最弱が世界を救う。

しにん。

《暴食》8

一気に形勢逆転された。
ベルゼバブは先程まで全力を出していなかった。
エクス、レイン、セレネの3人は少しでも勝てると油断していた。3人は肩で息をしてベルゼバブと対峙する。
「はぁ……はぁ……なんて強さだ……なにか弱点があれば……」
「それよりもレインさん仕込みの方はどのようですか?」
「もう少しってところかな……あとわずかで"届かなかった"。」
作戦の途中経過を報告する。レインはセレネの作戦に賛同して全てをかけた。
だが、それでも倒せる保証はない。
「だったらまだ突っ走るだけだ!」
エクスは雄叫びをあげ攻撃態勢に入った瞬間、膝から崩れ落ちる。
「「エクスくん!」」


「調子に乗りすぎたかな……」
エクスは強くなったと錯覚していた。ベルゼバブと対等に渡り合えていた様に見えていたが、それは記憶の中の少女『ムシュ』から力を借りていた物に過ぎない。
対等に渡り合う反面、体への負担は尋常ではなかった。
全身の筋肉は悲鳴を上げ、少しも動けなくなった。
レインとセレネは青ざめた顔でエクスの様子を確認する。攻撃の要のエクスが戦闘不能により作戦は失敗に終わろうとしていた。


───ドクン……
心臓の音が普段よりも大きく脈を打つ。
「マスター。ここで負けるわけには行きません。貴方が死ぬと私も死ぬ。私にはまだ使命が残っています。なので力を託します。」
ムシュがエクスに話しかける、とエクスの右手の甲に魔法陣が浮かび上がる。
「これは……?」
「三位一体です。残り2人と手を合わせれば答えは導かれます。」
その瞬間視界は眩しく光り出す。


「エクスくん!」
レインはエクスが立ち上がるのをいち早く気づいた。
ベルゼバブとの交戦を一時離脱しセレネ1人に任せる。レインは急いでエクスの元へ走り寄る。
「レイン……後でまとめて話すから1度セレネと共に一時避難しよう。」
「戦略的撤退だね。うん。何か策があるんだね。信じてるよエクスくん!」
そう言うとレインはセレネの元へ走っていき、転移魔法により戦場を離れた。


「皆、これがどんな事になるかわからないけど俺についてきてくれるかな?」
エクスは2人にそう告げ真剣な表情になる。
「もちろん。私はいつまでもエクスくんについて行くよ!」
「私もその案に賛成です。いえ、それが最後の希望になるでしょう。」
3人は互いに仲間を信じ合い右手を前に出す。
すると2人の右手の甲にも魔法陣が浮かび上がる。
3人は円陣を組み右手を重ねる。
すると3人の足元に巨大な魔法陣が現れる。
それぞれの魔力を回復させ傷を癒す。それと同時に身体的に強化された。
「ベルゼバブを倒そう……」
小さきつぶやき3人はもう1度ベルゼバブの前に転移した。


「ベルゼバブ!もうお前ら悪魔の好き勝手にはさせない。だからお前を倒す!」
魔法が使えないエクスは両手に剣を持ちベルゼバブと剣を交える。
レインはセレネの作戦をもう1度実行するために背後をとる。
セレネはエクスが作り出した僅かなすきを突き攻撃する。
3人とも命をかけてベルゼバブと戦っていた。
「エクスくん!受け取って!」
レインが叫ぶと手には聖宝星砕きが握られていた。
エクスの元へ投げ見事にキャッチする。
するとベルゼバブは星砕きを見た瞬間目を見開き独り言を呟き始めた。
「そんな……なんでここに星砕きが……あれはあの御方の物のはずじゃ……」
考えがまとまらない中、3人の相手を同時にするが一瞬の油断により羽を1枚切られる。
3人はそこで満足せず攻撃をさらに続けた。

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