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閃雷の元勇者

しにん。

13話 絶対零度

「さぁ、本日も剣魔武闘会フェスタの熱き戦いが始まるッ! 果たしてBグループの勝者は誰となるか!? 注目株である生徒会長含むBグループ、最初の戦いはこいつらだッ!!」


 実況者の案内の元、2人の選手が登場する。
 その瞬間から会場の熱気がビリビリと伝わってくる。昨日よりもさらに盛り上がっているようだ。


「第1回戦、1試合目の組み合わせは――序列9位、二つ名は炎爆! ウィンラル・テリィ!!」


 うおおおお、と観客が声を荒らげる。
 始めて見る強さはどれも新鮮だろう。全員の戦い方や、強さ、さらには弱点など様々な所を観察していきたい。


「そして対戦相手は――序列14位、二つ名は炎の女帝! ヴァン・イフリート!! なんと本日初戦は、炎対決だッ!! それでは両者見合って……試合始めッ!」


 イフリート、彼女はクラスの委員長をしているらしく、よく仕事をしているのを見る。戦ったことは無いが、溢れ出る強者のオーラは本物だ。
 そして、対戦相手であるテリィという女はあまり絡みがなく、どんな奴かも知らない。
 実況者が言っていた通り、炎対決。どちらが最強の炎使いなのか、とても気になる試合だ。


「最初に動き始めたのは炎の女帝だ!! 強烈な炎を前に炎爆はどう立ち向かうか!」


「私の炎を受けるがいいッ!!」


「全ては爆発さッ!!」


 イフリートが作り出した炎は形を作り始め、炎獅子えんじしとなる。先日戦ったキメラに見え、少しだけ殺意が湧くが我慢する。
 大きな獅子が突進してくるのを臆せず、テリィは待ち構えている。
 残り数メートルの時に炎獅子は盛大に爆発し、会場は煙に包まれ視界が悪くなる。


「さて、ここで問題だ。勝つのはどちらだと思う?」


「やはり貴様とは相性が悪すぎるな。だが、炎の女帝の名をあなどるなよッ!」


 燃え上がる炎が、イフリートを際立たせる。遠目でしか見れないが、恐らくあの付近は熱せられ暑いだろう。しかし、相手も炎を使うらしいから暑さには慣れている。イフリートが言ったように本当に相性が悪い。それに、相手は炎をも爆発させると来た。
 どう勝つか、どう負けるか、重要だ。


「その魔法は初めて見るな。まさか、私のためだけに特訓したのかい?」


「当たり前だろう? 序列上位に炎を使う者が2人いるのはおかしな話だ。真に強者はどちらか、ハッキリさせてもらおうと思ってだな。どうだ、ここで決着をつけるというのは?」


「悪くないねえ。いいよ、私の本気……見せちゃおっかな」


 炎を飛ばして戦うスタイルを辞めたイフリートは、素手で戦うつもりだ。握られた拳に炎が集まり、純粋にパンチの威力を高めているだけの、シンプルな魔法。それ故に、一撃の威力は計り知れない。
 それを見たテリィは、同じように拳へと魔力を集める。


「炎獅子の咆哮ッ!!」


「ばーくはーつっ!」


 互いに右ストレートを放ち、互いの頬に拳がぶつかり合う。
 両者とも激しい爆風を起こし倒れる。煙で良く見えないが、勝負は明らかだ。


「凄まじい戦いを制したのは――序列9位、ウィンラル・テリィだッ!!」


 誰しもが白熱し、視線を吸い込まれた試合だった。
 煙の中で立ち上がったテリィはイフリートへ手を指し伸ばし、立つのを助けていた。


「見事な炎だ。敵ながら天晴あっぱれってね」


「またしても勝てなかった……か。流石は序列9位。完敗だ」


 この2人は互いを奮い立たせる、いい関係になるだろう。一人では成し得ない事も、他人との協力があると成し得る可能性もある、か。オレにもこんな関係の人間がいたら、もっと強くなれたのかもしれない。
 シンには悪いが、オレとシンだと力の差がありすぎる。手を抜かれないと勝てない。


「すごい戦いだったね、お兄ちゃん」


「そうだな。同属性の魔法対決となると、相手よりも精錬された技、そして相手よりも頭がキレてないときついだろうからな。あの2人だと、テリィがほんの少しだけ上回っただけに過ぎない。再戦したら、結果が変わるかもな」


「お兄ちゃんは、どっちが勝つと予想してた?」


「両方ともオレの知らない強さを持っている。どちらが勝ってもおかしくないてのは考えていなかった。序列的にテリィが勝つんじゃね?って思ってたしな」


「適当だね」


「うっせ。中身がわからない以上、外側だけで判断した迄に過ぎない」


 そう、だから、次の2戦目は勝敗が見えている。いくら強かろうと、下克上はほぼ無理だろう。それこそ、死線を超えるか人間をやめるか、そこまでしないとダメだ。
 一矢報いたい、という目は大事だが現実を見るという目も必要だ。


「アリス、次の戦い辞退しろ。昔より強くなってはいるが、相手を選んだ方が得策だ。今回は運が――」


「いや。アリスは戦う」


「はぁ……なら、全力を尽くして来い。それでも届かない相手だと理解してこい」


「…………うん」


 オレはアリスを見送り、ため息をつく。
 すると、横に座ってきたレティは心配そうに顔を覗かせてきた。


「どうかしましたの?」


「気にしないでくれ。これはオレの問題だ」


「そう、ですわよね。わたくしではお力になれませんよね……」


「あぁ、いや、別にそういう意味で言ったわけじゃない。本当にオレが解決しなければならない問題だからってだけで、お前が悩む必要は皆無だ」


「大丈夫ですわ、ライガ様はその事を思って言ってると信じてましたの。それで、先日の件ですが――」


 先日の件。それだけで話が分かるのは、オレとアリスとレティの3人だけだ。
 勇者としてのオレを知られないため、隠し通すつもりでいたが、不用心から正体を知られることになった。まだ、知り合いの中でもよく話す間柄の相手だったため、助かった。


「その事についてだが、これ以上この事で話すとするならば、オレはお前を無理やりにでも口止めするだろう。オレもまだ優しさが残ってるんで、あまりそういう手荒な真似はしたくない」


「他言無用、という事ですわね。分かりました、約束しましょう」


「それでいい。頭のいいやつは好きだ」


 レティの頭の良さは他人よりも秀でている。その場その場の最適な手段、そして、最善の手。それらをよく考え、行動できる。他の序列上位者と違う点だ。


「先程の話とはまた別の件なのですが、ライガ様に用事があるという方をお連れしましたわ。あまり接点がなく、話しかけるタイミングが分からない、なんて言っていましたわ」


「オレに用事? 誰が?」


「それは我のことだ。先日はお世話になってしまったようだ。済まない」


 用事があると訪ねてきた者は、予選杯で最後に戦い決勝杯への切符をかけて激闘を繰り広げたカイン・ハンズネットだった。
 どうやら魔力暴走のことに関して話があるらしい。


「それだけを言いに来たのか?」


「そうだ。我はまだまだ未熟だったために起こした事件だ。我よりも強者が沢山いて、我の強さでは届かない者達がいる。そう考えただけで取り乱してしまった。本当に済まない」


「お前の場合は自分の力を見極めていない。過信しすぎだ。自分がどれほどの力を持っているか分かっていない奴ほど、弱い者はいない」


「強者の言葉だ。心に留めておこう」


「素直に聞くんだな。もっと反抗してくると考えたんだが」


「ふっ、我とてそこまでバカではない。強者の言葉を素直に聞くこともまた一興。それに、君は真の強者だ。アドバイスを貰って損は無いと思うさ」


「……そうか。それなら良かった」


「うむうむ」


「それで、身体の方は大丈夫なのか? 魔力暴走を起こした後なんだ、何かあると思うが?」


 魔力暴走を起こしたとなると、身体への負担は計り知れないものだ。それにあれほど暴れたとなると、無傷の方が不自然である。
 ちなみにオレが殴って気絶させたことは黙っておこう。


「さすがにきつい。全身がぼろぼろさ。特に耳の裏付近がズキズキと痛む、医者が言うには打撃を受けた可能性があると言っていたが、知らないか?」


「心当たりないな」


「ふむ、なら仕方ないな。それでは我はこの辺で。今度手合わせをして、アドバイスをくれ。君を我が好敵手と認めよう」


 バレないように嘘をつき、ハンズネットの対処を終える。打撃で気絶させる以外、上手い手が見つからなかった以上他にどうすることも出来なかった。本人には言わないが、心の底からの謝罪を申し上げる。


 それはそうと、次の試合が始まろうとしていた。今大会の注目株である生徒会長の試合だ。
 相手は――


「さぁ、どんどんやって行きましょう!! 2回戦目の組み合わせは、誰しもが待ち望んでいた生徒会長
 、序列1位の絶対零度――アイン・クロセル!! 対する相手は、序列10位、二つ名は霧の国のアリス――アルネスト・アリス!! 両者見合って、試合始めッ!」


 始めの合図と共にアリスが霧となり姿を消す。
 最初に動き先手を取れたことは素晴らしい。だが、不意打ちで倒せるほどの相手では無い。本人もわかっているはずだ。
 だから、そこからの工夫が必要となるが……果たして、アリスはどう頑張るか。


「……クロセルくん前みたいには行かないよ!」


「うるさい羽虫だ。ボクの周りを飛び回るんじゃない」


 アリスの力の見せどころだが、それは叶わぬ形になった。
 霧となり消えたはずのアリスが足を止め、倒れ込んだ。


「ボクの領域に入るだけでそれとはね……ガッカリだよ、やっぱりボクと渡り合えるのはライガのみだ」


「なんの……これしきっ!」


「ぎゃーぎゃーうるさい。死ね」


 右手をかざすと、アリスは氷に覆われ砕け散る。


「あ、あっという間に勝負あり! 勝者はアイン・クロセル!」


 会場の全員が感じただろう。圧倒的な力の差、そしてなによりも、生徒会長の恐ろしさ。
 軽く虫をはらうかのように序列上位者を倒した。
 今までの白熱した試合とは相対的に、冷酷な試合だ。


「……また、勝てなかった……」


「ぎゃーぎゃーうるさいと言ったはずだ。ぶっ殺すぞ」


「何やってるんだアイツら――」


 試合が終了と同時に、仮想戦闘は終了し、固有結界は消去された。試合の度に貼り直すには時間こそかかるが、その度に強度は新調され強くなる。
 それが裏目に出た。
 仮想戦闘が終了した今、アリスの身体は戦闘体ではなく生身。もし、今死ねばアリスは本当の意味で死ぬ。
 それを知っていながら、生徒会長の行動がおかしい。
 右手をかざし、先程同様の魔法を使おうとしている。
 今オレが出た場合、殺し合いが始まる可能性がある。いったいどうすれば、どうすれば正解なんだ――


「……ボクは忠告したはずだ。敗者は大人しく死ぬべきだ」


「えっ――」


 生徒会長は蹴り飛ばされ、壁へと勢いよく飛ばされる。
 誰しもが驚き静まり返る。


「あまり図に乗るな、少年。力の使い方を間違えてはダメだ」


 わあ、と会場に熱気が戻る。
 何が起こったか理解できない者は少なく、突如として現れた者への好奇心などが爆発する。


「いてて……誰だい、ボクを蹴り飛ばしたのは」


「オレだ。なにか文句があるか?」


「誰だキミは……調子に乗ってると、キミごと殺しちゃうぞ……?」


「殺す、か。簡単にその言葉を使うな。言葉の重みを知ってから使うんだな、小僧」


「ああ? 本当にキミは誰だ」


「オレは――」


 勇者として自己紹介をしようとした瞬間、観客の一部から「勇者だ!」「エースの勇者様だ!」などと声が聞こえてくる。先日のパーティーで現れ、エースの勇者の姿を知っている者が多からずいる。


「キミが英雄……エースの勇者なのかい?」


「そうだ、ここに招かれたからには来なくてはならないと思ってな」


 小さな声は段々と大きくなり、遂には会場一帯が勇者コールが始まっていた。恥ずかしさは置いておいて、今は生徒会長の処理が必要だ。


「角の無い鬼仮面……そのクソダサい仮面を取ってくれないかなあ?」


「クソダサい……だと? オレはカッコイイと思うぞ、力を解放すればだがな」


「なら是非ともボクと手合わせしてもらいたいねえ」


「そうか……」


 額から角が2本生え、鬼の如き恐さを身に纏う。
 鬼の姿を見た者は誰しもが疑わずに、エースの勇者と信じる。鬼の生き残りはオレ1人となっているので、鬼イコールオレとなる。


「その角……本当に勇者様なんだあ。おもしろ――」


「ったく、めんどくさいな」


 高速で移動し、生徒会長の腹へと怒りを込めた拳をぶつける。再度飛ばされた生徒会長は壁へ激闘し、大きな穴が開く。
 生徒会長を無視し、オレはアリスへと近寄る。


「大丈夫か?」


「うん、あと一歩でも遅かったら死んでた……かも」


「気づくのに遅くなってしまった。すまない」


 軽く謝ったあと、大きく飛び試合を見ていた国王陛下の隣へ降り立つ。


「やっぱり来てしまったね、来た以上は紹介しなくてはだね。――諸君聞いてくれ、少し騒ぎがあったようだが遅れて登場したエースの勇者により、鎮められた。彼は本物の勇者だ」


 その言葉を聞く前から観客は盛り上がり、国王陛下の声は通らなかったようだ。
 必死に聞き耳を立てようとしていたようだが、諦めていた。


「生徒会長アイン・クロセル。次同じようなことをしてみろ。即刻退場とし、この学園を去ってもらう」


「ちっ……めんどくせえ」


 国王陛下には逆らえないのか、大人しく帰っていった。
 そしてアリスもゆっくりと立ち去り、次の試合が始まろうとしていた。
 ちなみに、観客席で見ていた時よりもここでの見渡しは最悪だ。

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