ミッション;神の打倒

桜餅師匠

6、仲間まで....

「良い調子で進んだわね。これならお昼を食べて簡単な依頼をもう1つこなせるわ。どうする?」


 瀬戸は一度話を制止させて質問に移る。


「ちょちょっと待て、俺はお前にいくつかの質問がしたいんだ。」

「何?大抵の事なら答えられるわよ。」


 瀬戸は質問を並べる。


「まず1つ、お前は何者だ。精霊技を使えるのはこの都で位の高い奴だけの筈だ。」

「アタシは冒険者ギルドの組長.....の娘よ。ここじゃ結構有名なんだけど。知らなかった?」


 瀬戸は思いだす。受け付けの嬢もまるで彼女が精霊技を扱うのが当然のように依頼の説明をしていた。
 そう考えれば、冒険者の間で彼女は凄く有名なのかもしれない。


「へぇ、そうなのか。」

「そうなのよ。アタシの名前はルー・フラント。ルルで良いわよ。アンタはなんて言えば良い?」


 カミナは質問したい事を先取られて名前をルルに名乗られた。


「俺はカミナ。呼び捨てでカミナで良い。」

「オッケーカミナ。よろしく。」

「よろしく。」


 2人は両手で握手し、瀬戸は提案をする。


「じゃあ、お昼にしないか。簡単な物なら俺でも奢れるかもしれない。何かオススメはあるのか?」

「いいわよ、そんなこと考えなくて。」


 カミナはルーの肩を持って揺する。


「そこは俺に奢らせるんだ。女性にお金を払わせっぱなしというのは、男としては最低の事なんだ。だから頼む。いや、奢らせろ!!」


 ルーは肩を揺すられて首がガクンガクンと上下に揺れながら答える。


「分かった、分かったわよ!男の甲斐性のことは分かったから!お勧め連れてってあげるわよ!!」

「なんなのよ、アンタ.....」


 ルルがジト目で睨み、その呟きは誰の耳にも拾われずに死んでいった。そして、ルルの案内の下に屋台のような出店のような店に着く。




「アンタお金の計算....っというか、ここリョートー都都貨幣とかへいのルール。わかる?」

「いや全然全く。」


 カミナの堂々とした否定にルルは思わずおでこ押さえて不安の頭痛を覚える。


「はぁ....都銅貨10枚で都銀貨1枚。都銀貨100枚で都金貨1枚。都金貨100枚で白銀貨1枚よ。覚えておきなさい。まぁ、白銀貨なんてそうそうお目にかかれないと思うけどね。」


(都銅貨が10円玉、都銀貨が100円玉、都金貨が1万円札って感じか。そして白銀貨は100万.....)


「そんなに希少なのか?白銀貨って。」

「えぇ、相場よりやや高めのケモノを1匹買えるレベルよ。」

「えぇー高いんだなー。」

「何よその棒読み。まさか、ケモノも知らないワケ?」


 瀬戸はそれを知らないはずがない。何せケモノは獣人族で、人間が奴族化させている。当然悪い扱いや差別も受けているだろう。獣人達も確か人を毛嫌い、嫌悪している筈だ。
 瀬戸はそれを思い出した瞬間、地味な吐き気が襲ってくる。心地が悪い。
 良い事なんてないはずなのに、どうして自分を傷つけるような事をするんだろう。
 簡単に想像出来る。頭部に獣の耳が生えたボロの布切れを着た人間が、ちゃんとした服を来た太った人間に鞭を打たれる姿。
 今まで数える程度しかなったことがない本気の怒りがこみ上げてきた。


(貴様人間らは、何も分かっちゃいない.....!自分でどんな扱いをしてきたかも覚えてないで........!)


「............ナ!カミナ!カミナ!」

「貴様は、何も分かっちゃいない!」


 カミナは天に向かって吠える。にぎやかな市街地が一瞬静寂へ静まり、辺りの視線は一気にカミナへと向けられる。


「ひっ!?どうしたのよそんなに怒って.....何が分かっちゃいないのよ?」


 カミナの急な罵声にルルは驚きと恐怖を覚える。だが、勇敢に問い詰める。


「ああぁ、ふぅ、いや、すまん。今のは忘れてくれ。」

「でも....そんなこと言ったっ「忘れてくれ。」.....分かったわよ...もう。」


 ルルは頬を膨らませてそっぽを向く。赤い髪はカミナから左へ揺れて離れ、またしてもカミナはそれに見惚れてしまう。


(あぁ、俺、この人と行動を共にしてると、いつか心臓麻痺して萌え死にそうだな.....あるかもしれないから尚更怖い。)




 出店の男性に、ルルが話しかける。出店の男性は、黒のTシャツに頭にタオルを巻いている。火を使っているのか、肉の焼ける良い匂いが食欲の旺盛な市街地の歩行者を引っ掛ける。


「おじちゃん、タコスちょうだい。いつもと違って2つね。間違えないで頂戴ね。」


(タ......コス............タコスだと?!あの、“胃にもたれそうな食べ物といえば?”というアンケートを200人に聞いた結果、4位に輝いたあのタコス?!)



 タコスとはメキシカン料理であって、決して“胃にもたれそうな食べ物といえば?”というアンケートを200人に聞いた結果、4位を飾る料理ではない。


「はいよ!嬢ちゃん、今日は男連れかい?!良い歳して、やる事やってんね〜、うりうり〜。」

「辞めてよもうっ!あぁ、どうも。お勘定はこの人がやってくれるの。」


 ルルは男性から紙に包まれたタコスを2つもらい、カミナはお金を支払おうと金額を聞き、しっかり2人分払った。その後、カミナはルルから1つ貰う。


「「いただきます。」」

「うぅっ、胃にキそうだ!この匂いからっ!今夜はトイレにこもりきりかなぁ...?」

「ぐちぐち言ってないで食べるの。結構あっさりしてて美味しいんだからね?」

「了解っ!じゃあまずは一口。」


(おぉぉぉ....おぉぉ!!!口に入れた時、主張の激しいソースが絡まったきつい肉が入って来たと思ったら、外側の生地とこの野菜、キャベツ?の水分とほのかな甘みが優しく中和してくれる!さすがメキシコ!やることやってんね〜、うりうり〜。)


「んん!美味しい!」


 ルルは一口で頬がパンパンに膨れ上がり、カミナはなぜかツヤツヤしている....なぜか。




 2人は驚くほどの早さで食べきってしまい、幸福のため息をつく.....そこで、ルルが最初に口を開く。


「かっカミナ!その....」

「ん?なんだ?」

「言いなさいよ!」

「えっ....何をだ?」

「何か悩んでいることがあるんじゃないの?だって、さっき“貴様は何も分かっちゃいない”って言ってたじゃない。なんでも話してくれて良いのよ?アタシ達は仲間なんだから!」


(どぅおっっほぉぉ!?ここでデレが入りますかぁぁぁぁ?!)


 瀬戸はルルの思わぬ優しさに驚いてしまうが、貼り付けた笑顔でなんとかバレないようにする。


「おう....まぁ、あれは半分くらい自虐も入ってるんだけど、ルルが気にする事じゃない。大丈夫。俺は元気だ。」

「そう.....ならいいけど。」


 カミナは特にない力こぶを見せて元気をアピールする。そして。


「でも、男の俺が言うのもなんだが、仲間と言ってくれて嬉しかった。今日限りのパーティーだけど、ルルと過ごした1日は多分ずっと、忘れられないな。だって、何もかもが初めてだったんだから。」


 ルルは、訳の分からないとばかりに首を傾げる。


「えっ?何言っちゃってるの?」

「ん?んん?」


(そこはかとなーーーーく何かくる予感がするぞー?おー?)


「ずっと仲間じゃない!アタシ達は!」


 手を、腕をいっぱいに広げて、“ずっと”を身振りで伝える。
 瀬戸の心が、ポカポカ、フワフワ、とだけでは言い表せられないほどの温かい気持ちで満ち満ちていく。その余韻に浸って、しばらくぼーっとしていると、


「あれ....カミナ?何ぼーっとしてるの?アタシこれ結構恥ずかしいんだけどなぁ.....あはは....」

「いや、嬉しすぎてぼーっとしてた。ありがとう。これからもよろしく。ありがとう。」

「お、オーケーってことなのね!あぁ....良かったぁ....断られたらアタシ、一生立ち直れなかったかもしれないわ...」


 ルルは安堵のため息をついて、右のこめかみの髪の毛をくるくるといじる。


(今はまだこれで良い。アタシはまだこれで良いのよ...!)


 ルルはまだ知らない。この油断が後に“恋路的に”命取りになると言うことを..........

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