最弱が世界を救う。
最終決戦。
「さて、宿どうするか」
「また、野宿でも、大丈夫、です」
ゼノ達との戦いから逃げてきたソロモン達は、広い荒野へと来ていた。
逃げる際、目的地を決めておらず、セーレは適当な場所へと転移させていた。
そのため、今二人がいる荒野はどの辺なのかさえわからない。
「ミルティ、一つお前の力のことについて聞きたい。アブノーマル個体なのはわかったが、アブノーマル形態のお前は何故体が成長しているんだ?」
「アブノーマルは、自分が思う、最強の姿へと、変身出来る、と言われてます。あの姿は、私の、母を想像しました」
「お前の親は強かったのか?」
「はい。四年前の、悪魔襲来の日、私の両親は、たった二人で、亜人の国を、守りました。しかし、その力を、人々は恐れ、火刑によって、殺されました」
「辛いことを言わせたな。すまない」
話をしていると、いつの間にか日没が近づいていた。
夕焼け空は赤く染まり、幻想郷のような景色が空一面に広がっている。
「ミルティ、もうわかっていると思うが一つ話がある。今まで二度戦ってきた女三人組を覚えているだろ?」
ミルティは無言で頷くと、ソロモンの表情は一変し目つきが鋭くなる。
「あの三人組、恐らくだがもう一度戦うことになる。次は私を確実に殺しに来るだろう。もしかすると、お前も命を落とすかもしれない」
奴隷契約。上から下へ契約させるのが一般的だが、下から上へ契約の申請をすると二つ通常と違う力が発動する。
一つ目は、力の共有。
主が使うものを奴隷も扱えるようになる。
例えば、ソロモンが使うグリモワール・ゴエティアをミルティが使えるように。
二つ目は、主が死ぬとその奴隷も死ぬ。
命を共にする、したいと思った相手へ、奴隷契約を結ぶためその力が作用される。
「私が死んだらお前も死ぬ。本当にそれでいいのか?」
「私は、ソロモンさんと、共に、死ねるなら。それに、ソロモンさんは、誰にも負けない、そうですよね?」
無垢な笑顔が光り輝き、夜を明るく照らすようだった。
その明るさに、場の雰囲気も明るくなった。
夜に輝く太陽。まさしく、その通りだった。
そここら二人は食事を済ませ、睡眠を取ることにした。
次の日の朝、最初に目を覚ましたのはソロモンだった。
目を覚ました、と言うのは間違えで正確には、眠れていない。
疲労により体は疲れているが、度々見る悪夢が脳裏を彷徨い、眠れない。
「ぐっ……ゼウス。必ず貴様を……」
「ソロモン、さん?」
「悪い、起こしたな。まだ寝てても大丈夫だぞ?」
「いえ、もう、大丈夫です」
まだ寝足りないと言わんばかりに、眠い目を擦り背伸びをする。
その姿を見ていると、ソロモンは何故かミルティの頭を撫でていた。
「どう、したんですか?」
「あ、いや、そのすまん」
撫でられて気持ちよかったのか、ミルティの目はとろりと溶けそうだ。
その姿を見て、ソロモンは手を止めることが出来ず、終いには抱きついた。
「ほ、本当に、どうしたん、ですか?」
「すまない……お前を死なせない……」
「信じて、ます」
ソロモンの声は少し泣いているように思えた。
掠れた声は力強く、どこか頼りない。
それでもミルティはソロモンのことを信じ、共に生きると誓った。
「ミルティ、今日一日はずっと警戒態勢でいてくれ。常にアブノーマル形態になれるように準備を」
「どういう、意味、ですか」
「未来予知だ。恐らく今日仕掛けてくる。詳しいことは見れなかったが、今日が一番危ない」
「っ!!南西百m先に、三人。来ました、ソロモンさん」
「勝つぞ……」
「あれ、目標地点よりも相当ずれてるね、レインさんどうしたんですか?」
「わからない。けどもう見つけたよ」
レインの指差す方を見ると、二人組がこちらへと歩いてきていた。
「ソロモン、次こそは必ず倒す!!」
「以前の私よりも強くなっているぞ?甘くるなよ、天使」
「ちゃんと私達だって修行して強くなってきた。もうお前じゃ倒せないかもよ?」
「強くなったのは私のみじゃない。もう一度いう、甘く見るな」
最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
始めに動いたのはリリー。
地面に手を当てると、数百にも及ぶ屍が蠢き出す。
「やれ、ミルティ」
「はい」
目を閉じ、精神統一をするとミルティの体は見る見るうちに大きくなり、アブノーマル形態へと姿を変える。
勢いよく地面を蹴り、屍達の背後を取ると、全ての首が跳ね飛びる。
一瞬の出来事と、アブノーマルの力の強さを目の当たりにしてレイン達は驚きを隠せない。
「確かに、強い。それでも、私達は勝たせてもらう」
「大人しく負けて死ね。グリモワール・ゴエティア展開、召喚ハルファス」
ソロモンの右腕に纒わり付くと、黒い剣が現れる。
レインもそれを見て、星砕きを顕現。
さらに、大天使形態へ移行。
星砕きとハルファスがぶつかると、金属音が響く。
「やっぱり、ソロモンと戦えるのは私一人───なんてねっ」
「一気に決めさせてもらいます!!」
レインが転移魔法でソロモンの背後へ回り込むと、レインの元いた場所の後方でセレネが弓を引いていた。
「絶・光臨の矢!!」
光の速度で飛んでいく矢は、一本から二本。
二本から数本へと増えていき、視界全体に矢が敷き詰められる。
「GAOOOOOO!!」
ミルティの咆哮が全ての矢を叩き落とす。
鼓膜を破るほどの大音量で叫ぶミルティを見て、ソロモンより先に倒すとセレネは決め、一人でミルティの相手をすることにした。
「ミルティさん、私が相手です」
「ご主人様へ楯突く者は全て葬る。殺しに来る相手は言語道断。私の全てを使って守り抜く」
「忠誠心ってものですか。その首元を見る限り奴隷契約ですか?しかも、貴方から申し出た見たいですね」
怒りに身を任せ、全ての力を振り絞りセレネへと殴り掛かる。
「アブノーマル個体、確かに強いですね。ですが、私の盾すら突破できないのですか?」
光でできた分厚い壁がセレネを守りきっていた。
身体能力が段違いのアブノーマルの力を守りきった壁の強さに、ミルティはさらにギアを上げ段階『神』へとなる。
「段階『神』ですか、これは厄介です。でも負けるわけには行きません」
セレネは全身を光で包み込み、鎧を装着する。
光り輝く黄金の鎧は、まさに女騎士。
「段階『神』でも、勝てない。私こそ負けるわけには行きません!!」
さらに力を貯め始めるミルティを見て、セレネは目を疑う。
段階『神』のその上の領域へ足を踏み入れようとすると、命の保証はない。
自殺行為と言っても過言ではない。
「辞めなさい!!今散るべき命ではないはず」
「私の命はご主人様と共に!!吠えろ我が命!燃えよ永遠の炎!全てを超えろ!」
ミルティの髪の色は白から金へと染まる。
「ここまできて、まさか段階『魔神』!?有り得ないです、あれは神の領域を超えた悪魔しかなれないはずじゃ……まさか、悪魔をその身に宿したとでもいうの?」
「力の共有。私はご主人様の能力を使える。ご主人様より私は強くなりたい」
「じゅうぶんに強いよ。だから生き物の領域から出ないことをオススメするよ?」
「引き返すことなんてもう無理です。私は……ソロモン様と共に死ぬと決めた」
「頑固者……ですね」
再び戦闘が────始まる。
「また、野宿でも、大丈夫、です」
ゼノ達との戦いから逃げてきたソロモン達は、広い荒野へと来ていた。
逃げる際、目的地を決めておらず、セーレは適当な場所へと転移させていた。
そのため、今二人がいる荒野はどの辺なのかさえわからない。
「ミルティ、一つお前の力のことについて聞きたい。アブノーマル個体なのはわかったが、アブノーマル形態のお前は何故体が成長しているんだ?」
「アブノーマルは、自分が思う、最強の姿へと、変身出来る、と言われてます。あの姿は、私の、母を想像しました」
「お前の親は強かったのか?」
「はい。四年前の、悪魔襲来の日、私の両親は、たった二人で、亜人の国を、守りました。しかし、その力を、人々は恐れ、火刑によって、殺されました」
「辛いことを言わせたな。すまない」
話をしていると、いつの間にか日没が近づいていた。
夕焼け空は赤く染まり、幻想郷のような景色が空一面に広がっている。
「ミルティ、もうわかっていると思うが一つ話がある。今まで二度戦ってきた女三人組を覚えているだろ?」
ミルティは無言で頷くと、ソロモンの表情は一変し目つきが鋭くなる。
「あの三人組、恐らくだがもう一度戦うことになる。次は私を確実に殺しに来るだろう。もしかすると、お前も命を落とすかもしれない」
奴隷契約。上から下へ契約させるのが一般的だが、下から上へ契約の申請をすると二つ通常と違う力が発動する。
一つ目は、力の共有。
主が使うものを奴隷も扱えるようになる。
例えば、ソロモンが使うグリモワール・ゴエティアをミルティが使えるように。
二つ目は、主が死ぬとその奴隷も死ぬ。
命を共にする、したいと思った相手へ、奴隷契約を結ぶためその力が作用される。
「私が死んだらお前も死ぬ。本当にそれでいいのか?」
「私は、ソロモンさんと、共に、死ねるなら。それに、ソロモンさんは、誰にも負けない、そうですよね?」
無垢な笑顔が光り輝き、夜を明るく照らすようだった。
その明るさに、場の雰囲気も明るくなった。
夜に輝く太陽。まさしく、その通りだった。
そここら二人は食事を済ませ、睡眠を取ることにした。
次の日の朝、最初に目を覚ましたのはソロモンだった。
目を覚ました、と言うのは間違えで正確には、眠れていない。
疲労により体は疲れているが、度々見る悪夢が脳裏を彷徨い、眠れない。
「ぐっ……ゼウス。必ず貴様を……」
「ソロモン、さん?」
「悪い、起こしたな。まだ寝てても大丈夫だぞ?」
「いえ、もう、大丈夫です」
まだ寝足りないと言わんばかりに、眠い目を擦り背伸びをする。
その姿を見ていると、ソロモンは何故かミルティの頭を撫でていた。
「どう、したんですか?」
「あ、いや、そのすまん」
撫でられて気持ちよかったのか、ミルティの目はとろりと溶けそうだ。
その姿を見て、ソロモンは手を止めることが出来ず、終いには抱きついた。
「ほ、本当に、どうしたん、ですか?」
「すまない……お前を死なせない……」
「信じて、ます」
ソロモンの声は少し泣いているように思えた。
掠れた声は力強く、どこか頼りない。
それでもミルティはソロモンのことを信じ、共に生きると誓った。
「ミルティ、今日一日はずっと警戒態勢でいてくれ。常にアブノーマル形態になれるように準備を」
「どういう、意味、ですか」
「未来予知だ。恐らく今日仕掛けてくる。詳しいことは見れなかったが、今日が一番危ない」
「っ!!南西百m先に、三人。来ました、ソロモンさん」
「勝つぞ……」
「あれ、目標地点よりも相当ずれてるね、レインさんどうしたんですか?」
「わからない。けどもう見つけたよ」
レインの指差す方を見ると、二人組がこちらへと歩いてきていた。
「ソロモン、次こそは必ず倒す!!」
「以前の私よりも強くなっているぞ?甘くるなよ、天使」
「ちゃんと私達だって修行して強くなってきた。もうお前じゃ倒せないかもよ?」
「強くなったのは私のみじゃない。もう一度いう、甘く見るな」
最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
始めに動いたのはリリー。
地面に手を当てると、数百にも及ぶ屍が蠢き出す。
「やれ、ミルティ」
「はい」
目を閉じ、精神統一をするとミルティの体は見る見るうちに大きくなり、アブノーマル形態へと姿を変える。
勢いよく地面を蹴り、屍達の背後を取ると、全ての首が跳ね飛びる。
一瞬の出来事と、アブノーマルの力の強さを目の当たりにしてレイン達は驚きを隠せない。
「確かに、強い。それでも、私達は勝たせてもらう」
「大人しく負けて死ね。グリモワール・ゴエティア展開、召喚ハルファス」
ソロモンの右腕に纒わり付くと、黒い剣が現れる。
レインもそれを見て、星砕きを顕現。
さらに、大天使形態へ移行。
星砕きとハルファスがぶつかると、金属音が響く。
「やっぱり、ソロモンと戦えるのは私一人───なんてねっ」
「一気に決めさせてもらいます!!」
レインが転移魔法でソロモンの背後へ回り込むと、レインの元いた場所の後方でセレネが弓を引いていた。
「絶・光臨の矢!!」
光の速度で飛んでいく矢は、一本から二本。
二本から数本へと増えていき、視界全体に矢が敷き詰められる。
「GAOOOOOO!!」
ミルティの咆哮が全ての矢を叩き落とす。
鼓膜を破るほどの大音量で叫ぶミルティを見て、ソロモンより先に倒すとセレネは決め、一人でミルティの相手をすることにした。
「ミルティさん、私が相手です」
「ご主人様へ楯突く者は全て葬る。殺しに来る相手は言語道断。私の全てを使って守り抜く」
「忠誠心ってものですか。その首元を見る限り奴隷契約ですか?しかも、貴方から申し出た見たいですね」
怒りに身を任せ、全ての力を振り絞りセレネへと殴り掛かる。
「アブノーマル個体、確かに強いですね。ですが、私の盾すら突破できないのですか?」
光でできた分厚い壁がセレネを守りきっていた。
身体能力が段違いのアブノーマルの力を守りきった壁の強さに、ミルティはさらにギアを上げ段階『神』へとなる。
「段階『神』ですか、これは厄介です。でも負けるわけには行きません」
セレネは全身を光で包み込み、鎧を装着する。
光り輝く黄金の鎧は、まさに女騎士。
「段階『神』でも、勝てない。私こそ負けるわけには行きません!!」
さらに力を貯め始めるミルティを見て、セレネは目を疑う。
段階『神』のその上の領域へ足を踏み入れようとすると、命の保証はない。
自殺行為と言っても過言ではない。
「辞めなさい!!今散るべき命ではないはず」
「私の命はご主人様と共に!!吠えろ我が命!燃えよ永遠の炎!全てを超えろ!」
ミルティの髪の色は白から金へと染まる。
「ここまできて、まさか段階『魔神』!?有り得ないです、あれは神の領域を超えた悪魔しかなれないはずじゃ……まさか、悪魔をその身に宿したとでもいうの?」
「力の共有。私はご主人様の能力を使える。ご主人様より私は強くなりたい」
「じゅうぶんに強いよ。だから生き物の領域から出ないことをオススメするよ?」
「引き返すことなんてもう無理です。私は……ソロモン様と共に死ぬと決めた」
「頑固者……ですね」
再び戦闘が────始まる。
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