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閃雷の元勇者

しにん。

14話 空からの来訪者

 あれから様々な戦いが終わり、予選杯は終了した。
 決勝杯へ出場するだけで、景品が贈られる。
 主に、自分専用の武器の作成権。自分専用にカスタマイズし、最適なものへ仕上げることを許される権利だ。
 国王陛下が認めた鍛冶師かじしが丹精込めて作り上げるため、完成品は一級品。誰が見ても間違いない。


 武器の作成権だけではなく、他にもいろいろあるが、優勝者には公式序列戦と同じようなシステムを要求することが出来るようになる。
 誰しもが求めている景品はそれだ。自分の得意な相手を選んで序列を変えれる。とても魅力的。


 景品の説明はさておき、決勝杯へ出場した8人は再度クジ引きで対戦相手が決まる。
 公平にするためランダム性の高いクジ引き、だと思う者もいるが、魔法を使い自分が望むものを引く者もいる。
 その例として、予選杯Aグループで2連続シード権を獲得した、序列11位のリネッタ・シルヴィだ。
 学園側も不正を取り締まらないところを見ると、魔法の使用は認められていると予想される。


「ここにいる8名は見事だと褒めておこう。私としても、とても楽しい試合を見せてもらい、つい戦いたくなったよ」


 ニコニコと話す国王陛下自身は気づいていないが、周りの雰囲気は最悪だ。勇者が戦いたいとか言っては、流石に相手にできない。
 勝ち残った8人の中でも戦える戦闘力を持っていると思われるのは、オレと生徒会長だろう。


「それじゃ、クジは引いてもらったみたいだね。ささ、開いて見てくれ」


 手に取った紙を開くと、3と書かれてあった。
 同じ数字の者と戦うということになっている。ちなみに数字は、何戦目なのかを表している。


「3……3……えっと、君は3番?」


「そうそう、なら転入生くんが相手なのですね? こうして面と向かって話すのは初めてですね。ドラゴ・スカーレットなのです」


「知ってるとは思うが、オーラス・ライガだ。次の対戦相手として、一応挨拶しておこうと思ってね」


「なんともまぁ、よく出来た人間なのですね。戦い方とか知らないと思うから教えるのですよ。ボクは序列17位の狂わしき暴風です。君はまだ二つ名がないようで、簡単な自己紹介が出来なさそうなのです」


「はは、まぁ、名前だけでも覚えておいてくれ。それで暴風って名前が付いているってことは……」


「お察しのとおり、風魔法の使い手です。これ以上は別料金なのですよ~」


「そこまでは聞かないさ。試合、楽しみにしておくぜ」


「望むところ、なのです」


 スカーレットとの対話を済ませ、決勝杯の戦いを見に行くことにした。
 さすがの決勝杯と言ったところだろうか、予選杯の時よりも人が増え、さらに盛り上がっている。千はくだらない人の数を見て、圧倒される。


「こんなに人が多いのは、戦場以来だな……あまり人が多いのは好きじゃない」


 ボソッと独り言を呟いているうちに、試合が始まった。
 1回戦第1試合の組み合わせは、序列3位のフォードエンと序列6位のハレイド・ランド。
 フォードエンはいつものように、己が持つ剣ひとつだけを握りしめ、ランドを冷たく見つめている。


「それでは皆様お待ちかね、ついに本日覇聖はせい学園のトップが決まる!! やっていきましょう! 決勝杯第1試合、序列3位剣姫の剣鬼、エルドラ・フォードエンと、序列6位氷塊の幻、ハレイド・ランド!! 試合始めッ!!」


 わあ!と観客達はいつものように盛り上がる。


 先に攻撃に移ったのはフォードエン。
 人間業とは思えない速度の剣に対応すること自体が難関だが、ランドは防げるのか実に興味深い試合だ。




「氷塊の幻の名に恥じぬ戦いをしないとね!」


「あまり喋っていては、舌を噛みますよ?」


「大丈夫、大丈夫。オレは負けないさっ」


 右手を大きく開き、空へ掲げると、手から冷気が溢れ出てひとつの氷塊を完成させる。
 顔の大きさほどある氷塊を投げ、それをフォードエンは何事もなく切り裂く。


「うーん、知ってた。でも、それを予想していたからこそ次の攻撃が可能になる。ってね」


「――なにっ!?」


 2つに切り裂かれた氷塊の断面から、氷柱つららが勢いよく伸びてくる。
 フォードエンはすぐさま防御へ回り、氷柱の処理をする。


「まだまだいっくよ!」


 さらに砕け散った氷柱の破片が鋭く伸び、細い針のような氷が身体を貫こうとする。


「物凄い攻撃ですね。私でも少しだけ恐ろしく感じます。ですが、それだけで勝てた気になられるのはかんに障りますね。少しだけ――怒ったぜ!!」


 雰囲気が一気に変わる。優しく静かなオーラから、恐ろしく不気味なオーラへと。


「き、来ました!! フォードエン選手のふたりめの顔、剣鬼だァ!!」


 鬼と言っても本当の鬼ではない。角なんてものは生えていないし、鬼の血筋を引いているわけでもない。ただ純粋に、圧倒的な強さ、怖さ、そして何よりも凶暴な性格。
 普段とのギャップにより、凶暴さが際立つ。


「さて、今から本番だね。オレも本気、出しちゃうぜ?」


 氷から剣を作り出し、構える。
 剣でフォードエンの右に出る者はいない、とまで言われるが、ランドは怖気づかず自分だけを信じている目をしている。
 フォードエンが振り下ろした剣を受けると、氷の剣は砕け散る。
 綺麗に宙を舞う氷により、会場は美しく光り輝いていた。


「剣でオレ様に勝てると思われては興醒きょうざめだ。あまり図に乗るなよ」


「はははっ、まさか。オレは最善の手を尽くすまでさ。まぁ、オレの狙いに気づけていないようだし、勝たせてもらうよ」


 その言葉を聞き終わる前に、フォードエンは大きく後ろへ飛ぶ。
 観ている側では察知できない、謎の狂気を感じ取ったのか、飛んだあと空中で辺りを見渡す素振りをしていた。


「な、嘘でしょ!? まさか、オレの攻撃を読んだのか!?」


「何かをするってのは教えてくれたからなァ。どうせさっきの同じ技を使ってく――」


「えへへ……残念」


 きゅいーんっ!という音とともに、ドデカいレーザーがフォードエンの左腕を直撃する。


「ガハッ!! てんめぇ!!」


「狙い通り、って訳では無いけど、腕1本か。なかなかにいい戦果であるね」


 何が起こったかわからない者の中、極わずかにだがランドの手に持っている何かを見て理解する者がいた。
 武器に気づいた者でも理解すらできない。
 ぱっと見だと、ただの手鏡のように見える。


「んー、何されたかわかってないって顔してるね。ネタばらししようか?」


「反射鏡……だな。アルキメデスの光線兵器。太陽光をどうてらってやつだな?」


「はははっ、まさか正解されるとはね。君の言っている通りさ。アルキメデスという天才の考えた大反射鏡を、オレの魔力を加えて強化した。ただ焦点を集めて火を起こす、なんて生易しいものではないね。さっきも見た通り、レーザーとなって敵を撃つ!!」


 その言葉を言い終わると、さらにもう1度ドデカいレーザーを放つ。
 2度目は見切ったのか、フォードエンは簡単に避ける。


「嘘でしょ、君本当に目が見えていないの?」


「オレ様の目は確かに見えないぜ? 現に、お前の顔なんて分からねぇ。だから、心の目……心眼しんがんで視ている」


「なるほどね……人間の五感のひとつが欠けているからこそ身につけれる、最強の眼か。だったら、早めにケリを付けないと、倒されちゃうね」


 反射鏡を投げ、ランドは手を合わせる。
 パンッ!と乾いた音が響くと、同じような反射鏡がいくつも生成されていく。そして、ひとつへと。


「オレの最高傑作、受けてみろ。ソーラービ――」


 ランドが大きく技名を叫ぼうとすると、反射鏡に集まるはずの光が遮断される。
 急に動きを止めたランドを見たフォードエンは、同じく動きを止め何かを見ている。
 釣られてオレも空を見ると、黒い何かが空から降ってきていた。


「な、なんじゃあれ!? オレの技が発動できないんですけど!?」


「ランド、一時休戦だ。何かがおかしい。構えろ」


「お、おう? わかった。ひとまず休戦ってことで。油断はするなよ」


「どの口が言うか。あまりあなどるなよ」


 固有結界外から降ってくる何かを警戒し、観客全員がそれに見入る。
 よく目を凝らすと、一人の人間が降ってきていた。


「はァ? 人間じゃねあれ?」


「剣姫、どう見る?」


(剣鬼よしばし私へ権限を)


「えぇ!? 一人で何喋ってんの!?」


「お静かにランドくん。私の目で何かを調べます」


「す、すげぇ……マジで二重人格じゃん」


 フォードエンの隣でオーバーに驚くランド。確かに、二重人格の人間を見るのは珍しい。実際に本当なのか疑いをかけられても、何も言えない。


「間違いだとは思いたいのですが、あれは人間ですね。それも女性です。武器は……私が見る限り持ってはいませんね」


「あんな高くまで飛べる人間なんていないから、飛行機か何かに乗ってきたのか。にしても段々と近づいてきたから見えてきたがよ、アイツ手ぶらじゃね?」


「はい。確かに何も持っていませんね。パラシュートなしだと死ぬと思いますが……」


 ふたりが話しているうちに、空から降ってくる人間が固有結界へとたどり着く。
 ドンッ!と鈍い音が響くと同時に、固有結界が耐えきれなくなり壊れる。


「これ死んだんじゃね? 聞いてはいけない音が聞こえてきたけど?」


 その後、会場に落ちてきて、砂埃に姿を消す。
 砂埃が風にさらわれ、視界が良好になると、落ちてきた女性がムクリと立ち上がる。


「あのー、すんません。誰ですか? オレらの戦いの邪魔なんすけど?」


「あひゃひゃひゃ! 戦い、戦い、戦い!!」


「何いってんのこいつ――」


 奇声をあげ笑う女性。ただの危ない人かと思い見ていた時、姿を消す。
 次に姿を現した時には攻撃態勢に入っており、気づくのが遅れたランドは思い切り殴り飛ばされる。
 壁にぶつかり止まったランドは血を吐き気絶する。


「ねぇねぇ! 君も戦おうよ」


「仕方がありませんね。私も本気を出させてもらいます」


 剣を構え、いつもの冷静なフォードエンになる。
 そして大地を蹴り、低空飛行のように飛ぶと、一気に間合いを詰め切りかかる。
 固有結界が破壊されたことにより、仮想戦闘による戦闘体が失われた。一歩間違えば死ぬ可能性すらもありえる。
 しかし、壊れたことにより失われた左腕を使えることになった。


 ガキンッと金属音が響き、時が止まったかのように見えた。
 剣は確かに空から降ってきた女性の首元にあるものの、血を流すどころか深く切り込めてすらいない。


「予想以上に硬いですね。私の剣では届かなさそうですね……」


 フォードエンは俯く。


「だったら、オレ様の出番だろ!」


 顔を上げたフォードエンは、凶暴なフォードエン。つまり、剣鬼になっていた。


「面白いねえ! 私と戦おうよ!!」


「オレ様とりたいだァ? いい根性してんじゃねぇかよ。いいぜ、やってやるぜ!!」


 互いに拳を振り上げ、殴り掛かる。
 パン!と乾いた音が響く。殴りあった音とは違う音が聞こえ、見たもの全てが息を呑む。


「そこまでだ、人造勇者。お前らの狙いはオレだろ?」


 2人のパンチをオレは平手で受け止める。


「くっひひ、よく来たねえ。この時を楽しみにしてたよ!」


「フォードエン、下がれ。固有結界が壊された今、怪我をすれば現実のものになる。まだ若い命だ。散らせるわけにはいかない」


「オレ様に指図するな、そこをどけ勇者!!」


「……下がれって――言ったよな?」


「――ッ!」


 勇者の冷たい眼差しと低い声に怯え、フォードエンは静かに後ろへと下がる。


「さて、いいように暴れられる前にケリをつけさせてもらう。覚悟しろよ、偽物が」


「言ってくれるねえ、勝つのは私だよ!」


 突如襲来した人造勇者を前に、オレはいつもの小太刀を握ることが出来なかった。
 右近と左近を使ってしまうと、勇者がオレライガだと知られてしまう。
 それを避けるため、オレは何も持たずに飛び出した。
 格闘で勝てる自信は少しだけある。
 それだけを信じ、この戦いをすぐに終わらせなくては――

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