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閃雷の元勇者

しにん。

20話 夢か現か

 オレはシンの言動で1つ仮説を立てていた。今回襲撃してきた敵の親玉が、賢者であるシンと。


「それで、何故私にそんな質問を?」


「これから話すことはオレの独り言だと思って聞いてくれ。オレの予想だと、シンは未来予知は使えない」


「おいおい、酷いことを言ったもんだな。未来予知はライガが一番近くで見てきただろ? それを今更否定するということは違うんじゃないかな?」


「まあ、最後まで話を聞けよ。昔からシンの未来予知はどこか抜けていた。何処まで未来が見えているか分からないが、シンが言っていたことは全て曖昧すぎる。例えば、敵が攻めてくるだな。いつどこで誰が攻めてくるのか、完璧に告げたことは無かったよな? それはどうしてだ?」


「誰にも言ってはいないが、私の未来予知は1度会ったことのある人物の未来しか見れない。そして、見える内容としてはいつも曖昧なもので、綺麗に見えたことは無い。これでも嘘だと言えるかい?」


 シンの未来予知の詳しい内容を聞くのは始めてだが、あらかじめ予想していた。
 先がどれまで見えるのかは予想できなかったが、未来を視る対象は予想的中。さあ、オレの引っかかっていた問題を1つずつ解いていこう。


「嘘だと言えるね。オレと初めて会った時、お前はなんて言ったか覚えているか? 『君が例の子供だね?』と言った。何故、1度も会ったことがない相手に例の子供だと言えた?」


「それは……」


「加えて1つ。有り得ない未来である、生徒会長が勇者になれるという事を言った? アイツ自身、そんな話は聞いたことを無いと言っていた。貧困な村の人物1人1人の魔力値を知る者なんて居ない」


「くっ……くはははは!! まさか、私の予想を超えてくるとはな」


「少し頭を使えば予想できたことだ。それで、最初の質問に戻る。オレを殺すつもりはあるか?」


 シンは黙り込む。どうやら、敵の親玉はシンで正解に近い。


「もっと別の話を聞かせてくれ。私が敵だと見抜いたもっと簡単な理由があるだろ?」


「敵の親玉と戦った時、シンと戦っている時と同じ感覚を味わった。攻撃を当てたはずなのに、当たらなかった」


 あの時のことは鮮明に覚えている。
 殺すつもりでこい、と言われ挑み負けたことを。攻撃は当たらず、不思議な感覚だった。あの頃は思いもしなかっただろう、当たる当たらないという話の前に、シンと戦っていないことを。
 その答えに辿りついたのは、まぐれに近い。先ほどの話し合いの時、ふと頭の中で花が咲いた。


 認識阻害魔法という魔法を。


「当たらなかったではなく、的がなかっただけ。初歩的なことさえ思いつかなかったのは分からないが、それ以外は考えられない」


 ご名答と言いシンは笑いながら拍手を始める。普段の落ち着いた賢者とは大違いだった。
 まるで、賢者としての姿は偽物で、今の姿が本物と思うほどに。


「そこまで見抜くとは、思いもしなかったよ……ふふっ、実に面白いことになってきた。だが、まだ青い。もっと力を付け、もっと私を楽しませるんだな」


「何を言って――」


 目が覚めた時、最初に見たものは天井だった。見慣れた寮の天井だった。
 眠りにつく前、何かあったような気がするが覚えていない。何か引っかかるが、何も思い出せない。夢なのだろうか、そう思いベッドから起き上がる。


「ふにゃっ!」


 ドシン、と音と共にカエルが潰れたような声が聞こえてくる。不思議に思い、床を覗き込むとひとりの小さな女の子が横たわっていた。


「アリスか? そんなところで何して――」


 アリスを見ると頭が痛くなる。謎の頭痛に襲われ頭を抑え、呻き声をあげる。


「お兄ちゃん、大丈夫だよ」


 アリスは起き上がり、オレへ優しく抱きついてきた。その瞬間、痛みが和らぎ消えていく。


「ありがとう、お兄ちゃん……アリスを助けてくれて」


 そうだった、確かアリスが殺される所をオレが助けたんだ。何か抜けている気もするが、それが何なのかさえも分からない。今はただ、アリスと共に居れて幸せだ。


「例には及ばないさ。オレの方こそアリスには助けられたからな」


「でも……でも、アリスはお兄ちゃん達を最初から裏切っていた……!!」


「過程も大事だが、終わりよければすべてよし。そうだろ?」


「お兄ちゃん……!!」


 華奢な身体からは想像出来ないほど、強く抱きしめられる。鼻水や辺りを気にせず、獣のように泣き叫んでいる。


「ごめんなさい……ごめんなさいっ!!」


「大丈夫だ、もう安心しろ。お前を殺させはしない。オレの名の元にそれを約束しよう」


「うぐ、……うっ……うああああん!!」


 泣き叫ぶアリスの背中をさする。どのくらいの時間が経ったのか分からない。数分かもしれないし、数時間かもしれない。
 気がつくとアリスは泣くのに疲れ、眠りについていた。こうしてみると、まだまだ子供で未熟だ。アリスが本当にオレへ殺意を向け、敵の実験体になったのか、信じられない。


「お前は本当にオレを殺すつもりか?」


 小声で呟き頬をつんつんすると、やめてえと情けない声が聞こえてくる。


「もしかすると、敵の黒幕は見境なしに実験体を用意したのか……? 確かオレの母を実験体にした時は、誘拐してきたとか言ってたな。3号機は強さを追い求め自ら行ったらしいがな」


 考えれば考えるほど謎は深まっていく。そして、敵の正体すらも、未だに足取りすら分かっていないらしい。追跡するにも、手がかり1つすら見つからないとなると、お手上げ状態とのこと。
 こればかりは時間が解決してくれると思うだけで、他は何も出来やしない。


 そんなこんなで、敵の襲来は無事に撃退に終わった。敵の正体が分かっていないのは悔しいが、何はともあれ被害者は誰ひとりいないのは好ましい。
 それはいいとして、ひとつ忘れていたことがある。オレの部屋の扉を勢いよく開けて、目をキラッキラに輝かせた生徒会長が、こちらへグイグイやってきた。


「さあ、ボクと戦おう。今すぐ、今すぐだ!!」


 忘れていたこととは、全てが片付いたあと生徒会長と一騎打ちの模擬試合をするということ。約束していたから、しない訳にはいかない。


「お兄ちゃんは、疲れてるの!!」


「しかし、ボクと約束をしたんだ。戦ってもらうぞ!!」


「お兄ちゃんは……アリスのものなんだから!!」


「独り占めは良くないぞ!!」


「だー、もう、うるせえ!!」


 アリスと生徒会長が謎の取り合いを始め、オレが止めに入る。ひと通り場が収まり静かになる。


「生徒会長、戦うにあたって、どちらのオレと戦いたい? 鬼化した勇者としてのオレか、覇聖はせい学園の生徒としてのオレか。勇者としてなら、鬼化で強くなれるが武器はない。学園の生徒としてなら、鬼化は出来ないが右近左近を使える」


「悩ましいな。本音を言えば、完成された勇者と戦ってみたいが……その、身体の方はもう大丈夫ですか?」


「だから敬語はやめろ。身体はもう大丈夫だ。鬼化の魔力消費のことは考えなくていいぞ」


「敬語はやめろ……ですか。わかった、なるべく努力するよ。それなら、1度鬼化と戦ってみたい、です」


「了解、明日の昼からで大丈夫か?」


「うん、それまでボクは用意するとするから、ここで帰るね」


「あ、ああ。遅れるなよ」


「心配無用だよ!」


 要件が終わると生徒会長はすぐに去っていった。まるで嵐のようだった。

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