間違いで始まる物語

seabolt

第19話 「再会」

「恭介!知ってるか?」


それが渡辺の一言目だった。


「何を?」


「今度、俺の部署にきた新任の上司」


「で?」


「それが・・あの山本さんの恋人らしいんだ。どうだ。いい情報だろう」


渡辺がえらく張り切って話してきた。


きょとんとしているように見える恭介。


内心、少し穏やかではなかった・・・


「何だ、興味ないんか?」


「ああ・・」


「なんだ・・・つまんねぇ・・・」


声のトーンが落ちる渡辺・・・


「なべ・・・」


「なんだよ」


「いや、なんでもない・・」


「どうしたんだ。やけに元気ねぇけど・・」


「いや・・なんでもないよ・・・じゃぁ」


恭介は渡辺と別れた。






恭介は自販機の前でぼーっと座っていた。


「あっ・・久保君・・・」


山本が現れ、コーヒーをを買って恭介の横に座った。


「あのさ~、渡辺君どうにかならない?」


「えっ?なべが何か?」と驚く恭介


「会う度に、恭子ちゃん、恭子ちゃんってうるさいの、同期なんでしょ。何とかしてよ」


山本は少しあきれた感じで話してきた。


「俺に何ができるんです?」


「いっそうのことあなたって、言いましょうか?」


「それだけはご勘弁を」


「じゃぁ・・・」


「本当は、人妻だってことにしたら?」


「う~ん」と考え込む山本、


それを見て、恭介は


「何を考え込んでんですか?」


「いや・・久保君が・・・・」


「あ~」と恭介が大声をあげた


「何、大声あげてんのよ。」


「変な想像しないでくださいよ。」


「そうね・・」


今度は、恭介が


「そういえば、この間、最後に何を言おうとしてたんです?」


「何をって?」


ワザとらしく答えようとしない山本に


「野村さんが、来る前に何か言おうとしてたじゃないですか。」


山本は、これは言えないと思い。


話題をそらすことに懸命だった。


「あっ・・・ところでるみちゃんどうするのよ。」と反対聞き返した。


ったく・・もう・・・と少しふてくされる恭介そして


「あきらめようと思ってます。」


「はぁ~」と驚いた顔の山本


「なんで、あきらめるの?」


まじまじと恭介の顔を見る山本。


「この間、失恋記念日って・・・しかも、野村さんの前で・・・」


「ああ・・・そんな理由であきらめるの?」


話をしようとしたら人が入ってきた。


「屋上へ行かない?」と二人は屋上へ行った。






「久保君、ここで待ってて。今からるみちゃんを呼んでくるから。」


「呼んでくるって。今すぐか?」


「そうよ善は急げってね。」


「それって使い方違うし・」


「なによ。使い方くらい・・」


「急に!、心の準備が・・・」


「いい大人が、何が心の準備よ・・・呼んでくるから、その間に準備しなさい。」


山本は、出口の方へ向かった。


行ってしまった出口を見ている恭介・・・


山本が出口に入ってからまもなく・・・


後ずさりして出てくる山本の姿が見えた。


そして


山本の前には、恭介が見知らぬ男性が


「はるか・・・こんな所にいたんだね」と声をかけていた。

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