ミッション;神の打倒

桜餅師匠

7、命がけまで

「カミナ。アタシがさっきミッションを終わらせたいって言ってたけど、やっぱりやめにしましょ。だって、素手で戦うなんてとても無茶よ。危ないわ。」

「そうか。実感なかったけど丸腰って危ないよな。そういうルルも丸腰だろ?」


 昼食を食べ終えたカミナとルルは、ルルの提案により、街の武具屋で装備を揃えることにしたので、またしてもルルの案内の下、街を歩く。


「アタシは良いのよ、この精霊技があるし!」

「そんな事言うな。万が一の保険は必要だ。短剣の1つでも持っておくといい、戦争ならまだしも、冒険者の本文は戦闘だ。小規模の戦いが連続して続くのに、間合いを詰められれば精霊技なんてまるで意味を持たない。そうなればルルはかわいくていたいけな少女・・・・・・・・・・・・だ。待っているのは死だろう。つまり、精霊技は便利で火力が高いが、万能ではないということなんだ。それはどんな武器にも言える事なんだがな。ねぇ、聞いてるのか?」


 カミナのゲーマー魂は燃えてついつい語ってしまうが、ルルは話を半分程しか聞けてない。髪と同じ色...顔を真っ赤にして俯いている。


「可愛いって....いたいけって言った........ふへへぇ...」


(おぅぅ...なんかまずかったかな....ルルの取り柄の精霊技を俺は否定したんだ。顔を真っ赤にして怒るのも無理ないよな.....仕方ない。叱られるなら大人しく叱られておこう。)


「す、すまん。その...精霊技を悪く言うつもりはなかったんだ。俺はみんな違ってみんな良いって意味で、決してルルが無能って意味じゃないんだ。誤解してるなら本当に悪いと思ってる。だから顔上げてくれ。」


 カミナはルルの下を向いた顔を手を払われる事覚悟でおでこを持って上へ押す。ルルはカミナより少し下の身長で、カミナは覗き込む。のぞかせたのはルルのとろけた顔。


「えぇー....どうしたのよさ.......」




 デレから戻ったルルはカミナと武具店を目指し、右へ曲がって大通りに出る。大通りには行商人の質素な荷馬車や貴族の豪勢な馬車が石の真ん中を走っている.....沿って歩くと右側に武具店が見えた。


「ほほう。ここが武具店か....」

「さ、行きましょ!」


ルルが走ってカウンターへ行こうとすると.....


「きゃあ!助けて!むぐっ...」

「静かにしろ!ケモノ如きが耳障りだ!」


 すぐ手前の細い路地から幼女のものらしき小さな手がちらりと見える。そして大きな手が.....その小さな手を抑えてかかる。


「まずい!これは非常にマズイ!助けなきゃ!」

「?カミナ?どうしたの?」


 ルルは気づいていない...というよりもどうでも良いようだ。カミナはケモノへの強姦だと察し、助けようと引き込まれた路地裏へ走る。


「ルル!武具店で武器を買ってくれ!出来るだけ小さい物で!あと服も!」

「えっ?!ちょっと、なんでなんで?!」

「獣人の子を助けるんだよ!さぁ、早く!」


 路地裏に入り、スラムらしき小さな街へ出る。そこに、鍛えられてガタイの良い坊主の大男が...


「行けるか.....正直これは博打を打ってるんだが...まぁ大丈夫だろ!」

「ん?おわ?!なんだお前!?」


 大男は大いに驚く。きっと、彼の目には“ケモノ助ける物好き”にカミナは見られているだろう。


「今すぐその子を離すんだ...!」

「へへっ離してやるかよ!折角上玉のケモノを手に入れたんだ。ヤらねぇ手はねぇよなぁ?」


(なんて奴...絵に描いたような何処にでもいる悪党だな...だが、基礎体力にだけは自信がある!)


 カミナの目は幼女に映る。裸だ。あと数秒間に合っていなければ、彼女の貞操はどうなっていただろう。瀬戸はそんな事を考え、頭を横に振る。やめよう。


「ハハッ!行くゼェそらそらそらァ!」


 大男が飛び込む。からの右、左のジョグを繰り返す。だが、カミナには余裕があった。


「っ!遅い!俺はまだまだいけるぞ!」


 大男の大ぶりな横殴りが、カミナには紙が落ちる程にスローに見える。これならいけると確信したカミナだったが....大男の速度が急激に速くなり、懐から小ぶりなナイフを取り出し横真一文字に一閃する。。


(ッキィ!暗殺者!)


 ナイフを目視した瞬間、首を下げたが数瞬遅く....


「っがぁぁぁあああああああぁぁ!」

「ハッハッハハハハ!」


 カミナの首に真っ赤な一の字が浮かぶ。首を押さえて悶え苦しむカミナの姿に大男は狂ったように笑う。視界の右上には少し減ったHPの表示。初めて減ったHPに、カミナは軽くショックを起こす。


「真の武器ってなァ隠すもんなんだよォ...!」

「ふぅ....ふぅ...ハァ...ってめぇ、暗殺者か...!」

「そうだよ....俺ァここン裏ギルドの幹部だよォ...!」

「っそうかよ!“災よ、我になんじの最大級の加護を”!」


 カミナは災はある程度なんでも操る事を事前にラナから聞いていたため、災の精霊技のバフ強化を自身に掛ける。
 すると右上のHPは変わらないものの、下のMP表示のそのまた下に、「バフ:身体強化」の文字。


「っ!お前、精霊技を...しかも災ってェ!?」

「チェックだ!」


 カミナは雄叫びを上げながら懐へ走りこむが、大男の驚いた顔に笑った仮面が貼り付けられる。そして懐にはもう一つの短剣........


(何を....笑って....あぁ!)


「そらァァ!」

「グ....がはっあぁぁ!...」


 大男はそれを左手に上からカミナの肩口を深く切る。そして足で腹を蹴り、距離を取らせる。身体は3回転がり、瀬戸の意識は若干薄れる。もう痛いなんて言わない。この深い眠気に誘われてしまえば、もう何も考える必要はない。カミナはそのまま目を閉じる。


「だから言ったろォ?真の武器は隠すもんだってよォ!」

「大丈夫?!カミナ、これを!」


 フードのついた質素な服を担いだルルがカミナへ投げたものは、両手で持つような、重くて腰から肩までの剣。いわゆる両手剣だ。


(そうだ!俺はこの子を救うためにここへ来たんじゃないか!返り討ちに遭って......どうするんだ.....!冷静に...冷静に!)


 剣を右手に取り、立ち上がり、吐血により顎についた血を手の甲で拭き取る。


「いっ.....しぶといヤツだなァ!?一気に終わらせるぜェ!」


 大男はラストスパートをかける為、走り、飛び上がる。カミナはそれを呆然と見ている。


「カミナ、危ない!」

「お前、空中で移動出来るの。」


 カミナはそう呟き、両手剣を持っている右腕を伸ばし、大男へ向ける。大男の鳩尾みぞおちに両手剣が深く刺さる。顎を大きく開いたまま、声にならない叫びを上げる大男を、カミナは両手剣ごと離す。すると仰向けに倒れて唸り、剣は立った状態になる。


「ねぇ、お前の敗因を教えるとしたら....そうだなぁ、たくさんあってどれを言おうか〜」

「ぐあぁぁあ....」

「え〜と、相手の布石を読まなかった事と〜暗殺者なのに大柄になるような鍛え方した事と〜お前が情報を流出した事と〜....後は自分で考えなよ〜。」


 カミナは大男の前にしゃがみこんで、指折り敗因を数えていく。歌うように喋るカミナの癖が出る。それでも大男は諦めない。


「嬢....ちゃん...!コイツは、精霊技を!使える.....!災も!」

「あー.....うるさいなもう!」


 カミナは大男へ冷ややかな視線を向けて、こう詠唱する。


「“土よ、彼の者を地の深く深く底へ.......墜とせ”」


 大男の真下に穴が空き、すでに息絶えた大男は叫び声もないまま。カミナは穴をまた塞ぐ。


「じゃあルル、この子に治療を頼める?あの人に酷い目に遭わされてたんだ。あと、服もないからその今持ってる服を着せてあげてね。あ、俺は目を塞いでるから、安心してく「バカ!」れ...?よ.......?」


 ルルは目一杯にカミナの頬を叩く。そのカミナは何をされたのか一瞬わからないでいる。


「バカ!バカバカバカ、大バカ者!こんなバカな事に命賭けてどうするつもり?!アンタが死んだら、もう....アタシは悲しいのよ!」

「え?悲しい?なんで泣いているんだ?俺は死んでいないじゃないか....だから泣くなよ。な?ほら、涙拭き取って。」


 ルルはその場で泣き崩れる。カミナはしゃがんで囁く。そしてケモノの幼女の方へ向かい、またしゃがんでこう言う。


「ごめん、彼女が君の治療をやってくれるはずだったんだけど、自分がやるよ。裸なのはちょっとだけ我慢しておくれ。“聖よ、彼の者の外傷を治したまえ”」


 カミナが唱えると、ケモノの幼女の土だらけの裸体の擦り傷はどんどんなくなっていく。


「あの、助けてもらって、ありがとうございます。.......あの!どうして自分を先に治療なされないんですか?」

「だって、君のほうが心配だから....ダメだった?」


 ケモノの幼女はそれはそれは小さかった。髪が銀色で、声はものすごく高く、今にも壊れそうなガラス細工のような華憐さと儚さだ。


「いいえ....でも、あの、失礼ですが、自己犠牲は.....その、ずるいと思います....」

「え?ずるいっ?ごめん。何が言いたいのか全然分からない。」


 そう言って立つと、目の前がくらくらしてくる。立ちくらみか。脳が焼けるように熱い。耳にじん、じんという音が聞こえて直感する。


(あ、これぶっ倒れるやつだわ....)

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コメント

  • 小説書いてみたいけど内容が浮かばない人

    女って(マンガとかの)よく、好きな人が危険犯すとビンタするけど、なぜするのか分からない…いやまあ、お説教的なやつってのは分かるけども…

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