最弱が世界を救う。
出会いと別れ。
二人が握手を交わすと、エクスは膝から崩れるように倒れ込む。
「え?何でいきなり倒れるの、なぁ神様よどうにかなんね?」
「どうにかならないこともないが、レインと言ったなコイツは何故にここまで傷ついている?」
「私の心臓を取り返すために戦った、と聞いてます。どんな無茶をしたのかは分かりませんが……」
「仕方ないのぉ」
猫はエクスの上に乗り、手を上げる。
何をするのかとレインが止めにかかろうとすると、目を疑う。
ベシッ!と頬を叩く音が響く。
猫がエクスをぶったのだ。
「ちょっと、エクスくんに何してくれてるの!!」
「荒治療じゃ」
舌を出し、無邪気に微笑んだように思えた。
「ぐはっ、痛いな何しやがる!」
「エクスくん!?」
「だから言ったろ、荒治療だと」
エクスは何度も手を握り確かめる。
神がやった事は多少手荒だが、確かに回復してる……
しかも、ただの回復ではないな。
「なんだこの魔法は?」
「残念、魔法ではなく神の力じゃ。しかし、これで心置き無く修行が出来るじゃろ?」
「はっ、違いねぇ」
俺はとんでもない二人に出会ったのかもしれない。
この二人に教えて貰えれば強くなれる……!
「おっと、そう焦るな最弱の騎士よ」
「やっぱり神は俺の過去も知ってる……か」
最弱と聞き、レオだけが首を傾げる。
エクスの過去を話すと納得したように頷く。
「なるほど、そんな過去があったのか。ま、弱者が最強ってのは当たり前だからな」
「何言ってる、弱いものは弱い。一体何を言ってる」
エクスの発言に、レオは肩を落とす。
深いため息をした後真剣な眼差しを向ける。
「弱いヤツが弱いって誰が決めた。そんな考え捨てちまえ!強い者には無いモノを弱い者は持ってんだよ、それが何なのかわかるか?」
「……逃げ方とか?」
「確かに逃げるが勝ちとか言われる。だが違う、弱者が持ってるのは知識だ、情報だッ!強者が持っていないモノ全てを持っている。それのどこが弱いんだ言ってみろ」
異論反論全てを認めさせないレオの暴論を聞き、少しばかり安心した。
今までやって来たことを全て肯定された気分だった。
何も……間違いじゃなかった……
「って訳だ、どうだ最弱さんよ」
「どうって?」
「この世に弱者なんていない。この世は強者に溢れてるって訳だ。それぞれが自分の出来ることを貫き、磨き、極めてやがる。そんな世界すっげー、最高だろ?」
「あぁ……」
確かに、確かに最高だ。
久しぶりだな、師を持つのは。
あまり時間が無いと言われ、すぐさまエクスの修行へと切り替わる。
「俺の戦いを見てなにか気になることがあるって言ってたよなレオ」
「戦いの後だった、とかそんなことはどうでもいい。お前の槍脆いな、そんなんじゃすぐに壊れて死ぬぞ」
「脆い……か。だからさっきレオの攻撃に負け折れた。うん、確かにその通りかも」
先程の戦いを思い出し、トリアイナが折れたことを突きつけられる。
何故折れたのかはわからないがレオが言っていることは正しい。
「で、端的にどうしたらいいんだ?」
「お前さん、槍を作る時どんなことを考えてる?」
「そうだな、三叉の槍を正確に思い描き、作ることだけを考えてるって所かな」
「はー、ゼロ点。全くダメダメ、同じ様な技を使える身としてそんなんじゃ許せない」
なぜだろう。レオにものすごくイライラしてしまう。
レオはひらひらと手を振り、煽ってきた。
「確かにそれは正しいことだ。だが、ベーシックで戦っていけるわけがないだろ工夫しろ工夫を。もっと硬くもっと鋭くもっと強く。そんな風に考えながら創り出してみろ」
もっと硬く、もっと鋭く、もっと強く……
「イメージが大事だ。想像してみろ、最強の矛を」
最強の矛を……想像ッ!!
「さ、やってみ」
「あぁ……穿て!地を割り、海を割りて、星をも貫け!!海王ポセイドン《トリアイナ》!!」
いつも通り詠唱を唱えると異変に気づく。
なんだこれは!
いつもと違うオーラを放つトリアイナを見て、エクスは言葉を失う。
放たれるオーラは強く気高く、そして猛々しく。
持っているだけでもわかるほど今までとは違う。
「どうよ、まだまだって所だが今の所それだけでも十分じゃね?」
「十分どころじゃないよ、強くなったってレベルじゃない。今までの比にならない、ありがとうレオ」
「いいってことよー」
ニッと笑い一つ提案される。
「で、百聞は一見に如かず。どんなもんか試してみたくねぇか?」
「ッ!?」
思いがけない提案に心が踊る。
「あぁ、相手をお願いしてもいいか?」
「やるからには本気で行くぜ?ってことで神様、何かあった時は回復すると約束してくれ。さっきのようには行かないかもだ」
「おーおー、童貞と最弱の二人のバトルか。面白いいいじゃろう、まだ時間もある事だし手合わせを見せてくれ」
ルーやセレネは未だに遠くで話を続けているみたいだ。
二人に危害が加わらないようにどうにかしないとだが……
「マスター、私が固有結界をお作りします」
突然姿を現したムシュに驚くことなく、レオとエクスは作り出された固有結界の中へと移動する。
「へー、固有結界って言うのか。こんな薄い壁で大丈夫なのか?」
「安心しろムシュはこの中で誰よりも魔法の能力や強さが長けているヤツだ。もし頼りないなら何重にもしてもらうけど?」
「いや、そこまで信頼してるんなら大丈夫ってことだろ。さぁ、喧嘩祭りの始まりだぜッ!!」
二人は向き合い歯を輝かせ笑う。
ほぼ同時に口を開き叫ぶ。
「穿て!地を割り、海を割りて、星をも貫け!!海王ポセイドン《トリアイナ》!!」
「創造、獅子王の拳」
それぞれに武器を装備し、大地を思い切り蹴る。
槍と篭手がぶつかり合うと綺麗な音が響く。
さながら演奏会のような心地よい音色が辺り一帯を包み込む。
「エクス!やっぱお前強いな、見直したぜ」
「そっちこそ、やっぱ強いぜ」
二人は笑顔のままで戦い続けた。
それから一体どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
数分?数十分?そんなことを忘れてしまうほど、幸せな時間だった。
誰かのためじゃない、自分の欲を満たすための戦い。
背負うものが無い分少し寂しいが、たまにはこういうのも悪くない。
「そろそろ時間が来ちまう、決着といこうぜ」
「レオ、ありがとうな」
「どういたしましてだ」
「エノシ・ガイオス」
叫ぶと、空中には無数のトリアイナが現れる。
矛先は一点、レオへと向いていた。
「奥の手ってやつか、いいぜおもしれえ!!」
合図とともに、無数のトリアイナはレオへと一直線に進む。
当たった瞬間、激しい砂埃が視界を覆う。
とてつもない威力に固有結界にヒビが入る。
一番驚いていたのはエクス本人。
「ったく、面白い技を使う。これが最弱の力か」
「薄々気づいてたが、やっぱ全部撃ち落としたか」
「悪いな、水の龍玉。中遠距離向けの武器だ、こいつから飛ばされた弾は粘着性や爆発性とか弾種を変えれるってのが強みだな」
「それで全弾使ってエノシ・ガイオスを撃ち落とした……か。あー、勝ちたかった」
「あと俺から出せる最後のアドバイスだ。行動する時は常に最悪のパターンを想像しながら動け。じゃないと手遅れになる」
「肝に銘じておくよ」
最後のアドバイスを貰い、遂にお別れの時間がやってきた。
「楽しかったぜエクス。もう会えないと思うが達者でな」
「レオ……本当にありがとう。少しの時間だったけどお世話になった。この世界は俺が救う。別の世界は任せたぜ」
「あぁ、任された」
初めてあった時のように二人は握手を交わす。
どうしてかな、目の前が少し見づらい。
あぁ、俺泣いてるんだな。
二人共少しだけ涙を浮かべる。
レオは作り出された暗い空間へと足を踏み入れ気配が消える。
「エクスくん……泣いてる?」
「泣いてねぇよ」
鼻をすすり、誤魔化す。
レインは気付かないふりをし、笑顔を向ける。
「え?何でいきなり倒れるの、なぁ神様よどうにかなんね?」
「どうにかならないこともないが、レインと言ったなコイツは何故にここまで傷ついている?」
「私の心臓を取り返すために戦った、と聞いてます。どんな無茶をしたのかは分かりませんが……」
「仕方ないのぉ」
猫はエクスの上に乗り、手を上げる。
何をするのかとレインが止めにかかろうとすると、目を疑う。
ベシッ!と頬を叩く音が響く。
猫がエクスをぶったのだ。
「ちょっと、エクスくんに何してくれてるの!!」
「荒治療じゃ」
舌を出し、無邪気に微笑んだように思えた。
「ぐはっ、痛いな何しやがる!」
「エクスくん!?」
「だから言ったろ、荒治療だと」
エクスは何度も手を握り確かめる。
神がやった事は多少手荒だが、確かに回復してる……
しかも、ただの回復ではないな。
「なんだこの魔法は?」
「残念、魔法ではなく神の力じゃ。しかし、これで心置き無く修行が出来るじゃろ?」
「はっ、違いねぇ」
俺はとんでもない二人に出会ったのかもしれない。
この二人に教えて貰えれば強くなれる……!
「おっと、そう焦るな最弱の騎士よ」
「やっぱり神は俺の過去も知ってる……か」
最弱と聞き、レオだけが首を傾げる。
エクスの過去を話すと納得したように頷く。
「なるほど、そんな過去があったのか。ま、弱者が最強ってのは当たり前だからな」
「何言ってる、弱いものは弱い。一体何を言ってる」
エクスの発言に、レオは肩を落とす。
深いため息をした後真剣な眼差しを向ける。
「弱いヤツが弱いって誰が決めた。そんな考え捨てちまえ!強い者には無いモノを弱い者は持ってんだよ、それが何なのかわかるか?」
「……逃げ方とか?」
「確かに逃げるが勝ちとか言われる。だが違う、弱者が持ってるのは知識だ、情報だッ!強者が持っていないモノ全てを持っている。それのどこが弱いんだ言ってみろ」
異論反論全てを認めさせないレオの暴論を聞き、少しばかり安心した。
今までやって来たことを全て肯定された気分だった。
何も……間違いじゃなかった……
「って訳だ、どうだ最弱さんよ」
「どうって?」
「この世に弱者なんていない。この世は強者に溢れてるって訳だ。それぞれが自分の出来ることを貫き、磨き、極めてやがる。そんな世界すっげー、最高だろ?」
「あぁ……」
確かに、確かに最高だ。
久しぶりだな、師を持つのは。
あまり時間が無いと言われ、すぐさまエクスの修行へと切り替わる。
「俺の戦いを見てなにか気になることがあるって言ってたよなレオ」
「戦いの後だった、とかそんなことはどうでもいい。お前の槍脆いな、そんなんじゃすぐに壊れて死ぬぞ」
「脆い……か。だからさっきレオの攻撃に負け折れた。うん、確かにその通りかも」
先程の戦いを思い出し、トリアイナが折れたことを突きつけられる。
何故折れたのかはわからないがレオが言っていることは正しい。
「で、端的にどうしたらいいんだ?」
「お前さん、槍を作る時どんなことを考えてる?」
「そうだな、三叉の槍を正確に思い描き、作ることだけを考えてるって所かな」
「はー、ゼロ点。全くダメダメ、同じ様な技を使える身としてそんなんじゃ許せない」
なぜだろう。レオにものすごくイライラしてしまう。
レオはひらひらと手を振り、煽ってきた。
「確かにそれは正しいことだ。だが、ベーシックで戦っていけるわけがないだろ工夫しろ工夫を。もっと硬くもっと鋭くもっと強く。そんな風に考えながら創り出してみろ」
もっと硬く、もっと鋭く、もっと強く……
「イメージが大事だ。想像してみろ、最強の矛を」
最強の矛を……想像ッ!!
「さ、やってみ」
「あぁ……穿て!地を割り、海を割りて、星をも貫け!!海王ポセイドン《トリアイナ》!!」
いつも通り詠唱を唱えると異変に気づく。
なんだこれは!
いつもと違うオーラを放つトリアイナを見て、エクスは言葉を失う。
放たれるオーラは強く気高く、そして猛々しく。
持っているだけでもわかるほど今までとは違う。
「どうよ、まだまだって所だが今の所それだけでも十分じゃね?」
「十分どころじゃないよ、強くなったってレベルじゃない。今までの比にならない、ありがとうレオ」
「いいってことよー」
ニッと笑い一つ提案される。
「で、百聞は一見に如かず。どんなもんか試してみたくねぇか?」
「ッ!?」
思いがけない提案に心が踊る。
「あぁ、相手をお願いしてもいいか?」
「やるからには本気で行くぜ?ってことで神様、何かあった時は回復すると約束してくれ。さっきのようには行かないかもだ」
「おーおー、童貞と最弱の二人のバトルか。面白いいいじゃろう、まだ時間もある事だし手合わせを見せてくれ」
ルーやセレネは未だに遠くで話を続けているみたいだ。
二人に危害が加わらないようにどうにかしないとだが……
「マスター、私が固有結界をお作りします」
突然姿を現したムシュに驚くことなく、レオとエクスは作り出された固有結界の中へと移動する。
「へー、固有結界って言うのか。こんな薄い壁で大丈夫なのか?」
「安心しろムシュはこの中で誰よりも魔法の能力や強さが長けているヤツだ。もし頼りないなら何重にもしてもらうけど?」
「いや、そこまで信頼してるんなら大丈夫ってことだろ。さぁ、喧嘩祭りの始まりだぜッ!!」
二人は向き合い歯を輝かせ笑う。
ほぼ同時に口を開き叫ぶ。
「穿て!地を割り、海を割りて、星をも貫け!!海王ポセイドン《トリアイナ》!!」
「創造、獅子王の拳」
それぞれに武器を装備し、大地を思い切り蹴る。
槍と篭手がぶつかり合うと綺麗な音が響く。
さながら演奏会のような心地よい音色が辺り一帯を包み込む。
「エクス!やっぱお前強いな、見直したぜ」
「そっちこそ、やっぱ強いぜ」
二人は笑顔のままで戦い続けた。
それから一体どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
数分?数十分?そんなことを忘れてしまうほど、幸せな時間だった。
誰かのためじゃない、自分の欲を満たすための戦い。
背負うものが無い分少し寂しいが、たまにはこういうのも悪くない。
「そろそろ時間が来ちまう、決着といこうぜ」
「レオ、ありがとうな」
「どういたしましてだ」
「エノシ・ガイオス」
叫ぶと、空中には無数のトリアイナが現れる。
矛先は一点、レオへと向いていた。
「奥の手ってやつか、いいぜおもしれえ!!」
合図とともに、無数のトリアイナはレオへと一直線に進む。
当たった瞬間、激しい砂埃が視界を覆う。
とてつもない威力に固有結界にヒビが入る。
一番驚いていたのはエクス本人。
「ったく、面白い技を使う。これが最弱の力か」
「薄々気づいてたが、やっぱ全部撃ち落としたか」
「悪いな、水の龍玉。中遠距離向けの武器だ、こいつから飛ばされた弾は粘着性や爆発性とか弾種を変えれるってのが強みだな」
「それで全弾使ってエノシ・ガイオスを撃ち落とした……か。あー、勝ちたかった」
「あと俺から出せる最後のアドバイスだ。行動する時は常に最悪のパターンを想像しながら動け。じゃないと手遅れになる」
「肝に銘じておくよ」
最後のアドバイスを貰い、遂にお別れの時間がやってきた。
「楽しかったぜエクス。もう会えないと思うが達者でな」
「レオ……本当にありがとう。少しの時間だったけどお世話になった。この世界は俺が救う。別の世界は任せたぜ」
「あぁ、任された」
初めてあった時のように二人は握手を交わす。
どうしてかな、目の前が少し見づらい。
あぁ、俺泣いてるんだな。
二人共少しだけ涙を浮かべる。
レオは作り出された暗い空間へと足を踏み入れ気配が消える。
「エクスくん……泣いてる?」
「泣いてねぇよ」
鼻をすすり、誤魔化す。
レインは気付かないふりをし、笑顔を向ける。
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