最弱が世界を救う。
過去。
「さぁ、お前の答えを聞かせろ」
《怠惰》の悪魔は、冷たい目で低く言い放つ。
「世界を救ったあと、どうするかをな」
「俺は……何も出来ない……」
最終的に至った思考は、出来ない。
きっと、何かしらやる事があるだろう。
だが今ここで出せる答えはない。
「それが答えということだな?」
「……あぁ」
「いいだろう、お前に少しだけ言いたいことがある」
突然のことに、エクスは口を開け戸惑う。
「自分に何かできるって言うやつは大体口だけのアホだ。出来ないって決めつけ、やらない方がもっとアホだ。けどな、出来ないからこそもがき苦しみ、やっと幸せってやつを掴めるんだ。お前のように何も考えていないからこそ出来ることが必ずある」
「それは……」
「もう気づいたろ、お前が出せる答えに」
「世界を救ったあと、争いのない世界を作る……出来ないことかもしれないが、やってやる。出来ないって決めつけて諦めるなんて俺は嫌だ。諦めるぐらいなら死んでやる、だから俺は……俺はッ―――」
思いついた単語を、文を、脊髄反射で口にする。
思いつきだって構わない。
その場で考えたことだろうが関係ない。
思いついた言葉は、本当に思ってることだけだ。
エクスは叫んだ後、自らの心にそう告げる。
「《怠惰》の試練は終わりだ、実に面白い答えを聞かせてくれた。いいだろう、お前のその望み途中で諦めるのではないぞ?」
「諦めてたまるか」
フッ、と《怠惰》の悪魔が笑うとムシュが一歩踏み出す。
「それではマスター、これにて試練を終了します。この後私もやるべく事があるので一時お別れになります。死なないでくださいよマスター」
「―――?一体どうしたんだ……」
目の前で消えていくムシュを止めようとするが、あと一歩及ばず雲のように消える。
その後意識は途絶え、次に目が覚める時は見覚えのある場所へ来ていた。
「ここは……」
「宿屋だよ、全く私たちの新婚旅行台無しだね」
目を赤く腫らし、手を掴んでいた。
眠っている間ずっと心配してくれたんだろう。
色々なことを考えていると目から涙が溢れる。
「エクス……くん?」
「くそっ、くそっ、くそっ!!何なんだよこの記憶は、何なんだよこの過去は!!」
声を荒らげ、近くにあった花瓶を床に落とす。
あまりの急変ぶりにレインは困惑していた。
なんとか暴れるエクスを押さえつけ、何度も呼び続ける。
エクスは我に返ると静かに口を開く。
「なぁ、レイン。昔俺らは出会っていたんだよな。恋に落ちていたんだよな」
「そう、だけど。改まってどうしたの?」
「なんで俺の前から姿を消した」
「―――ッ!!」
レインにとって一番隠しておきたかった過去を問われる。
堪忍したのか、大粒の涙を零す。
「私は、神に抗った反逆者なの……そして追っ手から逃げるために私はエクスくんの側から離れた。その際、私は深手を負い死にかけた……うぅん。死んだの。その時、私は何でこいつらに殺されなきゃならないの、こいつらは私よりも下。私が負けるわけがない。そう思ったの」
エクスは驚いた表情一つせず、見つめていた。
まるでその過去を知っていたように。
「そして、私は反逆の堕天使ルシファーとして、《傲慢》の悪魔になった」
「やっぱり、あの時なのか……」
「知っていたの?」
「思い出しただけ」
どんどんエクスは暗くなっていく。
その違和感を無視し、レインは再度質問をする。
「なんで知っているの?」
「親父が言っていたんだ。レインとはもう会えない、あの子は死んだって」
そっと目を閉じ、過去を振り返る―――
「親父、レインはどこに行ったの?」
小さき頃のエクスは、父であるゼクスへ聞く。
何も聞かされず姿を消したレインを何度探しても、見つけることは出来なかった。
わからないことがあれば、簡単なことだ。
知っている人へ聞く。それが一番手っ取り早い。
「エクス、今から言うことはお前を苦しめる。お前を悲しませる。それでも、教えなくてはいけないか?」
「だって、レインとまた遊びたいんだもん」
無垢な笑顔はこれ以上にないほど、他人を幸せにできただろう。
そんな笑みをゼクスに向けると、ゼクスの顔は殺気が混じる。
「あの子はもう死んだ。二度と会えない」
たった一瞬だったが、エクスは地獄へ突き落とされた。
大好きだった女の子が目の前から消え、二度と会えない事実。
この二つを受け入れることは出来ずエクスは泣き崩れる。
ゼクスは優しく抱き寄せ、泣き続けるエクスを優しく撫でる。
「すまない、これは決まっていたことだ―――」
その一言を聞いたあと、ゼクスは姿を消した―――
その事をレインに話し終わると、一つの疑問が頭をよぎる。
「どうして私が死んだことをエクスくんのお父さんが知っているの……私が死んだ事実は天界の者のみが知ることが出来るはず。一体あの人は何者なの」
「神だ。それもただの神じゃない。全知全能の神、ゼウスだ」
「なんで、なんでなんでなんでなんで……なんでッ!!エクスくん、取り戻した記憶を全て私に教えて」
エクスが取り戻した記憶は二つ。
一個は先程話した、過去の話。
そしてもう一つは父の名、ゼクスは偽名で本名はゼウスだということ―――
《怠惰》の悪魔は、冷たい目で低く言い放つ。
「世界を救ったあと、どうするかをな」
「俺は……何も出来ない……」
最終的に至った思考は、出来ない。
きっと、何かしらやる事があるだろう。
だが今ここで出せる答えはない。
「それが答えということだな?」
「……あぁ」
「いいだろう、お前に少しだけ言いたいことがある」
突然のことに、エクスは口を開け戸惑う。
「自分に何かできるって言うやつは大体口だけのアホだ。出来ないって決めつけ、やらない方がもっとアホだ。けどな、出来ないからこそもがき苦しみ、やっと幸せってやつを掴めるんだ。お前のように何も考えていないからこそ出来ることが必ずある」
「それは……」
「もう気づいたろ、お前が出せる答えに」
「世界を救ったあと、争いのない世界を作る……出来ないことかもしれないが、やってやる。出来ないって決めつけて諦めるなんて俺は嫌だ。諦めるぐらいなら死んでやる、だから俺は……俺はッ―――」
思いついた単語を、文を、脊髄反射で口にする。
思いつきだって構わない。
その場で考えたことだろうが関係ない。
思いついた言葉は、本当に思ってることだけだ。
エクスは叫んだ後、自らの心にそう告げる。
「《怠惰》の試練は終わりだ、実に面白い答えを聞かせてくれた。いいだろう、お前のその望み途中で諦めるのではないぞ?」
「諦めてたまるか」
フッ、と《怠惰》の悪魔が笑うとムシュが一歩踏み出す。
「それではマスター、これにて試練を終了します。この後私もやるべく事があるので一時お別れになります。死なないでくださいよマスター」
「―――?一体どうしたんだ……」
目の前で消えていくムシュを止めようとするが、あと一歩及ばず雲のように消える。
その後意識は途絶え、次に目が覚める時は見覚えのある場所へ来ていた。
「ここは……」
「宿屋だよ、全く私たちの新婚旅行台無しだね」
目を赤く腫らし、手を掴んでいた。
眠っている間ずっと心配してくれたんだろう。
色々なことを考えていると目から涙が溢れる。
「エクス……くん?」
「くそっ、くそっ、くそっ!!何なんだよこの記憶は、何なんだよこの過去は!!」
声を荒らげ、近くにあった花瓶を床に落とす。
あまりの急変ぶりにレインは困惑していた。
なんとか暴れるエクスを押さえつけ、何度も呼び続ける。
エクスは我に返ると静かに口を開く。
「なぁ、レイン。昔俺らは出会っていたんだよな。恋に落ちていたんだよな」
「そう、だけど。改まってどうしたの?」
「なんで俺の前から姿を消した」
「―――ッ!!」
レインにとって一番隠しておきたかった過去を問われる。
堪忍したのか、大粒の涙を零す。
「私は、神に抗った反逆者なの……そして追っ手から逃げるために私はエクスくんの側から離れた。その際、私は深手を負い死にかけた……うぅん。死んだの。その時、私は何でこいつらに殺されなきゃならないの、こいつらは私よりも下。私が負けるわけがない。そう思ったの」
エクスは驚いた表情一つせず、見つめていた。
まるでその過去を知っていたように。
「そして、私は反逆の堕天使ルシファーとして、《傲慢》の悪魔になった」
「やっぱり、あの時なのか……」
「知っていたの?」
「思い出しただけ」
どんどんエクスは暗くなっていく。
その違和感を無視し、レインは再度質問をする。
「なんで知っているの?」
「親父が言っていたんだ。レインとはもう会えない、あの子は死んだって」
そっと目を閉じ、過去を振り返る―――
「親父、レインはどこに行ったの?」
小さき頃のエクスは、父であるゼクスへ聞く。
何も聞かされず姿を消したレインを何度探しても、見つけることは出来なかった。
わからないことがあれば、簡単なことだ。
知っている人へ聞く。それが一番手っ取り早い。
「エクス、今から言うことはお前を苦しめる。お前を悲しませる。それでも、教えなくてはいけないか?」
「だって、レインとまた遊びたいんだもん」
無垢な笑顔はこれ以上にないほど、他人を幸せにできただろう。
そんな笑みをゼクスに向けると、ゼクスの顔は殺気が混じる。
「あの子はもう死んだ。二度と会えない」
たった一瞬だったが、エクスは地獄へ突き落とされた。
大好きだった女の子が目の前から消え、二度と会えない事実。
この二つを受け入れることは出来ずエクスは泣き崩れる。
ゼクスは優しく抱き寄せ、泣き続けるエクスを優しく撫でる。
「すまない、これは決まっていたことだ―――」
その一言を聞いたあと、ゼクスは姿を消した―――
その事をレインに話し終わると、一つの疑問が頭をよぎる。
「どうして私が死んだことをエクスくんのお父さんが知っているの……私が死んだ事実は天界の者のみが知ることが出来るはず。一体あの人は何者なの」
「神だ。それもただの神じゃない。全知全能の神、ゼウスだ」
「なんで、なんでなんでなんでなんで……なんでッ!!エクスくん、取り戻した記憶を全て私に教えて」
エクスが取り戻した記憶は二つ。
一個は先程話した、過去の話。
そしてもう一つは父の名、ゼクスは偽名で本名はゼウスだということ―――
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