ミッション;神の打倒

桜餅師匠

14、レグマ王城まで

(えぇ!?1つレベルアップで手に入れたステータスポイントが70000!?これは多すぎる......つまりは2つ上がった今俺が所持しているポイントは140000.......また適当な振り分けしておかないと。)


「して、何故それが特に不自然だと?」

「えぇ、野盗は普通、一度に多数が捕まってしまわないために、10〜20人程度で。もしくは超大多数で集団を作るので、真ん中の100や90もあるはずがないんです。」

「ほう?」

「そして王女はまだしも、王がお忍びで来ると知らない割には暗殺のために集めた人数が多すぎる。しかも成功したとて貴方はそれを宣戦布告と受け取り、戦争の勃発。それは免れえないでしょう。しかし、例えば王家の者を総殺出来るなら話は別でしょう。生け捕りにすれば身代金を取ることも出来ますね。」


 カミナは言いたいのはつまり、野盗は王のお忍びの件を知っているという事。テロリストとしてリョートー都を狙ったという事。そして、裏にはレグマ・ファルマ・ムタマ國が関与している可能性がある。という、この3つだ。2人も、彼の説明に頷かざるを得ないようだ。
 そして、そのジャック・ボックスびっくり箱の構造を見てみるとまた新たに分かる事が発覚するのだが.......彼は今は言うつもりは無いようだ。現行犯でない限り、物的証拠は敵を法的な返り討ちさせるための重要なキーカード。


「しかしこれでは、遅れる事は確実だな.......交渉は一層不利となることだろう。我々はレグマの到着が遅れてしまったからな。しかし命を助けて頂いたのは感謝している。アイス殿。」


 仕方がないとは言え、やはりジェムズが傷付いたショックは大きいらしい。深々と頭を下げるロンド。それにカミナはお茶目な返答を返す。


「あ、もしかしてレグマの到着が遅れちゃう〜とか思ってます?まぁまぁ、落ち着いて。とりあえず今日はゆっくり休みましょうよ。明日の早朝あたりに出ても十分に間に合うはずですよ。」


 2人は複雑な表情を浮かべる。目尻をひくつかせ、満面の笑みで固めている。カミナは失礼ながらほんの少しだけ面白いと思ってしまった。




「こんな平原の真ん中野営をしても大丈夫なのか?」


 夜。星に照らされて足元が見える程度に明るい中では、ジェムズを退けて、先ほどいた所には焚き火がある。それだけでかなりの光源だ。


「えぇ、大丈夫ですよ。俺が見張っているからね。それでもって、お風呂はこれだよ。質素で狭くて悪いね..........」

「な、なんと!お風呂まで!アイス殿は素晴らしいのだ.......」

「まぁ、俺の外套は脱げないので、何かでカーテンを作るしかないか...適当に火でいいだろう。”火よ、彼の者と私を高く隔絶せよ“」


 眩しいほどの赤い炎がカミナとラナの間に壁を作る。詠唱を使ったので、持続をしても魔力は使わない。
 そして、ロンドとカミナの間には昼の車内のような沈黙が走る。だが片方は、忙しやのようだ。


(接続、再送信。宛先:ディルキィ)


 沈黙の後、ルキから頭の中に声が届く。


(ふわぁぁ......ん?どうかされましたか?ご主人様がここを出てからこんな早くに通話するという事は、何かあったのでしょうか?)

(あぁ、まぁ、軽くリョートー都の存亡がかかっているレベルで何かはあったな。とりあえず、早朝に獣化してリョートー都からレグマ・ファルマ・ムタマへ通ずる道の端に俺は居る。そこで会おう。獣化は何分持つ?)


 もう、カミナがリョートー都出たという事はバレてしまっていたらしい。


(えぇ!?獣化はわたしの意識が持つ限りいつまでも持ちますが、ご主人様は何をされたんですか.......?)

(説明は面倒だ。とにかく獣化は解かずになるべく速くここへ付いてほしい。よろしく頼む。おやすみ。)

(むむむ......色々聞きたい事はありますが........はい、分かりました。おやすみなさいです。)


 奴隷である獣人族の彼女ならば、2つ返事で命令に従ってもらえる。本人も無茶は承知だが、そうするしかない。ラナが風呂から上がる前に食事もせず彼は寝てしまった。




「あったかいなぁ〜...ん、でも少しゴワゴワしてる?でも、こんな上質な枕はあの時振りだ.......ぁは!こうしている場合じゃない。おいおい、ラナ早速出るぞ!俺はこの2人を起こす。お前もさっさと起きるんだ!.......と思ったが、まだ夜明け前か....」


 焦った様子で起きるが、まだ夜明け寸前だ。微妙な空白があると寝起きの状態だとまた落ちてしまう可能性があるので、それを危惧して顔を洗って目を覚まさせる。意識が完全に覚醒したところで、視界の右上の青いゲージについて疑問を持つ。一切回復していない。青いゲージは右から空になっている。自然回復はしないのだろうか?さすがのカミナでも少し焦ってしまう。


「これ、このままなんだろうか...?」


カミナの不安げな声は、虫の声すら微かにしか聞こえない真夜中にうるさいほど響く。
 炎聖竜を出したままなので、MPが停滞しているということに気付く。現在の自然回復速度と炎聖竜の出現持続に必要なMP消費の速度は変わらない。使えば使うほどに減ってしまうというわけだ。なんとしてもレグマ・ファルマ・ムタマに着くまではこの残り少ないMPを出来るだけ多く残しておかねばならない。


「まぁ、今日はルキも居るし、戦闘は彼女に任せよう。だいたい、俺とルキの速度にかなう奴がここらに居るはずがない。」


 そう言って自分を激励し、意識でステータス画面を開く。レベルアップによって手に入れた70000ものポイント。それを振り分けた。最初の振り分けで土台はすでに完成しているので、2回目はそんなに時間は掛からなかった。そしてそれ以降も時間は掛からないはずだ。
 素早さ(AGI)と活力(VIT)をメインに上昇させると、気づいたことがあった。魔力がほんの少しずつではあるが回復している。


(なるほど。活力は回復力にも影響するんだな.....で、出現持続の魔力消費よりも回復力が上回ったと。いやー。でもこれ、本当に凝視していないと変化に気づかないなぁ......)


 また新たな変化を知り、ウキウキとした気分になったカミナ。今度は自分の奴隷であるルキの意識を覚醒させようと、獣化し、人を4人ほど乗せられるようなほどに立派な白狼の耳元で囁く。


「おーい、ルキ〜。起きるんだよ〜。王様と王女様を乗せて行くんだ。」

「ハッ....ハッ.......クゥーン......」


(息が荒くなってる......まさか、コイツ。興奮してるのか?いやいやそんなまさかな。変な当て付けはダメだ。ちゃんと起こさないと。そろそろ間に合わなくなってくる。)


 ルキの耳は野生で育った上に元より狼というそこが優れた感覚器官の一部だ。なので、とても敏感だ......どうやら彼女ばかり少し卑猥な目にばかり遭うのは彼女の運の悪さが原因だろう。
 出発する瞬間まで、彼女は口を利いてはくれなかった。




 風景の映り変わりが激しい中で、カミナは何度も何度も謝る。ちなみに3人は未だに起きないので、ジェムズをカミナがおぶり、獣化のルキが残る2人を器用におぶったままの中、走っている状況だ。


「なぁ、ルキ。俺も知らなかったんだ。本当にすまないと思ってるよ。」

「..............」

「ねぇってば〜!!」

「わたしだって、もちろん非がありますけど......それでも、弱い所を執拗に攻めるだけでは生殺しじゃないですか.......ご主人様の意気地なし。甲斐性なし。助兵衛スケベ。」


 ルキの低い唸り声は、風に巻き込まれて誰の耳にも届かない。そこからまた会話が出来るようになるまでに、2人は起きていた。


「んぁ...?わたし、どして...!?いやぁぁぁあ!!なんか速いぃぃぃぃぃ!」

「お、起きたな。正気を保ってくださいね〜。落ちたらどうなるか俺にも分かりませんよ〜。背中の毛は無慈悲に掴んじゃって良いですから。」

「いやぁぁぁぁうわぁぁ!」

「あ!危ない落ちる!」


 パニックとなったラナは背中から落ちかけるが、ルキは減速してラナの体幹を前に戻す。慣性の法則を利用した素晴らしい対応を行なったルキには、後で褒美をやらねば。心配は杞憂だったようだ。そして少しずつ落ち着きを取り戻す。状況を把握してきたようだ。


「ふぅ.......後は王様と執事か.....あ!王女様〜!王様を起こしてくださーい!今度こそ事故を起こすかもしれませんので!!」

「落ちそうになって悪かったなぁぁぁーーー!!」

 冗談を言える程度に余裕は出来たようだ。王女はカミナに従って王様を起こす。するとラナと同じようにパニックになり、同じように落ちそうになり、そしてラナが助けた。




「私たちはリョートー都からの遣いにございます。」

「え、で、でも、遣いが来るのは明日の午後なのですが.......予定より、今は24時間と8時間早いのですが........」

「あぁ、こちら側で不祥事に遭ってしまって、予定より早く着いてしまった、申し訳ないが、王に会わせて貰えないだろうか?」


 カミナパーティー一向は、1時間程でレグマに着き、門番兵はそのシュールな光景に焦燥と動揺を隠せない。
 ドレスを着た王女と、質素だが上質な服を着た王様はあまりに大きすぎる白狼の上でぐったりとして休憩している。その隣で、外套のフードを着たままのカミナは、未だに起きない執事の服を着た白髪のジェムズをお姫様抱っこして自分は遣いだと言う。門番兵は、どうして良いものか迷って、目が泳いで脂汗が滲んでいる。どうやら手続きに少々時間が掛かるようだ。上擦った声でもしっかりと応答する。


「しょ、少々お待ちくださいね!」

「あ!....あぁ、まぁ、いいか......」


 逃げるように走り去る門番。きっとレグマの王へ判断を委ねるつもりだろう。


(ヤバイ...!ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!なんだよアイツら、本当に遣いか!?只の変人の間違いじゃねぇのか!?
 レグマの立場から言えたもんでもないが、リョートー都は変人の国なのか!?謎の白狼までいるし!オレはなんか知らんけど王城まで走ってるしぃ!?)


 門番兵は今、走っていた。全力疾走。一時的ではあるが、両国のプレッシャーが1人に集まっている。変人に出逢ってから高鳴り、細かく刻んでいる心臓に、走ることにより一層負荷を掛けている。
 事後の門番曰く、いままで国軍で受けたどのトレーニングよりも厳しく、疲れる。と。そしてこの体験を機に軍の大幅強化に臨み、大成功し伝説の存在となったのは、これまた別の未来のお話。


「ギゥ....ハァハァハァ.....!んく、ぜぇ.......もう、どうなってんだよーーー!!!!」


 唸り声、息切れ、緊張と疲れで粘着質になった唾を無理やり飲み込み、全力で走って、叫ぶ。一国の兵士がこのような事をしているのは、レグマに極めた異変が迫っている証拠に十分足るだろう。取り巻く国民もその兵士を目で追う。そろそろ息と唾から血の味がしてきた。喉の血管が切れたのだ。
 王城を駆け抜け、一度王の間の扉前で話せる程度に呼吸を整え、勢いよく入る。


「突然の訪問、失礼します!リョートー都からの遣いがやってまいりました。現在門前へ待たせてあります!」

「なんと!?いや、遣いだったらすぐ通して良いはずだ!なぜ一度報告に来た?」


 尊敬する王の叱責にびくりとはしたものの、ここは兵士として鍛えられた肝っ玉の見せ所だ。


「それが、このような事を言うのは非常に失礼にあたると承知で申し上げます。彼らは変人なんです!自称“遣い”の執事を姫様と勘違いしている外套男と、馬扱いする人間に従属する孤高の白狼!そしてその背に乗った男女。パーティー御一行!」

「「「「ぶぁっくしょい!」」」」

「ふむ...たしかに変人の巣窟だな.......」


 王は一考した後、こう判決を下す。まわりの膨よかな大臣なども生唾を飲んで見守る。


「良いよ!通すんだ。ついでに馬車も引くと良い。君が手綱を引くんだ。いいね?」

「はっ!仰せのままに!!」


 パラパラと拍手が喝采される。これは一体何に対しての拍手なのだろうか。しかしカミナ達にとってこれは嬉しい状況になった事に違いはない。その門番兵は今度は余裕のあるジョグで王の間の大門まで行き、一例して退く。また同じペースで外壁まで行くと、馬車を取って前へ出る。そして流れる大通りを今度はさらりさらりと移動し、外の門に着く。


「大変長らくおまたせ致しました。どうぞこの馬車へお乗り下さい。」

「これはこれは。どうも、ご丁寧に有難うございます。では早速。」

「えちょっ、えええ!えぇぇぇ........」


 外門を離れた時とメンバーが変わっていて、驚きを隠せない。執事が立ち、外套男は今度は小さな少女をお姫様抱っこしている。小さな王女らしき人と平服の男はしっかりと立っている。


(いや、そんな完璧な角度で全員で首を傾げられてもね........かわ、かわいくねぇし?.........かわいくねぇし!!)

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コメント

  • 桜餅師匠

    コメントありがとう御座います!いえいえ、私はまだ未熟者ですよ。
    コメント返信遅れてごめんなさい。m(__)mそして応募ありがとうございます!(遅い)

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  • マニア

    結構未熟といっていますが、すごい作品になってますね!私ビックリしました。応募します!これからも頑張ってください!

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