最弱が世界を救う。
双星の子。
「さぁて、ファントムとか言ったっけ。俺の仕事は終わりだよな、帰っていいよな」
「本来ならば命を奪うのが仕事だったが、まぁ怠惰の呪いにかかっていれば死んだも同然。これで許してやろう」
未だに倒れ、もがき苦しむルーを見てファントムは一安心をする。
仕事をしないで有名なベルフェゴールに仕事の依頼をしろと、上から言われた時はどうしたのかと考えていた。
しかしまぁ、最後はきちんと仕事をやってくれた。
完璧とは程遠いが聞いていたシナリオ通り。
「さて、エクスくんの方は……ん?」
ファントムは目を凝らし、エクスを見ようとした時視界の端に動くものが見えた。
「おい、ベルフェゴール帰ってこい!緊急事態だ」
ゆっくりと帰っていたベルフェゴールは呼び止められ、後ろを振り向く。
そこで目を疑った。
有り得ない人物が未だに殺意をむきだしにし、二本の足で立っていた。
「はぁ……はぁ……」
ルーは気合いで立ち上がり、息を切らしていた。
すぅ、と大きく息を吸いこみ耳を劈く程の爆音で叫ぶ。
「双星よ!双生よ!今こそ我が力、解放せん!」
手の甲の五芒星が淡く光り始め、黄色い光から紅い光へと変わる。
やがて、眩く輝き全身を縛り付けていた黒い文字のようなものが消えていく。
それだけに限らず、ルーの皮膚には綺麗な模様が赤く浮かび上がる。
「貴様、一体何をしたんだ!呪いがこんな短時間に解けるはずがない!貴様は一体なんなんだ!」
「パパ……私、思い出したよ……」
小さく呟くと、軽く二十メートルは離れていた《怠惰》の悪魔の背後を取る。
瞬き1回にも満たない時間での移動。
体への負担は計り知れないが、ルーはそれら全てを無視し《怠惰》の悪魔へ懇親の一撃を喰らわせる。
思い切り飛ばされ、堪忍袋の緒が切れる。
「よくもやってくれたな、クソガキ。死んでも殺してやる」
殴られ、折れた骨は誰にも気づかれぬうちに再生していた。
いち早くその異変に気づいたルーは追撃を始める。
「いち……にい……さん……」
ルーは殴る度に謎のカウントを始める。
数字が大きくなるにつれ、攻撃速度は増していく。
「なんだ、さっきよりも攻撃が重たい。しかも、俺の再生能力を超えている……だと?」
防御無視の連続攻撃はやがて、《怠惰》の悪魔の防御を崩す。
「なっ、やべぇ」
こうなったら、奥の手を使うしか……
「九百九十九……」
九百九十九発目の攻撃が終わると、一瞬だけスキが生まれる。
この機会を逃すまいと、《怠惰》の悪魔は使い魔を召喚する。
「来い、フェニックス!!」
体内から大量の炎が溢れ出し、大きな鳥の形へとまとまる。
「不死鳥の輝き」
右手に炎を集中させ、千発目であろう拳を予測し、炎の拳をルーの顔めがけて放つ。
「千の戦を選とし、生を制せッ!!双星の希望」
ルーの拳はあっさりと避けられる。
残念だったな、クソガキ。俺の方が一枚上手だ。
《怠惰》の悪魔はにやりと笑い勝ちを確信する。
「タイプ・ジェミニ」
光っていたはずの右手は輝きを失い、その代わりに左手が光り始める。
獣人の上位個体、アブノーマルにも及ぶ動体視力と反射神経で、《怠惰》の悪魔の拳を紙一重で避ける。
もはや神業の領域。
「そんな馬鹿な!俺が負けるなんてッ!!」
「星になれええええええ!!!!」
全力を込めた左手は《怠惰》の悪魔の心臓を貫く。
大爆発を起こし、辺り一帯を消し飛ばす様な爆風。
爆発の瞬間にルーは大きく後ろへ飛び、難を逃れた。
「パパ、待ってて今助けに……」
くるりと振り返り、エクスの方を見ると狂気を感じる。
ピリピリと肌が痛い。
誰も近づけさせない狂気のオーラは、エクス本人から出されていた。
「パパ!」
死を連想させるオーラは、ルーの体を蝕む。
皮膚は刃物で切られたように切り裂かれ、血が流れ出す。
そんな事よりも大事なものを守るために、ルーはエクスの元へ走る。
「ぐっ、お前なぜ色欲の魅了を受けても尚立ち上がれる。なぜお前は効かない」
「全てを破壊する」
エクスの顔の右半分を覆い尽くす黒い炎。
左目は青黒く光り、どことなく不気味だ。
「色欲の魅了が効かないと言うことは、お前好きな人がいるのか。愛している人がいるのか。異性を必ず墜す《色欲》の悪魔、アスモデウスを凌駕する程の存在なのか!!!有り得ない有り得ない!!!」
「うがあああああああ!!!」
理性を失うつつあるエクスはトリアイナを顕現させると同時に、《色欲》の悪魔の右腕を切り落とす。
あまりの早業に切られたことを理解するのに時間を要した。
「えっ────」
気がつけば両腕を失っていた。
大量の血が流れ、貧血を起こす。
立っているのもふらふらとし、ふわふわとした脳内は負けを確信する。
勝っていた相手に気がつけば殺される一歩手前。
信じ難いが、夢ではない。
「海王の神撃」
三叉の槍は《色欲》の悪魔を貫き、貫き、貫く。
何度も何度も刺し、刺し、刺し続け、命の灯火は消える。
「もっとだ、もっと怒りを怒りを怒りを!!!!あああああああ!!!!」
死体を何度も殴る。
顔が変形するほど殴り続け、最終的には誰だったのかも判別不可能な領域まで達していた。
それでもなお殴り続けるエクスをルーは背中に抱きつく。
「もうやめて、パパ!!私たち勝ったんだよ!!!」
ピクリと肩を動かすだけで暴れることを止めることは出来なかった。
終いには振り落とされ、牙を向けられる。
「あの技……使わせてもらうね、ポルックス、カストル!!双星の封印」
両手を交差させ、五芒星を重ねる。
紅い光りは、青い光へと移り変わる。
「今その苦しみから解放させるから待ってて!」
敵を探し、エクスの動きは僅かにだが止まる。
止まることを予想し、ルーは既に動いていた。
音速を超え、エクスの目前へと移動する。
次に全力で両手のひらをエクスの胸に当て、強い衝撃を与える。
ドン、と一度大地を揺らすほどの衝撃が響き渡るとエクスの体は自由を取り戻したように倒れ込む。
ルーは小さい体で支え、強く抱きしめる。
「お疲れ様、パパ。ママの仇、今とるね」
「まて、俺も行く」
意識を取り戻したエクスはルーを止め、自らの力で立ち上がる。
その目には怒りと憎しみ負の感情全てが入り混じっていた。
「本来ならば命を奪うのが仕事だったが、まぁ怠惰の呪いにかかっていれば死んだも同然。これで許してやろう」
未だに倒れ、もがき苦しむルーを見てファントムは一安心をする。
仕事をしないで有名なベルフェゴールに仕事の依頼をしろと、上から言われた時はどうしたのかと考えていた。
しかしまぁ、最後はきちんと仕事をやってくれた。
完璧とは程遠いが聞いていたシナリオ通り。
「さて、エクスくんの方は……ん?」
ファントムは目を凝らし、エクスを見ようとした時視界の端に動くものが見えた。
「おい、ベルフェゴール帰ってこい!緊急事態だ」
ゆっくりと帰っていたベルフェゴールは呼び止められ、後ろを振り向く。
そこで目を疑った。
有り得ない人物が未だに殺意をむきだしにし、二本の足で立っていた。
「はぁ……はぁ……」
ルーは気合いで立ち上がり、息を切らしていた。
すぅ、と大きく息を吸いこみ耳を劈く程の爆音で叫ぶ。
「双星よ!双生よ!今こそ我が力、解放せん!」
手の甲の五芒星が淡く光り始め、黄色い光から紅い光へと変わる。
やがて、眩く輝き全身を縛り付けていた黒い文字のようなものが消えていく。
それだけに限らず、ルーの皮膚には綺麗な模様が赤く浮かび上がる。
「貴様、一体何をしたんだ!呪いがこんな短時間に解けるはずがない!貴様は一体なんなんだ!」
「パパ……私、思い出したよ……」
小さく呟くと、軽く二十メートルは離れていた《怠惰》の悪魔の背後を取る。
瞬き1回にも満たない時間での移動。
体への負担は計り知れないが、ルーはそれら全てを無視し《怠惰》の悪魔へ懇親の一撃を喰らわせる。
思い切り飛ばされ、堪忍袋の緒が切れる。
「よくもやってくれたな、クソガキ。死んでも殺してやる」
殴られ、折れた骨は誰にも気づかれぬうちに再生していた。
いち早くその異変に気づいたルーは追撃を始める。
「いち……にい……さん……」
ルーは殴る度に謎のカウントを始める。
数字が大きくなるにつれ、攻撃速度は増していく。
「なんだ、さっきよりも攻撃が重たい。しかも、俺の再生能力を超えている……だと?」
防御無視の連続攻撃はやがて、《怠惰》の悪魔の防御を崩す。
「なっ、やべぇ」
こうなったら、奥の手を使うしか……
「九百九十九……」
九百九十九発目の攻撃が終わると、一瞬だけスキが生まれる。
この機会を逃すまいと、《怠惰》の悪魔は使い魔を召喚する。
「来い、フェニックス!!」
体内から大量の炎が溢れ出し、大きな鳥の形へとまとまる。
「不死鳥の輝き」
右手に炎を集中させ、千発目であろう拳を予測し、炎の拳をルーの顔めがけて放つ。
「千の戦を選とし、生を制せッ!!双星の希望」
ルーの拳はあっさりと避けられる。
残念だったな、クソガキ。俺の方が一枚上手だ。
《怠惰》の悪魔はにやりと笑い勝ちを確信する。
「タイプ・ジェミニ」
光っていたはずの右手は輝きを失い、その代わりに左手が光り始める。
獣人の上位個体、アブノーマルにも及ぶ動体視力と反射神経で、《怠惰》の悪魔の拳を紙一重で避ける。
もはや神業の領域。
「そんな馬鹿な!俺が負けるなんてッ!!」
「星になれええええええ!!!!」
全力を込めた左手は《怠惰》の悪魔の心臓を貫く。
大爆発を起こし、辺り一帯を消し飛ばす様な爆風。
爆発の瞬間にルーは大きく後ろへ飛び、難を逃れた。
「パパ、待ってて今助けに……」
くるりと振り返り、エクスの方を見ると狂気を感じる。
ピリピリと肌が痛い。
誰も近づけさせない狂気のオーラは、エクス本人から出されていた。
「パパ!」
死を連想させるオーラは、ルーの体を蝕む。
皮膚は刃物で切られたように切り裂かれ、血が流れ出す。
そんな事よりも大事なものを守るために、ルーはエクスの元へ走る。
「ぐっ、お前なぜ色欲の魅了を受けても尚立ち上がれる。なぜお前は効かない」
「全てを破壊する」
エクスの顔の右半分を覆い尽くす黒い炎。
左目は青黒く光り、どことなく不気味だ。
「色欲の魅了が効かないと言うことは、お前好きな人がいるのか。愛している人がいるのか。異性を必ず墜す《色欲》の悪魔、アスモデウスを凌駕する程の存在なのか!!!有り得ない有り得ない!!!」
「うがあああああああ!!!」
理性を失うつつあるエクスはトリアイナを顕現させると同時に、《色欲》の悪魔の右腕を切り落とす。
あまりの早業に切られたことを理解するのに時間を要した。
「えっ────」
気がつけば両腕を失っていた。
大量の血が流れ、貧血を起こす。
立っているのもふらふらとし、ふわふわとした脳内は負けを確信する。
勝っていた相手に気がつけば殺される一歩手前。
信じ難いが、夢ではない。
「海王の神撃」
三叉の槍は《色欲》の悪魔を貫き、貫き、貫く。
何度も何度も刺し、刺し、刺し続け、命の灯火は消える。
「もっとだ、もっと怒りを怒りを怒りを!!!!あああああああ!!!!」
死体を何度も殴る。
顔が変形するほど殴り続け、最終的には誰だったのかも判別不可能な領域まで達していた。
それでもなお殴り続けるエクスをルーは背中に抱きつく。
「もうやめて、パパ!!私たち勝ったんだよ!!!」
ピクリと肩を動かすだけで暴れることを止めることは出来なかった。
終いには振り落とされ、牙を向けられる。
「あの技……使わせてもらうね、ポルックス、カストル!!双星の封印」
両手を交差させ、五芒星を重ねる。
紅い光りは、青い光へと移り変わる。
「今その苦しみから解放させるから待ってて!」
敵を探し、エクスの動きは僅かにだが止まる。
止まることを予想し、ルーは既に動いていた。
音速を超え、エクスの目前へと移動する。
次に全力で両手のひらをエクスの胸に当て、強い衝撃を与える。
ドン、と一度大地を揺らすほどの衝撃が響き渡るとエクスの体は自由を取り戻したように倒れ込む。
ルーは小さい体で支え、強く抱きしめる。
「お疲れ様、パパ。ママの仇、今とるね」
「まて、俺も行く」
意識を取り戻したエクスはルーを止め、自らの力で立ち上がる。
その目には怒りと憎しみ負の感情全てが入り混じっていた。
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