約束の花火

フィクションです



これはそう遠くない僕の昔話。

 

僕には友達はいなかった、わけではなかった。
高校のころはじめての友達ができた。
名前は、碧(あおい)。
ギターが得意で、歌も上手だった。
いつもぼーっとしてて冷たいようにも感じるけど、
人への思いやりもあるすごくいいやつだった。
碧は僕のことを「そら」って呼んでいたから、
僕は碧って呼んでいた。
僕は高校のころ得意なものも好きなものもなかったけれど、碧にギターを教えてもらっている時が楽しかった。

 
ある夏の日。
その日も2人でギターの練習をしていた。
碧はギターを僕に教えてくれていて、僕は、曲を作るのが好きだった。

「なぁそら、今日花火大会らしいよ」

「え!見に行こう!」

「ほんと、ギターの練習できな、は?」

「見に行かないの?」

「行きたい?」

「うん!」

「じゃあ行こっか。」

碧は僕の意見に反対することなんてなかった。
僕があの日行きたいなんて言わなければ良かったのに。

 
そのあと碧は「どうせだから浴衣でもレンタルしよっか」っていうから。
2人でレンタルの浴衣を借りてきた。
雨上がりで水溜りがあるところを下駄で歩くのは難しかったけど、パシャパシャという音が楽しかった。
僕は白い浴衣で碧は紺の浴衣。
夜に馴染むその姿はすごくきれいだった。
今度そんな曲を作ってみようか。

 
ドォーン

 
闇のような真っ暗な空に
きれいな花が散る。

 

「見て、碧!きれい!!早く行こうよ!!」

 

碧の手を引いて交差点を渡ろうとした。

 

「待って!」

 

悲痛な叫び声。
空気を咲くほどのブレーキ音。
突き飛ばされたような感覚。
それとともに見たのは、
信号機の赤。
そして

 

碧の赤く染まった笑顔だった。

 

「碧!!」

 

横たわる碧のそばに駆け寄った。
碧から出る液体と水たまりが混ざっていく。
どこからか聞こえる救急車の音。
その音は花火の音に埋もれている。
床に広がる液体に花火が映る。
目の前がゆっくりと暗くなる。

そのあとは僕はよく覚えていなくて目が覚めたら真っ白な部屋だった

目が覚めてわかったのは碧が死んだってこと。
それが、僕のせいってこと。
碧は良いやつだった。
僕なんかと仲良くしてくれたし、
暗い過去があっても笑って一人で何とかしようとしてしまうやつだった。
きっと今まで苦しいことがいっぱいあって
それを乗り越えていいたんだろう。
なんでそんなやつが死ななきゃいけないんだろう。
日々頭をぐるぐると回る考えを
ギターにのせて歌にした。
空にいる碧に届くように。
僕のせいで死んだのなら僕の代わりに生き返るように。
そうして作られた僕の叫びは歌として電波に流した。
何故か評判だけはあがっていく。
僕なんかより碧の方が上手だったのに。
成功するなら碧とって信じて疑わなかったのに。
辛い。苦しい。助けて。
それを歌にして流していく。
いつの間にか僕はそこそこ有名なアーティストになっていた。


碧、聞こえていますか?
僕が作った歌達です。
碧のために作ったんだ。
罪滅ぼしにはならないけど。

"何度も見る花火の夢。"

碧に会いに行こうって何度も思った。
それでもできない理由があった。

"紅い色に映る美しい花。"

碧のお陰で上手くなったギターと歌で
たくさんの友達ができたんだ。

"遠くから聞こえるサイレンの音"

きっと碧に言ったら良かったなって笑ってくれるんだろうね

"冷たくなっていく繋いでいた手"

もう少しだけ寄り道をしてから
会いに行くよ




"もう会えることはなくても"




君に出会えて幸せでした

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