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閃雷の元勇者

しにん。

10話 輝ける希望

「2回戦目第1試合、初戦で見せた力は何だったのか!? 噂の転入生、オーラス・ライガ対、苦戦を強いられ、負けるか、とまで言われた序列5位シルベスター・オーラ!! 果たして、彼らの試合は一体どんな物語を描くのか!! それでは試合――始めッ!!」


 実況者の合図とともに試合が始まる。
 相手は序列5位。3位のフォードエンと戦い、序列上位者の中でもトップ10の奴らは、次元が違うと考えることにしている。この学園で頂点など簡単に取れる、と考えていたオレに洗礼があった。


 どうやら、上位者を甘く見ていた。弛まぬ努力を知らずに、下に見ていた。
 そんな経験をしたからこそ、あえて言おう。彼ら以上にオレは努力し、死線を越えて戦ってきた。努力なんて言葉はどうでもいいが、2度と負ける気は無い。


「序列5位シルベスター・オーラ。二つ名は《輝ける希望》。我が名において、全力で戦おう」


 オーラは大きな声で叫び、名を名乗った。意味があるとは思えないが、正々堂々戦うというならば、手は抜かない。


「オーラス・ライガ。その決闘を受諾する。オレも全力で戦い、悔いの残らない結果を残す。いざ尋常に――勝負ッ!!」


 互いに走り始め、攻撃へと移る。先手をとったのはオーラだった。


「ライトニング・アロー!!」


 光魔法で作り出された弓で矢を射る。乱れることなく放たれた矢は、真っ直ぐにオレの脳天へ。飛んでくる矢の速度は、瞬きする間もなく到達する。


「ここで必殺のライトニング・アローだァ!!  対するライガ選手は果たして……おっと、光の速度を超えるといわれる矢を防御したようです。彼は一体何者だ!!」


 実況者の一言で理解する。オーラが使う魔法は、2種類ある。光で生成する魔法と、物の加速だ。矢の速度が目に見えるものでは無かった。


「君とは近距離で戦いたくないから中遠距離で戦おうと思っていたが、無意味なようだね。諦めて近距離で戦うとするよ……」


「光の速度か。オレの速度とどっちが速いか――」


「残念だけど、速度だけなら負ける気は無いよ」


 遠距離にいたにも関わらず、凄まじい速度で目の前まで迫っていた。振り上げられた右手を受け止め、反撃を試みるが背後へ回られる。


右近うこん左近さこん、最初からとばすぞッ!!」


「「主の命とあらば!!」」


「君は魔法が使えないらしいね。相手にハンデがあって、正直嬉しいよ。君が魔法を使うと勝てそうにないからね」


「買いかぶりすぎだ。それに、魔法なんて使わなくても、オレは勝つぞ」


「やれるものなら……やってみな!!」


 攻撃をすると光速で避けられ、代わりにオレが攻撃を受ける。
 人体の構造上、どんなに小さなダメージでも、少しずつ蓄積されていく。あまり長期戦は望まない。
 かと言って、短期戦へ持ち込もうとするならば、力の解放は必須条件と言える。
 打つ手なし、と考えていたが長期戦向けの戦い方は、オレの十八番おはこだ。


「反応速度といい、判断速度、君は本当に人間かい?」


「生憎とただの人間だ」


 姿を現しては消えを繰り返すオーラへ攻撃し、避けられる。光の速度を超えることは物理的に不可能。不可能なら、光の速度を超えるという作戦を変えるのみ。


「右近、左近。予定通りの作戦へ変更するしかない。準備は出来ているな?」


「「もちろんです。存分に暴れてください」」


「なになに、私を倒す算段でも思いついたのかな!?」


「残念だが、ここからはオレだけの世界だ」


「何を言って――」


 油断を見つけ、オーラの懐へ入り込む。逃げようとするオーラの服の裾を掴み、行動を制限する。
 動けないと察したのか、すぐに裾を切り落とし姿を消す。厳密には、目には追えない速度で走り続けているのだろう。
 それにしても、相変わらずの速度だ。早めに左の小太刀で攻撃するしかない。


「危ない危ない。面白い作戦だけど、失敗に終わったみたいだね」


「残念だがそうみたいだな。と、言いたいところだが成功しているぞ」


「ホラはやめて欲しいな――ッ!? なんだこの重み……」


 徐々に速度が落ち、遂に動きを止める。
 何が起こっているのか分からないオーラは、冷静に考え、状況を整理している。


「へぇ……まさか、呪いの類かい?」


「正解だ」


「予想はできた、今気づいたが、君の右手に持っていた小太刀が消えているね。あの狐さんが悪さをしているのかな?」


「お見事。今お前の身体の重みは相当だと思う。速さに固執し、大事なパワーを失くした戦い方をしている。だったら話は早い。重石おもしをつけ、相手の苦手な物をぶら下げるという事だけで、お前は止まる」


「なるほどね……確かに君の言ってる事は正解さ。元々私は女だから、あまり力はなくてね。速度に逃げてる面も認めよう」


「それに加え、今の戦闘での疲労は尋常ではない。このまま続けられ、勝手に倒れられるのは面白くないしな」


「心遣いどうも。体力が特別ある訳でもないという所までお見通しってわけかい。君の目はいいね」


 オーラは移動しながら攻撃することを止め、光魔法を使い剣を作り上げる。仮に剣技だけならば、簡単に勝てるとは思うだろうが、他にも策があるだろう。


 ここで素直に剣だけで戦うという、フォードエンのような性格ではない。正々堂々とは言っていたが、あれは己の力をもって、オレを倒すという事だ。
 実に面白い相手と戦うことになっているな、と改めて実感する。


「仕掛けないならオレの方から行かせてもらうぞ」


 左手に握り締めた小太刀を振るい、オーラへ襲いかかる。速度が落ちているとはいえ、流石は上位者だ。
 オレの速さをものともせず避けてみせた。
 また、オーラの剣に注目していたため、視野が狭まっていた。横から飛ばされた謎の玉が横脇腹を襲う。激痛が走り、顔をしかめる。
 これを機に、オーラの猛攻が始まる。


「ここからは君だけの世界じゃなかったのかい?」


「…………」


 剣を使う腕は良くないものの、追撃の玉がオレの行動範囲を狭まらせていく。こうして追い込んでいく戦略自体は、うまく誘導出来ていると思うし、ほぼ完璧だろう。


 飛んできた玉を右へ避けると、剣での攻撃。両方へ意識を向けて戦うと、今度は別の方向からの攻撃を仕掛けられる。厄介極まりない。
 次第に疲れてきたのか、オーラの反応がわずかにだが鈍る。その瞬間を逃さず、左近での攻撃に成功する。


「攻撃を受けたのは久しぶりだよ。君本当に強いし、戦場を舞っていたことはうなずける。君は一体どれほどの人を殺してきたんだい?」


「数えることはやめた。だが、殺してきた奴らの顔は全員覚えている。忘れられる訳がないだろ」


 オレに殺されてきた奴らの顔が脳裏に蘇る。たまに見る悪夢。その度に心が苦しくなり、死にたいとさえも思う日は、1度や2度では無かった。


「だったらさ……今まで殺してきたように、私を殺してみなよ。君が手を抜いていることぐらいわかる。今出せる限りでも構わない、少しの間でも構わない。君の全てを見せてくれ」


「後悔は――するなよ」


「本性を見せたね……感謝する」


 殺意をチラつかせただけでオーラは力の入れ具合を変えてきた。筋肉が膨らみ、先ほどとは別人のように見える。
 ならばオレは、戦場で戦っていた頃の殺意を見せつけてやろう。これで臆さないのなら、肝が据わった強者であり狂者だ。


「悪いが、さっきも言った通り、ここからはオレだけの世界だ。例えお前でも抗うことは不可能だ」


「そこまで言うなら、見せてくれよっ!!」


 はやい。重石があることを忘れさせるような速度で走ってくる。紙一重でかわすが、肩から血が流れ始める。完全には避けきれていない。しかし、このことは想定内だ。


「どうしたどうした!!  戦場で戦っていた君はこんなものだったのか!?」


「凄い、凄すぎるゥ!! オーラ選手の猛攻には、ライガ選手は手も足も出ない!!」


 次々と繰り出される攻撃はどれも鋭く、ひとつでも攻撃が当たった時は負けだろう。それに、追撃の玉はもう出していない。予想されることはひとつ。魔力切れが近い。
 魔力切れが起こると、一定時間は体を動かすことは厳しくなり、回復するには時間を有する。


「君がそのままでいるのなら、決めさせてもらうッ!! 輝くは生命の源ハート・オブ・シャイニングッ!!」


 魔力が底を突く手前まで使い果たし、最後の一撃と思われる攻撃を始めていた。
 光で出来た剣は少しだけ大きくなり、輝きを増す。まるで、命のように。
 そして遂に、オーラは捨て身覚悟で攻撃に移る。
 一気に観客の興奮は最高潮になり、歓声で埋め尽くされる。


「お前との戦い面白かった。またいつか、戦いたいな」


「はああああああああああ!!」


 剣を突き出し、突進の形で突っ込んできたオーラは、オレの目前で止まる。そして、崩れる。
 魔力切れや体力が無くなった訳では無い。


「ここで決着だッ!! 勝者、オーラス・ライガ!!    
  見事な逆転劇だー!!」


 わあ、と盛り上がる観客がいる中、疑問を持つ者が大半を占めていた。
 そのひとりとして、倒れているオーラが疑問をぶつけてきた。


「どうしてだ……どうして、オレの体は動かないんだ……あと1歩、あと1歩だったのに!!」


「ネタバラシをすると、神経を麻痺させる毒を使った。それと、今のお前の感情は大事に取っておけよ。必ずお前は強くなれる、オレは何人もの人間の成長を見てきたからな。保証するぜ」


 試合は無事に勝ち進み、最悪でもあと1度勝てば決勝杯へ駒を進めることが出来る。
 本当ならば連戦になるため、シード権は何としてでも欲しい。


 そんな欲を口に出さず歩いていると、レティとすれ違う。
 戦いを見てくれていたようで、オレが勝ったことに自分のことのように喜んでくれた。


「流石はライガ様ですわ。本当にお強い」


「まぁ、な。それより、アリスは見なかったか?」


「またアリスさんですか……」


「なんか言ったか?」


「いいえ、なんでもありませんわ!」


 うまく聞き取れなかったことを聞き返すと、レティはぷんぷん怒り始めた。女というものはこういうものなのか?もっと、清楚で上品な存在だと思っていた。ただの女なら今の行動に何も疑問は生まれないが、レティはカウレス家のご令嬢だ。少なくとも、一般人よりは品があると思っていた。
 訂正しよう、それはただの偏見だった。レティは普通の女の子だ。


「アリスさんでしたら、先ほどお花をつみに行くと言っていましたわ。それはそうと、そのマスクはどうしたんですの?戦いの邪魔だと思いますが」


「あー、気にしないでくれ。特に意味は無い。カッコつけている、って思ってもらっていいよ」


「そうですか、ですがライガ様は素の方が……その……」


「……その?」


「な、なんでもありませんわ!」


 頬を赤らめ、再度ぷんすか怒る。
 そうこうしている内に、アリスが帰ってきた。
 オレの勝利報告を聞き、ドヤ顔でレティを見ていた。


「お兄ちゃんは強いんだぞー!」


「当たり前ですのよ、ライガ様は強いんですの」


「まぁ、褒められて悪い気はしないが、それ以外の話をしよう。オレの次の敵になるであろう2人の情報が欲しい。無知のまま挑んでも構わないが、なるべく早めに終わらせたい」


「でしたら、場所を変えますわよ。ハンズネットさん達の戦闘データがありますわ。こちらへ」


 レティへ案内された部屋へ入ると、何も無い空間が広がっている。物があるとすれば、机と椅子だけ。
 とりあえず、用意されている椅子へ座ると、レティが空間ウィンドを展開する。
 空中へ浮かび上がる画面を見ると、リネッタ・シルヴィの戦闘の動画が再生される。


「見ていただいたとおり、彼女は自らの声を武器としていますわ。武道の心得がありますが、彼女が声以外で戦う所は珍しく、データがありませんの」


「声が武器……どんな原理なんだ?」


「音というものは、空気の振動によって伝わります。簡単に言いますと、その振動を具現化、というところですわね。普段なら見えない物を見えるようにして、そこへ魔力を注ぎ込むことで1つの攻撃となりますわ」


「口から魔力を出すってところか。こればかりは戦ってみないとどんなものか分からないな」


「ライガ様は戦場で戦っていたと言っていましたが、魔法を使う者はいませんでしたの?」


「いや、いたことにはいたが、訓練がまともにされていない者や、力をうまく使えない者。本当に様々な奴がいたな」


 その話をすると、レティは少し驚いた表情を見せたが、すぐに元に戻る。
 つい1年前の事だが、明確に覚えている。戦いの中で散っていく命を何度も見て、絶望した。オレが強くなれた原因を思い出していると、アナウンスで呼び出しされる。
 行ってくる、と言ってその場から立ち去る。


 急いで行くと、予選トーナメント最終試合のくじ引きを始めようとしていた。
 ハンズネットが居るということは、先ほどの第2試合の勝者。ここまでは予想通りの展開になった。後はシード権を獲得するのみだ。


「くじ引きの結果は、こちら!!」


 予選通過者はリネッタ・シルヴィ。つまり、予選通過の最後の枠を争うのは、オレと2回戦を制したハンズネット。
 連続でシード権を奪われる形に、疑問が湧いてくる。どうして2回連続で、当たりを引けたのか。


「それじゃ、2人とも準備が出来次第、試合だ」


 ハンズネットとアイコンタクトだけで挨拶を済まし、足早に場を離れていったシルヴィを追いかけ、廊下を走り抜ける。
 偶然飲み物を買おうと止まったところを捕まえ、話しかけることに成功した。


「おや、確か君はライガくんだね? 私に何か用かい?」


「お前魔法を使ったな?」


「何の話なのかさっぱりだよ。ちゃんと詳しく言ってくれないかな?」


「シード権を獲得するためのくじ引き、あれで魔法を使い獲得したな、と言っているんだ」


「さぁ、私は分からないな」


「とぼけるならそれで構わない。だが、ひとつだけ言っておきたいことがあってな。そんなズルをした所でお前は優勝は出来ない。絶対にだ」


「ほう……そんな自信がどこから湧き出るのか気になるねえ。ま、どうでもいいんだけどね」


 ひらひらと手を振り、シルヴィは立ち去る。
 初めて話しかけたが、どうにも苦手なタイプだ。
 全てを見通して動くタイプ、つまり、シンと似ている人間。オレとしてはあまり関わりを持ちたくない。


「やぁ、ライガ。君に出会えるとはね」


 1人でアリス達の元へ帰ろうと思い振り返ると、ある男から声をかけられる。
 前回会った時とは大違いで、落ち着いた好青年のイメージがある。


「これはこれは生徒会さんじゃないですか。奇遇ですね」


「戦いを見ているとよく分かる。ライガ、君は強いな。恐らくライガとまともに殺りあえるのは、ボク以外居ないんじゃないか? さぞ退屈だろう?」


「別にそうでもない。オレより強い奴なんて沢山いるさ」


「それはライガが本気を出していないからだろ? せいぜいボクと戦う時は誰にも見せたことがない力を見せてもらおう」


「生憎とオレはいつも全力で戦っている。魔法が使えないから、これ以上パワーアップ、なんて夢みたいな話はない」


 真実を話すと、生徒会長は薄く笑う。


「君の過去は私にはわからない。言えることがあるとすれば、君が過去になんらかの出来事があったということ。君は本当にそれ以上強くなれないのかい?」


「さっきからそう言ってるだろ。それじゃ、オレは今から試合が始まる」


 フードを被り直し、マスクを着用。これである程度の変装は完了だ。あれほどギャラリーがいると、戦場で戦っていた者が居るはずだ。そして、オレの顔を知っている者も。やはり、敵とは関係なしに顔を隠す手段は持っていて正解だった。


 そんなことを考えながら、会場へと走って向かう。
 オーラとの試合からまだ1時間ちょいしか経ってないが、今日最後の試合が始まる。
 これに勝てば、決勝杯へ進める。


 しかし、対戦相手であるハンズネットは、はっきり言って強敵だ。
 パワーしか取得がないと思っていたが、随分と頭が切れる。相手によって戦闘スタイルを変え、その時その時の最善の手を尽くしている。


 1回戦の時は、大剣を武器だけでなく、盾としても活用しようとしていた。相手が強くなかったため、豪快に薙ぎ払っていたがいざという時は、敵の魔法を受けきっていただろう。


 2回戦は一変し、オレが使う小太刀と似たような武器を作り出し戦っていた。相手はハンズネットが1回戦で使っていた大剣より少し小さな、ツーハンデッドソードと呼ばれる両手でなければ扱えない大きさの剣を使用していた。
 大振りで振り回す相手を嘲笑うかのように俊敏に動き、勝利していた。


 オレと戦う時は、どんな武器を使うかによって戦い方が変わる。強敵この上ない。

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