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閃雷の元勇者

しにん。

プロローグ

  少し昔の時代、四つの国々は互いの領土を奪い合うため、武力による戦争が行われていた。
  ジャック、クイーン、キング、エースにはそれぞれ大将首とされる、勇者が存在した。
  国の中で最も強い者を勇者と呼び、勇者を中心に戦闘を繰り広げていた。
  その一国であるエースの勇者の名をライガ。
  一騎当万の力を持っていると言われ、歴代の勇者の中でも群を抜く強さ。
  彼を止める事が出来るならば、同じ立場の勇者しかいないとまで噂された。


「ライガー!今回の闘いも勝ってくれよ!!」


「任せとけ」


  皆から慕われる勇者ライガは短く応え、自慢の二つの小太刀を構え戦場へと向かう。
  勇者が先陣として突き進む事は他国では行われていない。大将首を最初に出陣させることに、メリットが少ないためだ。メリットがあるとするならば、早急に決着がつくことだけ。
  それらを百も承知のエースはあえてライガを先頭へ立たせる。犠牲が少なく済むため、このような作戦を実行している。もちろん、その作戦は他国からすると、好都合。上手いこと勇者を落とすことが出来れば勝利なのだから。


「ライガに続けええ!!」


「うおおおお!!」


  勇者に続き、兵士達が追いかけるように戦場を駆け抜ける。
  相手国であるクイーンは勇者はらず、今回の戦闘には兵士達だけが戦っていた。
  そのため、勝者はエース。
  勝ったからと言って、何も得られない。


「ライガ、ただいま戻りました」


  国へ戻り、戦果を報告する。
  国王から感謝の言葉を述べられ、ライガは自分の部屋へと戻る。


「あ、おかえりなさい。闘いはどうでしたか?」


「無事に勝ったよ。それより、姫君ともあろうお方がオレの部屋に何用ですか?」


「少し……貴方に会いに来ました」


  彼女はエースの姫、マリア。
  国王の一人娘のため、次期国王である。
  太陽に透かすと輝く黄金の髪は、良く手入れをされており高貴さを漂わせる。
  更に、白いドレスは何者にもけがされぬ無垢の象徴。
  まさに人形の様な見た目の女の子。


「私からお願いがあるのですが……勇者様宜しいでしょうか?」


「オレなんかでよければなんでも言ってくれ。必ず姫のお役に立って見せましょう」


「ふふっ、頼もしいですわ。それではお言葉に甘えて二つほどお願いさせてもらいます。私と結婚してくださいっ!」


  目の前にいる小さな女の子は、白い肌を紅く染め、勇気を出したためか目尻に涙が溜まっていた。
  オレは少しだけ考えたが、迷うことはない。答えは一つだ。


「こんなオレでよければ姫のお側に」


「貴方ですからいいのです。あの……本当にいいのですか?」


「ん?ダメなのか?」


「いえいえ!こんな私ですが末永く宜しくお願いします」


「それはこっちのセリフだな。式とかその他の話は後々ゆっくりと決めていこう。そう言えば、二つお願いがあるって言ってたがもう一つは?」


「私の事は姫ではなく……その……マリア、と呼んでくれませんか?」


「わかった、マリア」


  その後、オレは師匠に呼ばれ部屋を後にした。
  結婚に浮かれていては勇者がすたる。
  気を抜かないように気をつけなくては。


「ようやく来たか。遅いぞ。修行をおこたるなよ」


「すいません師匠。マリア……姫に呼び止められてしまい」


  彼はオレの師匠であるシン。
  オレの一つ前の世代を駆け抜けた勇者。
  戦闘スタイルこそ違えど、闘いの基礎は師匠に教わった。
  魔法を使い、今では賢者と呼ばれているらしい。


「それじゃあ、ウォーミングアップだ。少しだけ剣を交えるぞ」


  師匠に言われ、剣を交える。
  太刀と呼ばれる長い刀を使う師匠は、強い。
  二刀流小太刀を使うオレでさえ出し抜く事は困難。


「なかなかいい剣筋になったな。正直、私を追い抜く日は近いな」


「恐縮です」


  攻撃の手数が多い二刀流小太刀を物ともせず、全ての攻撃を防がれた。手加減などはしていない。
  やはり、オレらの世代よりも昔の人は強い。
  それから師匠による修行は日が落ちるまで続けられた。




  ふと、オレは考える。
  勇者として、国のみんなを護れるのか。
  マリアの側近として夫として、やって行けるのか。


「そんな事は考えても無駄だな。オレのやれる事を全力でやろう。きっとオレの悩みは吹き飛ぶさ」


  廊下を歩いていると、呼び止められる。国王だ。
  どうやらマリアから結婚の話でも聞いたのだろう。
  ここは一発、マリアの親に本気を見せてやろう。


「ライガよ、いつも勇者のお務めご苦労だ。ところで……マリアから聞いたのだが結婚するのだな?」


「はい。オレは――」


「そうかそうか!君になら娘を任せられるよ」


  力強く行こうと決めていたが、国王の大きな声に掻き消される。
  バシバシと背中を叩かれ、少し痛い。


「結婚式はいつするのかね?その時が来たら国を挙げてお祝いしよう。ライガは未来の国王だ、ガッハッハ」


  なんとも豪快な笑い方をするのだろう、と思いつつもオレは真剣な眼差しで話を進める。


「式の日時はまだ決めてません。急がずゆっくりと話し合って決めていこうと、マリアと話をしました」


「しかし、済まないな。勇者としてのお務めもあるのに……」


「いえ、お構いなく」


「それでは決まったら教えてくれたまえ」


  ヒラヒラと手を振りながら、国王はゆっくりと歩いて行った。
  小さくなるまで国王の背中を見つめ終わったあと、オレはすぐに予定を思い出す。
  これからマリアと話をしようと集まる予定だ。


「遅くなった」


  勢いよくドアを開けると、そこには綺麗なお姫様がチョコンと椅子に座っていた。
  それだけでも絵が描けそうな程だった。


「私も今来たところですよ」


  優しい笑顔を向けられ、つい頬が緩む。


「それで、式はいつにする?なるべく早めにした方が良さそうだけど」


「そうですね、なら五日後はどうでしょうか?」


「そのぐらいが妥当だな。急すぎても来る人も困るだろうから」


  その後談笑し、一日を終える。
  この幸せな時間がずっと続けばどれだけ幸せだろうか。
  この時のオレには、絶望の二文字は想像すら出来ない――




  いつも通り、静かな日々を送ろうとした時城内に一つの声が響く。
  その言葉はいつも一つに決まっている。


「敵襲だ!!みんな武器を持て!!」


  その言葉とともに人々が動き始める。
  さて、オレも準備をしよう。


「ライガ様……」


「大丈夫だ、今日も勝って帰ってくる。待っててな」


  今日は式前日。なんとも運が悪い。


「勇者よ、今日も勝ちをもぎ取って来い!!」


「仰せのままに」


  そうして、オレを先頭に兵士達が歩を進める。
  いつも勝ちを気にしていたが、今日はより一層引き締めないとな。


「敵を倒せええ!!」


  掛け声と共に、全員が走り出す。
  いつも通りの光景だ。何も違わない。今日も勝つ――


「久しぶりだな、エースの勇者」


「キングの勇者……今日こそお前を倒す」


「酒呑童子と呼ばれたその力、見せてみろ」


  目の前に立つは、キングの勇者。
  見た目こそ普通だが、槍の名手と聞く。
  何度か戦ったことがあるが、いずれも引き分け。


「攻撃範囲の差で有利に立てると思うなよ」


  闘ったからこそ分かる相手よ強さに、オレは少しだけ怯えているのかもしれない。
  もし、今ここで負けたら……マリアに二度と会えなくなる。
  それだけは――させないッ!!


「いきなりその力を使うか……」


  ライガは目を見開くと、ひたいから二本の角が生え場の雰囲気が一気に変わる。
  両者互角と思われた空気が、ライガ優勢へと。


「久方ぶりだ……存分に楽しませてくれよッ!!」


「悪いが楽しむ時間などない。勝たせてもらう、覚悟しろ」


  二刀流小太刀の連続攻撃をキングの勇者は、なかば苦しみながら対処していた。
  中距離メインで戦う槍として、近接戦闘は苦手な部類と言える。
  それでも戦えるキングの勇者は誰しもが認める強さである。


「どうしたどうした!!エースの勇者はこんなものなのか!」


  二刀流と言っても、利き手ではない左手の小太刀では決定打は打てない。
  右手をメインとして戦うため、どうしても左手はサポートになってしまう。
  両手に意識を向けるため、普通の戦闘よりも集中力が削られてしまう。
  何度も攻撃を絶え間なく仕掛ける事が出来るのは、ライガの強みである。


「さて、もう負けを認めてくれないかな。キングの勇者」


「そうは行かないね。私は強い君と闘っている時が一番生きている実感が湧くんだ。もっとだ……もっと楽しませろ!!」


「そうか……それは残念だ」


  ライガから角が消え、露骨にスキを見せる。
  罠だとわかっていても目の前に勝ちが見えてしまうと、人間は罠よりも勝ちを優先してしまう。
  それが、キングの勇者の敗因。


「何をしたッ!!」


「お前は確かに強い。だが、油断やスキが多いな。うちの師匠から闘いというものを教わっていたら、オレが負けていたかもな……。それじゃあサヨナラだ。エースの勝ちだ」


「最後に問おう。何故、私の体は言うことを聞かない?」


  先程から一ミリも動けないキングの勇者は、負けを確信すると同時に様々な疑問が生まれていた。
  魔法を使う素振りも、毒を使う余裕さえ無かった。
  体が動かないということは、麻痺の毒を盛られた可能性が高い。


「オレの二刀流小太刀の弱点は、左手の攻撃力にある。両手に意識を長時間向けることは、必要以上に体力を使う。それでも、二刀流で闘う理由――お前にはわかるか?」


「いいや、全くだね。攻撃の手数が増えようと、大雑把だと意味は無い。二刀流で闘うぐらいなら太刀や片手剣と盾を使う方がまだ勝率は高い」


「言っていることは大方その通りだな。二刀流が強いなんてことはまず有り得ない。だから使っている者はいない」


「そうだな、ウチの国でも二刀流を使う者は居ないな。たまに見かけるが、左手に持つ剣が上手く扱えないからと言ってすぐに辞めていっている」


「それは二刀流の使い方を間違えているって事だ」


「間違えている?私の質問とかなり脱線していってないか?」


「何を言っている。二刀流の使い方を知ればお前の質問の答えにたどり着く」


「……へぇ。なら教えてくれないかな?」


「話は簡単さ。左手で攻撃力が低いことは見てわかる。だから、サポートにまわすんだ」


  左手に持っていた小太刀をわざと見せつけ、考えさせる。
  戦闘中には気づけないほど薄く、毒が塗られていた。


「当たれば気づかないうちに毒が全身に回り、気づいた時にはもう遅いってことだ」


「まんまと罠にハマったわけか……闘って思ったが、本気を出していないな?しかも、手加減なんてレベルじゃない。ほぼ素で闘っていただろ、どうしてだ」


「無意味な殺しはしたくない主義だから……この戦いにもいつか終止符を打ちたいと考えている」


「そりゃあ……ご立派な目標だ。君みたいな奴が増えると、いつか……いつか平和な世界になるのかもな」


「ほらよ、これをやる」


  急に投げられた小瓶を受け取ると、解毒の文字が書かれてあった。


「大人しく投降しろ。無意味な殺しはしたくないんだ」


「私にキングを裏切れと」


「いいや、キングとエース同盟だ。この世界を必ず平和に導いてやる」


  キングの勇者は解毒薬を飲み、不自由から解き放たれる。
  その瞬間、目にも留まらぬ速さで目の前まで迫ってきた。
  キングの勇者へ目を向けると、その目は人を殺す目だった。


「その言葉……本当なんだな?」


「疑うならここで殺せ。オレはずっと本気だ」


  すると、こちらへ向けていた槍を下げ、片膝をつく。
  
「いいだろう、エースとキングは只今を持って同盟を結ぶ。世界の平和を共に、実現させよう」


  その言葉を最後に、キングの勇者は急いで自国へと戻って行った。


 ――これで残り二つの国を仲間に出来れば――


  そう考えていた時、一人の兵士が息を切らして走ってきた。
  その様子は只事ではなかった。


「どうした!?」


「勇者様……申し訳ないです……姫が、姫がさらわれました――」


  兵士の言葉を最後まで聞かず、オレは全速力で城へと戻った。
  やっとの思いで城にたどり着くとここで戦闘が行われていた。
  微かに臭う血の匂い。どうやら、抵抗したものの兵士達では相手にならなかったみたいだ。
  と、なると予想はつく。クイーンもしくはジャックの勇者が攻めてきた。
  今を狙うのがベストだと不意を突かれた。
  近くに倒れていた兵士に現状を聞く。


「勇者様が闘いに行ったあとすぐに勇者二人が城へ攻めてきました……なす術なく姫を……姫を……!」


「大丈夫だ、必ず取り戻してみせる」


  それから何人もの兵士に敵の居場所を聞き周り、やっとの思いで有力な情報を得た。
  マリアは今、クイーンの城へ幽閉されているらしい。
  どうやらオレを釣り出すために、マリアをエサにしたようだ。


「無事で居てくれ……マリアッ!!」


  クイーンの城へ向かいながら、兵士達の話を思い返すと一つ厄介なことが起こっているようだ。
  勇者が二人攻めてきた、と言っていた。
  つまりは、クイーンとジャックが手を組んだ可能性が高い。今のキングとエースのように。
  そうなると、本気を出して勇者二人と闘えるのか。


「今は考えるな……」


  そう言い聞かして、オレはクイーンの城へと乗り込む。
  今考えられる最悪の結末にさせないために、オレは大地を蹴り未来を変える――


「よく来たなエースの勇者。待ちくたびれたぞ……」


「クイーンの勇者……マリアをどこにやった」


「さぁな」


  目の前に現れたクイーンの勇者は、嘲笑いマリアの居場所を隠した。
  最悪のパターンの一つが、目の前にある。
  クイーンとジャックの同盟だ。
  最初は気づかなかったが、クイーンの勇者の隣にはジャックの勇者が立っていた。


「聞けばエースとキングが同盟を結んだそうじゃないか?」


「オレの夢を……やるべき事を成すためにな」


「お前の成すべきことなど知らないな……」


  決して油断していた訳では無いが、クイーンの勇者の行動は目で追える速度ではなかった。
  一度まばたきをしただけで、相手は攻撃態勢に入り剣を握りしめていた。
  殺気が無かった分、さらに体が強張る。
  クイーンの勇者の剣に加え、援護射撃としてジャックの勇者の弓が猛威を振るう。
  このままでは、どちらかを回避するとどちらかを受ける形になってしまう


「……解放ッ!!」


  ライガの額からは二本の角が現れる。
  どちらか片方しか避けれないのなら、片方を捨てる。そんな考えは捨てた。


「冗談は辞めてくれよな、エースの勇者」


「ほう……今のを全て防ぐとは」


   剣を二刀流小太刀で防ぎながら、飛んでくる矢を全て避けてみせた。
  普通の人間ならば、有り得ない速度で動いたため負荷が大きい。
  若干、今後の戦闘に支障が出そうだ。


「剣もダメ弓もダメ……なら、魔法か精神を壊すしかないな。そうだ、いい物があったなあれを出せ」


  クイーンの勇者が指を鳴らすと、城全体へと響き渡る。
  やがて、奥から現れた黒装束達に殺気が移る。
  黒装束達が持ってきたものは、大きな檻だった。
  中には白いドレスに、光り輝く黄金の髪を持つ少女――マリアだった。


「マリア――ッ!!」


  返事がない。それによく見ると綺麗なドレスには泥が付けられており、薄汚くなっている。
  オレの助けが遅かったせいだ……


「おっと、これはお前に勝つための材料だ」


「マリアは物なんかじゃねぇ!!」


  出せる全力で駆け出し、檻の周りにいた黒装束達を切り裂き殺す。
  そして、檻の中に囚われたマリアを助けることに成功する。
  が、マリアの様子がおかしい。
  いくら呼びかけても返事が――ない。


「マリアに何しやがった!!」


「あんまり騒ぐもんだから、静かにしてもらってるだけだぜ?」


  顔を覗き込むと、青あざがあり殴る蹴るを受けた後が多数。ただ、今は気絶しているだけのようだ。
  命に別状は無さそうだが、きっとこの先トラウマが脳裏をよぎるだろう。


「……許さない」


  瞬間移動とさえ思える速度で、遠距離にいたジャックの勇者をほふる。
  理不尽なまでの強さを前に、クイーンの勇者は後ずさる。
  この場に他の者が居たら、誰しもが感じ取るだろう。ライガの圧倒的な程の圧力に殺される、と。


「死ぬ覚悟は出来てるだろうな……クイーンの勇者!!」


「酒呑童子……か。見た目は鬼、そして最強の強さ。確かにお似合いの異名だ」


全制限リミッター解除……。一気に決める……ッ!!」


「おいお前ら、今だ!」


  クイーンの勇者の声に、オレは足を止めてしまった。この行為に一生後悔するとは思いもしなかった。
  守っていた大事なものから悲痛な叫びが聞こえてくる。悪寒が走る……。


「マリア!!」


  後ろを振り向くと、白いドレスは心臓部分だけ赤く染まっている。
  よく見ると、心臓よりわずかにズレているがそれでもこのまま長時間放置すると命が危ない。


「さぁ、絶望の時間だ……存分に苦しみたまえ」


  虫の息のマリアを抱き抱える。
  血の気がどんどん引いているのか、いつもより肌は白い。


「マリア……おい、マリア……!!」


「ライ……ガ様……ごめんね――」


「何言ってんだよ!!まだ、まだ助かる!!」


「ごめん……ね」


「謝るんじゃねぇ!!謝るのはこっちの方だ……助けが遅くなった。力があるのに守れなかった」


「ライガ様、いつか……貴方の夢を叶えて。それが私の……夢、だから。この世界に平和を――」


  その言葉を最後に、マリアは冷たくなった。
  何度揺すっても、何度呼びかけても、何度叫んでも。マリアが動くことは二度となかった。


「いいぞ……その顔だ。その顔が見たかった」


「……殺す」


  ライガをまとう空気がさらに変わる。
  今まででも殺されそうなほどの圧力だったが、それ以上になる。
  まさに、地獄の鬼。死んだ後も殺し続ける鬼。


「その力は何なんだッ!!」


  クイーンの勇者は、一つ大きな間違いをしていた。
  心が死ねば、人も死ぬ、と。
  ライガは大切な者の死を受け入れることが出来ず、暴走する。


「おい、辞めろ……辞めてくれ!!」


  抵抗するが、クイーンの勇者は一瞬で死ぬ。
  クイーンの勇者を殺した時、ライガの暴走は収まる。と、言っても活動限界を迎えた為だ。
  力を解放するだけでなく、制限リミッターをも解除したため、体への負担は異常。
  後少しでも体が限界を迎えていたら、クイーンの勇者には勝てなかっただろう。


「オレの力じゃ誰も……守れない。こんなちっぽけな力はあっても要らない……」


  助けることの出来なかった命を抱え、オレはエースの国へボロボロの体を引きずり帰る。
  帰りを待っていた者だろうか、オレの姿を見るなり駆け寄ってきた。
  そこでオレの意識は途絶える――




  やがて、目を覚ますと戦闘による身体のダメージと、マリアの死による精神のダメージが合わさり、オレは一人になるために国を出ることにした。
  当然、オレが消えることに反対する者も多数いた。
  だから、オレは消える。誰も止めることはさせない。


「おっと、ライガって名前だったな。どこに行くつもりだ?」


「キングの勇者か……こんな弱いオレなんて必要ない。何処かでひっそりと暮らすことにするよ」


「何を馬鹿な事言っているんだ?次の国王はライガを推している人が多いんだ。君が居なくなると、この国は成り立たない」


「国王か……オレはまだ十四歳だ。若すぎる、お前は二十代に見えるな」


「二十三だ」


「なら、こんな子どものオレよりお前の方が適任だ。この国を任せた」


「あ、おい――」


  キングの勇者が何度も呼び止めているようだが、オレは足を止めず静かな場所へと消える。
  そこでオレは静かな暮らしをする予定――だった。

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