間違いで始まる物語

seabolt

第26話 「ふたり・・」

向い合っている二人・・・


「彼をみたでしょ・・・」


ポツリと話し出した山本


普段の気が強くて怖い彼女の姿はそこにはなかった。


そして


続けた。


「彼は、ああやって、不都合なことが起こると暴力をふるうの・・・


付き合いだして、半年ぐらいになったある日、些細なことで喧嘩に・・・


その時からだったわ。


最初は、


優しい彼が、急に豹変し、私を殴り飛ばしたの・・


そのときは、すぐに正気になって、ごめんと私を暖かく包み込んでくれた・・・


それから、


次第に、特に遠距離恋愛になって、エスカレートして行った。


そして、


3ヶ月前、彼の家に行ったの、


そこには女の人が、それを見られた彼は、


私とその女の両方に暴力を振るったの・・・


それが怖くって・・・


ついに、


携帯で別れを告げたの・・・・


しかも、


引っ越した後に・・」


山本は、


ポロリ・・・


ポロリ・・・


と涙を流した・・・


それを見た恭介は、両手で山本を抱え込み・・・


耳元でつぶやいた


「大丈夫・・・もう・・・大丈夫・・・」


山本は、恭介の腕の中で泣いた・・・


しばらくして、


落ち着いた山本は、「ありがとう・・・」と涙をぬぐい、顔を上げた


そこには、傷ついた顔の恭介がいた。


それをみて・・「ひどい顔・・」と一言・・


「そんな言い方しなくても・・」と少しむくれる恭介・・・


「でも・・・ありがとう・・・」と言った瞬間、


すっと彼女の唇が恭介の唇とかさなった。・・・


やがて唇が離れた後、


山本はわれにかえって、立ち上がり、そそくさと恭介の前から逃げるように去った。


屋上には、恭介が残っていた。呆然とした表情で・・・


山本は、自分がしたことを思い出し・・・階段を駆け下りて行った。


思わずキスを・・・うわ~どうしよう・・・と自分でも・・混乱しながら・・・


階段を下りるとそこには、野村が待っていた。


野村も焦っていた・・ひょっとして・・久保君は、このまま、はるかさんと。


「はるかさん・・・」と声をかけられ山本は、野村がいたのにはじめて気付いた。


「あ・・・るみちゃん・・」と少しぎこちなく話す山本・・・


その姿を見て、口元に気付いた野村が


「口紅・・・」と言うと


思わずハンカチを口元にあて「こ・・これは・・」


「ふ~ん」と山本の顔を見るとほほがかすかに赤く腫れていた。


「どうしたんですか?その顔・・・」と驚く野村


「ちょっとね・・」と今度は、ほほを隠す山本


「どうしたんですか?」


「屋上で・・ちょっと・・口紅もこの傷と一緒に・・・」


「一体、何があったんですかはるかさん・・久保君と向き合ってたでしょう。」


山本は、あきらめてホントのことを言った。


「西村さんが・・・きれて・・」


「えっ・・・殴ってきたの?・・・・信じられない・・」


両手を口にあて、驚く野村・・・


「それで・・・久保君の傷をを少し拭いてたの・・・」


「そうだったんですか・・・」


野村はため息をついて覚悟を決めた。


「ところで、はるかさん。」


「なによ。いきなり改まって。」


「この間・・・久保君・・・返すって言ってましたよね・・・」


「ええ・・」


「今度の土曜日。いいかな?・・・」


「たぶん・・大丈夫だと・・・思う」


「なぜ?多分なんですか?」


「明日、無事終わればね・・」


「そうですねぇ・・」


恭介は、自販機の前にいた。


「いてぇな~ もう」とコップを片手に天井を見ていた・・・


「久保君・・・」と声をかけたのは、


ふと見るとそこには、野村が立っていた。


「野村さん・・どうして?」


恭介の顔を見て「どうしたの?この顔・・・」


「いや・・なんでもない・・」


「そう・・・」と野村がうつむいた。そして


「土曜日なんだけど・・・あいてる?」


「えっ・・でも・・・山本さんと・・」恭介は困った・・・


山本さんのこともあるし・・・


「あっ・・山本さんには許可もらったから・・・」


「そうなんだ・・・」


「じゃぁ・・10時に駅前で・・・」


「えっ・・あっ・・」と恭介が何かを言う前に野村はそこ場を去った。


どこの駅前で?だろうと

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