最弱が世界を救う。

しにん。

質問。

軽いパーティーを終え、エクスとレインはベランダに出ていた。


「なんだか不思議な気分。最近まで弱かった俺が『アテナ』に入ることが出来るなんて……夢みたい。」
「うぅん。夢じゃないよ。」


2人はいつものように会話をしていたが、レインが少しだけ暗かった。
やはり、昼間のうちに何かあったのではないか、と考えるが無理に聞くとレインを傷つけてしまうと思い、喉まで来ていた言葉を飲み込む。


「そういえばレイン、俺に先生ができたんだ。」
「先生……?」


レインは首を傾げる。


「うん。青い髪が似合う女性でね、その人に教えてもらうんだ。」
「うん……うん……う、え!?女性!?」


適当に相槌を打っていたレインが驚いて大きな声を出す。
釣られてエクスも驚く。


「そ、その女性って……どんな人……?」
「んー、正義感が強くて優しい人?かな。」


エクスは昼間の出来事をレインに話す。
レインはさっきとは別のことで落ち込みエクスをジト目で見つめる。


「まさかエクスくん、その人に惚れてる……?」
「いや、全く。」


澄んだ瞳には嘘をついているようには見えなかった。
ひとまず安心するレインを見てエクスは


「惚れてたら何かあったの?」
「い、いや!別に……何も無い……けど……」


レインはもじもじして言葉を濁す。
エクスは「変なの」と言って、『アテナ』の人達に呼ばれ、その場を去った。
レインは夜空を見上げて反省会を開く。


「うぅ……やっぱりエクスくんにはまだ言えない……」


十分近く夜空を見上げていると後ろから声がした。


「夜に外に出ると風邪ひくっすよ。」
「ゼルさん……ありがとうございます」


ゼルはレインに暖かい紅茶を持ってきた。


「あの……ゼルさん。一つの質問いいですか?」
「どうしたっす?」
「人を好きになったことってありますか?」
「んー、私はぐーたらできれば他のことなんてどうでもいいっすからね。人を好きになったことはないっす。」
 「そうですか……なんだかごめんなさい。」
「いやいや、気にしなくていいっすよ。」


ゼルはいつも通り眠たい目をこすり、ダルそうに返事をする。


「どうしてそんな質問をっすか?」
「好きな人がいて……その人にどんな風に伝えればいいのかなって……」
「いやぁ、乙女っすね!!青春っすね!!」


いつも半分しか開いていない目が少し大きく開く。
そのことに驚きレインは少し後ろへ退く。
一つ咳払いをし、ゼルがいつものように戻る。


「そうっすね、私経験ないっすけどやっぱり何処かへ呼んで、2人で話をするってのはどうっすか?」
「あ!!いいですねそれ!!機会があれば試してみます。この話は女と女同士の秘密にしてくださいね。」


ゼルは少し笑い頷く。

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