最弱が世界を救う。
最悪な記憶。
薄暗い部屋の中、男は暗い顔で目を光らせる。
「おい、人形」
「どうかなさいましたか?」
どこからとも無く現れた男は、軽く一礼をし頭にハテナを浮かべている。
呼ばれた理由を理解していない。
「どうしたもねぇよ、ストーリーが変わった。多少なら許せるが、初期設定とは大きく変わりやがった。役者はなぜ与えられた演技が出来ていない」
「恐らくは、邪魔が入ったのではありませんか?それ以外は有り得ないと、私は予測します」
暗い顔をした男は、ボリボリと頭を搔く。
次第に勢いは増し、やがて手が止まる。
「まぁいい。この物語は最悪の終わりだ、結末は変わることは許されない。さぁ、終盤戦だ。役者よ……エクス、お前の物語を存分に演じたまえ―――」
男は不気味に笑い、眠りにつく。
「レイン、本当に体は大丈夫なのか?どこか痛むところは?」
「もー、大丈夫だよ。心配しすぎ、私だって弱くないんだからね」
頬を赤らめ、照れくさそうに笑う。
華やかな笑顔は一転し、哀しさを含んだ笑顔へと成る。
「レイン……?」
少しの変化に気づき、エクスは表情を変え真剣な眼差しを送る。
「あの……」や「うぅ……」と口を濁し、何かを伝えようとしているように見えた。
やがて、意を決したのか大きく息を吸い込む。
「エクスくん、私を殺して」
短い言葉だが、エクスにはうまく聞き取ることは出来なかった。
うまく聞き取ることを体は拒否した。
「すまない、もう一度言ってくれないか?」
「私を殺して、エクスくん」
何度も何度も、エクスの脳内は質問する。
聞いてはいけないと、体は拒み続ける。
だが、世界は残酷だ。
聞きたくないことも聞いてしまう。
「殺す……?バカなことを言うなよ、殺す理由が無いだろ?」
「ある」
いつになくレインは真剣な顔をする。
その顔を見て、エクスは本気だと察する。
意味の無いことはしないと分かっている。
だからこそ、この言葉の意味を読み解くことがエクスに課せられた仕事。
「じゃあ、聞かせてくれ」
「その前に、私の記憶が戻っていると薄々気づいているよね?」
その一言に、記憶がフラッシュバックする。
レインが眠りについた時、ムシュが言っていた。
封印された記憶の解除がされている可能性がある、と。
あくまで仮定に過ぎなかったが、ムシュの予想は当たっていた。
「気づいていたってのは違う。ムシュが言っていたから知っているだけだ。どんな記憶が解除された、とかまではわからない」
「ねぇ、エクスくん覚えてる?私と初めてあった時」
「俺の故郷にグリフォンが襲来した時、だよね」
「その時エクスくんは言ったよね。お前は何者だ?って。その時は覚えていないと言ったよね」
「まさか、自分の正体の記憶が解除されたのか?」
小さく頷く。
「なんでその記憶が解除されただけで死ぬなんて結論に至ったんだ?誰もレインを殺そうとしている奴なんていない。仮にいたとしても俺が倒す」
レインは少しだけ微笑み、涙を流す。
「私を殺そうとしているのは、最初からエクスくんだよ」
予想もしなかった強烈な一言にエクスは感情を失う。
「俺が、レインを……殺す?何言ってんだ、俺は世界一愛しているんだぞ。そんなことがあるわけ―――」
「全ての記憶を取り戻した私の自己紹介がまだだったよね」
すっと立ち上がり、天使のような微笑みを向けていた。
流石は大天使ルシファー。
その言葉がエクスが脳内で処理できた印象だ。
やがて、レインの目はどこまでも本気だった。
「七つの大罪、《傲慢》の悪魔ルシファー!!」
七大悪魔にして、最強、最恐、最凶の存在と謳われた存在、《傲慢》。
倒すべき最後の敵が目の前にいる。
いきなりの展開に思考が停止を始める。
「いやまてよ、いきなりなにを―――」
「 すべては現実、この現実から逃げないで。もう時間が少ない……早めに殺してくれると私は幸せだ
よ」
「時間が少ない……?何があるってんだ?」
「私はまだ熾天使ルシファー。けどね、時期に自我が崩壊し私は反逆の天使として、堕天する。そうなったら世界が崩壊に繋がる」
「どのくらい時間があるんだ、それによって答えを出すよ……」
「わからない。でも、本能が言っているんだよ。もう時間が無いって」
エクスは現実逃避を試みるも、あまりのショックにより思考回路がショートする。
レインを殺すか、世界を壊すかの究極の二択。
「わかった、俺はレインを……殺す。けど待ってくれ、今ここで死なれたら困る。せめて七大悪魔の一人を倒してからでは無理か?」
「んー、とても難しい質問だね。最後の敵は《憤怒》のサタン。七つの大罪人の中でもトップクラスの強さを誇り、私と互角かそれ以上」
「レインと互角かそれ以上……だったら尚更戦力が消えるのは世界の崩壊に繋がらないか?」
「エクスくんって本当に優柔不断だね。わかった、今はエクスくんに甘えてその条件をのむよ。けれど途中で自我を失った時は殺してくれると約束してくれないかな?」
結局はレインを殺すことになる……
その現実から逃れることが出来ず、エクスは地面を殴る。
血が滲み、徐々に手の感覚が死ぬ。
骨が折れたかもしれない。そんな事を知る由もない。
「くそ、くそっくそっ!!!!」
レインは止めることが出来なかった。
ただ見ている事しか許されなかった。
すると、話を終えたセレネとルーがこちらへ向かって歩いてきた。
「パパ、お願いがあるの。ムシュさんと話をさせて」
ルーの声に現実に戻り、エクスは黙ってムシュを呼ぶ。
「ルーさんでしたね。私に用事ということは―――」
「待ってムシュさん。二人だけで話があるの」
コクリと頷き、再度ルーは離れた場所で話を始める。
一連の流れを、セレネに説明すると酷く悲しんだ。
目尻に涙を溜め、泣くのを我慢している。
「七つの大罪……ですか。今倒してきた敵は《暴食》《嫉妬》《強欲》《怠惰》《色欲》の五人。残りは二人でしたがその一人がレインさんでしたか……正直、私は嫌です。ですが、エクスさんはレインさんを殺す選択をした……ですね」
「仕方ないだろ!!それ以外の答えが出てこないんだ。レインを殺したくないのは俺だって同じだ……けど、ダメなんだ」
思わず声を荒らげる。
エクスらしくない行動に二人は驚いていたが、目を閉じ深く考える。
殺すことが、最適解。
一人の犠牲で世界の人を救うか、一人のために世界を壊すか。
「ひとまず、次の《憤怒》の悪魔、とやらのための作戦を考えましょうよ。このまま話をしてても平行線です」
パンッと手を叩き、セレネは暗い雰囲気を壊す。
「そうだね、その前に記憶の解除を頼めるかセレネ。そして二つ同時に」
「《怠惰》と《色欲》の魔石は一応回収してますが、二つ同時にやるつもりですか?」
「あぁ、頼む」
成長をしたセレネは、エクスの足元に魔法陣を無詠唱で展開させる。
目を瞑り、他人へ聞こえない程度の大きさの声で何かをつぶやく。
その後、エクスの額に魔石を二つ付けると、中へと沈み込む。
すると、バタりとエクスが横たわる。
「二つ同時は大丈夫なのでしょうか」
「エクスくんが理由もなく二つ同時って言うわけがない。きっと何か意図があるはずだよ」
心配するセレネを、信頼という理由を告げる。
「マスター、一度に二個の記憶解除。その意味をわかっておいででしょうか?」
「まぁ、なんとなくって所かな……」
「脳への負担は大きく、下手すればマスターの脳が狂ってしまわれます。それでも宜しいのでしょうか?」
「構わない、始めるぞムシュ」
いつもより低めのトーンで会話をする。
これ以上止めても無意味なことを察し、試練の部屋へと案内する。
ギィと扉が開く音が響くと、中には二人の姿が見て取れた。
「《怠惰》と《色欲》だな?試練ってのはなんだ」
「私、《色欲》がだす試練は至って簡単。貴方の今後の心意気を聞かせてください。答えによっては試練失敗になります」
……何言ってんだか。
エクスは心の中で文句をこぼし、硬い口を開く。
「俺は―――」
「答えによっては、失敗になります。適当なことは言わないように」
言葉を遮られ驚く。
誰も死なせず世界を救う、と答えようとした瞬間止められたため不正解なのだろうか。
様々な疑問が頭の中をよぎる。
謎が解けることはなく、再度今後の心意気とやらを深く悩む。
「七大悪魔をすべて倒し、世界を救う。例えどんな犠牲があっても、世界を救う」
「……」
「最弱と呼ばれた俺が、バカにした奴らを蹴落とすために英雄になる」
「やっと心の闇の部分を出しましたか。最初に言った、世界を救うという目標は、単なる通過点に過ぎない。それの先の目標、バカにした者を今度はバカにするために世界を救うですか」
「いいや、最弱とバカにしたのは俺自身だ。だから俺を、昔の自分を超えるために俺は世界を救う」
「面白いですね。私としては0点の答えですがあなたはそれを貫き通す力を持っているようですのでこの試練、クリアとしましょう」
誰にも打ち明けたことがない過去を口にすると、あっさり合格が貰えた。
もちろんこの考えはほかの人は絶対に知らない。
《色欲》の試練を無事突破し、残された《怠惰》の試練のみ。
《怠惰》の悪魔へと体を向け質問をする。
「お前の試練はなんだ」
「《怠惰》の試練は、さきほど同様心意気を聞かせてもらうとする。お題は、世界を救ったあとお前は何をする、お前は何が出来る」
深く考えるが、答えらしき答えが浮かばない。
答えを導き出そうと、頭を抱えると痛みが腹部に生じる。
「ガハッ……何すんだ、テメェ!!」
「ノープランのバカに制裁を下した迄だ。何も考えていないからお前は弱い。真の強者とは、全ての物事を想定し、行動し成功させる。そして次の行動へと移る。なのにお前は全くダメだ。世界を救うだの大それたことは言う割には、手段や作戦など様々なものがまるで無い。そんなのでは世界を救うどころか人一人すら救うことは不可能だ」
全ての言葉がエクスに刺さる。
ズキズキと心が痛むのがわかる。
言われたことは全て当てはまる。
だからこそ、否定したい。
それでも、否定すら出来ない。
「俺はどうしたらいいんだ……」
「それを決めることが出来る者が強くなれる」
エクスは言葉を失う。
「おい、人形」
「どうかなさいましたか?」
どこからとも無く現れた男は、軽く一礼をし頭にハテナを浮かべている。
呼ばれた理由を理解していない。
「どうしたもねぇよ、ストーリーが変わった。多少なら許せるが、初期設定とは大きく変わりやがった。役者はなぜ与えられた演技が出来ていない」
「恐らくは、邪魔が入ったのではありませんか?それ以外は有り得ないと、私は予測します」
暗い顔をした男は、ボリボリと頭を搔く。
次第に勢いは増し、やがて手が止まる。
「まぁいい。この物語は最悪の終わりだ、結末は変わることは許されない。さぁ、終盤戦だ。役者よ……エクス、お前の物語を存分に演じたまえ―――」
男は不気味に笑い、眠りにつく。
「レイン、本当に体は大丈夫なのか?どこか痛むところは?」
「もー、大丈夫だよ。心配しすぎ、私だって弱くないんだからね」
頬を赤らめ、照れくさそうに笑う。
華やかな笑顔は一転し、哀しさを含んだ笑顔へと成る。
「レイン……?」
少しの変化に気づき、エクスは表情を変え真剣な眼差しを送る。
「あの……」や「うぅ……」と口を濁し、何かを伝えようとしているように見えた。
やがて、意を決したのか大きく息を吸い込む。
「エクスくん、私を殺して」
短い言葉だが、エクスにはうまく聞き取ることは出来なかった。
うまく聞き取ることを体は拒否した。
「すまない、もう一度言ってくれないか?」
「私を殺して、エクスくん」
何度も何度も、エクスの脳内は質問する。
聞いてはいけないと、体は拒み続ける。
だが、世界は残酷だ。
聞きたくないことも聞いてしまう。
「殺す……?バカなことを言うなよ、殺す理由が無いだろ?」
「ある」
いつになくレインは真剣な顔をする。
その顔を見て、エクスは本気だと察する。
意味の無いことはしないと分かっている。
だからこそ、この言葉の意味を読み解くことがエクスに課せられた仕事。
「じゃあ、聞かせてくれ」
「その前に、私の記憶が戻っていると薄々気づいているよね?」
その一言に、記憶がフラッシュバックする。
レインが眠りについた時、ムシュが言っていた。
封印された記憶の解除がされている可能性がある、と。
あくまで仮定に過ぎなかったが、ムシュの予想は当たっていた。
「気づいていたってのは違う。ムシュが言っていたから知っているだけだ。どんな記憶が解除された、とかまではわからない」
「ねぇ、エクスくん覚えてる?私と初めてあった時」
「俺の故郷にグリフォンが襲来した時、だよね」
「その時エクスくんは言ったよね。お前は何者だ?って。その時は覚えていないと言ったよね」
「まさか、自分の正体の記憶が解除されたのか?」
小さく頷く。
「なんでその記憶が解除されただけで死ぬなんて結論に至ったんだ?誰もレインを殺そうとしている奴なんていない。仮にいたとしても俺が倒す」
レインは少しだけ微笑み、涙を流す。
「私を殺そうとしているのは、最初からエクスくんだよ」
予想もしなかった強烈な一言にエクスは感情を失う。
「俺が、レインを……殺す?何言ってんだ、俺は世界一愛しているんだぞ。そんなことがあるわけ―――」
「全ての記憶を取り戻した私の自己紹介がまだだったよね」
すっと立ち上がり、天使のような微笑みを向けていた。
流石は大天使ルシファー。
その言葉がエクスが脳内で処理できた印象だ。
やがて、レインの目はどこまでも本気だった。
「七つの大罪、《傲慢》の悪魔ルシファー!!」
七大悪魔にして、最強、最恐、最凶の存在と謳われた存在、《傲慢》。
倒すべき最後の敵が目の前にいる。
いきなりの展開に思考が停止を始める。
「いやまてよ、いきなりなにを―――」
「 すべては現実、この現実から逃げないで。もう時間が少ない……早めに殺してくれると私は幸せだ
よ」
「時間が少ない……?何があるってんだ?」
「私はまだ熾天使ルシファー。けどね、時期に自我が崩壊し私は反逆の天使として、堕天する。そうなったら世界が崩壊に繋がる」
「どのくらい時間があるんだ、それによって答えを出すよ……」
「わからない。でも、本能が言っているんだよ。もう時間が無いって」
エクスは現実逃避を試みるも、あまりのショックにより思考回路がショートする。
レインを殺すか、世界を壊すかの究極の二択。
「わかった、俺はレインを……殺す。けど待ってくれ、今ここで死なれたら困る。せめて七大悪魔の一人を倒してからでは無理か?」
「んー、とても難しい質問だね。最後の敵は《憤怒》のサタン。七つの大罪人の中でもトップクラスの強さを誇り、私と互角かそれ以上」
「レインと互角かそれ以上……だったら尚更戦力が消えるのは世界の崩壊に繋がらないか?」
「エクスくんって本当に優柔不断だね。わかった、今はエクスくんに甘えてその条件をのむよ。けれど途中で自我を失った時は殺してくれると約束してくれないかな?」
結局はレインを殺すことになる……
その現実から逃れることが出来ず、エクスは地面を殴る。
血が滲み、徐々に手の感覚が死ぬ。
骨が折れたかもしれない。そんな事を知る由もない。
「くそ、くそっくそっ!!!!」
レインは止めることが出来なかった。
ただ見ている事しか許されなかった。
すると、話を終えたセレネとルーがこちらへ向かって歩いてきた。
「パパ、お願いがあるの。ムシュさんと話をさせて」
ルーの声に現実に戻り、エクスは黙ってムシュを呼ぶ。
「ルーさんでしたね。私に用事ということは―――」
「待ってムシュさん。二人だけで話があるの」
コクリと頷き、再度ルーは離れた場所で話を始める。
一連の流れを、セレネに説明すると酷く悲しんだ。
目尻に涙を溜め、泣くのを我慢している。
「七つの大罪……ですか。今倒してきた敵は《暴食》《嫉妬》《強欲》《怠惰》《色欲》の五人。残りは二人でしたがその一人がレインさんでしたか……正直、私は嫌です。ですが、エクスさんはレインさんを殺す選択をした……ですね」
「仕方ないだろ!!それ以外の答えが出てこないんだ。レインを殺したくないのは俺だって同じだ……けど、ダメなんだ」
思わず声を荒らげる。
エクスらしくない行動に二人は驚いていたが、目を閉じ深く考える。
殺すことが、最適解。
一人の犠牲で世界の人を救うか、一人のために世界を壊すか。
「ひとまず、次の《憤怒》の悪魔、とやらのための作戦を考えましょうよ。このまま話をしてても平行線です」
パンッと手を叩き、セレネは暗い雰囲気を壊す。
「そうだね、その前に記憶の解除を頼めるかセレネ。そして二つ同時に」
「《怠惰》と《色欲》の魔石は一応回収してますが、二つ同時にやるつもりですか?」
「あぁ、頼む」
成長をしたセレネは、エクスの足元に魔法陣を無詠唱で展開させる。
目を瞑り、他人へ聞こえない程度の大きさの声で何かをつぶやく。
その後、エクスの額に魔石を二つ付けると、中へと沈み込む。
すると、バタりとエクスが横たわる。
「二つ同時は大丈夫なのでしょうか」
「エクスくんが理由もなく二つ同時って言うわけがない。きっと何か意図があるはずだよ」
心配するセレネを、信頼という理由を告げる。
「マスター、一度に二個の記憶解除。その意味をわかっておいででしょうか?」
「まぁ、なんとなくって所かな……」
「脳への負担は大きく、下手すればマスターの脳が狂ってしまわれます。それでも宜しいのでしょうか?」
「構わない、始めるぞムシュ」
いつもより低めのトーンで会話をする。
これ以上止めても無意味なことを察し、試練の部屋へと案内する。
ギィと扉が開く音が響くと、中には二人の姿が見て取れた。
「《怠惰》と《色欲》だな?試練ってのはなんだ」
「私、《色欲》がだす試練は至って簡単。貴方の今後の心意気を聞かせてください。答えによっては試練失敗になります」
……何言ってんだか。
エクスは心の中で文句をこぼし、硬い口を開く。
「俺は―――」
「答えによっては、失敗になります。適当なことは言わないように」
言葉を遮られ驚く。
誰も死なせず世界を救う、と答えようとした瞬間止められたため不正解なのだろうか。
様々な疑問が頭の中をよぎる。
謎が解けることはなく、再度今後の心意気とやらを深く悩む。
「七大悪魔をすべて倒し、世界を救う。例えどんな犠牲があっても、世界を救う」
「……」
「最弱と呼ばれた俺が、バカにした奴らを蹴落とすために英雄になる」
「やっと心の闇の部分を出しましたか。最初に言った、世界を救うという目標は、単なる通過点に過ぎない。それの先の目標、バカにした者を今度はバカにするために世界を救うですか」
「いいや、最弱とバカにしたのは俺自身だ。だから俺を、昔の自分を超えるために俺は世界を救う」
「面白いですね。私としては0点の答えですがあなたはそれを貫き通す力を持っているようですのでこの試練、クリアとしましょう」
誰にも打ち明けたことがない過去を口にすると、あっさり合格が貰えた。
もちろんこの考えはほかの人は絶対に知らない。
《色欲》の試練を無事突破し、残された《怠惰》の試練のみ。
《怠惰》の悪魔へと体を向け質問をする。
「お前の試練はなんだ」
「《怠惰》の試練は、さきほど同様心意気を聞かせてもらうとする。お題は、世界を救ったあとお前は何をする、お前は何が出来る」
深く考えるが、答えらしき答えが浮かばない。
答えを導き出そうと、頭を抱えると痛みが腹部に生じる。
「ガハッ……何すんだ、テメェ!!」
「ノープランのバカに制裁を下した迄だ。何も考えていないからお前は弱い。真の強者とは、全ての物事を想定し、行動し成功させる。そして次の行動へと移る。なのにお前は全くダメだ。世界を救うだの大それたことは言う割には、手段や作戦など様々なものがまるで無い。そんなのでは世界を救うどころか人一人すら救うことは不可能だ」
全ての言葉がエクスに刺さる。
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