閃雷の元勇者
26話 猛威を振るう銃弾
襲いかかる銃弾は幾度となくオレの身体を貫こうとする。どれだけ切り伏せても、ジャックの勇者が攻撃を止めぬ限り永遠に続く。
これからどうすればいいのか、どう戦えば勝てるのか、ずっと探し続ける。
「ジリ貧だねえ。もしかしてボクの弾切れを狙っているのかい? それならそうと言ってくれ。ボクの魔力値は人の数倍はある。その意味わかるよなァ?」
図星だった。この最悪の状況の中、突破する方法よりも終わる方法を考えた。そうして辿り着いた答えが、ジャックの勇者の魔力切れ。
この銃弾は全て魔力を濃密に凝縮し、1発の弾丸となっている。そのため、魔力切れを起こせばいつかは攻撃の手が止む――そう考えていた。
だが、現実はそう甘くなかった。ジャックの勇者が言っていることは真実で、最初に比べ攻撃の手数が増えている。
魔力消費は膨大なはずなのに、更に魔力を消費する行動は本来ならば死に直結しかねない。
「ここで押し切りますよ……」
突破口は塞がれた。これ以上は無意味に過ぎない。
「最後です。ボクの全てを持って、キミの最強を打ち砕いてみせるッ! 天を穿つ銃弾ッ!!」
圧縮された強大な魔力は、ひとつの銃弾となりて装填される。
重い引き金を引いた瞬間、耳を劈く銃声が響き渡る。
「ブラッド――」
鋭い一撃は明確にオレの頭を射抜き、殺された。
死を確信したジャックの勇者は銃を捨て、高らかに笑い始める。
「はーっはっはっはっ! ついに積年の恨みが晴らされた! どうだ、ボクの方が強い……ボクが最強だッ!!」
死体を蹴り飛ばし、勝ったつもりで背中を見せてくれた。
「甘さゆえの敗北だ」
「なに――」
流石は勇者と言える。完全に死角からの攻撃だったが、片腕を犠牲に命からがら逃げきれていた。少し殺気を出しすぎたのだろうか。
「チッ、やっぱアイツから聞いてた話通り、生き返るか」
「オレの攻撃を避けるとは……正直驚いたよ」
「次期拡張世界の力か。いいぜ、初めて戦うがボクと力比べと行こうか!!」
ジャックの勇者はそう叫ぶとともに、姿を消す。
どうやら以前戦った頃よりも更に強くなっている。一筋縄ではいかないようだ。
「右近、左近。準備はいいか?」
「了解!」
再び四方八方から銃弾が飛んでくる。
「形態変化、双銃剣」
銃弾に銃弾をぶつけ、相殺する。
初めて乱射したが、魔力をかなり消耗した。この一瞬でここまで消費するのだから、ジャックの勇者の魔力は底なしと思ってしまう。
だが、先程よりは相手の手数は減っている。やはり、腕を1本切り落として正解だった。これ以上ジリ貧な状況のままでは、こちらの魔力がさきにつきてしまう。
「どうしたどうした! ボクを殺した時の力は何処に行ったんだ! ええ?」
「力なら封印した。必要ないと思ったからな!」
「てめぇ……ボクのことを見下しているな……」
「さあね。オレの前に立つなら、それ相応の覚悟が出来てるんだよな?」
「知るかそんなもの!」
ジャックの勇者は全ての魔力を使い切るつもりなのか、自らの魔力を外に放出し1箇所に集め始めた。アレを銃弾と言っていいのかわからないほど、巨大に圧縮された魔力。
「ちゃんと避けないと死にますよ? いや、これはもう避けられない……」
カチッと音と同時に銃弾が消える。目で追うことすら不可能な速度の銃弾をどう対処するか、どう破壊するか、それだけを考え続ける。
先程同様に、銃弾に銃弾を当て誘発し直撃を避ける。だが、暴風や爆発による熱などにより、恐らく即死。
ならば、答えはひとつ。避けることのみ。
「おや? 剣を置いて……まさか諦めたんですかァ?」
「…………」
「あははははっ! あの最強と呼ばれた勇者も、今となってはこんなものか! 弱いな、エースの勇者ァ!」
勝ちを確信し、また、笑い始める。
学習しないバカなのだろうか、それとも他に策があるのだろうか。どちらにせよ、オレが負けを認めた風に演じなければならない。
「さよなら、全人類の英雄サン」
辺り一帯を焼き尽くし、何もかもを吹き飛ばす威力。爆心地には大きなクレーターが出来上がり、ジャックの勇者はオレが死んだとばかり思っているようだ。
「次期拡張世界は複数回の死により、力を失う、か。つまり、今の攻撃で残りの命の在庫を全部使い果たしたのか――」
「一刀流剣術――紅月の弧月ッ!」
転移魔法でジャックの勇者の背後に回り込み、スキを見せた瞬間を狙っていた。
下から上へ弧を描く様に斬り、宙を舞う血は三日月を連想させた。
「今度こそ終わりだッ!」
「これで終わり、とでも思ったか?」
「なに!?」
殺意が出現した方向から銃弾が飛来、それを斬りジャックの勇者から距離を置く。
先程攻撃した背中の傷はみるみるうちに塞がっていく。次期拡張世界と思ったが、特徴である赤い目ではない。
「おいおい、もう攻撃は終わりかい?」
「へえ……やっとわかった」
ずっと引っかかっていた言葉が、一つだけある。
『ここはボクが作り上げた偽物の世界』
ずっと、ずっと、疑問に思っていた。痛みもある、なのに偽物の世界と言ったジャックの勇者の言葉が、ずっとずっと気がかりだった。
だけどやっと謎が解けた。ジャックの勇者が言っているとおり、今見えてる世界は全て偽物。
「何もかも偽物の世界。唯一本物なのは、殺気と現実世界でオレに直接与えた痛み」
「よくその答えにたどり着いたな。褒めてやるよ。だが、分かったところでどうするつもりだ? この世界はボクが作り出したもの。この世界の権限はボクにある」
「そうかもしれないな。だが、オレの魔法は未だに知られていないようだ……」
「エースの勇者の魔法――!?」
剣魔武闘会で数回見せた魔法という名を借りた、最強の神技。
「神を葬る拳ッ!!」
腰付近で拳を強く握りしめ、一気に地面へ叩きつける。
世界が音を立てて崩れ始める。
「オレの魔法は相手の魔法を打ち消す。残念だったな、元の世界に戻らせてもらうぜ」
真っ暗になった空間に一筋の光が見えてくる。その光を掴もうと手を伸ばすと、元の世界に戻れた。
辺りを見て状況の確認をすると、軽くため息が出てしまった。
傷だらけのアリスがまず目に入った。次に余裕の表情を見せるジャックの勇者。アリスの額を見る限り、鬼化を使用してこのざまらしい。
かなり血を流しており、このまま戦闘を続けるなら傷口が今より開き出血多量で死ぬ。
ここは一旦引かせるのが正解だ。
未だにオレの生還に気づいていないアリスの後ろから肩に手を置き、驚かせる。
「お兄ちゃん!?」
「よくやった、あとはオレに任せろ」
「……うんっ」
厳しい状況を戦っていたアリスの目に、希望という名の光が灯る。この希望を壊すわけにはいかない。
「手の内は全て読んだ。もう思うようには事は進ませない」
「チッ……よくもボクの世界を破壊したな……許さない、許さないッ!!」
銃弾の嵐がオレを襲うが、全弾切り落とす。
だが、このままでは先程と同じ状況になる。転移魔法も今は休憩時間のため使用不可。
鬼化と次期拡張世界を同時に使ってほぼ互角の相手。ならば、オレはその先に立つ。
「鬼解放――百鬼夜行ッ!!」
空気が一変し、王の誕生を祝福する。ジャックの勇者はこの姿を見て、開いた口が塞がらない。
それもそのはず、この姿を見たら誰もが口を揃えてこう漏らす。「地獄の鬼だ」と。
「鬼武装ッ! 地獄のパーティーの始まりだッ!」
黒い鎧が身体に装着され、鬼武者のような姿になる。
二刀の小太刀を使いこなし、間合いを詰める。
中、遠距離専門のジャックの勇者では、近距離を極めてきたオレには勝てない。
「アリスを傷つけたこと、後悔しながらまた、地獄へ帰れ! 日々進化するA」
Aの字をなぞるように3度ジャックの勇者を斬りつけ、膝から崩れていく。
これからどうすればいいのか、どう戦えば勝てるのか、ずっと探し続ける。
「ジリ貧だねえ。もしかしてボクの弾切れを狙っているのかい? それならそうと言ってくれ。ボクの魔力値は人の数倍はある。その意味わかるよなァ?」
図星だった。この最悪の状況の中、突破する方法よりも終わる方法を考えた。そうして辿り着いた答えが、ジャックの勇者の魔力切れ。
この銃弾は全て魔力を濃密に凝縮し、1発の弾丸となっている。そのため、魔力切れを起こせばいつかは攻撃の手が止む――そう考えていた。
だが、現実はそう甘くなかった。ジャックの勇者が言っていることは真実で、最初に比べ攻撃の手数が増えている。
魔力消費は膨大なはずなのに、更に魔力を消費する行動は本来ならば死に直結しかねない。
「ここで押し切りますよ……」
突破口は塞がれた。これ以上は無意味に過ぎない。
「最後です。ボクの全てを持って、キミの最強を打ち砕いてみせるッ! 天を穿つ銃弾ッ!!」
圧縮された強大な魔力は、ひとつの銃弾となりて装填される。
重い引き金を引いた瞬間、耳を劈く銃声が響き渡る。
「ブラッド――」
鋭い一撃は明確にオレの頭を射抜き、殺された。
死を確信したジャックの勇者は銃を捨て、高らかに笑い始める。
「はーっはっはっはっ! ついに積年の恨みが晴らされた! どうだ、ボクの方が強い……ボクが最強だッ!!」
死体を蹴り飛ばし、勝ったつもりで背中を見せてくれた。
「甘さゆえの敗北だ」
「なに――」
流石は勇者と言える。完全に死角からの攻撃だったが、片腕を犠牲に命からがら逃げきれていた。少し殺気を出しすぎたのだろうか。
「チッ、やっぱアイツから聞いてた話通り、生き返るか」
「オレの攻撃を避けるとは……正直驚いたよ」
「次期拡張世界の力か。いいぜ、初めて戦うがボクと力比べと行こうか!!」
ジャックの勇者はそう叫ぶとともに、姿を消す。
どうやら以前戦った頃よりも更に強くなっている。一筋縄ではいかないようだ。
「右近、左近。準備はいいか?」
「了解!」
再び四方八方から銃弾が飛んでくる。
「形態変化、双銃剣」
銃弾に銃弾をぶつけ、相殺する。
初めて乱射したが、魔力をかなり消耗した。この一瞬でここまで消費するのだから、ジャックの勇者の魔力は底なしと思ってしまう。
だが、先程よりは相手の手数は減っている。やはり、腕を1本切り落として正解だった。これ以上ジリ貧な状況のままでは、こちらの魔力がさきにつきてしまう。
「どうしたどうした! ボクを殺した時の力は何処に行ったんだ! ええ?」
「力なら封印した。必要ないと思ったからな!」
「てめぇ……ボクのことを見下しているな……」
「さあね。オレの前に立つなら、それ相応の覚悟が出来てるんだよな?」
「知るかそんなもの!」
ジャックの勇者は全ての魔力を使い切るつもりなのか、自らの魔力を外に放出し1箇所に集め始めた。アレを銃弾と言っていいのかわからないほど、巨大に圧縮された魔力。
「ちゃんと避けないと死にますよ? いや、これはもう避けられない……」
カチッと音と同時に銃弾が消える。目で追うことすら不可能な速度の銃弾をどう対処するか、どう破壊するか、それだけを考え続ける。
先程同様に、銃弾に銃弾を当て誘発し直撃を避ける。だが、暴風や爆発による熱などにより、恐らく即死。
ならば、答えはひとつ。避けることのみ。
「おや? 剣を置いて……まさか諦めたんですかァ?」
「…………」
「あははははっ! あの最強と呼ばれた勇者も、今となってはこんなものか! 弱いな、エースの勇者ァ!」
勝ちを確信し、また、笑い始める。
学習しないバカなのだろうか、それとも他に策があるのだろうか。どちらにせよ、オレが負けを認めた風に演じなければならない。
「さよなら、全人類の英雄サン」
辺り一帯を焼き尽くし、何もかもを吹き飛ばす威力。爆心地には大きなクレーターが出来上がり、ジャックの勇者はオレが死んだとばかり思っているようだ。
「次期拡張世界は複数回の死により、力を失う、か。つまり、今の攻撃で残りの命の在庫を全部使い果たしたのか――」
「一刀流剣術――紅月の弧月ッ!」
転移魔法でジャックの勇者の背後に回り込み、スキを見せた瞬間を狙っていた。
下から上へ弧を描く様に斬り、宙を舞う血は三日月を連想させた。
「今度こそ終わりだッ!」
「これで終わり、とでも思ったか?」
「なに!?」
殺意が出現した方向から銃弾が飛来、それを斬りジャックの勇者から距離を置く。
先程攻撃した背中の傷はみるみるうちに塞がっていく。次期拡張世界と思ったが、特徴である赤い目ではない。
「おいおい、もう攻撃は終わりかい?」
「へえ……やっとわかった」
ずっと引っかかっていた言葉が、一つだけある。
『ここはボクが作り上げた偽物の世界』
ずっと、ずっと、疑問に思っていた。痛みもある、なのに偽物の世界と言ったジャックの勇者の言葉が、ずっとずっと気がかりだった。
だけどやっと謎が解けた。ジャックの勇者が言っているとおり、今見えてる世界は全て偽物。
「何もかも偽物の世界。唯一本物なのは、殺気と現実世界でオレに直接与えた痛み」
「よくその答えにたどり着いたな。褒めてやるよ。だが、分かったところでどうするつもりだ? この世界はボクが作り出したもの。この世界の権限はボクにある」
「そうかもしれないな。だが、オレの魔法は未だに知られていないようだ……」
「エースの勇者の魔法――!?」
剣魔武闘会で数回見せた魔法という名を借りた、最強の神技。
「神を葬る拳ッ!!」
腰付近で拳を強く握りしめ、一気に地面へ叩きつける。
世界が音を立てて崩れ始める。
「オレの魔法は相手の魔法を打ち消す。残念だったな、元の世界に戻らせてもらうぜ」
真っ暗になった空間に一筋の光が見えてくる。その光を掴もうと手を伸ばすと、元の世界に戻れた。
辺りを見て状況の確認をすると、軽くため息が出てしまった。
傷だらけのアリスがまず目に入った。次に余裕の表情を見せるジャックの勇者。アリスの額を見る限り、鬼化を使用してこのざまらしい。
かなり血を流しており、このまま戦闘を続けるなら傷口が今より開き出血多量で死ぬ。
ここは一旦引かせるのが正解だ。
未だにオレの生還に気づいていないアリスの後ろから肩に手を置き、驚かせる。
「お兄ちゃん!?」
「よくやった、あとはオレに任せろ」
「……うんっ」
厳しい状況を戦っていたアリスの目に、希望という名の光が灯る。この希望を壊すわけにはいかない。
「手の内は全て読んだ。もう思うようには事は進ませない」
「チッ……よくもボクの世界を破壊したな……許さない、許さないッ!!」
銃弾の嵐がオレを襲うが、全弾切り落とす。
だが、このままでは先程と同じ状況になる。転移魔法も今は休憩時間のため使用不可。
鬼化と次期拡張世界を同時に使ってほぼ互角の相手。ならば、オレはその先に立つ。
「鬼解放――百鬼夜行ッ!!」
空気が一変し、王の誕生を祝福する。ジャックの勇者はこの姿を見て、開いた口が塞がらない。
それもそのはず、この姿を見たら誰もが口を揃えてこう漏らす。「地獄の鬼だ」と。
「鬼武装ッ! 地獄のパーティーの始まりだッ!」
黒い鎧が身体に装着され、鬼武者のような姿になる。
二刀の小太刀を使いこなし、間合いを詰める。
中、遠距離専門のジャックの勇者では、近距離を極めてきたオレには勝てない。
「アリスを傷つけたこと、後悔しながらまた、地獄へ帰れ! 日々進化するA」
Aの字をなぞるように3度ジャックの勇者を斬りつけ、膝から崩れていく。
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