神眼使いの異世界生活

黒鉄やまと

第53話 王都到着




「な、なんだ?!あの馬車の大群は!!」

その日の夕方、王都の門に何台もの馬車が現れた。

「ああー、こういうもんだけど。入っていいかな?」

「え、Sランク冒険者?!もしかしてあの『異端者』ソウマ?!」

門番の男が再び驚きに染まる。

「いや、そういうのいいから。で、入れてくれるの?ダメなの?」

「あ、申し訳ございません!!入ることは出来るのですが·····さすがにこの人数となるとちょっと·····」

どうやらさすがに無理があるようだ。
仕方が無いので城壁の外で野営にしようかと思ったらアルテミスが馬車の中からひょこっと顔を出した。

「あの父上に連絡をお願いできますか?」

「あ、ああアルテミス王女?!わ、わかりました!直ぐに王宮に連絡を取ります!」

門番は詰所に入るとしばらくして出てきた。

「あの、なんとお伝えすれば?」

「そうですね、まず100人ほどの避難民と共に私達が帰ってきたことと、急拵えで構わないので彼らの休む場所を確保して欲しいと伝えてください。あと、国家犯罪者を捕まえましたので受け取りをお願いします。」

「わ、わかりました!」

再び詰所に入っていく門番を見ながらため息を着く。

「この人数はさすがにキツかったみたいだな。まあ、国王にも連絡が言ったし、騎士団が来るだろう。」

「はい、とりあえず皆さん馬車から降ろしませんか?王都の中をずっと馬車で歩くのも邪魔になってしまうので」

「それもそうか。」

俺達は村人に説明して馬車から降りてもらう。
空になった馬車をしまいながらシュレイは言う。

「アルテミスよ、あの国家犯罪者はどうなるんじゃ?」

それは俺も気になっていたところだ。

「国家犯罪者は枢密院の裁判にかけられます。」

「ん?もう罪状がはっきりしているのに裁判にかけるのか?」

前世では裁判は被害者に弁護士がつくことで裁判は始まるが……国家犯罪者のエルヴィンに味方なんているのだろうか?

「いえ、裁判といっても罪状を確認してあらかじめ決まった判決が下されるだけなので、本当の裁判とは言えません。」

「なるほど、そういうことだったか」

既に何もかも決まっている裁判だ。国家犯罪者には容赦はないらしい。

「のうのう、それは裁判とやらをする必要があるのか?すでに決まっているのであれば、やる必要はないのではないか?」

確かにそれはごもっともだ。

「いえ、実はそうとも限らないんです。枢密院の審問官がその判決と刑罰は正しいのか、もしくは罪状に誤りがあり本当は冤罪だったのか、などをその場で確実に審査することが目的です。実際それで刑が軽くなったり、冤罪が発覚したりすることもあるので解散することはできないのです。」

「なるほど、それは確かに重要だな」

冤罪なのに死刑や終身刑などにされたらたまったものではない。

「ということなので今回も枢密院の審問官が来るはずです」

そういったころちょうど王宮からの一団が到着した。
馬車から降りてきたのは堅苦しそうな眼鏡をかけた男。

「まさかあなたが来るとは。お久し振りですね。」

アルテミスが最初に挨拶をする。
それに答えるように男は跪いた。

「お久し振りでございます。アルテミス王女殿下もご健勝なようで何よりでございます。」

「ありがとう、とりあえずたってください。話を進めましょう。」

アルテミスの命を受けた男は立ち上がる。

「ソーマ、シュレイさん、紹介するね。この方は枢密院特別審問官もガランさん。お父様の最も信頼する審問官よ。”法の番人”の異名も賜ったすごい人なの」

「ご紹介に預かりました、枢密院特別審問官”法の番人”ガラン・フランゼンと申します。あなたがソーマ・ナルカミ殿ですね。噂はかねがね。先の決闘は素晴らしいものでした。」

「それはありがとうございます。ご存じのようですが私がソーマです。これからよろしくお願いします」

がっしりと握手を交わす。
そして俺の隣に視線を向ける。

「こちらこそ、そしてそちらの方は……?」

「彼女はシュレイ。私のパーティメンバーです。」

「シュレイなのじゃ、よろしく頼む」

「シュレイ殿、よろしくお願いします」

シュレイも握手を交わし、自己紹介を終える。

「それで国家犯罪者元S級冒険者【山斬り】のエルヴィン・バウスターを捕縛したとのことですが……」

「ガランさん、こっちよ」

アルテミスはゆるりと足を運び案内する。
エルヴィン達がいる馬車は牢屋型の馬車で中は魔力封印の魔法がかけられていて、俺の魔力を通した縄で縛っているため切れることも無い。
しかもエルヴィンは文字通り全身骨折しているため動けるはずもなく気絶したままぐったりとしていた。

「··········随分と痛めつけたようですね」

「さすがにエルヴィンも元はSランク冒険者でしたから。念には念を入れる必要があったんです。回復魔法はかけておきますか?」

ガランにそう問うとガランは首を横に振った。

「我々枢密院も元Sランク冒険者には油断できません。牢獄で痛み止め程度に回復魔法はかけておきます。」

部下に命じてエルヴィンを運び出す。

「その他は特に国家犯罪者はいないようですね。そちらは騎士団に任せることにしましょう。我々がここを出る時騎士団にも要請を出しておきました。もう少しで到着すると思われます。」

「わかりました。こっちで引渡しますよ。」

「はい、ありがとうございます。では、我々は裁判の支度があるためこの辺で」

「こちらこそありがとうございました。」

厳重な警備の元でガラン達は去っていった。
それと入れ違いになるように騎士団が到着したので盗賊を引き渡す。

「預かりました。それで村人なのですが、ただいま早急に準備をしているところです。準備ができるまで騎士団が護衛に当たりながらとりあえずは外でテントなどを作り休んでいただくことになりました。」

「わかった。それじゃあ俺は少し用事があるからアルテミス。ここを任せてもいいか?」

「はい。任せてください。」

アルテミスは騎士団員と話しながら離れていく。俺はカロナ達の元へ向かった。

「カロナ、もう歩けるか?」

「ソーマさん!はい。もう大丈夫です。··········というか僕腕とか無くしてた気がしたんですが··········」

「生やした。」

「生やしたっ?!?!」

「それよりもお前達行くぞ。」

3人を引き連れて王都に入る。ちなみにシュレイも一緒だ。

「ソーマよ。どこへ行くつもりなんじゃ?」



「ん?そりゃぁまぁ·····



···············冒険者ギルド」




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