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閃雷の元勇者

しにん。

1話 転入

 勇者を辞め、オレは田舎でゆっくりとした生活を過ごしていた。
 勇者時代に貯めていたお金で不自由なく暮らせ、この生活を満喫していた。
 誰から怒られず、誰からも責められず、誰からも頼りにされず――そんな一人だけの生活を送っていた。


「さぁて、この暮らしも一年経ったのか……」


 晩御飯のために、オレは買い物へ出かけた。
 近くに市場があるのでとても便利だ。


「兄ちゃん、久しぶりに家から出てきたのか」


「まぁ、そんなところ」


 歩いているだけで知らない人から声をかけられる。
 どうやらこの田舎の中では家から全くでない、いわゆる引きこもりもしくはニートと思われいてるようだ。実際違いない。


「ライガくん、うちの店に寄ってかない?」


「遠慮しとくよ、さっさと晩飯の具材でも買って帰りたい」


 様々な店は、客を無理やりにでも引き込むつもりなのだろうか。
 知り合いなら尚更強く店を勧めてくる。


「済まないな、オレにはそんな騒ぐ元気がないんだ」


「そうか……んじゃ、また今度うちに来いよ!」


「そうさせてもらうよ」


 適当に言い訳をするだけで、二度と行かない。
 その後、晩御飯の具材を買い真っ直ぐ家へと戻る。
 呑気に鼻歌を、なんてことは無いが少しだけ上機嫌で家へ。なぜなら、買おうと思っていた具材が割引されていたからだ。
 そんな小さな幸せを喜び歩いていると、後ろから呼び止められる。
 この声は聞いたことがある。師匠のシンだ。


「ライガだな。こんな田舎に居たとは……一年間ずっと探しておったぞ」


「すみません、どなたでしょうか?」


 知っているからこそ、オレはあえて他人のフリをした。
 勇者の時より、背丈は多少なりとも縮んでいるため、バレないだろう。多分。


「いでででで!やめ、ギブ!!」


 どうやら一瞬でバレたようだ。
 耳を引っ張られ、あえなく撃沈。


「ったく、いくら背が縮んだとは言え、お前独特のオーラですぐ分かる。その身に隠している鬼の力がな」


「それで、今頃オレに何の用?闘えとか言っても、もう敵はいない。それにオレの力なんて誰も守ることのできない弱い力だ。そんな力に頼るほどこの国は、エースは落ちぶれていないと思うぞ」


「簡単に言うと、国民の安全のために来て欲しい。今は平和を保っているが、いつ反乱や襲撃が起こるか分からん。そのための用心棒として――」


「嫌だね。オレは静かに暮らすって決めたんだ」


「そう言うと思ってたよ……それで一つ提案がある」


「提案?バカなのか?オレは静かにここで暮らすって言ってんだぞ?」


「人間離れした、その勇者の力があるのに?それは無理なことだ。お前の力を目当てに戦争が起き、この街が消えてしまうぞ?」


「そうはさせない。オレは静かに暮らすためにならいくらでも戦う」


「お前さ……夢ってあるか?なんでもいい。どんな小さなことでもいい」


「夢か。オレは強い力を持っていたから、小さい頃から勇者として育てられてきた。だからさ、オレの夢は一般人になってみたい。一生懸命頑張って、ゆっくりと生き、人生を終えたい」


 若干、シンに誘導されたかもしれないが、オレの夢は昔から変わらない。
 力があるから誰かを守るために戦う?何も守れなかった力なんてもう要らない。誰も守れない。
 例え、マリアを守ることが出来てもオレの夢は揺るがなかっただろう。
 オレは勇者として産まれてきて、後悔している。


「それで、提案の前に一つ聞きたい。その身体はどうした」


 やはり、それを聞かれた。
 勇者の時と比べオレの身体は一回り小さくなっている。
 病気等ではない。単に失敗しただけだ、封印に。
 昔からこの力をオレは嫌っている。
 勇者の時も何度も力を封印しようとしては止められ、その度に罰を受けた。
 だからこそ、勇者をやめたこの一年、力の封印に死力を尽くしてきた。
 まぁ、結果は失敗に終わり、代償なのかどうかは知らないが身体は小さくなってしまった。
 これ……シンに言ったら、怒られるよな……?


「ほう、力の封印を……ね?今までで何度も挑戦しては止められたから、今なら出来るとでも思ったのか。だったら都合がいい」


「……は?」


 シンの言っていることが理解できない。
 国のために闘え、と言っていたのに力がなくなることに都合がいい?矛盾している。
 一体この男はどんな目的があるのか。


「お前、学園に行ってみないか?」


「済まないな、オレには無理な話だ。さぁ、帰った帰った」


「力の封印……」


 シンの言葉にオレは足を止める。
 その先、シンが話す内容が予想できたからだ。


「卒業することが出来たら、力の封印を私がすると言ったら、どうする?」


 予想的中。シンなら容易く封印ができてしまう。
 オレの一つ前の勇者としての役目を果たしたシンなら。勇者時代に魔法で戦い、様々な戦場を駆け抜け、シンは皆から賢者と呼ばれ、慕われている。また、国王と同等の権限を持つ程である。


「その話本当だな?もし、オレがその学園を卒業できたら、力の封印をしてくれるんだな?」


「あぁ、約束しよう。なんせこの三年間は……おっと、何でもない。とりあえず君には、覇聖はせい学園に行ってもらう。存分に青春を謳歌したまえ」


 その言葉を最後に、シンは姿を消す。
 嵐のような時間はオレの人生を狂わせる。
 適当にやって卒業すれば大丈夫だろう。とりあえず家に帰ってご飯だ。


 次の日の朝、新品の制服に袖を通すと心が踊る。こうした学校に行くことは久しぶりだ。
 ずっと戦場で戦っていた分、普通の子供の生活がわからない。そこに大きな溝が出来るだろうな。
 オレは沢山の不安を抱え、シンの言っていた覇聖学園の正門へと辿り着いた。


「で、でけぇ……」


 入学手続きやその他諸々は全てシンに任せておいた。多少心配だ。
 とりあえず、目立たないように周りに合わせ――


「見ない顔だな。こんな時期に転入か?」


 自然体で門をくぐろうとした時後ろから声をかけられる。
 どうか、不良ではありませんように。
 振り向くと、視界に赤い薔薇バラが入る。薔薇と言っても本当に薔薇がある訳では無い。
 目の前の女性の髪の毛が赤いだけだ。
 それにしても、この女性は風格がある。強そうだ。


「どうした黙り込んで。もし不審者ならば容赦はしない」


「あ、あぁすまない。この学園に来たばかりで緊張してて」


「そうか、転入生か。すまない、脅かすようなことをしてしまったようだ」


「お気になさらず……」


 オレはなるべく目立ちたく無いので、会話を無理やり遮断し、素早くその場から立ち去る。
 逃げている途中で気づいたが、周りの人の目がおかしい。どこか怯えている、と言うよりも関わりたくないという目をしている。な、なんでだ?
 そんな無意味なことを考えつつ、オレは教室へ向かう。
 そう、ここからオレの学園生活が始まる――


「入れ」


 担任の先生らしき人物から支持を受け、教室のドアを開ける。ドキドキだ。


「て、ここに転入することになりました。ライガと言います。宜しくお願いします」


 簡単かつ平々凡々な自己紹介をして、教室を見回すと様子がおかしい。どこか間違えたか?
 すると、金髪の気品の高そうな女生徒が立ち上がる。


「先生、彼はこのクラスに――いえ、この学園に入るほどの実力はあるのでしょうか?」


「知らんな。なんでも学園長からの指名らしい。それ以外のことは知らない」


「学園長が直々に……?有り得ませんわ。学園長と言えば、元勇者様なのですから。そんなお方がこんな弱そうなチビをわざわざ、この学園に呼ぶわけがないのですわよ?」


 あちゃー、これ場違い感が凄い。
 どうやらこの学園はエリートの集まりだな。要するに、田舎から出てきた何処の馬の骨か分からないやつが、学園長から呼ばれたから怒ってるやつもいれば驚いてる奴もいる。また、田舎から出てきたという所でオレのことを下に見ている奴もいるな。


「ったく、先生は暇じゃないんだ。後の話はライガ、お前が頑張れ。それじゃ」


 先生はめんどくさそうに教室を出ていく。
 任せられたから……まぁ、やるか。


「学園長ってのは本当に元勇者なんだな?」


「えぇ、そうわよ。かつて大戦を駆け抜けた――」


「そういうのいいから、うん。元勇者って事はエースの国王か?」


「もちろんそうですわ」


「なら案内してくれないか、学園長の元に」


「出来ませんわ。貴方がどんな人物かわからない今学園長に会わせるわけにはいきません。貴方本当に学園長からここに来るように言われたの?」


 あー、こいつめんどくさいな。先生が逃げた理由がよくわかる。


「いいや、学園長とやらには会ったことがないな。ここに来た理由は言えないが、まぁ、なんだ。知人からここに行くように、とだけしか言われてない。それ以外のことは本当に何も知らない」


「もしかして、貴方テロリストか何かですの?」


 その瞬間、教室が嫌な静けさで満ちる。
 どうやらこの金髪女のせいで、オレはテロリストだと思われているらしい。
 こんな弱そうな見た目のやつが強いわけないだろ……


「勝手な予想お疲れ様だ。残念だがオレはテロリストではない。仮にテロリストだとしたら、こんな所には来ない。まず真っ先に国王の元へ行く。違うか?」


「確かに言われてみればそうですわ。疑ったことに訂正とお詫びを申し上げるわ」


「わかってくれればいいんだ、わかってくれれば。それで、オレはこの学園のことを全く知らない。誰か案内とか説明してくれないか?」


「私がしよう!」


 一際大きな声で返事をする女生徒。
 この赤い髪はどっかで見たことあるな……。


「やぁ、また会ったね、転入生」


「あぁ、門のところにいた人か」


「覚えていてくれて感謝だ。まず、君は本当にこの学園の事を知らないのだな?」


「その認識で間違えてない。なんせ田舎出身だからな」


 またもや教室がざわつく。本当に賑やかな場所だな。
 これだけ大きな学園だから転入生の一人や二人珍しくないだろうに。


「この学園はエースの国が、国家戦力を生み出す所として直々に面倒を見ているという場所だ。ここにいる皆が国を守るために戦う術を学ぶために努力をしている。君もそうなんだろ?」


「違う違う。オレは知人から勧められたからここに来ただけ。他に理由はない」


「なんと、面白い。簡単にここには入学すらも出来ない仕組みになっているのだがな。まさか、何も目標がない者がここに入学できるとは」


「説明を聞いていて自分でも驚きだ。まさかこんな所にこさせるとは……シンのやつ次会ったら覚えておけよ」


「何か言ったかね?」


「いいや、こっちの話だ」


 どうやらオレはシンにハメられたようだ。
 何も知らないからと言ってまさかこんな所に来させられるとは。
 一体何を考えているんだ?
 国を守るために戦う者を育てる学園か。オレは国のためになんか戦わないと言ったはずだが。アイツの耳は何か詰まっているのでは無かろうか?


「そこでだ転入生。きっとここにいる全員が思っていることを代表して言わせてもらう。君は強いのかね?」


「さぁ、どうだかな。なんせ田舎出身なもんで周りは年寄りばかりでね。誰かと闘うなんてした事ないからな」


 全部嘘だ。田舎出身でも無ければ、闘ったことがないなんて全部が嘘だ。こんな嘘を信じる奴なんて居るのだろうか。
 居るとすれば、純粋無垢かバカの二択だろう。


「そうか、残念だな。ならばここで一つ、転入早々分からないことだらけだろうだから、体を動かして緊張をほぐしてみるってのはどうかな?」


「運動か?めんどくさいから無理。それに緊張なんてしてないよ」


 あまりバカと話をしていては後々めんどくさそうだ。早急に話を終わらせよう。うん。


「みんな、準備をしてくれ。転入生の実力もわかるぞ」


 人の話を聞かないタイプだ。
 典型的な嫌な奴。学園生活初日にしてめんどくさい。
 オレは渋々着替え、外へ出ることにした。
 支給された運動着は白のみでデザインはない。
 運動をするために作られたのだろう。とても着心地が良い。


「恐らくこのクラスのみんなが疑っている強さ、期待しているぞ転入生」


 この赤い髪の女生徒はなんて身勝手なのだろうか。
 オレの意見の一つも聞いてはくれていないな。
 それに皆して何一つ文句を言っていない。
 どうなっているのか疑問に思うね、このクラスは。


「それじゃ、手合わせしてみたいという者は居るか?居たら挙手を」


 それぞれ顔を見合わせ、話し合いをしているようだ。この女は皆にとってどんな存在なのだろうか。
 見る限り指揮官や上位の立場なのだろう。


「……私がやる」


 皆の背丈で隠れていた小さな女の子が、大きく手を挙げ前へ歩いてくる。
 綺麗な銀髪が太陽の光を浴び、透明にさえ見えてしまう。顔立ちはどこか幼い。本当に同い年なのだろうか。
 また、見た目はごく普通の女の子だが、様子というよりも雰囲気が周りとはかけ離れている。
 どうやらこの子は強い。


「武器は……何使う?」


 首を傾げ、オレに問う。
 この子は何かを試しているのだろうか。先程からオレを見ていない。
 オレの力を見ている。


「いつも使っている小太刀があるからこれを使うよ」


 オレはあえて片方の小太刀だけを握り、戦う意思を伝える。
 それを見た少女は少し考える素振りを見せ、オレが握っていた小太刀とほぼ同じ大きさの小太刀を用意する。
 刃物を使うため怪我を心配していたが、どうやらこの場所にはある仕掛けがあるらしい。


「どれだけ傷つけても大丈夫だよ。私が作り出す固有結界の中では、どんなことが起きようとも元に戻せる。簡単に言うと仮想戦闘って所かな。存分に戦ってね」


 メガネの女生徒が自信満々に固有結界を作り出していた。
 魔法か。これだけ間近で魔法を見たのはシン以来だ。
 オレには魔法の適性が無いらしく、全く使えない。少しだけ羨ましい。
 羨望の眼差しを受け、メガネの女生徒は目をそらす。そんなにオレって目つき悪いかな。


「あまり本気を出すなよアリス。お前が本気を出すと取り返しがつかない」


「……わかった」


 どこか不服そうに頬を膨らませ、アリスと呼ばれた銀髪の小さな女の子は頷く。
 赤い髪の人(名前をまだ聞いていない)から本気を出すな、と言われたな。
 その真意は何だろうか。一体どんな力を持っているのだろうか。
 オレは気を引き締め、目の前の敵に意識を集中させる。


「始めッ!!」


 合図とともに、小太刀を構える。
 片手だけだがあまり力を使わずに頑張ろう。目立たないようにだ、目立たないように。


「術式解放――プロトタイプ」


 アリスは短く何か言葉を発し、小太刀を構える。
 ひとまず、この力の強さを知るため自ら敵陣へ突っ込む。


「この力は――」


 アリスから溢れ出した邪気を感じ取り、大きく後ろへ飛ぶ。
 この子は何をしたのだろうか。
 邪気に少しだけ触れてしまった小太刀は、触れた部分だけ溶けている。
 目を疑ったが、綺麗に研ぎ澄まされた刃が溶けている。
 この邪気は恐らく高温。鉄が溶けるほどだろうか。


「術式解放――霧の街」


 アリスから溢れ出す邪気の量が増え、固有結界全体に行き渡る。
 一瞬死を予想したが、邪気に触れた肌は何ともない。
 変化があるとすれば、持っていた小太刀がさらに溶けていることだけだ。


「これで……倒れないの?」


「生憎だけど、この程度じゃ負けないな」


「……そっか」


 アリスは残念そうに下を向く。
 この邪気は一体何なのだろうか。
 まだ謎が解明されていないので、袖で口を抑え直接吸い込まないように気をつける。
 毒でじわじわ削る可能性がある。


霧の演舞ミスト・ダンス


 霧の中に姿を消すと、四方八方からアリスの姿を捉える。どうやら、霧の中を自由に行き来出来るようだ。
 常に死角から姿を現し霧に消える。
 その連続攻撃に、オレは胸を踊らせていた。


「……フィナーレだよ、お兄ちゃん」


「残念だけど、終わりでもないしオレはお前のお兄ちゃんでもない」


 死角から出てくるため、アリスの位置は大体予想がつく。単調な攻撃ほど簡単な攻撃はない。
 技が強くても、肝心な人がダメならば宝の持ち腐れだ。今はまだ闘い方を知らない彼女は今後もっと強くなる。少なくとも今よりは。


闇夜の霧ダークネスミスト


 視界が真っ黒な霧で覆い尽くされ視野が狭まる。
 自分の手すらも確認出来ないほど暗い。


「一刀流剣術、虎振とらぶり


 アリスの攻撃パターンは全て読んだ上で、最善の技を決めに行く。
 予想通りアリスが勝ちを決めに来る時は、あえての正面だ。それ以外の死角は全て偽物ダミー
 正面からの攻撃を警戒させないため。だからこそこの攻撃が読めた。
 真っ直ぐ突っ込んでくるアリスをギリギリでかわし、横腹を切り裂く。
 その瞬間にメガネの女生徒が作り出した固有結界が消える。
 本当に死なないのか心配したが、どうやら本当に大丈夫みたいだ。


「お疲れ、君強いね」


「お兄ちゃんこそ……強い」


 倒れたアリスに手を差し伸ばし起き上がらせる。
 パンパンとスカートを叩き、スカートに付いた砂を落とす。
 戦いに集中していて気づかなかったが、華奢な体ながらもしっかりと筋肉は付いている。かなりの鍛錬を積んできたのだろう。その努力が垣間見れる。


「ウソ……でしょ?」


 その声を始めとし、戦いを観戦していたクラスの全員が驚きの表情をしていた。
 別に力の差はほぼ無いようにしたんだが、一撃で決めたのが悪かったのか?


「ほう、強いな転入生。本当に誰とも闘ったことはないのだな?」


「どうだかなー。覚えてない」


「嘘だな。君の言葉から真実が語られていない。本当の君は一体何者なんだ?」


 勇者ということは秘密にしておこう。
 何かあったら後々面倒だ。どこまで隠し通せるかわからないけど。


「ただの田舎から出てきた――」


「一ついい事を教えよう。この学園には力による順位制度が設けられている。力による順位のため、序列上位の者達は歴戦の猛者だ。そして、そこにいるアリスは全校生徒千人の中の序列十位だ。言いいことはわかるな?」


「ようするに、転入初日で序列十位になれたって事か?」


「公式ではないため順位は変わらない」


「へぇ……よく出来てるな」


「話をそらすな。私たちが言いたいことは一つ。お前は本当に何者だ。いや、答えなくて構わない。少なくとも敵か味方かを答えてもらおう」


「敵ではないことは確かだ。別にこの国やこの学園になんの恨みもない」


 そう答えると、クラスの全員が安堵のため息一つ。
 どうやらオレに対するイメージが変わった。
 それだけで終わればいいんだけどな。本当に。


「その言い方だと、味方ではないという事になるな?」


「転入初日だ。友達がいないから味方なんているわけないでしょ、ここにいる皆知らない人なんだから」


「あの……一つよろしいですこと?」


 奥から金髪の女生徒が手を挙げ出てきた。
 この子はさっき、オレに向かって散々文句を言っていた子だな。見た目の判断で弱いと決めつけ、この学園に相応しくないと思っているらしい。


「貴方の強さ、感服いたしましたわ。それで、先ほどの私の発言を撤回させてもらいたいのですが……」


「あー、気にするな。オレは小さいからよくバカにされている。その程度じゃ傷つかない」


 肩をポンと叩き、オレは教室へ戻る。
 オレに続いてクラスの全員が、教室へ戻る中二人の生徒だけが外に残る。


「お兄ちゃん……強い」


「ライガ……様」


 金髪と銀髪の女生徒は、その日教室へ戻らずに寮に戻ったらしい。
 この学園は国が運営しているらしく、寮がいくつも建っていた。
 田舎から出たということで、オレも今日から寮ぐらしだ。




 一日の授業を終え、指示された部屋へと行ってみる。どうやら二人部屋で、他の誰かと一緒らしい。
 流石にこの人数の部屋数を用意するのは無理だったみたいだ。半数でも凄いほうだけど。


「失礼しまーっと」


 ゆっくりと扉を開けてみると、綺麗に片付けられた部屋になっていた。他に同居人もいると聞いていたが、今は不在のようだ。
 同居人には悪いが、先に寝かせてもらおう。転入初日でいろいろなことが起き過ぎた。正直いって体が限界だ。久しぶりだなこんなに動いたの――

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