街に入ろう

洞窟の中ではわからなかったけど、日が沈みかけている。

イズモノ街から少し離れた所にゲートを作ったので今はオロ、僕、お鶴さんの順でゴンタに乗って草原を走っていた。
ゴンタが大きいとはいえギュウギュウだ。
テルはゴンタの頭の上…すごいバランス感覚。

ゲートから街の外壁が見えていたのですぐに到着した。

ゴンタから降りて門番のいる入り口に向うと

「ちょっとここで少し待ってて下さい。門番に話を付けてきますわ。」

門番、ゴンタ見てビビってたもんね。

お鶴さんが門番と話しているが
門番が顔を横に振っているので、状況が芳しくないのかもしれない。

「ゴンタ門番さんビビらせないでよ。あ、ゴンタも人化とか出来ないの？」

『無茶言うなよ。』

「いい案ある…魔物語いいか？」

門番から少し距離があるし大丈夫だろう。

「少し声小さくね。」

『うむ。今のゴンタでは人化は無理だろうが、小さくはなれると思うのだ。ゴンタ、自分のなりたいサイズを想像して魔力を圧縮させてみろ。』

『は、はい。』


ボフッ
おぉ！僕の腰くらいまで小さくなった。
子グマサイズだ。やばい、ゴンタと分かっていても悔しいが可愛い。
鎮まれ、僕のもふもふ意欲。

「ゴンタ、ちいさくなれたねー♪」

『おう、出来るもんだな。』

するとお鶴さんがこちらに歩いてきた。

「ナイスですわ、ゴンタ様。あの大きさだと従魔だとしても住民が怖がるからと渋られていましたの。その大きさを維持するなら入っていいそうですわ。」

胸をなでおろし、門をくぐると
そこには江戸時代の町と西洋のファンタジーの街を足して二で割ったような街並みが。
獣人やドワーフっぽい人もポツポツいるが、
大体は黒髪黒目の着物姿の人が多く見られる。

「やはり最初はお食事処に行きましょうか。この街にもちゃんとありますのよ、お米。」

「やったー！テルお米気になってたのー！楽しみだなー♪」

『俺も腹減ってて何でもいいから早く食いたいぜ！』

待ちに待ったお米だし、すごいお腹減ってるけど
「身分証と従魔登録証作らなくて大丈夫なの？」

「今日中に作れば問題ありませんわ。だから私のイチオシのお食事処にお連れ致しますので堪能して下さいませ。」

「ありがとうお鶴さん、楽しみだよ。」

喋りながら歩いていると、
お鶴さんが丼ぶりと箸の描かれた看板を掲げるお店の前で立ち止まる。

「こちらがお食事処、丼まる亭ですわ。」と扉を開けながら案内してくれる。

「あら、お鶴ちゃんいらっしゃい！今日は随分ちいさなお連れさんと一緒なんだね。」

僕21歳です。なんて言えない…見た目は14くらいなので。

そんな事より、ふくよかな元気なおばさんと
厨房には頑固そうなおじさんが黙々と調理しているんだよ。
うわー、これもう確定で美味しいやつ。

奥の6人掛けのテーブルに案内されメニューとお通しが出てくる。

「お兄さん、お嬢ちゃん、もう少ししたら煩い冒険者共が集まるとおもうけど、悪い奴らじゃないからさ、気にせずゆっくりしていってよ。」

オロと コクリ、と頷いた。
メニューを見る。
文字は読めるみたい、本当に日本語っぽいのか脳内変換されているのかは分からないけどきっと後者だろう。

皆頼む物決まったらしい。早いね。
僕もメニューを見た瞬間決めていた。

お鶴さんが女将を呼び、
皆の分を注文をする。

「そういえば、お鶴さんとオロって食事必要ないって言ってたよね？」

「えぇ、魔力があれば生命維持できるので、いわば嗜好品ですわね。」

「我、人の食べ物…食べた事ないのだ。」

話をしているうちに冒険者であろう人達が集まり始め一気に賑やかになる。

そんな中のある一角で
「なぁ、お前知ってるか、アルブ森林で野良ダンジョンが出たって噂。」
「バッカ、あそこは保護区域だろ、ただでさえ国直属のお偉いさんじゃないと入れないのにえらい魔物が強い。」
「だからだろうが、きっとお宝の山…

「はい、お待たせ！」
どんどん料理が運ばれてくる。

後でオロかお鶴さんに確認してみよう。
それよりも待ちに待ったご飯だ！

テルとゴンタはスタミナ丼か、
箸使えないから賢い選択だ。さすがだね。
オロは……おはぎ…だと！？
いやあれは何が何だか分かってない様子だな、
キョロキョロしちゃってるし、思ってたのと違うって顔してるし。
お鶴さんは。
唐揚げ定食だよ…鳥か……うん。美味しいよね唐揚げ。

さて、僕はというと
生姜焼き定食だよ。
定食のメニューで1番好きなんだよね。

皆食べ始めているし僕もいただこう。

「いただきます。」
まず念願のお米を一口。

美味い、本当に美味しい時ってうまいしかでないよ。
生姜焼きをご飯にバウンドさせて食べ、追いご飯。
くぅー！箸が止まらない。

結構なボリュームがあったが、あっという間に完食してしまった。
皆も食べ終わっていたのでギルドに向う事に。
お鶴さんがお会計してくれたのだが、申し訳ない気持ちになる。
直近の目標はお金を貯めてお鶴さんに、
鶴に恩返しだ。

丼まる亭を出る時に女将さんに「美味しかったです。」と一声かけると

「お兄さんハーフエルフかい？箸の使い方上手だね、美味しそうに食べてくれて嬉しかったよ、また来てちょうだいね！」

と言われ、
美味しい物を食べた時の幸福感とは別に
胸が熱くなるのを感じた。