貴理人を探さなくていいのか?」


僕がこんなに頑張って探しているというのに、彼女であるこいつは全く探すそぶりがないことに、少し腹が立つ。


「んー、だって、素人が探しても……警察に任せとけば、そのうち見つかるでしょ」
「警察か……」


警察が見つける前に見つけたいんだよなぁ。


「よっこらせ」


立ち上がって、コーヒーのカップをゴミ箱に入れ、出口へ向かう。
「あれ、もう行くの?」
「ああ……」


出口から出る。すると、なぜだか一緒に田中までも来た。


「なんだ? 僕とデートしたいのか?」
「そんなわけないでしょ、あんたとデートとか冗談でも気持ち悪い……」
「じゃあ、なんだよ」
「美花ちゃんね、ああ見えて、心配していると思う」
「そうかぁ?」
「うん、明るくて鳥木のこと心配してなさそうに見えるけど、それはいつも通りふるまおうとしてるからだと思う」
「そうかなぁ……」
「だから、あんまり美花ちゃんのこと、責めないであげて」


まっすぐ俺の目を見てくる田中。
こいつ、美花のことを妄信しているところがあるからなぁ。といっても、ここまで言われると否定的なことは言えないな。


「ああ、わかったよ、わかった。じゃあな」


その場から足早に去り、また探索を開始した。
結局名駅の方まで探した。足が痛い。歩きすぎた。
帰りは電車に乗って帰ることにした。藤ヶ丘駅で降りると、改札口のところらへんで小山さんにばったり会った。


「あ、あれ、し、志方君!?」
「やぁ、奇遇だね」
「そ、そうだね、ほんとに、……」
「今、帰り?」
「う、うん」
「じゃあ、一緒に帰ろうよ」
「え、あ、うん」
彼女と一緒に改札口を通り、駅から出てひたすらに歩く。
「志方君は、その、今日も、貴理人くんを探してたの?」
「ああ、そうだね、相変わらず見つからないけど」
「すごいね……志方君は」
「なにが?」
「こんな休みの日まで探して」
「普通だと思うけどなぁ」
「そんなことないよ、絶対ない」
「そ、そう……」


普段の彼女では考えられないくらい強く言われて、少し気恥ずかしくなってしまったので、話題を変えることにした。


「そういう君は、今日はどこに行ってたの?」
「え、えと、映画館に行ってたの」
「へー、映画館ってどこの?」
「み、ミットランドスクエア……」
「ふーん、何の映画見たの?」
「き、君の名前はって映画」
「ああ、最近話題のやつだね。面白かった?」
「うん、すごく……」
「へー、僕も観ようかなぁ」
「うん、観た方がいいと思う……」
「そっか。じゃあ観るよ」
「うん……」
「…………」
「…………」


会話がなくなってしまった。
もともと、貴理人以外には、そんなべらべらしゃべるタイプじゃない。ここ最近はいろんな人とよく話している気がするが、自分でもそれはびっくりすることなのだ。
どうしたもんかなぁ、と思っていると、


「……志方君、わたし、実は、今週の火曜日に、告白されたんです」


え?
……あ、ああ、告白ね、告白。
いきなりそんなことを言ってきたもんだから、一瞬何を言っているかわからなかったよ。


へぇー、小山さんが告白されたのか。まぁ、美人だし、性格いいし、告白されることなんてしょっちゅうだろうな。
でも、なんで僕にそんなことを話したんだろう?


「へー、だれに告白されたの?」
「……教えません」


彼女はいたずらっぽく言う。
小山さんにしては珍しい態度だ。


「なんで、教えてよ」
「だめです。志方君には……その……言いづらい人なので」


言いづらい人?


「教えてくれたっていいじゃないか……まぁいいや、それで、付き合うことにしたの?」
「いえ、他に好きな人がいるって言って断りました」
「え、誰?」
「……秘密です」


彼女はなぜか顔を赤くして言う。


「あ、私、ここを曲がった先が家なので、じゃ、じゃあまた学校で!」


彼女は曲がり角を曲がると、さすが陸上部だけあってきれいなフォームで走って帰っていった。
女の子には秘密が多いっていうけど、それは彼女も例外ではないようだ。


それからは寄り道をせず、僕も家に帰った。
この日はそれから何の進展もなかった。
翌日の日曜日も可能な範囲で探したが、何の収穫もなし。
そして、月曜日がやってくる。

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