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閃雷の元勇者

しにん。

19話 新たな戦力

 今から始まる事情聴取は、ひとりの人生がかっている。
 国家転覆のひとりとして捕えられた、アルネスト・アリス。もうひとり居たが、助けることが出来ずに、散っていった。


「これより、他言無用の最重要機密の取り調べを行う」


 現国王がこの場を仕切る。
 すると、参戦した生徒会長がゆっくりと手を挙げ、口を開く。


「学園長、何故この場にオーラス・ライガが居るのでしょうか? 彼は戦っていませんので、無関係の人間です。即刻この場から立ち去るべきです」


 至極真っ当な意見だ。彼からすると、オレは無関係の人間だ。しかし、この場から離れるわけにはいかない。これは、オレの秘密を伝えるしかないな。


「生徒会長、アイン・クロセルくんにひとつだけお願いがある。オーラス・ライガの秘密を話すが最重要機密として、誰にも話すな。仮に話してしまった場合、生徒会長の仕事を降りてもらう」


「学園長……彼の秘密はそこまでする必要がある、という解釈でよろしいですか?」


「いやあ……それが、ライガがどうしても秘密にしてもらいたいと言っていて聞かないんだ。だから、ここはどうしてもお願いしたい」


「分かりました。彼の秘密がどうであれ、誰にも言わないことを約束します」


 生徒会長がそう誓った時、2匹の狐が姿を現す。


「キミたちは……確か勇者のお供だっけ? どうしてここに?」


「勇者がいるからだ。自己紹介が遅れた。エースの元勇者、オーラス・ライガだ」


「勇者……!? 嘘だろ!? どうして、キミなんかが勇者なんだ?」


 生徒会長は普段の落ち着きが微塵も感じられないほど、慌てふためいている。
 やがて落ち着きを取り戻すため深呼吸をし、呼吸を整え現実へ向き直る。


「本当に……キミが勇者なんですね?」


「信じられないかもしれないが、残念ながらオレが勇者だ。まだ信じられないなら証拠も見せるが?」


「証拠……? あの鬼の姿になれるのですか?」


 病み上がりで長時間は無理だが、一瞬だけなら鬼化しても大丈夫だろう。
 全身へ力を入れ、鬼の力を解放する。額から一対いっついの立派な角が生え、誰がどう見ても鬼の姿へと変貌する。


「疑ってしまいすまない。その姿は魔力消費が尋常ではないようだ、もう元の姿へ戻っても大丈夫です」


 生徒会長は優しくオレの魔力消費量と身体を気遣ってくれた。戦闘狂としかイメージが無かったので、どこか拍子抜けだ。


「ボクはずっとキミのことを目標として生きてきた。今度の剣魔武闘会フェスタの代わりに行われる模擬試合を楽しみにしてます。必ず倒してみせますよ」


「何故敬語なんだ? 同い年なんだし特に不必要だぞ?」


「そうにもいきませんよ。キミは命の恩人、とまではいきませんが、村を助けてもらったご恩があります」


「村を救った? オレってそんなことしたっけ?」


「そういやクロセルくんはキングの国の出身だったよね? 私は昔聞いたことあるが、貧困な村に勇者になりそうな逸材がいるとあったが、もしかしてキミのことなのかい?」


「勇者? ボクは確かに勇者を目指して修行してましたが、勇者になれる素質がある、なんてことは初めて言われましたよ?」


 どういうことだ。シンが言っているのだから確定な未来のはずだ。それが外れた?
 何かがおかしい。


 かなり話がれたが、本題に入る。
 場の雰囲気が一気に緊迫した空気になり、緊張が伝わる。
 国王から案内され、部屋の中へ入ると椅子に座るアリスの姿が目に入る。


「彼女は今、魔法により眠っている。起こすが、暴れる可能性がある。その時はこちらでは対処できないため、ライガは常に警戒態勢を。病み上がりで悪いが働いてもらう」


「まあ、暴れるなんてことは無いだろう」


「さあ、どうかな?」


 シンが魔法を唱えると、アリスはゆっくりと目を開け状況を確認する。
 手と足にかせられた重りを見て、力を失くしたようにだらんと垂れ下がる。


「アリス、話を聞きたいがいいか?」


「おにい……ちゃん?」


 今にも消えそうな声で返事をしてきた。これも鬼化ワクチンの代価なのだろう。見た感じ、骨が折れており、暴れるにも暴れられない状況のようだ。


「単刀直入に問う。敵の大将首は誰だ」


「それは、け……ぐぁっ!!」


 黒幕の名を話そうとした瞬間に、アリスの首を鎖が締め付ける。突然現れた鎖に一同混乱するが、数秒すると消えていく。


「これは呪いの一種ですかね。黒幕を喋ったら苦しめるようにしているのでしょうね」


「賢者がそう言うのなら、それしかないな。では、私からもひとつ質問だ。ライガを殺す以外の目的は何だ? 別に答えなくても構わない。また呪いをかけられている可能性もあるからな」


 アリスは黙り込む。どうやら国王が予想していたように、呪いをかけられている。黒幕も用意周到なことだ。


「彼女を生かしていても得はないようだね。それなら、早速、国家転覆罪として彼女に死刑を言い渡す。これは国王権限を使う」


「はあ? アリスを殺すって、正気か? 殺す必要性が全く感じられない。たかが国家転覆だろ? それに、死者どころか怪我人もオレらだけだ。その言葉を取り消せ」


 いつになく情に身を任せることになったが、これは心の底から思っている事だ。


「今回はライガが狙いなだけであって、犠牲者もなしだ。当たり前だ。それに、こちらの貴重な戦力を削ろうとしたんだ、国家転覆以外は有り得ない」


「そ……れは……」


 国王の言っていることに一理有り、と思い言葉を濁してしまう。何故だか分からないが、アリスを助けたいという衝動に駆られる。
 オレはいつの間にかアリスのことを大事な仲間と思っていたかもしれない。


「なら、アリスに最後の質問だ。お前らの狙いは国家転覆なのか、首を振れ。例え呪いがあったとしても首の動き一瞬で見極めてやる」


 これが本当に最後の願いだ。首を横に振ってくれ――ッ!
 強く閉じた目をゆっくりと開ける。


「まさか――」


 アリスは、首を横に振ってくれた。


「呪いは……無しか。これでどうだ。アリスたち敵の狙いは国家転覆ではなく、純粋にオレを殺すだけだ」


「しかし、それでいいのか? ここで殺さなくて後悔しても遅いぞ?」


「その時はその時だ。オレは誰にも負けない強さを持っている。アイツらに負けるなんてことは無い。必ず勝ってみせる」


「大した自信だ。まあ……力は本物だからな。仕方ないこちらが折れるよ。ただし、条件付きで。うちの医療班の言葉を信じるのならば、鬼化ワクチンの効果を薄める薬が作れるらしい。いざという時、アリスくんには国防のために戦ってもらう」


「鬼化ワクチンの効果を薄めるだと? それは本当か!?」


「時間が必要だがな。それでも、普通の人間と大差ないまで衰えることが出来るとの事だ。もちろん、戦闘にはライガも参加してもらうつもりだ」


「……了解だ」


 アリスを無事ではないが、助けることが出来ずホッと胸を撫でる。
 その後、アリスはエースの武器として丁重に扱われるようになった。手と足に付けていた枷を取り外し、すぐさま医療室へ連れていかれ、傷の手当を再開される。この流れを見るに、こうなることは最初から決まっていたのではないかと思ってしまう。


 部屋を出て、ずっとどこかで引っかかっていたことを片付けるために別室へシンを呼び出した。


「キミの方から呼び出してくるとは、また珍しいこともあるのだね」


「ああ、アリスだけでなくお前にも聞きたいことが山積みだからな。魔法についてたが、相手が見ているものを虚像にすることは可能か?」


「可能だね。認識阻害にんしきそがい魔法と言って、見ているもの全てを嘘にするという魔法さ。幻術の類と考えて間違いじゃない」


「そうか……もうひとつだけ確認しておくが、お前はオレを殺すつもりはあるか?」


「それはどういうつもりで聞いてるか……聞かせてもらっても構わないか?」


 シンは困惑して質問を質問で返してきた。

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