神眼使いの異世界生活

黒鉄やまと

第28話 決闘当日

それから直ぐに一週間が経った。
現在、王都の闘技場で決闘の準備が行われている。
決闘自体は午後からだ。

だから、アルテミス達も午前中には帰ってくると思っていたのだが……


「ソウマは見つかったか!」

「いえ!まだ見つかってません!」

「ええい!何をやっているんだ!」

アレク達は闘技場のVIPルームの観客席で決闘の開始を待っていたのだが、そこに来た報告はソウマがまだ到着していないとの報告だった。

会場ではいつ始まるのかと観客達が騒いでいる。

コール公爵は当事者なので舞台の脇で子分貴族と共に待っていた。

「ふっ!ふんっ!ぼっ、ボクがこわくて逃げたんだな!」

「さすがはコール公爵ですな」

「そっ、そうなんだなっ!来たとしても今回準備した、やっ、奴には、かっ、勝てないんだなっ」

「そうでしょうねぇ。」

とコール公爵とその取り巻きの貴族は話していた。

「ええい。何をやっているんじゃ。あのようなものにあんなことを言わせて。一体どこに行ったんじゃ」

「ええ、未だ当事者のソウマ君が到着しておりません。よってあと5分以内に来なかった場合、ソウマ君の不戦敗、コール公爵の不戦勝となります」

再び会場の観客は騒ぎ始める。

「おいおい!まだなのかよォ!」

「せっかく賭けてんだからさっさと来いよ!」


そして、あと30秒になった。

「まだ到着してらんのか!」

「はい。未だ姿が見えません。」

「あと30秒もないんだぞ」

「お父様。落ち着いてください。」

「おちついてられるか!お前の婚約が……」

「大丈夫です。必ず来ます。ソウマは必ず来ます」

「アルテミス……」

「そうじゃな。お前がお落ち着いているのに私が騒いでもなんの意味もない。今はソウマを信じるしかないの」

「…………」


そして、あと10秒になった。

「キュゥゥ」

ハクは情けない声を上げる。

「大丈夫。ソウマは必ず来る。だから信じましょう?」

「きゅう」
アルテミスは膝の上に乗るハクをなだめた。

(ソウマ。何をやってるの?早く来て……ソウマ!!)




ゴゴゴ

(え?)

ゴゴゴゴ

シフォルがカウントを始める。

「5!」

ゴゴゴゴゴゴ!

「4!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

「さ「ちょっと静かに!」」

シフォルが次のカウントを数えようとした時アルテミスが叫んだ。

「どうしたんだ?」

「なにか近づいてきます」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

そして……


ドッカーーーーーーーーン!!!!!!!!!

「きゃァァァァァァ!」

「なんだ!何が起こったんだ」

突然落ちてきた物によって出来た砂埃の中観客達は動揺を隠しきれない。それは国王アレクも一緒だった。

「な、何が起きたんじゃ……」

しかし、……

「やっと来た……」

アルテミスだけは分かっていた。いや、信じていたと言っていいだろう。

砂煙が晴れてそこに居たのは……

「いやぁ、わりぃわりぃ。遅れちまった。」

「ソウマっっ!!!」

「おう。お待たせ。アルテミス」

そこに立っていたのはソウマだった。

「ゴホッゴホッ!全くもっと静かに来れなかったのかい?」

「シフォル。悪かったな。今到着した。ってもしかして時間終わっちゃった?」

「はァァ。まったく。大丈夫だよ。かなりギリギリでの到着だけどね」

「よかった。」

「やっ、やっと来たんだぞ!」

「ん?」

ソウマが声をした方を見るとテレホォンがいた。

「おう、お待たせ。なんか人増えてるな」

「ふっ、貴様かテレホォン様の婚約者を奪ったという輩は」

「…………」

「はっ、図星で声も出せないか」

「おい、」

「なんだ」

「俺を馬鹿にするのはまだ許せる。けどな、アルテミスをそこの豚野郎の婚約者だと?!ふざけるのも大概にしろ!ぶち殺すぞ!」

ソウマは取り巻き達を睨みつける。

「ひっ!」

「まあ、これからお前達の人生は終わるんだ。シフォル。さっさと始めてくれ」

「全く。こんな近距離で殺気を放たないでくれよ。死ぬかと思ったよ」

「悪かったな。ちょっとムカムカしてんだ」

「はあ。まあいいや。」

シフォルは舞台の真ん中に立った。

「長らくお待たせしました。ソウマ君が到着したので決闘を開始します!!」

「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」

すごい盛り上がりだな。
ソウマが観客席を見渡していると、ふと目に入ったものがある。

「あれは……賭け?」

『恐らくそうですね。マスターとそこの豚のどっちが勝つか賭けをしているみたいです。』

「人の決闘で何やってんだか……」

「それでは王宮魔導師の皆さん。全力で結界を張ってください。」

すると、ソウマが張った結界の内側に結界が張られる。

「それでは準備が整いました。それではコール公爵の代理人の出場です」

「そう言えばまだ出てきてなかったな」

「なっ、なかなか元気が良くて、まだっ出せないんだぞっ!」

「元気がいい?」

すると、テレホォン側の扉が空いてそこから一頭の竜種がでてきた。

「竜種か。しかも、鎧なんか着せてやがる」

「そっそれは全てミスリルで出来た鎧なんだぞ!おっ、お前の攻撃なんか、きっ、聞かないんだぞ!」

「はいはい。」

「ふぬぅぅぅぅ!」

テレホォンは顔を真っ赤にして怒っている。
てかキモっ!

(そう言えばなんて言う竜だ?)

『下級竜ですね。ワイバーンよりは強いですが、中級までは行かない飛竜という種です。』

(ふーん)


「それでは開始します。戦わない人は壁際によってください」

テレホォン達は竜の鎖を離し壁際による。

「それでは……はじめ!」


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