間違いで始まる物語

seabolt

第13話 「誤解・・・」

振り返った女性を見て慌てる恭介


そして


山本さんも何か言ってくれれば・・・


本当にまずい・・・と


「あっ・・・いえ・・・」


恭介は言葉を詰まらせた。


「久保くん?」


「はい・・・あの・・」と返事に困っていた・・・・


「いま、なんて・・・?」


野村は、悲しい顔で口を押さえ、恭介を見つめていた。


「・・・・」


恭介は、混乱し、答えることができない・・・


二人の間を気まずい空気が支配した。


「いま・・山本さん・・って・・言った?」


重い空気を振り払うように口を開いたのは、野村だった。


恭介は、血の気が引いた・・・


そして


パニック状態のまま・・・


「ごめん・・まちがえた・・・」


恭介はとっさに言ってしまった。


それを聞いて


野村は、何も言わず・・・


走り去っていった・・・・


その場に立ち尽くす恭介・・・


振り向くまでは


山本さんの姿だったことを思い出し・・・


なぜ?・・・と・・・・


頭を抱え


しばらく座り込んでしまった。


山本は、そろそろ・・・かな?と思い自販機に向かっていた。


そこへ


走ってくる野村を見て


「るみちゃん・・・」


声をかけたが


野村はそのまま走り去って行った。


様子がおかしいことに気付いた山本は、自販機に行くと、


そこには、


頭を抱えた恭介がベンチに座っていた。


その様子を見て


「何を言ったの?」と声をかけると


「・・・・」何も答えない。


恭介の前に両手を組んで立ってもう一度「何を言ったの?」と聞くと


目の前が暗くなったのみ気付いた恭介はおもむろに頭をあげ・・・


そして


「まちがえた・・・・」とつぶやいた


「何を間違えたの?」


声を出さずに山本をじっと見つめる恭介・・・・


「ひょっとして・・・」


山本は自分を指差した。


そうすると


恭介は、こくりとうなずいた・・・


「何やってんのよ・・・なんで・・・?」と聞いたが


「わからない・・・・」と首を横に振る


「で・・・私と間違えたの」


「そうです。」と恭介は答えた。


山本は、両手を組み、天を仰ぎ、ため息をついた。


そして、


「でも、見たらわかるでしょう?」


「それが・・」


「それが・・・?」


山本が恭介を覗き込むと


「・・・」


恭介は黙り込んでしまった。


山本は、ふーっ息をはいて、


「るみちゃんに、私から・・・」と話し出そうとした時、


「いいですよ。」


「えっ・・・」


「だいじょうぶですよ・・・」


そう言って恭介は立ち上がり、その場を去っていった。








一方、野村は、会社から少し離れた公園で一人途方にくれていた・・・


二人して、私を・・・と嘆いていた・・・・





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