最弱が世界を救う。

しにん。

《嫉妬》5

「エクス。お前は何のために戦っている。なぜ、悪魔を庇う?」


ゼノの発言により、二人の手は止まる。


「なぜ……?それは大事な人を守るため。」
「もう一度聞く。何のために戦っている。」
「だから大事な人を──」
「では、大事ではない人は殺すと。」
「そ、れは……」


ゼノの問いかけに必死に答えを導こうとするが、完璧な答えが見つからなかった。


「俺は一体何のために───」


疑問を解決しようとすると、ふととある記憶を思い出した。
《暴食》の悪魔が言っていたことだ。


『命を奪う覚悟がお前にはない。』


その言葉を思い出し、自分なりに考え答えを導く。
拙い答えだが、この現状では最も正しい答えを導き出した。


「命は、簡単に奪っていいものではない。」
「それがどうした。そいつは何人もの人を殺した。充分殺していい理由になるはずだ。」
「それでも、俺はレヴィの優しさを知っている。今、ゼノと渡り合えているのもレヴィのおかげだ。」
「ほう。その魔法は《嫉妬》の悪魔直々にと、な。」
「だから、奪っていい命と奪ってはいけない命がある。俺は、レヴィの命は奪っていけないと思う。」


エクスなりに答えをまとめたが、ゼノには届かなかった。


「だからどうした。ミラは、ミラはこいつのせいで死んだんだ!!」
「それでも俺はレヴィを守る。」
「では、和解は無理そうだ。互いに死ぬまで戦うしかないようだ。」
 

そう呟くと、さらに雨が酷くなる。
雷が頻りに空を明るく照らす。
二人は雨に濡れようが構わず互いの力、思い、命をぶつけあった。
ゼノは先日のマーメイド戦以来、怪我で前線を降りていたが世界最強の名は伊達ではなかった。


「どうした、エクス。まだまだそんなものじゃないだろ?」
「まけ……るか!!」


エクスは全力で叫ぶが、体はぼろぼろになっていた。
弱りきったエクスを、怪我一つせず立ち尽くすゼノが見下ろす。
エクスはこの時、自分の無力さを痛感した。
《暴食》の悪魔を倒し、『アテナ』に入隊し、一時的ではあるが、そのリーダとなった。
強くなったと思う事が立て続けに起こった。
そのためエクスは、強くなったと過信しすぎていた。


「俺はまだ弱いまま、なのか。」
「違う、確かにお前は強い。一般人だと簡単に倒しただろう。だが、俺は色んなものを背負ってきた。負けられない理由がある。背負ってきた物の重み、それでお前は負けている。」
「俺は弱くて何も無い……だけど!!それでも背負ってきた物はあるっ!!」


エクスは叫ぶと、再度レヴィの槍、ネプチューンの生成を試みる。
すると、エクスの周りに水柱が地面から出てきた。
動じず、槍の生成を続ける。
心を落ち着かせ、今までの練習を思い出し、二又の槍をイメージする。
水柱は徐々にエクスに集まっていき、長く形を変える。


「唸れ!聖なる水よ!ネプチューン!」

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